ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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侵入者

三人が日本を発って数日が経った頃――。

 

俺は支度を済ませてユーと共に家を出る。

 

…そう、今日は柱間たちとの約束の日――学校見学をする日だ。

 

もちろん、俺が案内役だがな。

 

ユーが付いてくるのは、ネグレリアの希望であって…ユーも一緒に行きたいとかで…。

 

あ…、ネグレリアも学校見物に付いてくるということになっている。理由としては『学園物語を作るため』だそうだ…。

 

今日はバイクや車での移動はせず、俺の神威と飛雷神で空間を移動することになっている。

 

ユーを抱き寄せて神威を発動する。…ものの一瞬でアパートの一階――ネグレリアの部屋の前に到着する。

 

チャイム(ベ ル)を鳴らすユーを置いて、俺は二階へ上がる。

 

柱間の部屋の前に立ってチャイムを押す。

 

返事のあと、玄関のドアが開く。

 

「来たな。すぐ出る」

 

柱間がそう言うと、ドアを半開きにしてなかへ戻っていく。

 

…待つこと数分。

 

柱間と時音が部屋から出てきた。

 

…それと同時に、後方からもドアの開く音がしたので振り返ると…マダラとアゲハが出てきていた。

 

お互いあいさつを交わし、一階へ降りると――。

 

ネグレリアとユーのほかに二人…望月千代女とフローラ・グリトニルがいた……何で?

 

俺が疑問に思っていたことはわかっていたようで、ユーがメモ帳を見せてくる。

 

『前世の高校を懐かしむのに、付いてくるみたい』

 

「……そうっすか」

 

俺は諦めモードで返事をして、目を瞑った。

 

『…主、気づいておるのだろう?』

 

ムラクモが内から話しかけてくる。

 

『あぁ、結界内に複数の侵入者がいるな』

 

『どうする…主よ』

 

『どうするったって…待て。これは…』

 

俺は結界内に入った奴らが分散し、駒王学園に侵入しているのを把握する。

 

「……マズイことになっている。柱、マダラ、学園の見学はまた今度にしてくれるか?」

 

俺の言葉に柱間はあごに手を当て、マダラは不敵な笑みを浮かべる。

 

「…ほう。タイミングから見て、侵入者か?」

 

「鋭いな、柱間」

 

「それなら、俺たちも行くぞ」

 

柱間の返事に俺は小さく頭を縦に振る。

 

「わかった。こいつに掴まれ」

 

俺は背後から八本の尾を出現させて、各々の目の前に配置した。

 

「マヒトツの尾だ。飛雷神で学園の旧校舎へ飛ぶ」

 

「十尾だな。少し前から感じ取ってはいたが…」

 

「十尾に呼び名か。面白いぞ!ガハハハ」

 

「父さま、笑うより先に…」

 

「わかっておる、時音。頼むぞ…龍介」

 

「あぁ」

 

俺は八人が尾を握ったのを確認し、クナイを探知する。

 

「――飛雷神の術!」

 

                    D×D

 

飛雷神で旧校舎の部室へ飛び、急いで玄関へ向かい…外へ出る。

 

気配を探知する…イッセーがいる場所に三人、校舎内に二人、この近くに五人か…。

 

俺は最後に探知した気配の方向を見る。そこには――。

 

魔術師が被るローブを身につけ、敵意を放ちながらこちらへ手を突きだしている連中がいた!

 

そいつらは魔方陣を展開し、炎、氷など複数の攻撃を繰り出してくる!!

 

――天照!!

 

俺は瞬時に両目を万華鏡写輪眼に変化させ、向かってくる炎のひとつを黒炎で包み込んで消滅させる。

 

「木遁、皆布袋(ほてい)(じゅつ)!」

 

柱間の目の前に巨大な木の手が出現し、氷のつぶてを握り潰す。

 

「こんなものか?」

 

マダラは須佐能乎の片腕を出現させ、向かいくる炎を一刀両断した。

 

「ふぁ~」

 

ネグレリアは大あくびをしながら向かいくる氷のつぶてを、手を軽く払うだけで消滅させた。

 

「さすがは教会が出したランクはSSS以上だ!破格なんてもんじゃないぞ!!」

 

…声からして男か?というより、俺たち…ランク付けされていたのか。

 

「……目には目を。火には…火を!!」

 

マダラの後ろで待機していたアゲハが、マダラの前に立った直後に…お返しの特大の火球を放つ!

 

……豪火滅失か。

 

魔術師どもはその火球を防御魔方陣で打ち消そうとするが、儚い音と共に魔方陣が消滅して爆発を巻き起こす!

 

…土煙が晴れると、そこに魔術師たちの姿は無く……魔方陣で数メートル宙に浮かんだ状態で、攻撃を躱されていた。

 

所々が焦げて破けたローブから、それぞれの顔が見える…全員男か。

 

――ゴォォォォォォオオン!!!

 

少し離れた位置から爆音が聞こえ、地面が軽く揺れる!

 

煙が上がる位置から見て…イッセーたちの教室がある校舎か!

 

俺が攻撃を加えようとしていたとき、魔術師の一人の耳元に小型魔方陣が出現する。

 

そいつは魔方陣に耳を傾け、嫌味な笑みを浮かべた。

 

そのまま、残りの四人と自らの足元に転移魔方陣を出現させる。

 

――逃げる気だなっ!

 

俺は神速で飛び出し、拳打を当てるが――それは転移の光をすり抜け、空を切った。

 

                    D×D

 

魔術師どもとの戦闘を抜け、俺たちはすぐさま新校舎へ駆け寄った。

 

校舎の所々が破壊されている…酷いな。

 

「――兄さん!」

 

その声に俺は振り返る。そこには、ジャージで右腕をグルグル巻きにしているイッセーが走ってきていた。

 

「イッセー、さっきの爆発…どこかわかるか?」

 

「白音ちゃんたちの教室だと思うんだ!兄さん!!」

 

「……ッ!そういうことか」

 

俺は出立直前のアザゼルの言葉を思い出す。

 

俺たちはイッセーのあとについて移動する――白音たちのもとに急いだ。

 

教室前の廊下。激しく破壊され、廊下の窓側がぶち抜かれ――外が一望できる状態に変わり果てていた。

 

その廊下に白音のクラスメイトらしき女生徒が一人へたりと座り込んでいた。他の一年生は教室の扉から怖々と廊下の様子に目線を送っている。

 

「大丈夫かい?」

 

イッセーがその女生徒に歩み寄り、話しかけていた。

 

その子は世にも恐ろしげな体験をしたかのように……呆然として、全身を強張らせていた。

 

そんななか、俺は教室内を見渡す…。

 

…レイヴェルと白音、ギャスパーの姿が見えないな。…春奈やミッテルト、美柑の姿も見えない。

 

俺は教室内の違和感に気がつく。……教室の後方の陰のほうで何やらざわついているのと、そちらを見ている生徒たちの視線に…。

 

俺は急いで駆け寄ると、そこには――。

 

「…っ!しっかりしろ!!春奈ッ、ミッテルトッ、美柑ッ」

 

目の前には三人が壁に背を預けて座っていた。三人とも頭や腕、脚から血を流している…!恐らくだが、廊下の女生徒を助けようとした結果…盾にされて、攻撃されたのか…。

 

俺は春奈の右手首をそっと持って、脈を計る……弱い。

 

「…血が……血が止まらないんですッ!!」

 

手当をしてくれていた女生徒が血まみれのタオルを握りしめながら、そう叫んだ。

 

俺はその女生徒を優しく宥める。

 

「落ち着いて。…三人の手当てをしてくれてありがとう。もう大丈夫…」

 

俺はその女生徒の頭を軽く撫で、すぐに離れて術の発動の準備に入る。

 

…この際、仕方がないな。ここにいる生徒の記憶はあとで書き換えられるだろうし、治癒ぐらいなら使っても問題ないだろう。

 

治癒を開始しようと手を伸ばした瞬間だった。

 

『ここは私に任せて』

 

ユーが俺の裾を引っ張り、メモ帳を見せてきた。

 

俺は瞬時に判断し、ユーと場所を代わる。

 

「…ネ……根暗…マンサー……」

 

『黙って、春奈』

 

ユーが両腕の籠手を取り、春奈のそっと手を握る。

 

…すると、流血が止まり、苦しそうな呼吸が和らいでいく。

 

ほんのわずかな時間で治癒を終えるユー。ミッテルトと美柑にも同じように手を握るだけ。

 

その光景を静かに見守る生徒たち。

 

ユーは治癒を終えると、籠手を填めてゆっくりと立ち上がった。

 

『もう大丈夫。この()たちの怪我は治ったから』

 

メモを女生徒に見せる。その女生徒は、緊張していた面持ちから安堵なものに変わる。

 

俺はユーに問いかけた。

 

「ユー、大丈夫か?」

 

『このくらいの痛みなら平気』

 

俺は「そうか」とだけ答える。

 

春奈、ミッテルト、美柑は…小さな寝息を立てて寝ていた。

 

『妹たちをありがとう』

 

ユーが再び女生徒にメモを見せる。すると、女生徒は目から溢れんばかりの涙を流しだす。

 

なでなで……と、ユーがその女生徒の頭をやさしく撫でて宥めていた。

 

……ユーがさっき見せた目、あれは――、

 

俺はさっき『このくらいの痛みなら平気』と返してくれたときのユーの瞳の中を見た……怒りの色で染まっていたな。

 

ユーがあんな感情を見せることは早々ない。…相当キレているということだ、ユーは。

 

……と、それよりも今後の処理が大変だ。異能を見せてしまったからな…。

 

                    D×D

 

夕方――。

 

俺たち当事者とイッセーたちオカルト研究部、生徒会メンバーは遠山家のリビングに集っていた。当然ながら、遠山家の者全員と角都たちもいる。

 

…あのあと、俺たちはリエたちが駆けつけてくるまで、そのクラスの生徒たちのカウンセリング・ケアを行なった。

 

生徒たちの心の傷は深く、皆の表情が暗かった。

 

……このことを報告する。思い出すだけでも、すごく心が痛む。

 

俺の報告に続いて生徒会副会長の椿姫が報告する。

 

「学園の破損個所はこれより修復します。全校生徒はすべて下校させました。侵入してきた者たちについては、この地で活動されている三大勢力のスタッフの方々が、追っています」

 

椿姫に続いてソーナも口を開く。

 

「……アザゼル先生が置いていかれた記憶を司る装置が役に立ちました。魔法使いに襲撃されたという生徒たちの記憶を『変質者が校内に侵入して、学校が臨時休校になった』というものに置き換えてあります」

 

春奈たち三人の治癒の記憶は、リエによって記憶を『軽度の怪我』と『応急処置』というものに置き換えている。その際に生徒たちは寝てしまうから、色々と面倒だったけどな…。まぁ、堕天使のシステムで起きる可能性のある『記憶の障害』はまず無いからな…。

 

「破壊された場所についての記憶は?」

 

ゼノヴィアがソーナに問う。

 

「それは緊急の補修作業が同じ日に重なったというものに生徒たちの記憶を変換しています。……あのような騒ぎがあったのに、学校から抜け出した者がいなくて幸いでした。携帯機器などで記録したであろうものについても三大勢力と龍介さんのバックアップで何とかなりそうです」

 

……まぁ…あいつら(0課)に任せておけば、流出している大抵の動画を探し当てて削除してくれるからな…あ、そういえば、同じ名があったな…『公安0課』。警視庁に本部を置いている殺しのライセンスを持った表の世界の組織…。あいつらにも頼んでみるか…。結構、詳しい奴がいたような…いなかったような……。

 

そのとき、俺のズボンのポケットの中でバイブの振動が伝わる…誰だ?

 

「すまない。電話に出るから、少しだけ席を外す」

 

俺はそう断りを入れて、リビングを出て廊下を歩きながら電話に出た。

 

「もしもし」

 

『…久しいな』

 

「……その声、()()()か?」

 

『あぁ。龍介、少し話がある。……会えるか?』

 

…噂をすれば、何とやら……公安0課の本人から電話が来てしまったよ。

 

「いいぞ」

 

俺はそう言う。

 

『そうか、わかった。落ち合う場所だが――』

 

電話で落ち合う場所や時刻などを確認し、俺は通話を終了する。

 

「……まさか、あいつのほうから電話を寄越してくるなんてな」

 

俺は携帯をポケットにしまい、リビングに戻った。

 

                    D×D

 

「――裏切り者です」

 

リビングに入ると、その一言が耳に入る。そして、それを発声した本人を見る――ソーナだな。

 

「この地域一帯は三大勢力の同盟関係にあり、私たち以外にも数多くのスタッフが存在しています。この学園を中心に町全体に強力な結界が張られ、怪しい者が足を踏み入れるとすぐに誰かが察知できるようになっています。侵入して姿をくらまされると察知しにくいという点もありますが、ここに入るにはいくつかの可能性が絞られるわけです。ひとつは無理矢理の侵入。これは力のある者であれば可能でしょう。しかし、これは侵入がすぐに発覚しますので、今回の件とは違うでしょう」

 

…その通り、無理矢理侵入すれば俺が気づくのが遅れるわけがない。

 

ソーナは続ける。

 

「ふたつめにこの町に住む者、またはスタッフの者が外に出かけ、そこで敵対組織に捕らわれてしまい操作されて侵入されるケース。これに関しても今回は今のところ、住民、全校生徒、スタッフに反応が出ていません。となると、裏切り者が仲介して、学園まで侵入させたことになります」

 

「そんなことが可能なんですか?」

 

イッセーの問いにソーナは眉根を寄せる。…難しいよな、その質問は。

 

「この結界を問題なく通れる中核メンバークラスであれば可能でしょうね。つまり、グレモリー眷属とイリナさん、レイヴェルさん、私たちシトリー眷属、龍介さんと転生者の方々、遠山家の方々、アザゼル先生、それぐらい中核の者でなければこれほど大胆な襲撃を手配できないでしょう」

 

「俺たちのなかに裏切り者がいるってんですか!?」

 

匙が叫ぶ。そんなことは信じられない顔だな。

 

「このなかに裏切り者はいないさ」

 

俺は匙の頭に右手を置いてクシャっと軽く髪を撫で、先ほど座っていたソファに座る。

 

「…たとえ裏切り者がいようと、俺の眼を誤魔化せやしないさ。それに、悪意があるなら奏と九喇嘛たちがとっくに察知している。俺や奏たちが動いてないのは、このなかに裏切り者がいないということだ…そうだろ、ソーナ」

 

俺はそう告げてソーナへ話を返す。

 

「はい。私も裏切り者がいるなんて信じてません。けれど、襲撃犯は油断のできない相手です。目的はレイヴェル・フェニックスさんなのかどうかすらもわかりません。しかし、ただで見過ごすほど、私たちも甘くありません。さて、連れていかれてしまった白音さんたちについて――」

 

「会長!」

 

そこまで言ったソーナの言葉を遮るようにソーナの『僧侶(ビショップ)』の草下憐耶がリビングに飛び込んでくる。

 

皆の視線を集める憐耶は興奮した様子で告げる。

 

「……オカルト研究部の一年生を連れ去った者から、連絡がありました」

 

――事態が、動き出したな。

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