俺たちは会議室前にある待合室いる。
「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」
先ほど、ヤンキー男とケンカをしていたアガレスの次期当主からあいさつをもらう。
「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」
「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」
続いてリアスと合流したソーナがあいさつをする。
「俺は、サイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」
威風堂々とあいさつをするサイラオーグ。
「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」
あの騒ぎの中で動じることなく、お茶を飲んでいたやさしげな雰囲気の少年があいさつをする。
若手悪魔次期当主の紹介が終わり、流れ的に俺の番なので一応あいさつをしておく。
「俺は遠山龍介。知っていると思うが、俺は人間で暁の長だ」
それを聞いて、驚きの表情を浮かべている……意外にも、サイラオーグは納得したような表情でいた。
「お噂で聞いていましたが、人間の気配が一切感じられませんね」
「なるほど……しかしだ。悪魔そのものの気配を感じるのはなぜだ?」
似た意見が飛んできたので、ネタばらしに指輪を外す。
『ッ!!』
直後、初対面の悪魔たちは驚きの表情をする。
「この指輪の効力で、付けている間だけ気配を悪魔にしていたんだ。正体がバレて騒がれると困るからな」
俺は再び指輪をはめる。
「ところで、グラシャラボラス家の次期当主が情報と違うのだが……」
「あぁ、グラシャラボラス家は先日、御家騒動があったらしくな。次期当主とされていた者が不慮の事故死をとげたばかりだ。先ほどのゼファードルは新たな次期当主の候補ということになる」
俺の疑問にサイラオーグが答えてくれた。
「(まさか……な。あの二人が関係している……わけないよな?)」
俺の中に疑問の渦が生まれて、大きくうねっている。
「リュースケ?顔色が悪いけど……何かあったの?」
俺の隣にいたマキアが気遣ってくれた。
「ん?いやな、少し考え事をしていただけだ。心配させたな」
俺は心配してくれたマキアに、優しく微笑みかけた。
「っ!そ、そう!それならいいわ……別に気を使ったわけじゃないもん」
マキアは顔をそらして何やら小声で言っている。後半部分は小さくて聞き取れなかったけど。
「皆さま、大変長らくお待ちいただきました。――皆さまがお待ちでございます」
雑談をしている中へ、ドアを開けて入ってきた使用人から案内を受ける。
始まる、運命の扉が開くその瞬間が――。
D×D
会合の室内へ通された面々。そこに用意された室内は異様なものだった。
かなり高くに席が置かれており、そこに上役らしき老人たちが座っている。その上には――魔王サーゼクスがいる。隣には正装姿のセラフォルー。さらにその隣にはアジュカとファルビウムが座っている。俺たちを見下ろすように。
俺は見下すのは好きではないが、見下されるのも好きではない。
静寂に包まれた室内。
心配してイッセーたちを見ると、案の定……不安なのだろう。アーシアとギャスパーはイッセーに引っ付いていて、簡単には離れそうもないな。
春奈や理子たちも緊張しいて、いつもの明るい表情がなくなっていた。
リアスたちを含めた若手悪魔六人が一歩前へ出る。先ほどサイラオーグに殴られたヤンキー……ゼファードルも復活しているが、頬の腫れは生々しさを出しており、簡単には治りそうもないな。回復系のモノでも使わない限り。
「よく、集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。これは一定周期ごとにおこなう、若き悪魔を見定める会合でもある」
初老の男が手を組みながら、威厳のある声音で言う。
「さっそく、やってくれたようだが……」
髭が特徴の男が皮肉げに言った。
「キミたち六名は家柄、実力共に申し分の無い次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらうと思う」
一番上に座っているサーゼクスが言う。
「我々もいずれ『
サイラオーグがいきなり直球を訊く。俺の予想外……いずれ訊くと思っていたが、今訊くとはな。
「それはまだわからない。だが、できるだけ若い悪魔たちは投入したくないと思っている」
「何故です?若いとはいえ、我等とて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からのご厚意を受け、なお何もできないとなれば―――」
サーゼクスの答えに納得しないのか、サイラオーグは眉をつり上げていた。
「サイラオーグ、その勇気は認めよう、しかし、無謀だ。何よりも成長途中のキミたちを戦場に送るのは、避けたい。それに次世代の悪魔を失うのはあまりにも大きいのだよ。理解して欲しい。キミたちはキミたちが思う以上に我々にとって、宝なのだよ。だからこそ、大事に、階段を踏んで成長をして欲しいと思っている」
「……わかりました」
サーゼクスの言葉に一応納得したようだが、サイラオーグは不満のある表情をしている。
その後、上役の男たちの話を聞き流し、悪魔同士の眷属を戦わせる『レーティングゲーム』のことについて、サーゼクスたちの話しが続いた。
「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。なに、私たちは若いキミたちに私たちなりの夢や希望を見ているのだよ。それだけは理解して欲しい。キミたちは冥界の宝なのだ」
サーゼクスの言葉に皆が聞き入っていた。嘘偽りのない言葉だ。
「そろそろじゃないか?サーゼクス。彼らを紹介しないといけないのでは?」
「おっと、そうだったな。龍介、前に」
アジュカの問いに思い出した素振りを見せたサーゼクス。今まで蚊帳の外だったんだぞ、俺たちは。
俺はサーゼクスの紹介で前へ出る。
「彼は遠山龍介。今回特別に参加してもらっている人間の一人だよ」
「紹介に預かった遠山龍介だ。よろしく」
適当に自己紹介を済ます。要らないことを話さないようにな。
「ほう、噂では様々な能力を扱えると聞いているが?」
上役の男の一人が訊いてきた。
「あぁ、使えるぞ。例えば……こんなものとか」
俺は力を使い、体に風をまとわせる。
『ほう……』
それを見ていた上役の男たちは感嘆の声を漏らす。
「ここは室内だから、このぐらいのものしか見せることはできない」
「ふむ。噂通りでしたな。他にもあるようだ」
「確かに噂通りだ。他の能力も見てみたかったが、残念だ」
上役の男たちは興味を持ったようで、納得のいった会話をしていた。
誇りを重んじる者たちが珍しい反応をしていたため、俺は少し気抜けをしていた。
「――最後に、それぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」
サーゼクスが問うと、初めに答えたのは……サイラオーグだった。
「俺は魔王になるのが夢です」
こいつ、さらっとだが……とんでもないことを言い切りやがった。
『ほう……』
上役の者たちも、サイラオーグの真正面からの堂々と迷いのない目標に感嘆の声を漏らしていた。
「大王家から魔王が出るとしたら、前代未聞だな」
上役の一人がそう言う。
「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」
また言い切りやがったぞ、サイラオーグの奴。
間を置くことなく、続いてリアスが言う。
「私はグレモリー家の当主として生き、レーティングゲームの各大会で優勝することが近い将来の夢ですわ」
なるほど。堅実な目標だ。
その後にシーグヴァイラ、ディオドラ、ゼファードルの夢、目標を口にし、残ったのはソーナだけになった。
そしてソーナは言う。
「冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です」
「ふむふむ……」
俺はソーナの夢を聞いて、頷いていた……が、上役たちは眉を寄せていた。
「レーティングゲームを学ぶところならば、すでにあるはずだが?」
確認するように上役の一人がソーナに訊く。
質問に淡々とソーナは答える。
「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔、家柄や階級も関係なく自由に学べる学び舎です」
確かに冥界は実力主義も存在している。才能や能力を重んじる悪魔も少なくはない。
下位の悪魔たちもゲームを知り実力も上がれば――と俺が思った次の瞬間だった。
『ハハハハハハハハハハハハハハッ!』
突然、上役たちの笑い声がこの会場を支配する。
「それは無理だ!」
「これは傑作だ!」
「なるほど!夢見る乙女というわけですな!」
「若いというのはよい!しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がそのような夢を語るとは。ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」
お偉いさんたちに笑われている最中でもソーナは真っ直ぐに言う
「私は本気です」
セラフォルーもうんうんと力強く頷いていた。「よく言った!」と言わんばかりの様子だ。立場上、フォローの一つも入れてやれないのが悔しいみたいだな。
しかし、冷徹な言葉を上役は口にする
「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に従え、才能を見出されるのが常。そのような養成施設をつくっては、伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても、変えていいものと悪いものがあります。まったく関係のない、たかが下級悪魔に教えるなどと……」
その一事に黙っていられなくなったのは―――匙だった。
「黙って聞いていれば、なんでそんなに会長の――ソーナさまの夢をバカにするんスか!?こんなのおかしいっスよ!叶えられないなんて決まったことじゃないですか!俺たちは本気なんスよ!」
「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の
上役の一人が言う。
「……申し訳ございません。あとで言ってきかせます」
ソーナは一切表情を変えずに言う。匙はその反応が納得できないようで、ソーナに食って掛かる。
「会長!どうしてですか!この人たち、会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!どうして黙っているんですか!?」
「サジ、お黙りなさい。この場でそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ。それだけのことなのです」
「―――ッ!」
ソーナが目を細め、匙をたしなめる。匙も何か言いたげだったが、口を閉ざした。
『――どいつもこいつも黙って話を聞いていれば、下らん
突然の声に場が静まり返る。その声の発声元は……奏だ。
「
『ふん。奏の夢が、今語っていたそこの女と似ていたからな。その夢をバカにされたことが、こいつの夢をバカにされたように思えてな……一言申し出たわけだ』
「(なるほど……というより、奏の夢って……何なんだ?)」
俺は疑問を脳内の隅において、一応紹介する……これ以上この場が荒れないように。
「悪いな。こいつは
それを聞いた上役たちは、一瞬にして青ざめる。蛇に睨まれた蛙のように……狐だけどね。
とんだパワフレ状態だもんな……俺の周囲は。
『そうだな……おまえ、セラフォルーという名だったな?』
九喇嘛が指を……頬を膨らませてご立腹中のセラフォルーを指す。
『おまえの考えていることに同意しよう。不本意だが、「それ」ならばこの場を収めるのにいいだろう』
九喇嘛の言葉を聞いたセラフォルーが、今度は驚いた表情をしていた。
『レーティングゲームをしよう』
さすがに俺も驚いた。九喇嘛、おまえは心を読み取ったのか?
「うん、ちょうどいい。では、ゲームをしよう。若手同士のだ」
今度はサーゼクスの言葉に皆が注目した。
「リアス、ソーナ、戦ってみないか?」
「…………」
「…………」
リアスとソーナが顔を見合わせ、驚いていた。
「もともと、近日中にリアスのゲームをする予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集め、デビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。だからこそ、ちょうどいい。リアスとソーナで一ゲーム執り行ってみようではないか?」
「(なるほどな……アザゼルは、こいつらの合宿修行の総仕上げにゲームを行うっていう目論見を立てていたのか)」
俺はリアスたちを見る。二人は先ほどと違い、闘志むき出しで向き合っていた。
「公式ではないとはいえ、私にとっての初のレーティングゲームの相手が
「競う以上は負けないわ、ソーナ」
両者火花を散らしている。
「リアスちゃんとソーナちゃんの試合!うーん☆燃えてきたかも!」
セラフォルーは楽しげにテンションを上げていた。喜怒哀楽が出やすい奴だな、ホント。
「対戦の日取りは、人間界の時間で八月二十日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれてかまわない。詳細は改めて後日送信する」
サーゼクスの決定により、リアスとソーナのレーティングゲームは開始される事になった。