ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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転生者会議

 

俺は侵入者の二人がいる公園の木の陰に潜んでいた。

 

その二人のうち、一人がベンチに座っているのを確認したが、もう一人を確認できていない。

 

ベンチに座っているシルエットが横になる…。

 

……どうやら、俺の存在には気がついていないようだ。

 

そのまま待機すること…二分ほど。

 

公園の外から人影が入ってくるのが見え、それはマークしているベンチで寝ているシルエットへ近づく。

 

……ふむ、揃ったみたいだな。

 

小さいが…会話が聞こえるので、息を殺したまま聴く。

 

「…ほれ、マダラ。近くの販売機で買ってきたコーヒーぞ」

 

「…っち、人が気持ちよく寝ているところを起こすな。柱間」

 

会話の内容から、ごく普通に飲み物を買ってきただけらしい。

 

……ん?いま、互いが呼んでいた名に記憶が――。

 

俺は聴き取った会話の内容を反復する。

 

『…ほれ、マダラ。近くの販売機で買ってきたコーヒーぞ』

 

『…っち、人が気持ちよく寝ているところを起こすな。柱間』

 

……っ、これはどういうこった!?

 

俺は額から冷や汗を一筋…。

 

異形と思ってきてみたが、これは…相当面倒なことになった。

 

名前から察するに、ベンチで寝ていたほうが『うちはマダラ』。飲み物を買ってきたほうは『千手柱間』か…。

 

ここで戦闘にでもなれば、俺一人じゃ分が悪すぎる。…ここは、いったん引くしか――。

 

そのときだった。

 

――パシッ!

 

俺は目の前に現れた物体を…つい、反射的に握ってしまった。

 

「――やはり、いたか」

 

俺は手に握った物体を一瞥した…コーヒーの缶だ。

 

「あぁ~、やっちまった」と心のなかで嘆きながら、バレてしまったので仕方なく影から姿をさらす。

 

「…人に当たったら、危ないだろ」

 

屁理屈のような文句を言い、近くにあったゴミ箱へ捨てる。

 

「ふんっ」

 

鼻で笑うのは――マダラだ。

 

「すまぬ。こいつは捻くれているが、根はやさしい奴だ。許してやってくれ」

 

そう言うのは、マダラの隣に立っている柱間だ。

 

「いや、別にかまわない。それより、異形の存在を感じてきたが…おまえたちは()()()か?」

 

俺の突然な問いに、マダラは両目を写輪眼に変化させる。

 

「だとしたら、何だという?」

 

いつでも仕掛けてこられる態勢のマダラに、俺も応えるかのごとく両目を写輪眼に変化させた。

 

「よせ、マダラ。…すまぬが、俺たちは戦う気はない」

 

そう言ってマダラを宥める柱間。

 

俺は近づきながら、警戒を解くように写輪眼を戻した。

 

「もう一度問う。二人は転生者なのか?」

 

「あぁ、俺とマダラは転生した身だ。……百年以上前の話ぞ」

 

柱間がそう答える。

 

俺は「それは江戸か?」と問うと、柱間は首を縦に振って語りだす。

 

「江戸の幕末ぞ。俺とマダラは江戸の外れにある山中に転生し、生を授かった。その頃は現代よりも粗末なものが多くての、衣服一枚着るだけでも苦労したぞ」

 

幕末…大体だが、黒船来航あたりからだな。

 

俺は必要な情報を聞き出すために、質問を投げかける。

 

「転生した時間は大よそ把握した。…いまはどこに住んでいる?」

 

…しまった!軽率すぎる質問だ。

 

様子をうかがう俺に、柱間が口を開く。

 

「二つ隣の町にあるアパートぞ」

 

「柱間!」

 

「そう怒るな。龍介と言ったな…ふむ、俺たちに危害を加えるような人間でない。安心しろ、マダラ」

 

柱間がマダラを宥める。

 

俺は携帯で時間を確認して、言う。

 

「…そろそろお暇するとしよう。不審者扱いで通報でもされれば面倒だしな…。今日の昼に訪問してもいいか?」

 

出直すということで、一応訊いてみると…。

 

「そうだな…住所を教えておくぞ」

 

柱間が少し間をおいて返事をくれる。

 

俺と柱間はお互いに住まいの住所を交換し合う。マダラも同じなので、柱間から俺の家の住所は聞くだろう。

 

二人と別れて、俺は家のほうへ歩みを進める。

 

                    D×D

 

その日の正午過ぎ、俺は自室で身支度をしていた。

 

昨夜は帰宅して部屋に戻った直後に、アザゼルから連絡用の魔方陣が飛んできた。

 

案の定、俺はアザゼルに問われたが…とにかく、謝っておいた。あの場しのぎではあったが、向こう側が対応の意志を見せてくれたことは、アザゼルの思慮の範疇から外れていたそうだ。

 

まぁ、俺の意図に気づいていた奏たちがリアスたちに話して、俺の意図を伝えてくれていたこと……そのことをアザゼルから聞いた。そのことはアザゼルも薄々感づいていたそうだ。

 

そのときの俺の真意は『吸血鬼のカーミラ派との溝を深めないため』であり、それに近い理由を奏たちが話していた…かなり助かったな。

 

大体、帰宅してから起きたことはこのくらいだ。あとは…大浴場での『オレ争奪戦』ぐらいだったな。…あいつら、俺が風呂に入るのを待っていやがったんだ。

 

角都と飛段は会談終了後、俺が出かけてすぐに冥界へ帰ったらしく、サスケと美柑はマンションの自室に帰ったそうだ。

 

…まぁ、昨夜の出来事はこのくらいだな。

 

俺は支度を終えると、玄関に移動した。

 

玄関で靴を履いていると、俺の隣で座って靴を履いている人物がいた――ユーだ。

 

俺は靴を履き終えると、隣に座って靴を履いているユーに話しかける。

 

「ユー、いまからどこに出かけるんだ?」

 

すると、ユーは靴を履き終えたようで、すっと立ち上がって俺のほうを振り返ると共に、愛用のメモ帳を見せてくる。

 

『私はある人物の家を訪ねる』

 

俺は「ある人物?」と訊き返すと、ユーはメモ帳を一枚めくる。

 

『親友』

 

俺はメモ帳に書かれている『親友』という文字に驚いた。

 

「親友か…いつからできていた?」

 

『転生してすぐ。私が自身の能力に困っていたとき』

 

それを聞いて、俺はユーの身にまとっているプレートアーマーやガントレットを一瞥した。

 

「そうか、その装備を作った人物だな?」

 

『そう、このプレートアーマーを作ってくれた、私の恩人』

 

「ふむ…その人の住んでいる場所は?」

 

『この方向で、ここからふたつめの町』

 

……この方向、柱間とマダラの住んでいるアパートと同じ町か?

 

「ちょうどよかった。俺もその町に用があってな…送ろうか?」

 

すると、ユーが小さくあごを引く。

 

『同じ町なら、デートにちょうどいい』

 

俺はそう書かれたメモ帳のそのページを……手の平で隠した。

 

「うかつに言うな。面倒な展開になりかねんからな」

 

『私は別に。楽しいからいい』

 

そう言うユーの瞳は…楽しいことを望んでいる色そのものだった。

 

「楽しいって……まぁ、いいか」

 

…訊くのも野暮だ。

 

俺は立ち上がって「行ってくる」とリビングに向けて言う。ユーも『行ってきます』とメモ帳に書き込んでいた。

 

「行ってらっしゃい、気をつけてね」

 

リビングから出てきたヤミが見送ってくれる。

 

俺はユーと一緒に玄関を出てガレージへ。

 

「鍵、鍵は…あった」

 

壁にたくさん提げている鍵の中から、大型自動二輪車の鍵を見つけて…その中から乗るバイクの鍵を取った。

 

俺の眼前には、白で塗装されている大型自動二輪車の『ハヤブサ』が停めてある。その隣には、同じ大型自動二輪車の『くろとり』が並んで停めてある。

 

どちらに乗ろうか迷ったが、昼なので塗装が白の『ハヤブサ』に乗ることにした。

 

俺は手袋をし、オープンフェース形ヘルメットを被る。ユーにも同じヘルメットを手渡したが、これを被るのに頭の防具型のヘッドドレスが邪魔をして…苦労して被ることができた。

 

エンジンをかけ、発進する『ハヤブサ』。

 

大通りに出て、法定速度で走る…風が気持ちいい。

 

――走らせること二十分ほど。

 

目的の町に入ってすぐに、近くのガソリンスタンドで給油する。

 

ユーが服の裾を軽く摘まんで引くので、給油を中断してメモ帳を見た。

 

『この住所までお願い』

 

そこには、ある住所が書き込まれている。……この住所、どこかで見覚えが…。

 

俺は携帯を取りだして、昨夜に柱間と交換した際に記録しておいたメモを見る。

 

「同じ住所だな…偶然か?」

 

俺は携帯をポケットの中にしまい、給油を再開した。

 

「ユー、俺が用事のある場所とその住所が同じなんだ。部屋番号が一階違うが、同じ建物――アパートと見ていい」

 

俺の見解にユーはメモ帳を見せてくる。

 

『そう、ネグレリアの住んでいる家もそこだから』

 

俺は「そうか」とだけ言い、給油を終えて満タンになった『ハヤブサ』のエンジンをかけた。

 

「しっかり掴まれよ」

 

『よろしく』

 

そのメモ帳の言葉に気を取られそうになったが、俺はスロットルを回して軽く吹かした。

 

「りょーかいしました、姫。安全運転で行きますので」

 

俺は冗談交じりでそう言う。

 

ユーが俺の腹部に手をまわしてしっかりとしがみ付いたのを確認すると、ドライブに入れて発進する。

 

                    D×D

 

目的の住所に到着した俺は、ユーを下ろして二輪専用の場所に駐輪する。

 

…中央の階段を登れば、柱間とマダラのいる部屋か。

 

俺は一回左の部屋のドアの前に立つ…表札には『101』と『管理人』とだけ書かれている。

 

「ユー…一応、俺もあいさつをしておいたほうがいいと思うんだが?」

 

すると、ユーが小さく首を引いた…肯定の合図だ。

 

『私もそう思っていたところ。リュースケのことを紹介しておきたい』

 

「俺はかまわない。あいさつだけで、すぐに移動する」

 

俺はユーがチャイムを押そうとしないので、代わりに押す。

 

しかし、チャイムは壊れているようで、スイッチを無駄に押す音だけがした。

 

「……壊れているな。どうしたことか…」

 

俺は小さく首をかしげて、考える仕草をする。

 

『チャイムが鳴らないことは知っているから、これを使えば問題ない』

 

ユーはドアにあるポストに手を入れ、ごそごそと手探りをする。

 

その直後、自転車のベルがドアの向こうで鳴り響く。

 

『これで、ネグレリアも起きてくる』

 

俺はユーがドアから離れる瞬間に、手から離れていく紐状のものを目視する。

 

…なるほど、シンプルなカラクリだ。

 

………………。

 

返事がない。

 

俺はユーを見ると、ユーはドアのノブに手をかけていた。

 

ゆっくり開いていくドア…。ドアが半分開きかけたところで、何かがユーに向かって襲いかかるのが見えた!

 

「ユー!」

 

俺はとっさにユーを引っ張って下がらせ、反動で一歩前に出てユーのいた位置に立った。

 

何かが俺へ向けて襲いかかってくる。俺はそれをはね返す…ことなく受けとめた。

 

人だ…俺に体を預けるように、腕のなかで眠っている女性。

 

ユーが俺の裾を必要以上に引っ張るので、俺はその体勢のまま振り返る。

 

『スケベ』

 

そこにはいつもの言葉と、小さく頬を膨らませているユーがいた。

 

…何で、スケベになるん?

 

俺は内心で突っ込んでおいて、腕の中で眠っている女性を姫様抱っこする。

 

室内へ靴を脱いで上がり、ユーの先導で…すごく散らかっているような部屋に入った。

 

『ここが彼女、ネグレリアの部屋』

 

俺は何も言わずに、ゆっくりと畳の上に寝かせた。

 

「さて、俺は二階に行くよ」

 

ユーにそういうと、『行ってらっしゃい』と少し寂しげな瞳と共に見送られた。

 

部屋を出て階段の前に立つ。

 

一瞬だったが、正面の家の表札に『望月』と書いてあったが…気のせいか。

 

俺は階段を上り、二階に辿り着く。

 

右手側の表札には『千手』、左手側には『うちは』の名前が記されている…。

 

俺はどちらから訊ねようかと思った…が、話しの早い柱間のほうから訊ねることにする。

 

チャイムを鳴らす…ここは新しく取り付けているようで、正常に鳴っている。

 

ドアの向こうから声が聞こえ、待つことわずか数秒…ドアが開く。

 

「どちらさまでしょう?」

 

ドアの向こうから出てきたのは…柱間ではなく、俺と歳差もない女性だった。

 

俺は柱間の奥さんと思い、普通に話してみる。

 

「すみません。柱間さんは御在宅でしょうか?」

 

「少しお待ちください」

 

その人は柱間を呼びに玄関の奥へ行ってしまう。

 

…十数秒後、再びドアが開かれた。なかから出てきたのは、柱間だ。

 

「さっそく来たかの。入れ」

 

柱間に通され、なかに入っていく。

 

リビングに入ると柱間に促され、席に着く。

 

お茶が出される…薄らと湯が出ている。

 

「いきなり質問から言うわけにはいかないな…お互い初めてというわけだ、自己紹介からどうだ?」

 

俺の問いに柱間は腕を組んでうなずく。

 

「それじゃ、俺から。名は遠山龍介。二つ隣の町――『駒王町』にある家に住んでいる。暁の長をしている」

 

俺は手に取った湯呑を傾けてやや熱いお茶を飲む。

 

「俺は千手柱間。おまえの噂を聞いてはいたが、こう…イメージというのかの?もう少しマダラのようにイカツそうなものを想像していたぞ」

 

俺は「そうなのか……?」と苦笑いしながらお茶をすする。

 

「そうそう、こいつは俺の娘の時音(ときね)ぞ」

 

「千手時音と申します」

 

深くお辞儀をする。俺も「どうも」と頭をさげていた。

 

…娘だったんだな。てっきり、奥さんかと思った。

 

「ところで柱間…昨夜はなぜ、マダラとあの公園にいた?」

 

俺は昨夜の二人の不自然すぎる行動を聞きだす。

 

柱間は湯呑をおいて言う。

 

「あれだの……下見というやつぞ」

 

「下見?」

 

「あぁ。来年の四月に時音が進学するからの。その下見をしていた…」

 

そのとき、チャイムが鳴る。時音が席を立って玄関へ向かった。

 

「いいタイミングで来たか、マダラ」

 

柱間がそう呟くと、廊下から時音とマダラ、そしてもう一人…女性が入ってきた。

 

無言で柱間の隣に着くマダラ。

 

「役者が揃ったの…、今後のことを話すとしようぞ」

 

柱間の宣言で転生者同士による会談が幕を上げた――。

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