襲撃から二日後――。
俺たちはアザゼルの部屋に入り、リアスたち最後のミーティングに参加していた……主に俺が。
ヴァーリチームの一員である金華、美猴、聖王剣の使い手が魔王主催のパーティに現れた。金華と美猴が襲撃し、後からその二人を迎えに聖王剣の使い手が現れて二人を連れて異空間へ逃げ帰ってしまった。
この一件は徐々に鎮火しつつあり、リアスはこの一件とイッセーを
「イッセー、
「はい、なれるようにはなりましたが、いくつか条件があります」
イッセーはその条件を述べる。
……一言で言うと、『諸刃の剣』だな。
「――データ通りだ。過去の赤龍帝も一部の例を除いてほとんど同じだ。で、その『二分』のインターバルは死活問題だぞ。とにかく、その二分の間をどう過ごすか、考えておけ」
「はい」
「――使用制限時間は?」
俺はイッセーに問うてみる。二つのうちの一つだが。
「えーと……フルで三十分だったよ。力を使えば、もっと減るけど」
「それは追々増やしていくとして、イッセー」
俺はもう一つの質問をしてみる。
「――『
その問いにイッセーは首を振る。
「……わからない。あのときはキレていたから」
「――怒り」
突然、誰かが一言口を開いた。その発声源は……エールだ。
「……あの時、イッセーは怒りの感情を表に出していたから」
「(そう言われてみれば……完全にキレていたもんな。本人も激情していたって、今さっき告白したもんな。)」
「……怒りか。このゲームでイッセーがキレれば、発動する可能性はあるということか」
俺は結論にたどり着く。あまり役に立ちそうもないな。
「ところで、リアス。ソーナ・シトリーはおまえの眷属のことをある程度知っているんだろう?」
アザゼルがリアスにそう問う。
「ええ、おおまかなところは把握されているわね。たとえば、イッセーや朱乃、祐奈、アーシア、ゼノヴィアの主力武器は認識しているわ。―――フェニックス家との一戦を録画した映像は一部に公開されているもの。さらに言うなら、ギャスパーの
そう。黒歌の話によると、『白音に剣術以外の打撃の戦術を教えたわ。
「……たぶん、白音が『
リアスがあまり自信のない声音で言った。
「ま、ほぼ知られているわけか。で、おまえのほうはどれくらいあちらを把握している?」
アザゼルはリアスに問う。少し話を戻すみたいに。
「……ソーナのこと、副会長である『
「不利な面もあると……まあ、その辺はゲームでも実際の戦闘でもよくあることだ。戦闘中に
「ええ『
俺は話を聞いてアザゼルに頼み、今まさに書き込もうとしていた『ホワイトボード』を借りた。
「悪いなアザゼル。では、俺が少しだけ話をしよう。……俺は最近、レーティングゲームについて調べていて、特徴の中にプレイヤーごと細かなタイプをつけて分けているところがあった。リアスたちは知っているだろうけど、パワー、テクニック、ウィザード、サポートの四種がある。この出場メンバーの中でなら、リアスはウィザードタイプのパワー寄り。いわゆる魔力全般に秀でたタイプで火力が高い。朱乃も同様にウィザードタイプ。祐奈はテクニックタイプで主にスピードや技術で戦い、カウンターも用いることもある。ゼノヴィアはスピード方面に秀でたパワータイプ。一撃必殺を狙うプレイヤー。アーシアとギャスパーはサポートタイプ。この二人を細かく分けるなら、アーシアはウィザードタイプ寄りで、ギャスパーはテクニックタイプ寄り。白音は珍しいテクニック型パワータイプだ」
俺の話に納得しているリアスたち。そこに、手を挙げる者がいた……イッセーだ。
「――兄さん、俺はどれに当てはまるの?」
「おっと、悪い悪い。イッセーは……パワータイプだな」
「……何で間が空いたの?」
「い、いや。『
「ふ~ん」
何となく『わかった』的な反応のイッセー。
「ただ、一番気をつけないといけないことは……パワータイプへのカウンター攻撃だ。テクニックタイプのなかでも
「――その一例とは?」
俺の言葉に、祐奈が反応した。
「ん?そうだな。簡単に言えば、『カウンター返し』だ」
『『カウンター返し!?』』
リアスたち出場組が反応した。
「あれ?祐奈や朱乃は知っていると思っていたんだが……?」
俺は予想と違う反応に少し困ってしまった。
「はい、まったく知りませんでした」
意外な祐奈の返事。それに、朱乃も頷いていた。
「そ、そうだったのか。ん~、そうだな。オシリス」
俺はアーシアの頭の上に乗っていたオシリスを呼んだ。
「これをカウンターで打ち返してくれ」
少し離れたところでホバリングしているオシリスに目がけて、手に握っているゴムボールをゆっくりと投げる。
それを尾で跳ね返したオシリス。俺は、跳ね返ってきたゴムボールをさらに跳ね返した。
「
「ギャウッッ!!!」
高速で跳ね返ったゴムボールを、避けきることができなかったオシリス……もろに顔面にクリーンヒットした。
「だ、だいじょうぶですか?オシリスさん」
アーシアが
「――とまぁ、こんな感じだ。何か気がついた点はあるか?」
俺の質問に誰も答えない。
「おいおい、少しは気がつかなかったのか?」
俺の言葉にリアスたち全員が気まずそうに頷いた。
「……っ!!マジか。そうか……仕方がない、教えてやる」
俺は少し感情を高めて、説明に入った。
「さっき見せたように、軽く放ったゴムボールにオシリスが合わせた。俺は合わせてきたオシリスにカウンターを放ったわけ。これは、軽く放った攻撃に相手が合わせてカウンターを放つ。そのカウンターにこっちもカウンターを乗せて喰らわせる手法。普通の攻撃をしている時は、防御や回避を考えているから、ダメージは軽く済む。もちろん、パワーの出力を全開にしていたら、避けられるものも避けられないけどな。――ここからが重要点だ。カウンターを放つ方は、防御や回避のことは考えていない。防御や回避のことを考えると、カウンターを上手く発動できずに攻撃を避けてしまうからだ。カウンターを放ってきた相手は、体勢が整うまで行動できない。俺でもそこのインターバルは存在する。それをカウンターで返したり、全力の一撃を放てば、相手は防御や回避の動きを取りきれずにクリーンヒットする。さっきの例そのものだ。まぁ、それは個人で差が出るだろうな。これは、今回のゲームに関係している。ソーナ眷属の一部は、カウンターを用いた戦法をしてくるだろうな。……主にイッセーたちパワー派はそこに気をつけておけ」
俺は講義を終了する。この戦法を知っているリエや花楓、奏以外は感心したように聞いてくれていた。
「それとだが、イッセーの相手は……十中八九、匙がするだろうな。何せ、おまえは『女の敵』だからな」
俺の言葉に女性陣が頷いた。
「そのための戦闘方法を常に考えておけ」
イッセーは『えー』的な表情で俺を見ていた。なんだよ、その表情はッ。
「龍介が噛み砕いて説明したとおり、カウンターには気をつけろよ。――おまえたちが今回のゲームで勝利する確率は七十パーセント以上とも言われている。俺もおまえたちが勝つと思っているが―――『絶対』勝てるとは思っていない。それに駒の価値も絶対的なものではない。実際のチェス同様局面によって価値は変動する。俺は長く生きてきた。そのなか、多種多様、様々な戦闘を見てきた。だからこそ、言えるんだよ。―――勝てる見込みが一割以下でも勝利してきた連中がいたことを俺は覚えている。一パーセントの可能性を甘くみるなよ。絶対に勝てるとは思うな。だが、絶対に勝ちたいとは思え」
俺は「そうだな」とアザゼルの言葉に続けて、セリフを被らせた
「「これが合宿で、俺たちがおまえたちに伝える最後のアドバイスだ」」
俺とアザゼルはアドバイスを終える。
その後、アザゼルは部屋を出て行った。俺も出ていく前に、リアスたちへ事前に聞いていた『使用不可能な道具』の説明をして、鮫肌と白虎以外の道具(俺作)を預かり、部屋を出ていく。
部屋に戻ると、眠気が襲ってきて――。
俺は意識をブラックアウトした。