「……ん…ここは」
俺――兵藤 一誠は、今どこかの室内にいる。
『……起きたか、相棒』
「……ドライグ?」
『あぁ、それにしてもよく寝ていたな』
「よく寝ていた?……ちなみに、どのくらい?」
『三日三晩だ』
「マジっすか!俺、そんなに寝てたのか」
『よく寝てたぞ。その間、俺は暇でたまらなかったがな』
「夢の中に出てくればいいじゃん」
『そういうな。お前のことを思ってそっとしておいたのだぞ。……喰らわれる夢でも見せたろか?』
「すみませんでした!……ところで、ここはどこなんだ?記憶になところなんだが」
『ここは、病院というところらしい。相棒の兄がここに連れてきたんだよ』
「兄さんが?でもここ、普通の病院?」
『恐らく違うだろうな。大方、悪魔専門か、それに準ずる者たちがいる
「そうなんだ……でさ、俺あれからどうなったの?」
『ん?あぁ、相手は一度全身の重要部分を除いた筋肉が、全て崩壊したな』
「崩壊!?……あぁ、思い出した。俺が気を失う前、物凄い激痛と聞いたらいけない音が内側から聞こえたな……」
『あぁ。その通りだ。その後、龍介と言ったな?相棒の兄によって眠らされたんだよ。そして、緊急オペという名の魔改造を――』
「魔改造!?俺って今、どんな体になっているんだ!?」
『……冗談を言ったつもりだったんだが…まぁ、相棒の体は龍介とあのシスターの神器でほとんど元通りになっているさ』
「シスター?……アーシアのこと?何だ、元通りに戻っているなら…いいんじゃね?」
『相棒、腕と足を見てみろ。所々の損傷は完治しなかったらしい。それほど危険な行為を相棒は実行したってことだ』
「…?うおっ!俺、足グルグル巻きで吊られてるじゃねーか!!」
『片足だからいいものの。両足だったら、起きたらソッコーで死刑だったな!っと、龍介が言っていたぞ』
「兄さん!俺、罪人じゃありませんよ!」
『ん?俺としたことが……部屋の外で盗み聞きされているな』
「盗み聞き!!誰だよ!」
『中に入ってもらったらどうだ?』
「……わかった。おーい、廊下にいる人~、どうぞ中へ~」
俺は動くことができないので、枕元にあるベッドを動かすリモコンで上半身を起こした。
シャー――。
静かにドアがスライドされて、開けられた。
「部長!?それに皆も!」
そこにいたのは、部長と眷属の皆、白音ちゃん、春奈ちゃん、理子ちゃん、夕麻ちゃん、ミッテルト、カミュが何故かナース姿(夕麻ちゃんとミッテルトは黒)で、黒歌姉さんはいつもの黒い着物姿。冴子さんは私服姿で、カラワーナさんと辰巳、奏さん、花楓ちゃんは制服姿。兄さんは……何故にドクター?
「ようイッセー、具合はどうだ?」
「……何でドクター服着てんの?」
「それはな、俺がここの緊急治療医師だからだ」
「えぇぇぇええ!!」
「おうおう、それだけ騒げれば大丈夫だな」
「じゃないよっ!聞いてないんだけどっ!」
「そりゃ、俺は一言も言ってないからな」
「んなっ!」
「そういえば、伝言があったな……ほれ、その中に録音してある」
兄さんが手渡してきたものは、最新のテープレコーダーだった。
俺は再生ボタンを押してみる。
『(ジビッ)……私の息子に敗北を教えてくれてありがとう。私は少し欲を持ちすぎた……すまなかった。兵藤一誠くんと言ったかな?キミのおかげで息子は、敗北という名の新たな一歩を踏み出すことが出きた。本当の敗北を知った者こそ強くなれる……私もそうだった。…昔、才能を過信していた私はある時、本当の敗北を知り強くなれた。……息子にとってこのゲームはいい経験となった。ありがとう、兵藤一誠くん』
ここで音声が切れた。
「今のは、フェニックス卿本人からだ。…こっちがリアスの父、グレモリー卿からのだ」
そう言ってテープを再生する兄さん。
『(ジビッ)……んっ!兵藤くん…いや、一誠くんと呼んでいいかな?…一誠くん、今回のお家騒動にキミや、眷属、家族を巻き込んでしまって申し訳ない。私も欲を持ちすぎた。キミは赤き龍帝と契約をしたそうだな…それに、
そこで音声が切れた。
「ということだ。よかったな、イッセー。お咎めなしだってよ」
俺は兄さんの言葉に安堵の息を吐いた。
D×D
私――リアス・グレモリーは、下僕であるイッセー傍でリンゴを切っている。
あの……録音テープを聞いた後、皆イッセーにお見舞いの品を渡していた。
その中にフルーツの盛り合わせがあった。
私は皆が帰った後、こっそりとここに戻ってきて……イッセーの世話をしている。
私は思っていた……『どうして私のために自分を犠牲にできるの』と。
イッセーの真意はわからない。赤き龍帝に左腕を対価に契約をしたり、龍介さんから教わった『禁技』を使って体中ボロボロになった。
でも、そんなイッセーを見ていて私は思った――。
『かっこいい』と。
ううん、違うわ。それ以上の感情を私は彼に持っている――。
「イッセー、リンゴが切れたわ。はい、あーん」
「……」
両腕の使えない彼に一口食べさせてあげる。
「もぐもぐ……美味しいです。部長」
「そう?よかったわ」
「……ん」
彼は眠たいのか、コクコクと睡魔と闘っていた。
「イッセー――」
ギシッ
ベッドが二人分の重量に音を立てた。
「部ちょ――」
私はそっと彼に跨り、彼の首に腕をまわして――。
「…ん」
私の唇と彼の唇を重ねた。
――キス。
そう、私は彼にキスをした。柔らかく、溶けてしまいそうな優しいキス。
私は少しだけ目を開けてみた。……そこには目を見開き、顔を真っ赤にした彼が見えた。
……どれぐらい重ねていただろうか?十分?一時間?
ううん、本当はたった一分ほどだった。でも…それくらい長く感じた。
私はそっと彼から顔を離す。
「私のファーストキス。日本では、女の子が大切にするモノよね?」
あわわわ、と慌てる彼。
「うふふ、ご褒美よ。あなたはそれだけの価値のあることをしたのだから」
ううん、そうなんだけど……違う。私は――。
『イッセー』のことが好きだから、キスをしたのよ。
そう、私は彼――兵藤 一誠に恋をした。