ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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進路指導のウィザード
予期せぬ出会い


冥界の魔獣騒動から、そこそこ経ったある日の早朝――。

 

「………………」

 

俺は目の前の光景に唖然としていた。

 

暁の女性メンバーがほぼそろっていると思う人数で、俺のベッドを占拠していたからだ。

 

これは前からのことだったし、こうして俺の横を取り合う光景はしばしば見ていたが……。

 

最近はどうも、その競争が激しくなっているように思えてならない。

 

イッセーたちが中級悪魔に昇格した翌日から、俺はここにいる女子に振り回されていた。

 

デートの約束を半ば強引に取り付けられ、日に二人以上と外に出かけていた。前みたいに跡をつけてきたりはしてなかったが、一人一人のスケジュールを組むのはある意味で地獄だった…。

 

それに数日前、ミリキャスが訪問してきた。俺はそのときも昼間はデート、夕方から夜までは試作品のゲーム(タイトルは『駒王学園 バトルウォー』)をミリキャスを交えて皆でプレイしたり、戦闘の練習を離れた安全な場所から見学してもらったり、イッセーたちの仕事について行ってもらったりなどした。

 

ときにはイッセーたちの模擬戦にも参加していたようだ。俺たちのは手加減しても体術以外は死ぬ可能性が高いからな…。ということから、残念ながら俺たちの模擬戦は見学のみということにしてもらった。それでも、ミリキャスは目を輝かせながら見ていたな。

 

サーゼクスの眷属も訪問してきたな。サーゼクスなんかサタンレッドの姿で来てたし、最終的には魔方陣から登場したグレイフィアに数十秒後――連行されることとなっていた。

 

その後、眷属のセカンド、マクレガー、総司、ベオウルフは街のホテルを借りて宿泊。ミリキャスは文字通り三日ほど遠山家が預かった。

 

……思えば、かなり急なスケジュールだったな。いまでも心身ともに悲鳴を上げつつある状態だ…疲労的に。

 

俺は軽く伸びをして、部屋から出ようとした……その瞬間だった。

 

「――リュースケの…バカァッ!!」

 

ヒュッ――ドォォォォォオオン!!

 

俺は受け身を取る間もなく、部屋のドアを突き破って廊下の壁に上下逆さまに叩きつけられた。

 

『――きゃっ!』

 

部屋のベッドの上では、いまの大きな物音に目を覚ました皆がほぼ同時に飛び起きて……お互いにぶつかったりしていた。

 

その中で一人、九喇嘛の腕をさっきまで俺のいた場所に突き出した状態で静止している者がいる……奏だ。

 

「いってぇ…」

 

ガラガラと扉の残骸を床にばらまきながら、俺はゆっくりと座り込んだ。

 

ドタドタッッ!!と階段を駆け下りてくる音がしたと思ったら、イッセーたちが慌てて廊下に飛び出してきた。しかも、その後ろには金華とルフェイの姿も…。

 

「……兄さん、これは…」

 

「気にするな。ちょっと奏が寝ぼけただけだから、な?」

 

俺がイッセーにそう返すと、普通の状態に戻った奏が廊下に出てきて……俺の前に立ってそっと手を差しだしてくる。

 

「ごめん、リュースケ。私、何だか寝ぼけてたみたい」

 

そう言う奏。

 

「…ったく、寝ぼけて九喇嘛の腕でぶん殴る奴が…普通はいないよな」

 

俺はそう言い、奏の手を借りて立ち上がる。

 

……ドアは後で直すとして、さきに埃を取ってくるか。

 

「よっと…被った埃を取ってくるから、先に下りていてくれ。ドアはあとで直すから気にせんでいい」

 

俺はそう言い残して、洗面所に向かった。

 

                    D×D

 

イッセーたちを送り出したあと、俺は十尾ことマヒトツとのシンクロを安定させる修行をしに……例のフィールドへ来ている。俺が移動するとなれば、付いてくる者たちもいるということで…。

 

後ろには学校組以外のメンバーが顔をそろえている。

 

「ルリエル、指揮を執って俺を追いこんでくれ。頼んだ」

 

そう言い残して、俺は宙に浮いて輪廻眼を開眼する。

 

『マヒトツ、前に話していた六道仙人の状態を安定させる特訓を始める。力を貸してくれ』

 

『……わかった』

 

――刹那、内から力が噴き出す。

 

体の様子が多少変化し、後方に六つの求 道 玉(ぐどうだま)が出現する。

 

カッ!

 

まばゆい光と共に、前方から豪雷と蒼雷の交差が飛来してくる!

 

後方からは破壊や暴風、左右からも複数の魔力が接近してきていた。

 

俺は瞬時に求道玉を変化させ、殻を形成するように球型を創る。前方の穴がふさがると同時に、小さな衝撃が襲ってくる…が、殻は破られることはない。

 

……衝撃が止む。

 

俺は殻の外を探知するが、誰一人として攻撃を仕掛けてこないようだ…。

 

殻を解いて、姿を現す。殻は六つの求道玉となって浮遊する。

 

「――これなら、どうかにゃ!!」

 

天より叫び声が響く!上を見上げると、黒歌が仙術や妖術などを混ぜ合わせた大玉を放ってきた!!

 

…仙術だとっ!?

 

俺は求道玉を展開し、受け止めつつ右へ逸れるように角度を変えていく。

 

ドォォォン!!

 

爆音を上げ、大玉は地面に衝突する!

 

くるくるっと受け身を取りながら着地する黒歌。

 

黒歌は受け流されたミックス大玉を見て「えー」と不機嫌になる。

 

ゾクッ!!

 

背に悪寒が走り、俺は周囲を見渡す。

 

前方には、手の平サイズに破壊の魔力を集束させた球体を浮遊させているルリエル。

 

後方には、同じく手の平サイズに絶氷の魔力を集束させているレヴィ。

 

俺の周囲では、七人がそれぞれの魔力を手の平サイズの球体に集束させて待機していた。

 

……螺旋丸と同じ仕様か?

 

そう思えてならないほどの高密度に練られている魔力。形も螺旋丸そのものだ。…ということは、ルリエルたちは俺の螺旋丸や奏の螺旋丸を見様見真似で独自に作った……というところだろうな。

 

ルリエルがそれを俺へ向けて放つ。

 

ゆっくりと歩いているほどの速度で、近づいてくる球体…。それが中間あたりから密度を急激に増幅させ、半径五メートルほどの大きな球体へと急成長した!?

 

俺は直前に求道玉のひとつを盾へ変化させ、その球体の進路を塞ぐ。

 

その直後、それを合図にしていたのか…六人が同時に球体を放ってくる!!

 

触れている大気がすべて凍りついていくレヴィの魔力玉。

 

紅蓮の炎で周囲を焼くベネチアの魔力。球体から『フレア』と思わしき爆発を起こしながら接近してくる。……まるで、小さな太陽を象っているようだ。

 

暴風で周囲を吹き飛ばすマキアの魔力。球体から複数の竜巻を起こし、周囲の大気を奪っていく…。

 

すべてを飲み込んでいくかのごとく底が見えない、ベラナの深水の魔力。触れたものが瞬時に取り込まれ、圧縮されていく……まるで『ブラックホール』を連想させる。

 

すべてを溶かすアリスの魔力。周囲――大気の水分が蒸発し、地面やオブジェクトが次々に溶けだしていく…。

 

俺は残りの求道玉を盾にし、それぞれの魔力にぶつけて静止させる!――だが、サルベリアの豪雷の魔力だけは防いでいない。

 

前方へ放射線状に拡散していく雷。その威力は自然界のものと比べても圧倒的に勝っているほどだ…。それが、無防備の俺へ襲いかかってきている!!

 

俺はサルベリアの魔力に向け、両手を突きだした。

 

――仙法(せんぽう)陰遁雷派(いんとんらいは)!!

 

両手から無数に枝分かれする黒雷を放ち、豪雷の魔力にぶつけて相殺させる。……本来は敵を捕縛するものなんだが、な。

 

そして、すべての求道玉で六つの魔力を包み込み、圧縮させて内側で消滅させた。

 

その光景にルリエルたちは、表情に焦りの色を見せていた。

 

――ちょうどそのとき、セットしていたアラームが鳴り響いた。

 

                    D×D

 

その日の夕方――。

 

俺と黒歌、ユー、カミュは久方ぶりにオカ研の部室に顔を出していた。

 

ここには学生であるイッセーたち、俺と黒歌、ユー、カミュがいて、龍巳は家に即行で帰ったようだった。…なにせ、オーフィスがいるからなぁ。

 

それから少し遅れてロスヴァイセが合流した。

 

……なぜ、俺たちもここに集合したかって?それは、前日アザゼルに言われたからだ。

 

ソファに座るイッセーたち。

 

俺は近くにあった椅子に座る。カミュはイッセーの後ろに立つ位置にいる。同じく黒歌は白音の後ろに、ユーは俺の横に。そして、約束通りに小型魔方陣を複数展開して、自宅に待機しているルリエルたちを呼び出して立体映像を映す。

 

それを確認して、リアスが立ち上がり、見渡すように話し始める。

 

「さて、皆、今日集まってもらったのは他でもないの。――今日から例の件、『魔法使い』との契約期間に入っていくわ」

 

俺たちは悪魔じゃないんだけどな……そこに悪魔はいるけど。

 

さて、魔法使いと悪魔の関係は――。

 

リアスが言う。

 

「魔法使いが悪魔と契約する理由は大きく三つ。ひとつは用心棒として。いざというとき、バックボーンに強力な悪魔がいれば、いざこざに巻き込まれたときに相手先と折り合いがつけられるからよ」

 

「ヤクザみたいですね」

 

イッセーがそう言うと、リアスも苦笑しながら「そうね」と答える。

 

……ヤクザ、ねぇ。あんな怖い『おにいさん』たちが後ろ盾にいたら、怖くて手も足も出ないだろう。俺は壊滅させた過去を持ってるけどな…。

 

リアスが指を二本立てる。

 

「ふたつめ、悪魔の技術、知識を得たいがため。もっと言えば冥界の技術形態ね。魔法使いが研究に使うためにそれらが効力を発揮するの」

 

それなら、直に冥界へ――といきたいところだが、悪魔や堕天使じゃない存在が簡単に入れるようなシステムではない。俺は過去に不正に入ったが、二度目にはきちんとパスを作ってもらっている。……サーゼクスたちの計らいだけどな。

 

他にも「他陣営から欲しいものを手に入れたらどうか」というが、実際そうすれば仲介料を取られ、値段が馬鹿上がりすることが多い。経済でいうところの、関税と同じだ。

 

リアスが指を三本立てる。

 

「最後に。簡単なことよ。己のステータスにするため、悪魔と契約するの。強力な悪魔と契約すればそれだけで大きな財産となるわ。私のお父さまやお母さまだって、魔法使いと契約しているのよ?何かあったときは、相談事を受けるために召喚に応じるってわけね。上級悪魔及び、その眷属ならばそれが義務のひとつなの」

 

ゼノヴィアが複雑そうに首をかしげる。

 

「まさか、私が魔法使いに呼び出される側になるとは、人生とはおもしろいものだ」

 

リアスが苦笑して言う。

 

「そうね。異能に携わる人間なら、普通は呼び寄せる側だわ。呼ばれる側なんて、悪魔や魔物ですものね。だからこそ、皆には契約を大切にしてもらいたいの。一度交わした契約は簡単に反故できるものではないわ。契約したら、きちんとお仕事するの。けれど、程度の低そうな相手と契約したら、こちらの品位が疑われるわ。最高の取り引き相手を選びなさい。魔法使いにとっては異能研究の延長線上でしょうけれど、私たち悪魔にとってこれはビジネスだもの。普通の人間との契約、両立してこその悪魔よ」

 

『はい!』

 

リアスの言葉にイッセーたち眷属が大きくうなずく。……俺たち、悪魔じゃないし。一応いるといえば、いるけどな……。

 

俺は溜め息を吐きつつ、手に取ったマグカップでホットなコーヒーを軽く口に含む。

 

「……いやらしいことを考えていましたね?」

 

イッセーの膝の上に座っている白音が足をつねる。軽く涙目になっていたイッセーだが…同情はしてやらん。

 

そんなやり取りを見ていると、リアスが部室の時計を確認していた。

 

「そろそろ時間ね。皆、魔法使いの協会のトップが魔方陣で連絡をくださるの。きちんとしていてね」

 

俺は「……あいつかぁ」とため息を吐きながら小声で言う。

 

部室の床に大きな魔方陣が出現し、淡い光が円形を描いていく。

 

「……メフィスト・フェレスの紋様」

 

祐奈がそう口にする。

 

部室に現れた魔方陣は、立体映像を映し出していく。

 

椅子に優雅に座った中年男性……赤と青の毛が入り混じっている頭髪を固め、切れ長の両眼は右が赤で左が青のオッドアイ。強面な顔が、ニッコリと破顔する。

 

『これはリアスちゃん。久しいねぇ』

 

軽い声音……それは忘れることのない声だ。イッセーたちは緊張が一気に解けた表情になっていた。

 

リアスがあいさつに応じる。

 

「お久しぶりです、メフィスト・フェレスさま」

 

『いやー、お母さんに似て美しくなるねぇ。キミのお祖母さまもひいお祖母さまもそれはそれはお美しい方ばかりだったよ』

 

「ありがとうございます」

 

リアスが俺たちにその男を改めて紹介してくる。

 

「皆、こちらの方が番 外 の 悪 魔(エキストラ・デーモン)にして、魔法使いの協会の理事でもあらせられるメフィスト・フェレスさまよ」

 

『や、これはどうも。メフィスト・フェレスです。詳しくは関連書物でご確認ください。僕を取り扱った本は世界中に溢れているしねぇ』

 

すると、メフィストが俺のほうを見てくる。

 

『やー、久しいねぇ。リュースケくん。元気そうで何よりだよ』

 

「メフィストのほうも元気そうで何より…だな」

 

俺はそう答えるが、笑顔が引きつっているのは目に見えているだろう。

 

それを見て、メフィストは笑顔で言う。

 

『あのときは楽しかったねぇ』

 

俺は「そうだったな…」と苦笑しながら答えた。

 

「個人なんですよね。家とかじゃなくて」

 

レイヴェルと話していたイッセーがそう質問する。

 

それにはリアスが説明する。

 

「メフィスト・フェレスさまは悪魔のなかでも最古参のお一人で、活動のほとんどを人間界で過ごされているの。それと、タンニーンさまの『(キング)』でもあらせられるわ」

 

…あぁ~、そういえばそうだったなぁ。メフィストに世話になったとき、少しだけそんな話を聞いたな…忘れていたけど。

 

『タンニーン君には僕の「女王(クイーン)」の駒をあげたんだ。滅びそうなドラゴン種族をできる限り救済したいと言ってきてね。やー、龍王の鏡だよ、彼は。ま、僕ってゲームに参加しないし、冥界の騒動にも首を突っ込まないから、基本的に自由にさせてるけどねぇ』

 

そう言ったメフィストの視線が、俺の前に展開していた複数の小型魔方陣へ移る。その立体映像が拡大して等身大サイズになる。

 

『お久しぶり、メフィストさん』

 

ベネチアが一声でそう口にする。メフィストは口元を笑ましたままで話す。

 

『いやー、噂に聞いていたけど、リュースケくんに会っていたようだねぇ。どうだい?そちらの生活は』

 

『はい、すごく楽しいですよ。メフィストさんは…忙しいですよね』

 

メフィストは『そうだねぇ、すごく忙しいかなぁ』ニコニコしながら答える。

 

そんななか、レイヴェルとイッセーが話していたのが聞こえていたようで、メフィストが大きくうなずく。

 

『そうそう、その通り。僕は彼らがだいっ嫌いだったからねぇ。だから、いまのサーゼクスくんやセラフォルーちゃんのことは大好きさ。何せ、僕のやっていることの大半は容認してくれているからね。前魔王の連中ときたら、あれをしろ、これをしろって要求ばかりで嫌になってしまったよ。ま、現魔王のなかでアジュカくんとだけは思想の違いで意見が対立しているけど、それにしたって嫌いってほどじゃない。……何かごめんね、悪口になってしまって』

 

メフィストがルリエルたちに謝るが、ルリエルたちも『私たちだって父さまたちが苦手でしたから』と苦笑しながら言っていた。

 

メフィストはリアスに視線を戻す。

 

『年寄りの話を聞いてくれるリアスちゃんは本当にいい子だねぇ。グレモリーはキミのお祖父さんもひいお祖父さんもひいひいお祖父さんも話のわかる方ばかりだからねぇ。お祖父さんたちは元気かな?隠居して久しいよね』

 

「は、はい。グレモリー領の辺境でひっそりと過ごされてますわ」

 

そこからリアスとメフィストの昔話、世間話、昨今の魔術師業界についてと話が続いていく。

 

「では、メフィスト・フェレスさま、ソーナとはすでにお話を?」

 

『ううん、残念だけどね、あとになってしまったよ、リアスちゃん。なんでも新しい眷属を迎えてから僕とお話をしたいというから、キミたちが先になったんだ。ちなみにサイラオーグ・バアルくんとシーグヴァイラ・アガレスちゃんとはすでに話は済んだよ』

 

……ふむ。なるほど、ソーナの眷属が増えるのか。…話によれば、『戦車(ルーク)』と『騎士(ナイト)』がメンバーに入るようだ。…ということは、すべての駒が揃うということか。

 

『いやー、キミたち「若 手 四 王(ルーキーズ・フォー)」はうちの業界でも、他の業界でも大人気だからね。早く話をつけろと下に突っつかれて仕方がなかったんだ』

 

「『若 手 四 王(ルーキーズ・フォー)』か。たいそうな呼び名をつけられたな、リアス」

 

俺の言葉にリアスは苦笑していた。

 

――と、そこに部室に入ってくる者がいる。アザゼル、リエ、サスケ、美柑の四人だ。

 

「わりぃわりぃ、俺だけ会議が長引いてな。お、メフィストじゃねぇか!」

 

『やーやー、アザゼル。この間ぶりだねぇ。先にリアスちゃんと話をさせてもらっていたよ』

 

「ああ、魔術師の協会も大変なもんだな。それより、今度こっちで飲まないか?いい酒を手に入れてな。リュースケの手料理も結構合いそうだからよ」

 

『それはいいね。今度時間が取れたら飲みに行くよ』

 

旧知の仲の二人が話していると、イッセーがアザゼルに訊く。

 

「お知り合いですか?」

 

「まあな。長い付き合いだ。メフィストが悪魔側の旧政府と距離を置いている時期にな、グリゴリは独自の接触をさせてもらっていたのさ」

 

『グリゴリの情報網は大変役に立ったよ、アザゼル。いまでも世話になっているしねぇ』

 

「お互いさまさ、メフィスト。ま、グリゴリ的に魔法使いの協会と裏でパイプを持っていて損はなかったわけだ。それも三大勢力の和平で秘密裏にする必要もなくなったが」

 

そこからはメフィストとアザゼルの会話だけになる。二人であーだこーだと業界トークが始まっていた。

 

俺は二人の話をバックに、リエに遅くなったわけを訊いてみる。

 

「それはぁ、サスケさんとミカンさんの懇談をしていたからですよぉ」

 

あぁ~、そうか。二人は今日編入したんだったな。

 

リエの横に立っているサスケが、俺に質問してくる。

 

「…兄さん。俺、どの部活に入ったらいいんだろうか?」

 

「………」

 

俺は言葉を出せなかった。

 

まさか、サスケの口からどの部活に入るのかと訊かれるなんて思ってもいなかった…というより、場違いな質問だった。

 

「…ど、どう答えればいいかわからんが、おまえの好きにすればいいと思うぞ」

 

「……わかった」

 

わかった……て、俺は生徒じゃないし、部活にあーだこーだ口を出す気はさらさらないからな。

 

「……で、編入試験の結果はどうなんだ?合格点以上なのはわかっているが」

 

俺はダメもとでリエに訊く。普通の教師がそれを知ることはないことが多いと聞いている…。

 

「二人とも合格ラインを遥かに上回っていましたぁ。その学年ではぁ、トップになってもおかしくない点数でしたねぇ」

 

俺はリエを甘く見ていた…。こいつは普通の英語教師ではあるが、その前に『魔装少女』だ。情報を盗むぐらいは息をする内にも入らないほど、簡単なことだ。

 

俺たちは少し話して一息つく。ちょうど、アザゼルとメフィストが会話をやめ、本題に入ろうとする。

 

『長くなってしまって悪かったね。リアスちゃん。それでは、キミたちと契約したいと言っている魔法使いの詳細データを魔方陣経由で送るよ』

 

そう言いながら映像の向こうのメフィストが指をくるくると回し、こちらに向ける。新たな魔方陣が部室の宙に展開して、そこから書類がドバドバッと降ってくる。

 

それを皆が回収していく。俺は書類の山にチャクラ糸をつけ、高速で移動させる。

 

魔方陣から落ちてくる書類は後を絶たず、ドンドン送られてくる。

 

その内の一枚を手元に持ってくる。

 

「ふむふむ…」

 

内容を黙読して山のなかに返す。

 

…それは、就活などで用いられている履歴書と同じものだった。付属の資料もちらちらと見えていたしな。

 

イッセーと祐奈が話しているところにロスヴァイセも交ざる。内容からは…うん、『血に塗れたの時代…』とか聞こえてきたぞ…。

 

送られてきた書類の山を、皆で分担してご指名された者ごとに仕分けていく。

 

一番目に見てわかるほどに多かったのは――リアス。まぁ、『(キング)』だしな。

 

詰み上がった書類の山を見比べていくと、ざっとだが、多い順に…リアス→ロスヴァイセ→アーシア→イッセー→祐奈→朱乃→ゼノヴィア→白音→ギャスパーとなった。

 

メフィストやアザゼル、皆が話をしているとき…メフィストが思い出したように俺に声をかけてきた。

 

『そうそう、リュースケくん。キミに紹介したい魔術師がいるんだけどねぇ』

 

メフィストの言葉を聞いて、アザゼルがニヤリと小さく笑みを浮かべる。

 

アザゼル(こいつ)、そのことを知っていて俺を呼んだのか…。

 

俺が「わかった」とだけ言うと、メフィストは笑みを絶やさずにクルクルと指を回す。

 

俺の手元に魔方陣が出現し、一組の書類がドサッと落ちる。

 

目を通して見る…ふむふむ。

 

「名前は…フローラ・グリトニル、ね」

 

横から奏が覗いてきて、名前を読み上げた。

 

『その子ね、禁術でも珍しい魔術の研究をしているんだよ。あと、もう一人分送っておいたからねぇ。いつも一緒にいる子だけど、魔術師じゃないんだよねぇ…』

 

俺はメフィストが言う『もう一人分』の書類を、その書類の下から持つ。

 

「えーと、名前は望月(もちづき) 千代女(ちよめ)。研究テーマは……っ!!」

 

奏が研究テーマを読み上げようとして、言葉を失っていた。あぁ、俺も驚いているよ…。

 

俺と奏が驚愕の表情をしているのに気づいたサスケやリエたちも、その書類を覗き込んで驚愕の表情をする。

 

…そう、そこに書かれていた研究内容は『真・()()()()』。つまり――、

 

『『『『『転生者……っ!!』』』』』

 

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