コカビエル襲来事件から数日後――。
放課後職員室に呼び出されていた俺は、少し遅れて部室に顔を出した。
入るや否や、ソファーに座っていた女の子二人に驚いた。
「やあ、赤龍帝」
「こんにちは」
緑のメッシュをいれた女子とアーシアのお姉さん――ゼノヴィアとマリアさんが駒王学園の制服を身に纏い、堂々と部屋にいた。
「なっ……なんで、二人がここに!?」
動揺を隠せない俺。
その時!!ゼノヴィアの背中からバッ!っと、黒い翼が生えた!!
「神がいないと知ったんでね、破れかぶれで悪魔に転生した。リアス・グレモリーから『騎士』の駒をいただいた。デュランダルがすごいだけで私はそこまでなかったようだから、駒一つ消費で済んだみたいだぞ?それと、この学園に編入させてもらった。今日から高校二年でオカルト研究部所属だそうだ。……よろしくね、イッセーくん♪」
「……真顔でかわいい声出すな」
危うくゼノヴィアのかわいい声だけに落ちそうになった……かわいい声だけに。
「……それなら、マリアさんも『戦車』に?」
残りからすれば…自然とそうなる。
「…いいえ、私は転生していません。『戦車』の駒二つでも転生できませんでした。」
「えっ?マジですか、部長」
俺は確認のために部長に話題を振った。
「えぇ、確かに『戦車』の駒を二つ使ってみたのだけれど…転生しなかったわ」
部長の手には二つの『戦車』の駒が握られている。
「……たぶん、駒の属性とマリアの価値が合わなかったのだろうな」
『っ!!』
俺たちは声のした方を見た。そこにいたのは、天井に両足をつけてぶら下がっている兄さんがいた……まるでコウモリみたいに。
「兄さん!?何でそんなところに!」
「よう。屋上から侵入したら、こうなった」
笑顔に答える兄さん。俺は開いた口が塞がらなった。
クルッ…トンッ。
半回転して着地した兄さん。
「……ただいまってところか。と言っても、バルパーを護送してきただけなんだけどな」
「それでここ数日いなかったんだ……」
「悪いな、黙っていて」
そう、兄さんは学園み出現させた
「…………」
「…………」
兄さんとマリアさんの視線が合った。
「……龍介、私は遠山家に住むことになったよ」
「そうか。アーシアと相部屋でいいか?」
「…うん。私はアーシアとの時間を埋めたいと思っていたところだったから」
「……
「何か言った?」
「…何も言っていない」
何か引越しの話になったと思ったら、いきなりマリアさんが兄さんを睨み付けている!?
あれ?そういえば、二人ともまだ聖剣使っているのかな?
「あの~、二人は聖剣を使っているのでしょうか?」
俺はさっきのマリアさんを見たため、ゼノヴィアにまで敬語を使っちまった。
「あぁ。私のデュランダルは健在だが、
ゼノヴィアは少し悲しげに話を紡ぐ。
「それにしても、イリナは運がいい。ケガであの戦場にいなかったのだから……私以上に信仰心の深かった彼女だ。神が不在を知れば、きっと心の均衡を保てなくなっていたかもしれない」
「……そうですね。私もあの日に龍介から神の不在を聞いた時、鬱にかかりかけましたから……そのあとは龍介のケアのおかげで、いつも通りの生活をできるまでかいふくしました」
俺はマリアさんの言ったことに驚いた。いや、部員の皆も同じだった。
「……そうだったな、俺が転生術を行った一週間後だった…その時は本当の意味で死にかけたぞ」
「……もう、兄さんは常軌を逸脱しすぎているよ…どこで神の不在を知ったの?」
俺は疑問に思ったことを訊いてみた。
「ん?それか。そのことは…はじめから知っていたし、ミカエルにも会った時に聞かされた。……正確には、システムを見せてほしいと頼んだ時だな」
兄さんの言葉に再度驚いた皆。
「っ!!ミカエルさまに会ったのですか!?」
突然声を上げたゼノヴィア。
「……すまない。いきなり声を荒げてしまった」
「別にいい。そうだな……『
「その原因とは?」
兄さんに疑問を問う部長。
「……『わからない』だそうだ。何故影響が出ないのか不思議だったな」
兄さんの返答にズッコケそうになった部員。
「ん、兄さん。それが答えなの?」
「そうだ」
もう無理っす!!兄さんの異常さについていけねぇ!!
「ところで話が変わるが、今度の休日フルメンバーでボウリング行かないか?」
話を逸らす兄さん。この話題にはあまり関わりたくないようだ。
「いいじゃない。今度の休日の部活動は『ボーリング』にしましょう」
部長が目を輝かせて言う。
「はい。たまには息抜きも必要ですわ」
朱乃さんも嬉しそうに答える。
「私は初めてなので、とてもわくわくします!」
アーシアも興味津々。
部室にいる皆も、嬉しそうに話していた。
『……イッセー』
兄さんが皆に聞こえないように耳打ちをしてきた。
『…なに?』
『屋上に祐奈が待っている。行ってやれ』
『わかったよ』
俺が返事をすると、兄さんは頷いた。
「……少しお手洗いに行ってきます」
そう言って部室を抜け出した。
俺は階段を上り、旧校舎の屋上のドアを開ける。
「……よう、木場」
屋上の柵の前で『その子』は夕焼けをバックに黄昏ていた。
「……っ!!イッセーくん!?」
突然の登場に驚いている木場。
「……」
「……」
何か気まずい雰囲気になった。
「……あのね」
その気まずい雰囲気をはじめに破ったのは木場だった。
「僕…イッセーくんに助けられたのに、まだお礼を言ってなくて」
木場は俺の目の前までゆっくりと歩み寄ってくる。
「…その……いを……」
木場は俯いて何か言っているが、声が小さくて聞き取れなかった。
「すまん、もう一度言ってくれないか?」
俺の言葉を聞いて、ビクリと体を震わせた木場……調子でも悪いのか?
俺が顔を覗こうとした時、いきなり木場が顔を上げた。
「……っ!!!」
ほんの一瞬の出来事だった。木場が俺の唇にそれを押し付けてきたんだ。
目を瞑っている木場。ほんのり頬を朱くして、俺の頬に手を添えている。
長く感じた。ほんの一瞬の出来事だったのに、何時間もそしている感じだった。
木場の顔が離れる。
「……その、今のはお礼…だから…あと、今度から僕のことは『祐奈』って呼んで!!」
そう言うと、木場はもうダッシュで旧校舎の中に駆けて行ってしまった。
「……」
俺はこの状況を理解するのに、数秒かかった。
ボンッ!
俺は頭から煙を出して……いる感じがする。顔が真っ赤なのは間違いないだろうな。
「……祐奈か」
俺は少し落ち着いてから、ゆっくりと旧校舎の中に入っていった。