俺は魔王領へアザゼルと赴いた。
そこには、サーゼクス、セラフォルーが迎えてくれて、久しぶりに会った二人もいた。
「――久しいな。アジュカ、ファルビウム」
「久しぶり。と言っても、フェニックス戦以来なんだけどね」
「Zzzzz……」
ファルビウム寝てるし。本当、面倒くさがりな魔王だな。戦術家なのに……。
「はぁ……。仕方がないか」
俺は神威で、お手頃サイズのハリセンを取り出して――。
バシンッ!!
ファルビウムの頭を引っぱたいた。
「っ!!……って、リュースケか。おやすみ」
「おやすみじゃねぇだろ!!」
バシッ!!
もう一発、お見舞いしてやった。
懐かしいやり取りに、四人は苦笑い。
「はぁ……。数年ぶりに突っ込んでしまった」
俺は神威でハリセンを収納して、案内された席に着いた。
D×D
魔王領での会談も終わり、アザゼルとグレモリー領へ列車で移動している。
俺の服装は少し変わり、装束は変わらないが……面は外して、傘地蔵のような広い
「なぁ、傘のようなモノを被って何するんだ?」
アザゼルが相席で質問してきた。
「ん?そうだな。サーゼクスの息子を驚かしてやろうと思ってね」
――サーゼクスの息子……ミリキャス・グレモリー。数年前、俺が冥界の森に迷い込んだ時、偶然出会った少年。
その時、俺の格好がこれだった。再会するときって、印象的な方が分かりやすいってよく言うからな。
「――と言うことだ」
「それでその格好を……か。おまえも変わり者だな!」
「アザゼルに言われたくないんだが……」
軽快に笑うアザゼル。
「そろそろ着くころだ。用意はしとけよ?」
「言われなくてもしている……と言うより、手持ちはないがな」
全て神威で別空間にしまっているので、手に持つモノがない。
アナウンスが流れ、グレモリー本邸前に到着した。
しかし、本邸までは少し距離がある。お出迎えのメイドの案内で、馬車に乗り……揺られること揺られること。
数分して城門前に到着する。城門が開かれて、メイドが案内をしてくれる。
足元にある赤いカーペットの左右にはメイドと執事が並んでいる。
その中を案内役のメイドについて行き、城の中に入った。
「――おかえり、兄さん」
入ると、出迎えてくれたのは……イッセー?
いや、全員だな。何故客分なのに出迎えてくれたのかはわからんが。
「――リュースケにいさまっ!!」
その中からひょこっと飛び出して、抱きついてきた人物がいた。
「……ミリキャスか?」
「お久しぶりです!リュースケにいさま」
「背が伸びたな。少しは成長したな」
俺は抱きついているミリキャスの頭を撫でた。
あの日以来、ミリキャスは何故か俺の事を『にいさま』と呼んでいる。別に気にはしていないが、こそばゆいものは存在する。
「あら、お久しぶりですわね。龍介さん」
突如聞こえた声。ミリキャスを助けた日以来に聞いた声だ。
「お久しぶりです。ヴェネラナ夫人」
俺は抱きついていたミリキャスに離れてもらう。傘を脱いで胸の前に持ってきて、
「あら、そんなに
俺は頭を上げ、微笑む。
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
その後、メイドの人に部屋へ案内されて入室する。
「明日から……忙しくなる……」
ベットの上に仰向けになった俺は、そのまま目を閉じた。
D×D
――翌日。俺は朝風呂に入った後、朝食をとって部屋に籠る。
床に巻物を開き、筆に墨をつけて術式を書き込む。
その上に身の
次に
イッセーは朝からミッチリ勉強会らしいな。貴族としての振る舞い方とか……か?結構大変だろうな~……なんて思ったりはしない。あいつの選んだ道は、俺がいてはダメなんだ。いつか親元を離れていく雛鳥を見ている気分になってきた。悲しきかな……。
俺は憂いに浸りながら、次々に巻物へ収納していった。
D×D
俺の用意が一段落した後、観光に行っていたメンバーが帰ってき他と思ったら、すぐにあの列車に乗り込んで魔王領へ移動する。
列車に揺られること三時間。都市部に到着した。
ホームは近代的造り。販売機や売店などがあり、地上とさほど変わりがない。
「ここは魔王領ルシファード。父がいた時の旧首都よ」
旧魔王ルシファー……ルリエルの父で、すでにこの世に存在しない。少し
「……このまま地下鉄に乗り換えだよ。表から行くと大騒ぎになるからね」
そこへ祐奈が言う。
「キャーッ!!リアス姫さまぁぁぁぁっ!」
ホームに入った途端、周囲から黄色い歓声が聞こえてきた。
「部長は魔王の妹。しかも美しいものですから、下級、中級悪魔からの憧れの的なのですよ?」
朱乃が説明を入れてくれる。確かにそうなるよな、自然と。
リアスの眷属以外は、特殊なの指輪をはめているために下級悪魔と思われている。俺の試作品だが、ちゃんと効果を発揮しているな。
「ヒィィィィィ……。悪魔がいっぱい……」
相変わらず対人恐怖症全開のギャスパー。少しは真面になったかと思ったが、イッセーの背中に隠れた状態だ。
「困ったわね。騒ぎになる前に急いで地下の列車に乗りましょう。専用の列車は用意してあるのよね?」
リアスは付き添いの黒服の男一人に訊く。黒服の男たちはグレモリー邸から護衛のためについてきている。いわゆる
「はい。ついてきてください」
こうして俺たちは護衛の男たちのあとに続き、地下鉄の車両へ移動した。
D×D
地下鉄に乗り換えて、揺られること五分。
都市部で一番大きい建物の地下にあるホームに到着した。
護衛の男たちはエレベーター前までしか随行できないようで、そこで待機となっていた。
二台のエレベーターに別れて乗り込む。全員が乗り込み、動き出す。
「(広いエレベーターでよかった。全員が乗り込めたからな)」
かなり上へ上がったところでエレベーターは停止する。
ドアが開き、目の前には広いホールが広がっている。
「ようこそ、グレモリーさま。トオヤマさま。こちらへどうぞ」
ここの使用人らしい人が会釈をしてくる。
俺たちはその使用人のあとに続く。すると、通路の一角に人影が見えた。
「サイラオーグ!」
リアスの声に、その人影が反応して歩いてくる。
「久しぶりだな、リアス」
そいつはリアスの前に立つと、にこやかに握手を交わす。
「えぇ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの」
と、リアスが巨躯――サイラオーグを紹介する。
「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」
一瞬だが、サイラオーグは俺を一瞥してリアスと会話を再開させる。
「それで、こんな通路で何をしていたの?」
「あぁ、くだらんから出てきただけだ」
「……くだらない?他のメンバーも来ているの?」
「アガレスもアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼファードルだ。着いた早々ゼファードルとアガレスがやり合い初めてな」
サイラオーグは心底嫌そうな顔をしている。その直後――。
ドオォォォォォォォォォォォォォオオ――!!!
建物が大きく揺れ、破砕音が近くから聞こえてきた。
リアスはそれが気になったのか、音のした大きな扉へ向かっていった。
「まったく、だから開始前の会合はいらないと進言したんだ」
サイラオーグの後ろには、眷属と思われる者たちがついて行く。俺たちも仕方なく後について行った。
開かれた扉の向こうには、破壊されつくした大広間がある。広間の装飾品やら諸々が全て破壊尽くされていた。
広間の中央には両陣営に分かれた眷属が睨み合っている。武器を取り出し、一触即発の空気が流れている。両方とも冷たくピリピリとした殺気を帯びていた。
「ゼファードル、こんなところで戦いを始めて仕方なくてはなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」
「ハッ、言ってろよ、クソアマッ!俺がせっかくそっちの個室で一発しこんでやるって言ってんのによ!アガレスのお姉さんはガードが堅くて嫌だね!へっ、だからいまだに男も寄ってこずに処女やってんだろう!?ったく、魔王眷属の女どもはどいつもこいつも処女くさくて敵わないぜ!だからこそ、俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」
『……………』
下品な言葉を繰り出すヤンキーな男。こっちがゼファードルか。反対側の眼鏡をかけた女性がアガレスね……。
俺はため息交じりに呟く。
「……まだ、イッセーの方が可愛いくらいだ」
その呟きは周囲のだれにも聞こえることはない。
前に立ったサイラオーグが全員に説明するように語る。
「ここは時間が来るまで待機する広間だったんだ。もっと言うなら、若手が集まって軽いあいさつを交わすところでもあった。ところが、若手同士があいさつしたらこれだ。血の気の多い連中を集めるんだ……問題の一つも出てくる。それも良しとする旧家や上級悪魔の古き悪魔たちはどうしようもない。――無駄なものに関わりたくはなかったのだが、仕方ない」
サイラオーグは首をコキコキ鳴らし、睨み合う両陣営へ歩みを進める。
ふと後ろを見ると、イッセーやアーシアが心配そうに俺を見つめる――助けないのかと言うように。
「――安心しろ。あのサイラオーグという男の闘気は本物だ。そん所そこらの悪魔とは格が違う。あの二人とは実力に差がありすぎる……見ておけ」
俺の言葉に続くようにリアスが言葉を発する。
「よく見ておきなさい。彼が若手悪魔ナンバーワンよ」
その言葉に数人が驚いている。ほとんどはわかっているようで、静かに見守っていた。
ケンカムードの両陣営の間に入ったサイラオーグ。眼鏡をかけた女性とヤンキー男たちの視線が集まった。
「アガレス家の姫シーグヴァイラ、グラシャラボラスの凶児ゼファードル。これ以上やるなら、俺が相手をする。いいか、いきなりだが、これは最終通告だ。次の言動しだいで俺は拳を容赦なく放つ」
サイラオーグの一言に、ヤンキー男が青筋を立てて、怒りの色を濃くした。
「バアル家の無能が――」
ドゴンッ!!
ヤンキー男は言葉を言い切る前に、激しい打撃音とともに広間の壁に叩きつけられた。
「あ~ぁ。力量が計れない者の末路だな、あれは」
俺は小さく、だが、イッセーたちのみに聞こえるように言葉を発する。
ガラガラと音を立てて壁からヤンキー男が落ちる。気を失っているので、床に突っ伏していた。
「言ったはずだ。最終通告だと」
「おのれ!」
「バアル家め!!」
サイラオーグに飛びかかろうとしたヤンキー男の眷属たちだが――。
「主を介抱しろ。まずはそれがおまえらのやるべきことだ。俺に剣を向けてもおまえたちに一つも得はない。――これから大事な用事が始まるんだ、主をまずは回復させろ」
『――ッ!!』
サイラオーグの一言に眷属は動きを止め、ヤンキー男のもとへ駆け寄っていった。
そのやり取りをしている時、不意に俺の携帯が鳴った……ロリ神からだ。
マナーモードにしているため音は出ないが、バイブが鳴り続けると厄介なので……電話に出た。
「もしも――」
『緊急事態ですッ!!龍介!!』
耳元で大きな声を上げられたせいか、キーンときてしまった。
「お、落ち着け。何があったんだ?」
『先ほど下の者から情報が入って、悪神の者がそちらの世界に刺客を送ったと……』
「し、刺客!!」
つい声が大きくなってしまい、周囲から一瞥された。
「……刺客って、どういうことだ?」
俺は冷静になり、小声で会話を続ける。
『多分ですが、私への嫌がらせか……あるいは挑戦状か』
「それはどうでもいい。そいつらは誰なんだ?」
俺は質問するが、――ロリ神の言葉に言葉を失うことになる。
『その者たちは、前世では重罪な犯罪者です。転生後は、かなり厄介な者へなっています』
「…………」
『龍介?』
「…………」
『龍介ッ!!』
「――あ、悪い。どうなんだ?その転生後の人物は?」
俺は覚悟した。何を言われても冷静でいられるように。
『――龍介も知っている『
「……そうか、大体理解した。――他はいないのか?」
『いえ、把握しているのはこの二名だけです』
「わかった。ありがとう」
『すみません。私のせいで……』
「気に病むな。教えてくれたおかげで、対応が出来る」
『そう言ってもらうと、少しは楽になりました』
「何かあったら、いつでも連絡してこい」
『はい。詳細はそちらの携帯とPCに送っておきます』
「助かる」
『それでは、ご武運を』
「あぁ」
そう言って、ロリ神との連絡を切った。
飛段と角都……厄介な二人組がこの世界に。
俺は携帯を収納すると、視線を戻した。
先ほど二組のケンカはサイラオーグの仲介によって、完全に鎮火していた。