ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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小さな日常

俺は柱間たちとの会談を終え、帰宅の準備に入る。

 

会談の内容としては、『お互いに戦闘を行わないことを第一とする』。それ以外として、管轄する町に被害があれば、互いに協力をすることと、テロリストと遭遇した場合の対処などを話した。

 

柱間の部屋を出て、一階へ下りる。

 

下りるとタイミング良く、管理人の部屋からユーが出てきた。

 

『また今度。何か持ってくる』

 

「いいよ~、ユークリウッドはゆっくりしててね…あっ」

 

俺の視線に気がついたネグレリアが、こちらを見て苦笑する。

 

「……髪切った?」

 

「い、いや…」

 

…初対面の人にする質問なのか!?

 

俺も苦笑しながら、どう答えようか迷った。

 

『ネグレリア。リュースケは私の家族』

 

「ふ~ん、ユークリウッドも言うようになったんだねぇ」

 

カラカラと笑うネグレリア。

 

ユーはいつもの無表情で俺のほうを向く。

 

「ハハハ……」

 

何だか気まずい空気が俺の前を通り過ぎていく…。

 

「…よし、帰ろ――」

 

そのとき、俺の後方でドアが開く音がする。

 

「――すぐ戻るから、無茶な実験はしないでね」

 

「え~、暇すぎて死ぬっ!」

 

「そう言わないの。買い物に行くだけだから…きゃっ」

 

「おっと…」

 

振り返った俺にぶつかって倒れそうになった女性を、俺はとっさに両手で受け止めた。

 

俺に受け止められた女性は、一瞬で自身の状況を把握して…飛び退いた。

 

「す、すみません!私がよそ見をしていたばかりに…!」

 

「あぁ~、そこまで謝られても……」

 

頭を何度も下げる女性に、俺は若干引き気味に答える。

 

「何やってるのっ。――って、あーっ!」

 

「……っ!!」

 

玄関から出てきた少女が大きな声で叫んだので、俺は少女を見て…絶句した。

 

「と、遠山龍()介っ!」

 

「龍介だっ」

 

初見で名前を間違えられて、つい突っ込んでしまった。

 

「……えっ、遠山 龍介!?」

 

先ほどまで頭を下げ続けていた女性が俺の顔を見て……一瞬固まった。

 

俺は表札を凝視する。

 

『望月千代女』と書かれた下に『Flora(フローラ)Glitnir(グリトニル)』……。

 

二人の名前がそこにあった。

 

…先ほど階段を上るときは、光の屈折で見えていなかったようだ。

 

俺は額を抑える…頭痛がしてきた。

 

『知り合い?』

 

ユーがそう訊いてくる。

 

「ユー、メフィストとの会談のときにいただろ?あのときにメフィストが俺に送ってきた一組の書類…それに載っていた二人だよ」

 

『思い出した』

 

ユーがそう言って、二人を凝視する。

 

「あれ~、二人とも顔見知り?ふぁぁ~」

 

ユーの後ろからネグレリアがニヤニヤしながらそう言って、大きなあくびをする。

 

俺はため息交じりに言う。

 

「はぁ…。ここじゃ、話がしにくいからな。…後日でいいか?」

 

「…え、はい」

 

ぎこちない会話が即終了したぞ…。

 

「…そうだな、連絡先ぐらいは交換しておくか?」

 

「そ、そうですね」

 

ぎこちなくお互いに連絡先を交換する…携帯電話で。

 

「すまないな、望月千代女」

 

「い、いえ。こちらこそ…遠山龍介」

 

俺はそう言うと、ネグレリアに「お邪魔した」とだけ言い、ユーと共に駐輪場へ向かう。

 

駐輪場へ着くとユーに来たときと同じように、ヘルメットを苦戦しながら被せる。

 

俺も運転の準備ができ、ユーを後ろに座らせるとエンジンをかける。

 

「しっかり掴まっていろよ」

 

俺の言葉にユーは小さくあごを引く。

 

腹部にまわされていた手に力が入るのを確認して、俺はオートバイのスロットルを回した。

 

                    D×D

 

それから数日が経ったある日――。

 

あの日の翌日、早朝から望月千代女から連絡が来て、昼に遠山家のリビングで契約の話となった。

 

その契約は無事に終わり、お互いに利益になるものとして誓うこととなった。

 

もちろん、望月千代目ともフローラ・グリトニルと同様に別の形で契約を結んだ。

 

……そういうことで、俺は学校を終えたイッセーとトレーニングルームで筋トレをしようと思っている…もちろんだが、俺じゃなくてイッセーが徹底的に…だがな。

 

珍しいことに、サスケも一緒に筋トレをしたいようだ。…さっき、廊下ですれ違ったときに話したら、「俺も参加してもいいか?」と付いてきたんだ。

 

「珍しいこともあるんだなぁ~」と思いながらも、俺は二人にどんなメニューを(こな)してもらおうかと、頭を働かせていた。

 

そうそう、いまイッセーの周囲を旋回するように飛んでいる魔法の箱舟――スキーズブラズニルがいる。使い魔も鍛えてみようかな…とイッセーが口にしたので、共に鍛えることにしたんだ。

 

――と、トレーニングルームの扉を開くと――金華とルフェイが先に入っていた。

 

二人して、床に座り、小難しそうな分厚い本を広げていた。

 

「なんだ、おまえら来てたのか」

 

イッセーが言う。

 

「お邪魔してます」

 

「にゃはは、お邪魔してるにゃん」

 

いまさらだが、()()()様々な種族の者が住んでいる。各種悪魔に天使、堕天使、元神喰狼、龍神、転生者、エトセトラ…エトセトラ……。

 

俺はたったいま思いついたトレーニング方法をサスケに話す。イッセーは金華とルフェイのところに行ってしまって、何か話しているようだが。

 

「さーて、サスケ。手順一といこうか」

 

サスケは顎を引く程度にうなずくと、俺の前に手を突きだす。

 

「まずは…百からな」

 

俺は神威で取りだした腕サイズのアンクルを、サスケの両腕に装着する。

 

ドゴォォォォン!!

 

総計が二百キログラムのサスケの腕がトレーニングルームの床に引っ張られるように叩きつけられる。

 

「……うっ」

 

サスケは小さくうめいたが、次の瞬間――その両腕を肩まで持ち上げた。

 

「そうそう、その調子だ。活性化させてオーバーワーク気味に鍛えれば、ある一定のところまでは体が保つ」

 

かなり難度が高いが、活性化したサスケの体なら四百はいける…と思う。

 

…普通なら、筋肉がすごいゴリマッチョ系の人がするような特訓方だが、サスケの場合は筋肉より、チャクラの出力を大幅に上げる上に安定・持久できるようにするもの。

 

いくら強大な力を扱おうとも、それに耐え得る肉体や精神が必要となる。持ち合わしてなければ、理に沿って自己崩壊することになるからな…。

 

少しするとサスケの動きが安定してくるとともに、動く速度も速くなっている。

 

「ほれ、これ避けてみろ」

 

俺は懐から一枚の手裏剣を、性質変化を付与して高速でサスケに向けて放った。…もちろん、ただ放ったわけじゃないさ。

 

サスケの目前まで迫った手裏剣が、数多の手裏剣へと爆増する。

 

――手裏剣影分身。

 

サスケは防御の構えを取るが、防げるわけがなく…次々と性質変化を付与された数多の手裏剣に貫かれていく。

 

俺は無残に貫かれたサスケ――ではなく、後ろからの攻撃を躱さずに両腕で受ける。

 

ミシッと床が割れるような音がするが、俺はその場に踏みとどまる。

 

「なかなか、いい動きだぞ…サスケ」

 

…そう。いまの突きはサスケの攻撃。無残に貫かれた方は、とっくに木の丸太へと変わっている。

 

――変わり身の術。

 

…基本中の基本の技だ。俺は変わり身を見過ごすような、鈍い洞察力は持ってないからな。

 

「慣れてきたな?」

 

「あぁ。この通りだ、兄さん」

 

ドスッ!ゴッ!!

 

サスケは鋭くも重い拳打や蹴りを放ってくる。俺はその攻撃をただ受けとめ、隙を見ては反撃したりする。

 

サスケの動きが戻りつつ、攻防を繰り返していた…それからすぐだった――。

 

「リュースケさ~ん」

 

おっとりとした声が耳に入り、俺はサスケに「待て」と手で合図する。

 

一旦特訓を中断し、声のした方へ顔を向けてみる。

 

「なんだ、リエ」

 

「リアスさんがそろそろ日本を発つみたいですよぉ~」

 

――。

 

聞いていた時刻より数時間早いな。んー、都合のいい天候にでもなったってことか?

 

俺とサスケはリエに連れられ、その場をあとにする。

 

                    D×D

 

遠山家地下にある巨大な魔方陣。

 

そこには今現在、家にいる全員とソーナが集っていた。

 

…リアスと祐奈、アザゼルを見送るためにな。

 

大方のことは、ヒルダから聞いている……あちらの王国へ入るには、いくつかの移動手段が必要となると…。

 

チャーターだから俺がついて行けば、ある程度の天候条件が悪くとも飛べたんだが……ここの重役がいないとなると、テロリストどもが攻めてくる可能性があるとか何とかで、アザゼルに言い包められたわけだ…情けないことに…。

 

荷物を持ち、魔方陣の中央に向かうリアスと祐奈、アザゼル。ヴラディ家を訪問するのはリアスと祐奈。アザゼルはカーミラ側に一度接触したあとにヴラディ家へ向かうそうだ。

 

イッセーたちがリアスと祐奈とやり取りをしているなか、俺はアザゼルに言う。

 

「気をつけて行ってこいよ?俺たちを呼ぶような惨事にならないようにしてくれ」

 

「わーてるよ」

 

俺とアザゼルは拳を合わせる。…そのまま、アザゼルが俺の後方へ顔を向けて言う。

 

「じゃ、学校のほう、あとは頼むわ。ソーナ会長♪ ロスヴァイセ先生♪ リエ先生♪」

 

「「「忙しいので早く帰ってきてください」」」

 

「んだよ、つれない反応だ」

 

三人の素っ気ない返事にアザゼルは不満気なようだ……俺にも言ってきている感じなんだが…状況的に。

 

学校のスケジュールだと、年末進行になるからね…。何か、外遊的なものをしていそうな感じだ…この元()天使総督ことだ。

 

アザゼルが皆に伝えてくる。

 

「例のフェニックス関係者を狙っているって魔法使いどもが不気味だ。気をつけろよ」

 

『はい!』

 

返事をするイッセーたち。

 

「アザゼル。一応だが、俺の契約した魔法使いや一部の転生者に協力してもらっている。少しだけ安心してろ」

 

俺がそう言うと、アザゼルは「わかった」と言って、アーシアとオーフィスを呼んだ。

 

「アーシア、例のだが、あとはおまえしだいだ。オーフィスにアドバイスをもらいながら進めてみろ。オーフィス、頼むぞ。龍神のおまえがそばにいればなんとかなるだろう。龍神のありがたい加護ってのを頼むぜ?」

 

「はい、とても恥ずかしいですけど、が、がんばります」

 

「我、アーシアのこと、きちんと見る」

 

アザゼルの言葉にアーシアとオーフィスが応じる。顔を真っ赤にさせているアーシア…嫌な予感がしてならないんだが、俺…。

 

俺は龍巳のほうを見る。龍巳は俺のほうをちらりと見て、苦笑を浮かべる。

 

その後、リアスと祐奈、アザゼルの三人は皆と最終確認と別れを述べ、転移魔方陣の中央に並ぶ。

 

朱乃が魔方陣の術式を最後に確認したあと、転移の光が室内に広がり、光が止むとそこには、リアスたちの姿は無い。…どうやら成功のようだ。

 

                    D×D

 

「はぁ、疲れた…」

 

俺は大浴場から部屋に戻り、ベッドの上に座って天井を仰いでいた。

 

「リュースケさ~ん、ドライヤーお願いできますかぁ?」

 

そのおっとりとした声は……俺の目の前で発せられたものだった。

 

「リエか…」

 

俺は軽く手招きをして「ここに座れ」をする。

 

リエは俺の隣に座り、コンセントの刺さっているドライヤーを手渡してくる…梳くものなしで。

 

俺は仕方なく、手櫛で髪を梳く。

 

…柔らかく、長いリエの髪。シャンプーだろう優しい匂い。……そんななかで髪を梳いているものだから、リエを抱きしめたくなる…っと、落ち着け、俺。

 

「抱きついちゃいますかぁ?」

 

リエの一言に俺は一瞬…手が止まる。

 

「な、何を言っているのだね?」

 

口調がおかしくなるほど焦っている…俺。

 

クスクスとリエはおかしそうに笑っている。

 

「…リュースケさん……すごくわかり易いですよぉ」

 

「………」

 

リエに悟られ、俺は無言で髪を梳いていく。

 

それから、少しシンとした時間が流れる――。

 

「…リエ、梳き終わったぞ」

 

俺はドライヤーの電源を切り、ベッドの近くにあるテーブルの上に置く。

 

ベッドの上に座り、リエに話しかけようとしたときだ――。

 

「――ッ!?」

 

俺は半ば強引に、ベッドの上に叩きつけられるように押さえつけられる。

 

「リュースケさん…」

 

サァ…っと、体の上に僅かにかかる重み。

 

…そう、リエが俺の上に手をついて跨った状態になっている。

 

白いネグリジェは軽くはだけ、梳いたばかりの長い髪は俺の頬に当たってくすぐる…。

 

「…リエ」

 

リエは頬を薄く紅潮させ、口からは甘い吐息…とろんと普段のたれ目より力の抜けた視線が、俺の目をとらえている。

 

…俺はいまからリエに何をされるのかを一瞬で把握した。

 

リエが俺の胸部においていた両手をゆっくりと脇下へ移動させる…くすぐったいな。

 

俺は右腕をリエの腰にまわす。すると、リエは俺が答えていることを確認するように右腕を一瞥すると、ゆっくりと目を瞑って顔を近づけてくる。

 

俺も応えるように目を瞑る……とその瞬間、近くから鋭い視線と小さな殺気を感じ取った。

 

「…………」

 

俺は目を開けて空いている左手の人差し指で、リエの口元に当ててそっと止める。

 

リエは実行しようとしていた動きを止められ、目を開けると…小さく頬を膨らませる。

 

「…何やってんだ?」

 

俺はわざとらしく、その場で顔を横に向けて言った。

 

「…ずるい」

 

そう言う花楓。

 

「……はぁ」

 

俺は溜め息を吐く。そりゃ、こんな状況じゃ、出来なくなるだろう?

 

そこには花楓や奏、冴子たち女子が入ってきていて…こっちを見ていた。

 

「うふふ…お預けのようですねぇ」

 

そう言うと、リエは俺の上から退いて横に寝ると目を瞑った。

 

「俺も寝るか…」

 

呟いた直後に目を瞑って夢のなかへ……見たくないからな、俺の部屋のなかが戦争になるところを。

 

今日も平和に…じゃないか。

 

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