「遅いにゃ~」
「……合流予定時間より、黒歌姉さまが早かっただけです」
俺――兵藤 一誠は、白音ちゃんと一緒に黒歌姉さんとの合流地点に着いた。
「えぇ~、私はゆっくり来たのに?」
「…はい」
猫又姉妹の会話を聞いていると、いきなり二人とも猫耳を立てた。
「……敵の気配がします」
「……四人いるにゃ」
気配感じ取れるって…便利すぎるな、猫又って。
「…どうやら、私たちを待ち構えている様子にゃ」
「……気配は体育館からです」
「…ちょうどいいな、俺たちも体育館占拠だし」
「…行くにゃ!」
「「はいっ!」」
俺たちは体育館へ裏口から侵入した。
「……っ!気づかれています」
演壇の裏側に回り込む。演壇には幕が掛けられていない……つまり、丸見えってこと。
「そこにいるのはわかっているわよ、グレモリーの下僕さんたち!あなたたちがここへ入り込むのを監視していたんだから!」
体育館内に声が響き渡る。…白音ちゃんの言った通りだ。なら、こそこそ隠れる必要はないな。
俺と黒歌姉さん、白音ちゃんは堂々と壇上へ出る。体育館のコートには女性悪魔が四名。……全員、兄さんに吹き飛ばされた人たち。
チャイナドレスを着こんだ女性、どこの体操着かわからないけど、それを着こんだ双子と棍を持っている女の子。……確か、チャイナドレスを着こんだ女性が『
相手は『戦車』一、『兵士』三か…。こっちは『兵士』の俺、『戦車』代表で黒歌姉さんと白音ちゃん。一人差だが、やるしかねぇ!
「ブーステッド・ギア!!」
『Boost!!』
倍加の開始音が鳴り響く。
「…私は『戦車』を相手するにゃ」
「……イッセー兄さまは棍を持った『兵士』をお願いします。私は双子の『兵士』を相手します!」
そう言って、白音ちゃんは両腕に白い『ガントレット』と一本の大太刀『雪刃』を出現させる。
「了解!」
俺は自分の頬を叩いて気合を入れる。
俺の相手は棍を持った少女。リーチ長っ!
ドゥル!ドゥルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!
危険な音がしたと思ったら、白音ちゃんの相手の双子がチェーンソーに火を入れていたぁぁぁあッッ!!!
マジかよっ!!そんな代物女の子が持っちゃいけないだろ!
「よそ見は禁物ですっ!!」
ビュッ!ビュン!ビュッ!
俺は少女から放たれる鋭い突きや薙ぎ払いを避けている。
「…っ!!ちょろちょろと!!」
少しずつ早くなる突き。
『Boost』
これで三回目の倍加だ。
「っ!!」
その時、俺の視界に異変が起きた。
スゥゥゥゥ――。
相手の動きがブレた!……違う!ブレている筈の動きに、後から重なっていく少女。……もしかして…これはっ!!
「ここだっ!!」
俺は少女の動きを予想して、足払いをかけた。
「…っ!!きゃ!」
すると予測の軌道を女の子が通り、俺は掠りもせずに足を払った。
見事に尻もちをついた女の子。
サッ!
俺は女の子から棍を没収する。
『Explosion!!』
「あ、私の棍返してよっ!」
女の子が取り返そうとするが、俺はヒラリとかわして肩に触れ…双子の方へ走り出す。
「白音ちゃん!黒歌姉さん!必殺技を使います!退避してください!」
俺の言葉が聞こえたのか、二人は後方へ退避する。
「おらぁ!!」
俺は獲物の棍を双子の一人に投げつける。
「きゃ!もう!あぶな――」
女の子が俺の
『
俺はそれの第一『開門』を開けた。すると、爆発的に加速し、女の子の後ろに回り込んだんだ。
パシッ!
遅れて飛んできた棍を手にして女の子の肩に触れる。
「三人目!」
俺はもう一人の『兵士』へ一気に接近した。
「っ!!速い!」
ぽん
通過際に背中へ触れる。
「ラストっ!!」
「くっ!」
『戦車』の女性は、炎を纏った蹴りで応戦してきたが――。
「よっ!」
俺はその蹴りを下へかわし、手で『お尻』にタッチして離れる。
「ちょっ!どこを触ってるのよ!」
悲鳴ぎみた声は無視して、本題の『必殺技』を発動する。
「くらえ!俺の新必殺技!『
ババババッ!!!!
指を鳴らすと、棍使い、双子、チャイナ服の女性の服が弾けとんだ。
ブハッ!っと、俺の鼻から勢いよく血が噴き出た。
「「「「イ、イヤァァァァァァァァァァァァァァアアアアッッ!!!!」」」」
体育館に響き渡る悲鳴。四人ともその場にしゃがみ込んだ。
「どうだっ!これが俺の新必殺技『洋服崩壊』!」
イメージで高まった魔力を相手に流し込み服を破く。これがこの技の原理だ!
「へ、変態!」
「ケダモノ!性欲の権化!」
「最低!女の敵!」
「……っぐすっ」
棍とチェーンソーの娘たちが罵ってくる……って、チャイナ服の娘が泣いている?
「……泣かせた」
「泣かせたにゃ」
「うっ……」
そう言われると、罪悪感が――。
「ほら、これ使えよ」
俺は兄さんからもらった『札』を四人に渡した。
ボボボボン!!!!
その札が煙を上げると、毛布に変わっていた。
そういえば兄さんが『洋服崩壊を使ったら渡しておけ』って言ってたな。こういう時のためか……。
その時、イヤホンマイクに無線が入った。
『イッセー、黒歌、白音。聞こえる?私よ』
部長の声だ。俺はふたちを見た。二人とも俺の視線に気づいて小さく頷いてくれる。
「はい!俺も黒歌姉さんも白音ちゃんも無事です。たった今、相手の戦意を絶ったところです!」
『すごいじゃない……朱乃の準備が整ったわ。例の作戦通りにお願いね!』
よしきた!俺は二人に目線で合図を送る。二人も頷いてくれた。
ダダダッ!!!
毛布にくるまる少女たちに目もくれずに、俺たちは体育館の中央口へ向かった。
「逃げる気!ここは重要拠点のはずなのに!」
俺たちの行動に驚くライザーの眷属たち。
そうさ。ここが『重要拠点』=『センター』だから、俺たちも皆集まった。だからそこを狙えば、いいだけなのさ!
中央口から飛び出した俺、黒歌姉さん、白音ちゃん。
次の瞬間――。
カッ!――ドオォォォォォォォォオオオオンッッ!!!
一瞬の閃光の後、轟音とともに巨大な雷の柱が体育館へ降り注いだ。
雷が止んだ時、そこにはあったはずの体育館が跡形もなく消し飛んでいた。
「
朱乃さんの声が聞こえた。
上空にはニコニコ顔の朱乃さんがいて、その周りに六体の子鬼の形をした『性質粘土』が朱乃さんの周りを浮遊している。その子鬼たちの体には雷が迸っていた。
『ライザー・フェニックスさまの『兵士』三名、『戦車』一名、戦闘不能!』
審判役であるグレイフィアさんの声が、機械を通してフィールドに響いた。
その時、俺は不意に殺気を感じた。小さいが、俺たちに向けられたもの。
「白音ッ!!」
突然黒歌姉さんが叫んだと思ったら、白音ちゃんを庇うように抱きしめた。
ドンッ!
俺はその瞬間、無意識に二人を突飛ばしていた。
ゴロゴロと地面を転がる二人……その瞬間!
ドォンッ!!
「かはっ……」
俺は爆風をもろに受け、その場に崩れ落ちた。
うつ伏せに倒れた俺…意識が掠れてきた。
「…イッセー!!しかっりするにゃ!」
「しっかりしてください!!兄さま!!」
「イッセーくん!しっかりして!!」
俺を心配して三人が近寄ってきた。
「撃破」
謎の声。俺は意識が飛びそうになりながら、四肢を震わせて立ち上がる。
上を見ると、魔道士の格好をした女性が翼を広げて浮いている……俺を爆破した本人だろう。
そいつは『女王』だ。…ハハハ、強敵に『撃破』されたのか。
「ふふふ。獲物を狩るとき、獲物が何かをやり遂げた瞬間が一番隙だらけとなっていて、狩りやすい。こちらは多少の駒を『
「……白音ちゃん、黒歌姉さん、朱乃さん、下がっていてください。危険ですから」
俺は三人に退避するよう言った。
「……わかったにゃ。何をするかわからにゃいけど、今のイッセーは龍介に似てるわ」
「「……」」
こくりと頷く二人。
俺は三人が離れたのを確認して、俺は相手の『女王』に話す。…兄さんから得た知識を生かして。
「…残念だな。『犠牲』は…イレギュラーが起きれば、何の意味を持たなくなる。『犬死』がいいところじゃないかな」
俺の言葉を聞いた相手の女王が激昂した。
「な、何を言うの!今のあなたの体ではもうすぐ転送される!戦えたもんじゃないわ!『フェニックス』の涙でもない限り!!」
「…そうさ。
俺は意識が飛びそうになりながらも、言葉を紡ぐ。
「ここに!俺の中に!そのイレギュラーがあるからだ!」
「っ!どういうこと!?中にあるって、まさか――」
「そう、そのまさかさ」
俺は開門の『構え』をとる。
「八門遁甲!第二『休門』っ!開ッ!!」
ブワッ!!
俺を中心に一陣の風が舞う。
「まさか!『フェニックス』の涙と同じ能力を持っているなんて!!」
「あぁ。だけどこの技は『一度のみ』しか使えない。次はもうないさ」
「ならば――」
「ならば?」
「なっ!」
相手の女王は、俺が瞬時に背後へ回り込んだことに絶句した。
ドンッ!ドシャアァァア!!!
俺の渾身の蹴りで、女王は地面に墜落した。
「……まだか?」
アナウンスが聞こえない。ということは、まだ立てるのだろう。
トン
地面に降りた俺は、砂埃の舞う校庭を見た。
ぬぅ
砂埃の中に人影が見える。
「……危なかったわ。激突寸前に取り出して正解」
その声は女王のものだ。ということは、平気なのか。
「……ここは私に任せてくれませんか?」
いつの間にか隣にいた朱乃さんが申し出てきた。
「…わかりました。無事に勝ってきてください」
「もとより、そのつもりですわ」
パシッ!
俺と朱乃さんはハイタッチを交わした。
「あら?選手交代かしら?」
「はい。イッセーくんは『切り札』ですもの。代わりに私がお相手いたしますわ。ユーベルーナさん。『
「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ」
「『
「好きではないと言っているでしょう?」
「『
「好きじゃないと言ってるでしょぉお!!」
青筋立ててキレたぞ!相手の女王。朱乃さん、絶対遊んでますよね?
「……先を急ぐにゃ」
「「はい!」」
相手の女王を朱乃さんに任せて、俺たちは木場との合流地点へと走った。