「これで邪魔者は動けない……イッセー、アーシアを助けてこい」
「はい!」
俺はイッセーの乗っている砂を動かして、アーシアを救出しに行かせた。
「さてと……こいつらどうしようか?」
「動けないのなら、拘束します?」
と裕奈の提案。
「……私も極力殺したくないです」
白音も殺すのは避けたいようだ。
「……私はドーナシークに一泡吹かせてやりたいわ!」
レイナーレはドーナシークを一発殴りたいみたいだ。
「私は……龍介と一緒にいられればいいにゃ!」
ピョーン――スタッ
「おい、黒歌……」
黒歌は俺の砂の上に飛び移り、頬をスリスリしてきた。
「……少しは空気を読めっ」
ペシッ!
俺は黒歌の額を軽く突いてやった。
「~っ」
目を潤ませて突かれた額を摩る黒歌。
「……そろそろだが、イッセ――」
俺は失念していた。この後に起きることを知っていたのに。
「……あぁあ、イヤァァァァァァッッ!!!」
「アーシア!!」
アーシアが苦しそうに絶叫を放ち、イッセーがアーシアを助けようと鎖を引っ張っていた。
「……っ!間に合え!
ドゥヒュヒュヒュ――!!
印を組んだ手から追尾型の強力なレーザー光線を高速で複数飛ばした。それはドーナシークに向
けて空中を走る。
「いやぁぁぁぁ……」
アーシアの体から大きな光が飛び出し、それをドーナシークが手に掴み取った。
チュドドドドドドドドドド――!!
その直後、俺の放った
すぅぅぅぅぅぅ――
俺は深く一気に息を吸い込む。
「(
ヒュンッ――!
俺は息を薙ぐように鋭く吐いた。直後、アーシアの
ズンッ!
俺はイッセーの乗っていた砂を十字架の裏にぶつけて支える。
「…行け」
背中に背負っているヒョウタンから、大量の砂をアーシアの後ろへ飛ばす。
すると、その砂の上にアーシアを磔てある十字架が横になり、その隣にイッセーも乗った。
「兄さん、お願いします!!」
イッセーからオーダーを受けた俺は、二人を落とさない様に慎重かつ素早くこっちに引き寄せ
た。
「ここは危険だな。上へあがるぞ」
俺はすぐさま全員を退避させようとしたが――
トンッ!
「ドーナシークは任せてください!」
裕奈が砂から飛び降りて、下から声をかけてきた。
「……龍介お兄さま。イッセーお兄さまを安全な所へ避難させてください。……来い!白
虎!!」
カッ!!
そう言い残して、白虎を纏い飛んでいく白音。
「お前はどうするんだ?レイナーレ」
俺はレイナーレに問うた。さっきはドーナシークに憎悪を向けていたからな。
「私は……イッセーくんについて行きます。アーシア・アルジェントのその…「最期を見届けた
いと?」……はい。私のせいで、こうなってしまったのですから……うぐっ…」
レイナーレが泣き出してしまった。自分のしてきた末路を後悔してるのだろう。
「………」
なでなで……
無言だが、レイナーレを優しく抱きしめて頭をなでるイッセー。
「(こいつは無自覚だが……そういうところが周りの心を掴むんだよな)」
俺は磔にされたアーシアの鎖を雷切で斬った。
もちろんだが、十字架は砂で圧縮してその場でポイしたぞ。
「……上へ行くぞ。掴まっていろ」
「……」
コクリ
無言で頷くイッセー。
俺たちは砂で塵遁により開けた穴から地上の広間へ登って行った。
D×D
穴から出てきた俺は、最後列の長椅子にアーシアを降ろしてイッセーとレイナーレも降ろし、砂
をヒョウタンの中へ収納させた。
「アーシア!しっかりしろ!もうすぐ自由になれるんだっ!俺と……俺たちと遊べるようになれ
るんだぞ!」
イッセーはアーシアの傍らで涙を必死に堪え、言葉を継ぐんでいた。
「……私、少しの間だけでも……友達ができて、幸せでした……もし生まれ変わったら…また友
達になってくれますか……?」
そんなイッセーの言葉に反応したアーシア。……生気の感じられない手。その手でイッセーの手
を取った。アーシアの気を確かめていた俺は…残酷なことがわかっていた。
「(アーシアは……もうすぐ死ぬ)」
いや、イッセーも気づいてるだろう。この前教えたことが今現在目の前で起こっているのだか
ら。
「……ごめんなさい…私のせいで……アーシアが、アーシアが……」
ボロボロと涙を流すレイナーレ。その言葉を聞いていたイッセーが、涙を堪えきれず決壊したよ
うにボロボロと泣き出した。
「……謝らないでください、レイナーレ様……私は幸せでした……イッセーさんと出会い…リュ
ースケさんとも出会い、家族の皆さん……レイナーレ様、カラワーナ様、ミッテルト様と食事が
できて……家族がいたらこんな感じに楽しいって……思えました。だから……悲しい顔をしない
でください」
アーシアの手が二人の頬を撫でる。
「……ありがとう……」
その言葉を最後に、アーシアの手が力なくゆっくりと落ちてゆく。
アーシアの死に顔は、幸せそのものだった。何も苦しむことなく逝ったんだと思う。
「……アーシアッッ!!!」
イッセーが大きな涙を流しながら叫ぶ。
「……うぅ…ごめんなさい……」
隣にいるレイナーレはアーシアの手を握って泣いている。
ブウォンッッ!
穴のほうから大きく空気を切り裂く音が聞こえた。
ザシュッ!!!
イッセーとレイナーレが俺のほうを見ていた……正確には胸部だけどな。
破壊が間に合わないと判断して、二人の壁になったんだがな……。
「(……グォファッッ!!)」
俺は口から大量の血反吐を吐いた。
「…っ!!兄さん!槍がっ「…わかってる」でもっ!!」
「俺は大丈夫だ。ゴォフッ!!……やっぱりまずいな」
「(
シュウゥゥゥゥゥゥ――
槍で突き刺されている胸部から煙が出てきた。
「……どういうことだ?悪魔でもない人間が、光の槍を受けて煙を出すなど……」
どうやら、ドーナシークはこのカラクリが理解できていないようだ。
スゥゥゥゥゥッッ――
「(
俺はそんなことはお構いなく、須佐能乎の片手で槍を抜き取る。
ズチュッ
普通抜いたら出血するが…今の俺は百豪により、失血自体なくなっている。それどころか、抜い
た穴が瞬時に塞がってしまい、跡形もなく治癒してしまった。
「……っ!!そういうことか!その回復はあの時――」
ドーナシークは最後まで言葉を出すことができなかった。なぜなら――
「(
俺の超高速攻撃が、四方八方から物理攻撃を同時に与えているからだ。
「(分身を作り出しながらの超高速攻撃……分身を作って発動するより効率がいい)」
ドドドドドドドドドドドド――ドゴーンッッ!
祭壇奥へドーナシークを吹き飛ばした俺は、イッセーとレイナーレの前に着地した。その時に分
身は俺と一体化した。
ガラガラガラ……
祭壇の奥……瓦礫と化したところからドーナシークが這い出てきた。
手元を見ると、淡い緑色の光が発せられている。…その手を傷口へ持っていくと、傷口が塞がっ
ていく。
「…ハハハハ!!!これだっ!この力さえあれば、あの方のサポートができるっ!!」
あの方……あぁ、コカビエルか。……そこまでして戦争がしたいのか?
(ゾクッ……)
「(何だ……?今の悪寒は…)」
その時!!
ドッ――ドオォォォォォン!!
視界に入っていたはずのドーナシークが、いきなり教会の壁を突き破って吹っ飛んだ。
俺はその一瞬、途轍もない
「久しぶりだね!リュースケ!」
俺はその声の持ち主の方へ顔を向けた。
「(…何故お前がここにいる!)」
俺はその姿を確認したとき、声が出なかったのだ。
だってそこにいたのは――
「………奏」
そう、前世で花楓の双子の姉であり、そして――
「…?」
俺たちより先に死んだ人物だった。