俺――兵藤 一誠は今、町にある教会の中にいる。……そこには、俺の他に夕麻ちゃん、兄さ
ん……二度と目を開けないアーシアがいて、聖堂の祭壇にアーシアを殺したドーナシークがい
る。
俺の目の前には兄さんがいて、俺たちを庇ってあいつの槍に貫かれてしまった。……だけど、兄
さんは貫かれた個所から突然煙を上げ始めたかと思うと、
ると、そこにあった
その直後だった。兄さんが四人に増えて目の前から消えた。
「(……あのイカレ神父の時と一緒だ!)」
その一瞬でドーナシークが祭壇奥に吹き飛ばされて、瓦礫の下敷きになってしまった。俺には兄
さんが何をしたのか、全くわからなかった。……その後、瓦礫の下からドーナシークが這い出し
てきて、アーシアから奪った力を使い傷を完治しやがった。だけど――。
ドッ――ドオォォォォォン!!
視界に入っていたはずのドーナシークが、いきなり教会の壁を突き破って吹っ飛んだんだ。
俺はその一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「久しぶりだね!リュースケ!」
俺はその声の持ち主の方へ顔を向けたんだ…夕麻ちゃんも一緒に。
そこにいたのは……女の子だった。それも、俺とあまり変わらない歳差の。
「………奏」
この世のものではないという顔で、その女の子を見ている兄さん。
俺と夕麻ちゃんだってそうだ……だって――。
「……あれは一体何なの?」
その女の子の体全体を覆っている赤い魔力のようなものが、途轍もない
かもその魔力のようなものは、何かを象っているんだ。
「(耳に……尻尾?)」
そう。耳らしきモノがあり、尻尾が九本ある。まるで、漫画の世界に出てくる『九尾の狐』のよ
うな――。
D×D
「……ウソだろ」
俺――遠山 龍介は、前世の従妹『遠山 奏』を目の前にして、体が動かないでいた。
ピョーン――ストンッ
穴の開いた教会の屋根から飛び降りた奏。俺の隣に着地し、俺の顔を覗いてくる。
「……幽霊でも見た顔してるの?私は生きてるんだよ?」
目の前でクルリと一回転してみせる奏。
トンッ――
誰かに後ろから押され、俺はやっと硬直が解けて動けるようになる。
「気が荒れてたから、正常に戻してあげたにゃ」
そこにいたのは…黒歌だった。……そういえばこいつ地下で降りていたのか。俺、相当気が乱れ
てたんだな。……こんなことに気付かないなんてさ。
「……奏お姉ちゃん??」
黒歌の後方から声が聞こえてきた。
「そういえば、花楓も一緒にいたんだったね」
意味深なことを言った奏。
「龍介さん、この状況は……?」
朱乃がこの荒れた礼拝堂の状況が今一呑み込めていないらしい。
「(そういうことか。黒歌がいなかったのは、三人をここに転移させたために飛んでいた訳だ
な)」
勝手に解釈しだした俺。
「あぁ、もう一人の
ガラガラガラ――
「……捕えてきました」
いつの間にか地下から上がっていた白音が、壁を突き破っていったドーナシークを引っ張って目
の前に着陸した。
「…はぁ…はぁ……」
祭壇から出てきた裕奈……砂置いていくの忘れてたわ。
「……さて、起きてもらいましょうか。朱乃」
「……っ!はい、部長」
呆然と奏を見ていたが、リアスに呼ばれて慌てた朱乃。
「あ~、朱乃、水の塊を出してくれるか?」
話を聞いてなかった(と思う)朱乃に俺は水を要求した。
「え?は、はい。わかりました」
そう言うと、朱乃は俺より一回り大きい水の塊を出してくれた。
「……すまないな」
俺は一言謝りを入れて、水の溜まりに手を添える。
「水遁、
水遁をドーナシークに撃ち放つ。
水の塊が龍の形へ変化していき、気絶しているドーナシークの顔を飲み込んだ。
「ゲホゲホ!!」
水を吸い込んだドーナシークは咽て目を覚ました。それを俺とリアスが見下ろす。
「ごきげんよう、堕天使ドーナシーク」
「……グレモリー一族の娘か……」
「初めまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お
見知りおきを」
笑顔で言い渡すリアスだが、ドーナシークが途端に嘲笑った。
「…残念だな。今回の計画はコカビエル様のみが知っている。それに、私と同じような堕天使が
数名いる。計画を成功させるためにお前たちを誘き寄せたのだ。もうすぐ、その者達が到着する
はずだ!」
ドーナシークが勝利を確信した表情になった。だが、リアスの表情は先ほどとは一切変わること
もなく、言葉を紡ぐ。
「そのことは堕天使トップに連絡済みよ。それに、その堕天使の応援は来ないわ」
ドーナシークの表情が一瞬消えたが、すぐに笑い出した。
「ハハハハハハ!!!そんなことはあるまい。上級堕天使数名をたった三――」
「私と朱乃は手を出してないわ」
リアスの言葉に顔を引きつらせるドーナシーク。
話を続けるリアス。
「彼女――遠山 花楓が一人でその数名の堕天使を葬ったのよ……名前を聞き忘れてたけど、そ
の時に拾った羽、仲間のあなたならわかるでしょう?」
そう言ってリアスは、懐から数枚の黒い羽を取り出した。
その黒い羽を見て表情を驚愕へと変えたドーナシーク。
「……この事は家族以外に話すつもりはなかったが……ドーナシーク、お前の冥途の土産に教え
てやろう。俺と花楓、それとそこにいる奏はこの世界には存在しないイレギュラーな存在。つま
りは他世界からの転生者だ。どっちみち、隠して通せる余裕はなかったから話したんだが」
ドーナシークは完全に絶望しきった表情になった。
裕奈とリアス、朱乃は俺たちの正体に納得したらしく、なる程的な頷き方をしていた。
とそこに――
「俺、参上」
穴の開いた壁から神父――フリード・セルゼンが現れた。
「(あれだけ吹き飛ばされて、全く懲りないやつだ)」
俺は内心呆れている。そんなことは気にもせず、続けるフリード。
「わーお!俺の上司がチョーピンチくせぇ!どうしたものか!」
フリードの登場にドーナシークが叫ぶ。
「フリード!今すぐ助けてくれ!そうすれば、お前の望むものを何でも与えてやる!」
フリードがドーナシークを助けるかと思ったが――。
「おぉ!それはいいねぇ!でも無理っす!いくら俺でも、この戦況不利マキシマムシュートじゃ
ないですかぁ。それに、そこにいる野郎のせいでアバラ二本いっちまって闘えねーっす!」
少しきつそうな感じだが、相変わらずのふざけ口調だ。
「(あれを受けて……アバラ2本ってどういう頑丈さなんだよ)」
俺は心の中で毒づいた。
「んじゃ。俺的に殺したいランキングトップ入りの三人、次出会ったらロマンチックな殺し合い
をしようぜ?」
……奴は笑顔だが、常人ならぬ殺気を放っていた。
「(明確な挑戦状…いや、殺人予告だな。受け取っておくことにしておくか)」
「「絶対ヤダ」」
遠山姉妹から拒否の声が出ました。
フリードはクルリと半回転して背中を見せると――。
「じゃあね!バイバーイ!みんな、歯磨けよ!」
手を振った直後、消えるように去っていった。
「……哀れね、堕天使ドーナシーク」
リアスがそう言うが、一切の同情のようなものは感じられなかった。
「ドーナシーク……イッセーとアーシアを殺した罪、その身でしっかりと味わうがいい」
その言葉を聞いた瞬間、ドーナシークは抜けた腰で逃げ出そうと這いずりだした。
ツゥー――
「……
ゴオォォォォォォォオッッ!!!!
黒炎がドーナシークの背中に発火し、そのまま全身に広がってゆく。
「…あぁ……グアァァァァァアア……!!!!」
黒炎に全身を飲まれて悶え苦しむドーナシーク。だが、すぐに動かなくなってしまった。
シュゥゥゥゥゥ――
俺はこれ以上燃やしてしまうと、アーシアの
を瞳術で消火した。
消火した後には、見るも無残な黒焦げ死体が転がっていた。その黒焦げ死体は、自然と粒子にな
って消えてしまった。
「……これが、人外の最期か」
俺はその光景を目に焼き付けた……大切な家族を守り続けるために。
粒子が消えていく中、淡い緑色の光を放つ物体が宙に浮いている。
それをリアスが手に取りアーシアの傍まで行くと、膝を折って座った。
「さて、これをアーシア・アルジェントさんに返しましょうか」
「でも……アーシアはもう……」
ポンッ
俺はイッセーの傍まで行くと、頭に手を乗せて言った。
「イッセー、リアスの持っているモノが何かわかるか?」
するとイッセーが目を点にしてリアスの持っているモノを見た。
「……アーシアの神器と…チェスの駒?」
「そうよ、これはねイッセー。『
状況の掴めないイッセー。リアスはそのまま説明を続ける。
「この間少しだけ説明したけど、爵位持ちの悪魔が手にできる駒の数は、『
『
際のチェスと同じね。『僧侶』の駒をひとつ使ってしまっているけれど、私にはもうひとつだけ
『僧侶』の駒があるわ」
説明を終えたリアスは、アーシアの亡骸の上に『僧侶』の駒を置く。
「……この子の回復力は『僧侶』として使えるわ。前代未聞だけれど、私はこのシスターを転生
させてみる」
すると、リアスの体を赤い
「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。今再び我の下僕
となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」
演唱が終わると、『僧侶』の駒が赤く輝き始め…アーシアの中へと入っていった。
それを確認したリアスは、魔力の波動を止めた。
少しすると、アーシアの瞼が開かれる。
「…あれ?」
アーシアの声。イッセーは歓喜の涙を流し、アーシアに抱き着いた。
そんなイッセーへリアスが微笑みを向ける。
「悪魔をも回復させるその子の力が欲しかったからこそ、私は転生させたわ。うふふ、イッセ
ー、あとはあなたが守ってあげなさい。先輩悪魔として……レイナーレも」
「……はい」
涙を流しながら微笑むレイナーレ。
「(……原作にはなかった展開だな。よかったよかった)」
後片付けは堕天使トップに任せるとして、我が家へ帰りますか!
D×D
「……き……イ…お……セ……」
あ~、何か声がする。遠くのような近くのような――。
「……うぇぷっ!!」
俺――兵藤 一誠は、突然の激痛を腹部に受けて肺の中の空気を一気に吐き出した。
「ゲホゲホゲホ……!!」
「…どうだ?俺の目覚まし
「……死ぬわっ!」
「結構加減したのにな~」
俺は目の前にいる兄さんを涙目で睨み付けた。
「…はぁ。約束の時間とっくに過ぎてんだから、身支度してリビングに来い」
「…………あっ!!」
そう言われて時計を見ると、セットした時間より20分も寝坊してた。
その後、俺が大慌てで身支度をしたことは言うまでもないだろう。
「全員集まったな?」
兄さんが確認を取る。
リビングに家族全員が集合した。
兄さんをはじめカミュ、黒歌姉さん、白音ちゃん、辰巳、夕麻ちゃん、カラワーナさん、ミッテ
ルト(ちゃん付けするなと言われた)、花楓ちゃん。そして、昨日会ったばかりの奏さん(花楓
ちゃんの双子のお姉さんだからさん付け)、冴子さん、理子ちゃん、春奈ちゃん。そして俺こと
兵藤一誠が集まって、兄さんと黒歌姉さんを囲む形で立っている。
「…よし。今から部室へ転移する。黒歌、俺に魔方陣の
「わかったにゃ」
そう言われて魔方陣を弄りだした黒歌姉さん。
「……そうだな。新しく家族が増えたことだし、黒歌の準備中に自己紹介でもするか…ほら、イッセー」
「あ~、昨日帰ってきてする時間なかったもんな~……って、俺から!?」
早よしろと言わんばかりに睨み付けてくる兄さん……怖いよ!
「え~と、兵藤一誠です!悪魔やってます!」
簡単に一言言った。兄さんも普通にしてるし。
そのまま時計回りに紹介が進んだ。
冴子さんは部長たちと同じ歳で、剣道が得意だそうだ。軍刀『村田刀』を護身用で使っているらしい。
理子ちゃんは俺たちと同じ歳で、声帯模写とか高レベルの技術を持っている(紹介中に黒歌姉さんの声になった)。
春奈ちゃんは才児らしい。小学高学年の時、担任に「留学してみないか?」と
学に推薦を貰ったらしい(断ったらしいけど)。ちなみに、その大学の入試問題をしてみたとこ
ろ、合格ラインをゆうに越していたんだそうだ。
最後に奏さん。花楓ちゃんの双子のお姉さんだけどほとんど似ていない。身長も頭半個分しか差
がないが、姉妹だけあって胸は大きい。剣技が得意だそうで、昨日見せていた『九尾モード』
は、体内に封印されている『九尾の妖狐』(名前は
するらしい。
「準備完了にゃ」
自己紹介(5分ほど)が終わった時、黒歌姉さんの方も準備ができたみたい。
「…転移するぞ。全員で円を作って手をつなげ」
兄さんの指示が飛ぶ。
兄さんの言う通りにみんなで魔方陣を囲み、手をつなぐ。
「…行くぞ!飛雷神の術!」
サッ!!
リビングが一瞬で部室に変わった。
「っ!!」
目の前のソファでお茶を飲んでいる部長と目が合う。
部長は時が止まったように、ティーカップを持ったままフリーズしている。
「部……部長?」
「…いきなりだったから、ちょっとビックリしたわ」
部長はそう言うと後ろを向いて誰かに手招きした。
「イ、イッセーさん……?」
「アーシア!?どうしてここに?」
「それはね、アーシアにもこの学園に通ってもらうことになったのよ。あなたと同い年みたいだ
から、二年生ね。クラスもあなたのところにしたわ。転校初日ということになってるから、彼女
のフォローよろしくね」
部長がそう言ってきた。
「よろしくお願いします。イッセーさん、レイナーレ様」
「様は付けなくていいわよ。それと、今は『天野夕麻』で通ってるの。アーシアと同い年のクラ
スメイトよ」
「…っ!はい。夕麻さん」
アーシアが微笑んで言うと、夕麻ちゃんは頬を赤くしていた。
「そう言えば、俺の
……そういえば、リビングに集まった時に思ってた。何でここの制服を着てるんだろうって。
「……お兄さま…私に何も言ってくれなかったわ」
「……大勢入ることだしな。それに、俺が口止めをしておいたし」
…兄さんって、何気に酷いことをするよね。
「それじゃ、俺たちは家に帰るよ」
そう言って兄さんが黒歌姉さんとカミュの肩に触れると、三人とも消えてしまった。
「……さて、あ、新しい部員も出来たことだし、ケーキを作ってみたから、みんなで食べましょ
う」
部長がそう言ったのを合図に、部室の奥から木場と朱乃さんがケーキの乗った台を運んできた。
「うふふ。部長ったら、張り切ってこんなに大きなケーキを作ってましたのよ」
「…っ!朱乃!」
朱乃さんの言葉に顔を赤く染める部長。
「さ、さぁ、切り分けて食べちゃいましょう!」
今でも顔を赤く染めている部長。めちゃかわいらしいです!
こうしてオカ研のメンバーと新部員のみんなで登校時間まで騒いで楽しんだ。