――決戦当日――
グレモリーの居城地下にゲーム場へ移動する専用の巨大な魔法陣が存在している。
俺たち眷属は、その魔法陣に集まってもうすぐ始まるゲーム場への移動に備えていた。
アーシアとゼノヴィアと白音ちゃん以外、駆王学園の夏の制服姿だ。
アーシアはシスター服。ゼノヴィアは出会った当初の頃に着ていた体のラインがクッキリとした戦闘服。白音ちゃんは『ISスーツ』という、兄さんが開発した白い『旧スク水』を連想させるようなスーツを着ている。
三人はその服装だと気合が入るらしい……白音ちゃんは初耳だけど。
シトリー眷属も俺たちと同じく駆王学園の制服だ。
「リアス。今度は、己の力で勝ちなさい」
「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい。眷属の皆さんもですよ?」
「がんばって、リアス姉さま!」
「まあ、今回教えられることは教えた。あとは気張れ」
「イッセー、とにかく本気で
「アーシア、足手まといだけは許さないからね?チームの要として」
「白音、私の教えた仙術の戦い方を使いなさいね。剣は身を守るときだけ使っていいにゃん」
皆が魔法陣の中にいる俺たちに応援や激励をくれる。この場にいないのは、サーゼクスさまとグレイフィアさんだけど、すでに要人専用の観戦会場へ移動されているようだ。そこに先生や兄さんたちもこのあと、移動するらしい。
緊張感が漂う最中、魔法陣は容赦なく輝きだした。
――ついにゲームが始まる!
D×D
魔法陣でジャンプして到着したのは―――テーブルだらけの場所だった。
「駆王学園近くのデパートが舞台とは、予想してなかったわ」
そう、ゲームの舞台は俺たちがよく通うデパートだった!!そのとき、店内アナウンスが聞こえてくる。
『皆さま、このたびはグレモリー家、シトリー家の「レーティングゲーム」の
アナウンスはライザー戦のときと同じくグレイフィアさんだ。
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。さっそくですが、今回のバトルフィールドはリアスさまとソーナさまの通われる学舎「駆王学園」の近隣に存在するデパートをゲームフィールドとして異空間にご用意致しました』
この建物は、高さより横面積が半端なく広い。しかも、屋上以外にも立体駐車場がある。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアスさまの本陣が二階の東側、ソーナさまの「本陣」は一階西側でございます。「兵士」の方は「プロモーション」をする際、相手の「本陣」まで
両陣地がデパートの端同士、かなり距離があるな。
「バトルフィールドは駒王学園近くのデパートを模したもの。屋内戦ね」
部長がカフェの壁に設置されている案内図を見ながら言った。
俺たちにとって、相当厳しい試合になりそうだ。
D×D
俺たちは要人席に移動し、それぞれ案内された席に着く。
「よっ、サーゼクス」
「龍介、よく来てくれたね」
「当たり前だろ、イッセーたちの試合を見ない訳にはいかない」
「そうだね」
「リューくん☆」
「セラ……フォルー、横チョキはしないでくれ」
「えー」
俺は、サーゼクスの隣に座り、セラフォルーとも挨拶を交わした。
「サーゼクス、本当にここに座っていいのか?」
「もちろんだよ、龍介」
確かに、俺は赤龍神帝に並ぶ存在(自称はしたくないが)。それなりの待遇を受けるのは当然になる。でも、ほかのメンバーはどうしたものかと……。
俺が後方に視線を向けていたのに気がついたサーゼクスが言う。
「龍介もだけど、『無限の龍神』の片割れ辰巳、『神の子』エール、『前四大魔王』の娘と家臣の娘『煉獄の七姉妹』、邪龍の筆頭格の一角『原初なる晦冥龍』アース、龍介と同じ『転生者』である理恵、奏、花楓、飛段、角都。ここまで要人がそろっているからだよ」
「だけど、そこに入っていないメンバーは?」
「オマケでいいじゃねぇか、龍介」
隣に座ったアザゼルが、話に割り込んできた。
「オマケって……」
「それに近いかな?そう思ってもらって構わないよ」
何気に酷いこと言うよな、サーゼクス。
「それにしても、イッセーたちには酷なルールにして……どうなることやら」
俺はモニターを見て呟いた。
そう、『デパートを破壊し尽くさないこと』がルールになったことで、リアス眷属は不利になる。メンバーの半数が『パワー中心』だから、破壊力のある攻撃を封じられたことになる。
三十分が経ち、自陣に集合している両陣営。
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は三時間の
「へぇ~、
「がんばって、イッセーくん!」
「アーシア!がんばって!!」
「白音、特訓の成果を見せるのよ!!」
後方の席から、レイナーレやマリアたちが応援をしている。
「悪い、サーゼクス。少しうるさくなりそう」
「構わないよ。その方が面白いからね」
「そうじゃのぅ、歓声あっての観戦じゃな」
何か、聞き覚えのある声がアザゼルの隣から聞こえた気がする……。
「久しいの。リュースケや」
ひょっこりと顔を出したのは――北欧神話で有名な主神、オーディンの爺さんだ。
「あ、お久しぶりです」
「そう畏まらんでいい。久しく会ったのじゃ、楽しくしようのぅ」
白髭たっぷりのオーディンの爺さんがそう言う。相変わらずだ。
なぜか、アザゼルの表情は引きつっている。
俺はモニターに視線を戻し、イッセーたちの戦況を見守る。
D×D
定刻になり、グレイフィアさんのアナウンスが流れた……ゲーム開始だ!
制限時間が三時間の
部長が気合を入れた表情と声で言う。
「指示はさっきの作戦通りよ。イッセーと白音、祐奈とゼノヴィアの二手に分かれるわ。イッセーと白音は店内からの進行。祐奈とゼノヴィアは立体駐車場を経由して進行よ。ギャスパーは神器の使用禁止だから、複数のコウモリに変化して店内の監視と報告。進行具合によって、私と朱乃とアーシアがイッセー側のルートを通って進むわ」
部長の指示を聞き、全員耳に通信用のイヤホンマイクを取り付ける。
「さて、かわいい私の下僕悪魔たち!私たちが勝つわよッ!」
『はいッ!』
全員気合が入った返事をする。
「ゼノヴィア、行くよ」
「あぁ、祐奈」
先に動いたのは祐奈とゼノヴィア。フロアを飛びだし、立体駐車場に繋がる道へ向かった。
祐奈の話では、確か駐車場に車は存在していたという。しかし、ただの作り物だったみたいだ。
二人の次は、俺と白音ちゃんだ。
「白音ちゃん、行こうか」
「はい、兄さま」
部長、朱乃さん、アーシアの応援と期待の声がかかった。
俺は応えるように三人に手を振って陣を出た。
俺と白音ちゃんも作戦通りに中央通路を歩いている。
白音ちゃんは白虎を起動し、パワード・スーツに身を包んで少し宙に浮いている。
いつ見ても殺人的な可愛さのある猫耳と尻尾を出して、周囲の気を感知している。
「……兄さま、こっち」
白音ちゃんが急に俺の袖を引っ張る。そして、並ぶ販売機の陰に隠れた。
「……動いています。真っ直ぐに向かって来ている者が二人」
「……あとどのぐらいで進む奴らと出会う?」
「……このままのペースなら、おそらく十分……いえ、五分以内です」
約五分か……まだ使えないな。ガス欠になったら、シャレにならないし。
「……訂正です!来ました!!」
「ッ!!」
俺は上を見上げた。
「――兵藤か!まずは一撃ッ!!」
匙だ!!ロープ……いや、神器のラインだ!ラインを使いターザンみたいに天井から降りてきて膝蹴りを仕掛けてくる!!
ドゴッ!!
俺の前に白音ちゃんが立ちはだかり、匙の攻撃を両腕のガントレットをクロスさせて防いだ。
匙の背には誰かが乗っている。白音ちゃんは、二人の体重分の攻撃を受けたのか!
俺はとっさに籠手を出現させて、白音ちゃんの背中に当てる。
『
『
直後、白音ちゃんのパワード・スーツの靴底で出ていた火花が止み、匙たちを振り払った。
「よー、兵藤」
現れたのは匙。その隣には匙の背中に乗っていた少女――生徒会のメンバーで、確か一年生だったよな?
匙の右腕には……黒い蛇が何匹もとぐろを巻いている状態だった。以前と形態が全くちがう!
白音ちゃんの左腕に蛇が巻かれており、匙の神器に繋がっていた。
「……仙術の前では無意味です」
右手に白いオーラが纏わりはじめ、鋭いモノに変化していく。
それを匙の蛇へ振り下ろした。
ザシュッ!!
聖剣でも簡単に斬れない蛇を、いとも容易く斬ってしまった!!
「……黒歌姉さまが、龍介兄さまの技を見ていて思いついたそうです」
それを会得したの!?すごいじゃないか、白音ちゃん!!
「伊達じゃないですね。流石、猫又姉妹です」
匙の後輩が白音ちゃんを称えた。
『リアス・グレモリーさまの「
D×D
『リアス・グレモリーさまの「
グレイフィアのアナウンスが聞こえた。たぶん、ギャスパーが戦闘不能にでもなったのだろう。
「へぇ~、ソーナちゃんの『
サーゼクスの隣に座っているセラフォルーが感心した声音で言った。
「まぁ、俺が覚えさせたわけじゃないけどな。どこかの妹バカな黒猫が教え込んだんだよ」
その黒猫こと黒歌は、白音の新技が上手くいったのを見て、テンションが上がっていた。
まぁ、それはいいとして。俺はモニターに視線を移した。
イッセーの戦闘に少しだけ変化が出てきたみたいだ。
接近戦に持ち込まれたイッセーは、匙の蛇を両腕に巻かれ、籠手には匙の神器と直結し、右手には画面外まで伸びているラインが繋がれていた。
イッセーの籠手の宝玉に文字が浮かんでいる……カウントダウンか?
ソーナの『兵士』と白音が相対している。
白音は仙術を使用せずに戦っている。
対してソーナの『兵士』の子は、白音の拳に当たらないように避けたり、出すタイミングを遅らせるかのように足や腰を狙った攻撃をしていた。
――なるほど、白音は体力の消耗を押さえるのとワンオフ・アビリティーの『
反対にソーナの『兵士』の子は、致命傷となる仙術を受けないように回避してるわけか。
「やるじゃない。白音の攻撃をかわし続けるなんて」
黒歌が賛辞を贈る。
一方、イッセーと匙は……。
ゴォォォン!!
匙の放った魔力が床に大きな穴を空けた。匙の魔力は、かなり練り込まれている。
ちょうどその時、試合が動いた。
白音の全身がブレ、高速でソーナの『兵士』の子に突っ込んでいく。しかし、ソーナの『兵士』の子は白音に蹴りを放って相打ちを狙う。だが、正面で衝突する寸前……。
ドゴッ!!
白音がソーナの『兵士』の子の背を殴りつけて、吹っ飛ばしてしまった。しかも、拳打ではなく……平手に指を曲げた打ち込みで、白い気をまとっていた。
起き上がろうとするソーナの『兵士』の子だが、直ぐに崩れて立ち上がれないでいた。
『
うつ伏せに横たわっているソーナの『兵士』の子が匙の方を少し見て、何かを呟いた後リタイヤの光に包まれた。
『ソーナ・シトリーさまの「兵士」一名、リタイア』
グレイフィアのアナウンスが聞こえた。
そろそろ序盤から中盤へ試合が動くころだ。