ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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天地な日常

――闇オークションを潰して帰宅してきた当日の夜。俺は一足先に大浴場で一風呂浴びてた。

 

今日は浴場交換日で、いつもイッセーたちが入っている大浴場にいる。

 

月に一度、大浴場を交換しようという企画なんだが…女子たちが大浴場前の前の壁に立札をかけて間違わないようにしているため、リアスたちがこちらに入ってくることはない。もちろん、リエたちが向こうに入ることもないが。

 

俺は湯に肩まで浸かり、これからのことを考えていた。

 

「ぐごぉぉぉぉぉぉおお」

 

大きないびきがここまで聞こえてくる…。

 

俺はいびきのするほうを向く。そこには、冷水に浸かって八頭を浴槽の横に投げ出して爆睡しているムラクモの姿がある。

 

こいつが珍しく、風呂に入る前に『主、我も風呂というものに入ってみたいのだが…』と言いだしたので、俺は木分身で人サイズのムラクモを形成した。

 

ムラクモは湯に浸からずに、冷水へ浸かるとものの数秒で爆睡して…いまに至る。

 

俺は視線を元に戻すと、湯に目を落とす。

 

……表仕事のこと…それに関わっている者たちのこと…などを考えたり、転生者二人のことを思い浮かべたりしていた。

 

「――何を難しい顔して、考えているのかにゃ?」

 

突然の声。俺はゆっくりと顔を上げる。そこには……黒歌が立っていて、俺の顔を覗きこむような体勢でいた。

 

ドアップの黒歌の顔が目の前にあり、俺は視線を移動させる。すると、視線の先には大きな二つの実が…。視界に捉えてしまったが、すぐに視線を黒歌の背後へ逸らした。

 

すると、入り口から次々に入ってくる女子たち。

 

いつものメンバーが入ってくるが、俺は慣れてしまっているのでスルーする。ただ、湯に入る以外ではタオルを巻いてほしい……目のやり場に困るからなぁ。

 

マリアや目の前にいる黒歌がここにいるということは、イッセーたちの特訓を終えたということになるな。

 

黒歌は金華と共に白音に仙術を教えると言っていたな…まぁ、邪魔はしてないと思うけど。

 

マリアはゼノウィアにエクスカリバーの各特性を使いこなせるように、イリナと教えると言っていた。

 

奏と花楓は、祐奈とイッセーの相手をすると言っていた。奏と祐奈はよく手合せをしているが、花楓が言いだすとは思ってもいなかった。多分だが、メシア辺りが言ったんだろうな…。

 

龍巳はオーフィスのところにいたから…アーシアと一緒にいたことになる。アーシアは現在、龍との付き合い方を教えてもらっているそうだ。…となると、龍巳だけじゃなく、アースたちも一緒にいたのか?

 

アーシアは魔物――特に龍とは相性がいいようだ。アザゼルと話をしていたときも、アザゼルがそう話したことがあった。俺も多少ながら魔物と相性がいい方だが…違う方向性を持っているみたいだな。

 

ティアマットはドライグのそばに付いているってエルシャが言っていた。そのエルシャはティアマットのいない神 器(セイクリッド・ギア)の基本能力の向上を図っているという。…主に俺で。

 

そんなことを考えていた間に……女子たちが湯へ浸かっていた。しかも、俺のすぐ傍に…!

 

俺は顔が火照っているのを感じながら、それがわからないように涼しい表情で浸かり続ける。

 

これで全員…と思っていたが、大浴場の扉が開く!

 

「旅館より広いな…」

 

「おほほ、少しはくつろげそうね」

 

俺は自分の目を疑う。そりゃそうだろ、ここにいない…旅館にいるはずの者たちが、入ってきたのだから!

 

そこにいるのは、個人経営の旅館の女将のセルベリア、その旅館の仲居のヒルダやヤミ、元ディオドラの眷属で仲居のシャルたち十人。

 

「な、何で…おまえたちがここにいるんだ!?」

 

俺は聞こえる声で言う。すると、セルベリアが凛とした態度で口を開く。

 

「この時期から春先までは、旅館は長期休館。私の旅館は海に面しているのは知っているだろう?夏は多いが、冬はほとんど客が入らない。赤字経営にならないための処置だ」

 

「そ、そういうことか。…って、なぜにここ?」

 

「…私だって人肌が恋しくなるときはある」

 

最後の方はあまり聞き取れなかったが、何か聞かなかった方がいいことのようだったな…。

 

セルベリアはそう言うと、そそくさとシャワーを浴びに入る。

 

……どうすりゃいいんだ?俺は。

 

周囲の女子度が増えていくなか、俺はもっと頭を悩ませていた。

 

                    D×D

 

私は風呂を上がったあと、リビングで楽しみのアイスを食べていた。

 

背に温かい感触がある…二尾の又旅が横になっているから。

 

五尾の穆王は私の部屋で、四尾の孫や七尾の重明はリビングのソファの上で爆睡中。

 

一尾の守鶴と八尾の牛鬼はサウナで蒸し焼きになっている最中で、六尾の犀犬と三尾の磯撫は浴槽のなかで泡風呂を作って浸かっている。

 

そして、私のなかにいる九喇嘛はというと…、

 

『……………』

 

狸寝入りをしている…。狐が狸寝入りって…面白いのか、珍光景なのか…。

 

私はアイスを食べ終えると、部屋に戻るのにリビングを出る。

 

部屋に戻る途中、リュースケの部屋の前で黒歌がドアに片耳をつけて盗み聴きをしていた。

 

いつものことながら、私は黒歌に背後から声をかけた。

 

「黒歌、いつもみたいに盗み聴きしてるの?そろそろ、やめたほうが……むぐぅ」

 

私は「…しっ!」と黒歌に口を封じられる。

 

いつもは『にゃはは、おもしろいからいいの』と流され、龍介に捕まっている黒歌だったんだけど…今日は顔を真っ赤にして聴き耳を立てている。

 

いま私の口を押えている黒歌の表情には…少し慌てたものだった。

 

私は黒歌にアイコンタクトで『わかったわ』と合図して、そっと口元の手を退けてもらう。

 

黒歌が再度聴き耳を立てる。私も黒歌の隣で聴き耳を立ててみる。

 

『――そ、そこはダメですよぉっ…ひゃん!』

 

『――ここがいいのか?一気に突くぞ』

 

『らめぇ……リュースケの…ひゃぁ!』

 

………部屋のなかから聞こえたのは、リュースケと…リエ姉の艶のある喘ぎ声だった!!

 

私は一気に顔の頂上まで真っ赤になったのが、自身でもわかるほどに興奮していた。

 

「「「「「「………………っ」」」」」」

 

部屋のなかでは、リエ姉が普段発しない艶のある喘ぎ声が響きわたっている…。

 

「……………ぁ」

 

私は小さく、吐息のような…拍子抜けの声を出した。

 

いつの間にか、ここの部屋の前に風呂上りの皆が集まってきていたから…。

 

皆も部屋のドアや壁に聴き耳を立てて、なかの様子を顔を真っ赤にしながら聴いていた。

 

『盗み聴きはよくない』

 

後ろを見ると、優が愛用のメモ帳にそう書き込んで見せてきた。

 

優――ユウの名前ね。最近、遠山の名前を使うのに変えた名前。本名は前になるけど…。

 

その優がメモ帳を再度見せてくる。

 

『コントの落ちが待ってる』

 

コ、コントの落ち?……どういう意味なの?

 

私は理解できず、優の横に正座しているエールを一瞥して再び聴き耳を立てた。

 

……と、その直後のことだった!

 

ガチャッ。

 

「「「「「きゃっ」」」」」

 

突然開かれたドアに寄りかかっていたため、私を含めて数人が部屋の入り口に雪崩れ込んでしまう。

 

「……何してんだ?おまえたち」

 

顔を上げると、ベッド…ではなく、床に布団をひいた上にリエ姉がうつぶせに寝ていて、その横で正座をしているリュースケが、影を伸ばした状態でこちらを怪訝な表情で見ていた。

 

影は…ドアノブを握っていた。影でドアを開けたみたい…。

 

「あらあらぁ、皆さん盗み聴きをしていたようですねぇ~」

 

リエ姉が一瞬だけ背後に般若を…っ。

 

「…ったく、何を勘違いしてるか想像はつくが…はぁ」

 

リュースケが呆れた表情でそう言う。

 

「「「ご、ごめんなさい」」」

 

皆が同時に謝る。そのなかで、リエ姉がクスクスと笑って言う。

 

「皆さんもぉ、リュースケさんのマッサージを受けたらどうでしょう~?」

 

「おいおい、俺一人で全員を相手しろって?……あっ、分身があったか」

 

リュースケはそう言うなり、両手を組んで体から分身を生みだしていく。

 

「木分身なら、消える心配がないだろう」

 

…こうして、各自室でリュースケ(木分身)のマッサージを受けることとなった。

 

その結果は、リエ姉を見ての通りの様子だった――。

 

                    D×D

 

夜が明けた翌日の昼過ぎ、俺は駒王町のデパートに来ていた。

 

…何でも、欲しいものがあるとかで…付き添いになった俺。

 

俺の右横には…某旅館の女将のセルベリアが、私服姿で俺の腕に手をまわして引っ付くような体勢で歩いていた。

 

私服といっても、女将のときに着ている織物や、家のなかで着ている着物とは違い、いまどきの女性が着る温かそうな服装だ。

 

周囲の視線が集中してきて、なんか気恥ずかしい…少しは慣れてきているが。

 

そんななかを歩き、あるランジェリーショップの前で立ち止まる。

 

……ちょっと待て。どう見ても男の俺が入れるような場所じゃないよな?

 

そんな俺の悩みを知らずに、引っ張られるように入っていく…。

 

…ん?前にも似たことがあったような。

 

なかに入ると、女性用の下着がずらりとある。

 

周囲から注目を受ける……すごい、怖いんですが。

 

セルベリアは俺を引っ張っていく…。

 

すると、セルベリアは下着を置いてある場所まで行くと、俺を忘れたように品選びに入った……上下ともな。

 

その間、俺は近くにあった休憩用の木製の椅子に腰を下ろす。

 

楽しそうに下着選びをしているセルベリアを見ていると、不意に足の上に何かが乗った感覚がした。

 

……足元を見てみると、そこには…。

 

――女性用の下着…それも、上下の一セットが置かれていた。

 

俺の足の影がうようよと小さく動く…。

 

ヒルダかぁぁぁぁぁっ!!

 

そう、俺の影にくっ付いてきていた影は……竜悴公姫(ドラキュリア)の名を持ち、また紫電(しでん)の魔女の通り名も持っている…吸血鬼の元姫さま。

 

こいつ、俺にバレないように背にくっ付いてきやがったか。影のときは気配自体消えて、俺でも認識しづらい状況になる…。

 

そのヒルダが、俺の靴の上に女性用下着の上下一セットを置いていきやがったんだ!

 

俺はその下着の上下セットを手に持つが……どこに返したらいいんだ?

 

周囲の視線が、下着を手に持っている俺へ突き刺さる…。すごく痛い、心が。

 

どうしようか迷っていると、俺の眼前にセルベリアが立っていた。

 

…どうやら、この状況に気がついたらしいセルベリアは……俺に手を差し伸べてくる。

 

俺はこの下着をもとのあった場所に戻してくれると思っていた……。

 

「……リュースケって、意外とセンスがあるな」

 

それを持って…簡易更衣室のカーテンの向こうに行ってしまった!

 

……しまった、いまの流れは…『俺が下着を選んで待っていた』と受け取ったに違いない。

 

俺は頭を抱えて、うなだれた。全てを後悔する人のように…。

 

『…ハハハ、主は毎日が天国のようだ』

 

内で笑っているムラクモ。……あとで扱いてやるから、覚えてろよ……ッ。

 

そんなことをしている間に着替えが終わったらしい、セルベリアがカーテンの隙間から手招きをする。

 

俺は何事かと思い、すぐにカーテンの手前で立ち止まって小さく返事をする。…すると、セルベリアの手が…俺の服をつかんで強引に引き寄せる!

 

「うぉっ!」

 

俺は小さく体勢を崩したが、セルベリアの引っ張る力を利用して、体勢を整えると同時にカーテンに頭を突っ込んだ。

 

…仕方がないだろう?いくら体勢を立て直そうと、カーテンと俺の距離は極わずかなんだぞ。

 

頭だけを突っ込んだのと、中腰だったことから…俺の目線は、セルベリアの胸部あたりの高さになっていた。

 

俺は目線を外していたが、セルベリアに頭の側面を両手で挟まれ、半ば強制的に目線を修正された。……そのせいで、目の前にはセルベリアのたわわな胸がっ!

 

そう、そこにはセルベリアが持って行ってしまった黒色の下着に包まれた胸があった。しかも、下のほうは…ピンク色の、色の…ティーバックだっ!

 

どうする!この状況をどう切り抜ければいい!?

 

俺は背なかに冷たいものを浴びながら、懸命に言葉を吐く。

 

「…セルベリア、かわいいよ。すごく似合っている」

 

「か、かわ…いい…」

 

すると、俺の側頭部から両手を離して、背中を向けてしまう。

 

俺はそっとカーテンから頭を抜く。周囲を見渡すが、こちらを見ている女性客は誰一人いない…。

 

しばらく椅子に座っていると、セルベリアが試着室から服を着て出てきた。

 

俺は下着一セットの代金を払って、ランジェリーショップを出る。

 

……すげぇ、恥ずかしかったぞぉ!二度と女性の聖域には踏み入れたくないな。

 

そう小さく誓う俺をよそに、セルベリアは俺の手を引いて次の目的地へ歩み出していた。

 

…相当楽しいようだ。鼻歌が聞こえてくるほど、テンションが上がっている。

 

確認するように下を見ると、俺の影にくっ付いているヒルダ。周囲は、この影にまったく気づいていなかった。

 

さすがに、影の形が人なのか怪しいのであるが…気づかれないのなら、気にしなくていいのだろう。

 

俺はセルベリアに引っ張られるがままに、買い物というデートを楽しむことにした。

 

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