閑話
「おいおい、マジかよ……」
俺――遠山 龍介は今、とっても困っている。
「兄ちゃんよぉ、その子たちをちょっとでいいから貸してくんないかなぁ?」
はい。今のセリフから想像がつくと思うが、一応言っておこう。
不良どもに囲まれている……それも、五十以上いる。
どうしてこうなったか、順を辿ってみよう。
ショッピングモールへ家具の買い出しに出ていたのだが、その路地の途中で数人の女の子が走ってきて俺を見つけるや否や、「助けてください!」と来たもんだ。
正面からバイクの爆音が聞こえる。
俺はただ事じゃないことだと判断して、近くの裏路地にある廃工場へ隠れた。
その隠れた『廃工場』がダメだった……そこは、不良どもの『巣窟』だったんだ。
そして、今に至る。
「……悪いけど、この子たちは家に帰させる。警察も呼んでおいた」
警察を呼んでおいたのはハッタリ。少しでも引いてくれたらいいと思ったのだが――。
「ハンッ!サツが来るわけねーだろ。ここは俺たちが仕切ってんだからよぉ!」
あぁ~、ハッタリは効かないか~。
「……ここから動かないでくれ。この『札』が守ってくれるから」
俺はそう言うと、後ろに匿っている数人の女の子の周囲に四枚の札を放つ。
その札は配置につくと、朱い結界を張り出す。
「……自己紹介をしておこうか。俺は『うちは イタチ』、ちょっとした超能力者だ」
簡単に言えば、
「フンッ、どうせどっかに『仕掛け』があんだろっ!?子供だましだ!
俺は誰にも気づかれないように手元の魔方陣を弄る。
魔方陣を閉じて、手に金属バットや鉄パイプなどを持った奴らと対峙する。
もちろんだが、一切力を出していない。普通の人間相手に出せばすぐに片付くだろうが、確実に殺してしまう。
カランッ――ドタッ!
俺は鉄パイプを振るってきた奴をいなして、首筋に手刀を入れて気絶させる。
……弱い。だが、かなり人がいる。
カランカランカラン――。
次々と休みなく襲ってくる不良ども。俺はそいつらを片っ端から手刀を入れて収めていく。
徐々に数を減らす不良ども。
「……なっ!!こうなれば――」
リーダー格の奴が携帯を取り出して、どこかへ電話をかけている。
「(増援か?)」
しかし、それは空しく散りさる。
ピロロロロロロロロロ~♪
工場の入り口から電子音が聞こえる。そこにいたのは――。
「お待たせにゃ~。外にいたお仲間さんたちは、全員眠っているにゃ♪」
そこにいたのは、不良の一人の襟首を掴んで引きずってきた黒歌。
「遅かったな……外は片付け終わったか」
もう完全に混乱している不良どもが、黒歌へと襲いかかった。
「甘いにゃん♪」
黒歌は手につかんでいる不良を放ると、次々にくる攻撃を避けながら掌底を放っていく。
気や妖力を纏っていない掌底。それだけでも、急所を打ち抜かれれば気絶する。
一人…リーダー格の奴を残して、すべての不良を鎮圧した。
「さて、こいつも気絶させるか」
「っ!!カハッ――」
俺は有無を言わさずに、リーダー格の奴の首筋に手刀を入れて気絶させた。
「……解」
片付け終わったので、すぐに結界を解いた。
「よし、帰るか――」
「待ってください!!」
俺は黒歌を連れて退散しようかと思ったが、女の子の一人に引き止められてしまった。
「ん?」
「あの……お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
名前ね……さっき言った筈なんだけど…。
「俺は『うちは イタチ』。こいつは『黒』だ」
「イタチさんと黒さんですね」
「……もう二度と会うことはないさ――」
俺は間髪入れずに懐の煙玉を爆発させた。
『ケホケホッ!!』
女の子たちは煙のせいで咽ていた。
「……黒、しっかり掴まっておけよ」
「にゃん♪」
俺は黒歌を姫様抱っこすると、『瞬身の術』で工場から神速で脱出した。
脱出後…黒歌が呼んでおいた警察が廃工場に到着したのを近くの建物から確認して、黒歌と家具の買い出しを再開しにショッピングモールへ足を運んだ。
次の日、このことがテレビのニュースで流れていたことは言うまでもない。