ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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放課後のラグナロク
鑑賞会


『シャハハハハハハ!!ついに貴様の最後だぜ!乳龍帝!』

 

――少し話が飛ぶが、ディオドラと『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』との戦闘から数日――体育祭の二日後の昼、暁全メンバー、リアス眷属、アザゼル、イリナは遠山家の地下一階にある大広間にて鑑賞会をしていた。

 

これ、守鶴(しゅかく)を擬人サイズに合わせたものだよな……砂の尻尾ついているし、CGがすご過ぎて本物と見分けがつきづらい。

 

『何を!この乳龍帝が貴様ら闇の軍団に負けるはずがない!行くぞ――(バラン)(ス・ブ)(レイク)!!』

 

こちらもイッセーそっくりな特撮ヒーローが画面で見事な変身を遂げる……同じく顔のみをCG加工をしてあるな。

 

巨大モニターに映る鑑賞作品は『乳龍帝おっぱいドラゴン』。特撮ヒーローで冥界のお茶の間で大ブレイクを起こしているとのこと。主に子供にね…。

 

物語のあらすじは――伝説のドラゴンと契約したイッセー・グレモリーが悪魔と敵対する邪悪な組織と戦う変身ヒーロー。

 

俺も含めて暁のメンバーは全員が初視聴だ。……つーか、一切事を聞かされてなかったんだけど?

 

「再現度がすごいですね…このおもちゃ版の『赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)』。音声も似ていますね」

 

俺の隣でおもちゃ版の『赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)』をいじっているベネチア。左腕に装着した『赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)』から『Boost(ブースト)!!』と機械の音声が流れる。

 

「確かによくできているな…イッセー、本物と比較してみよう」

 

「え?いいけど」

 

イッセーが左腕に『赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)』を出現させ、『Boost(ブースト)!!』と音声を出す。同時におもちゃ版も音声を出した。

 

重なって『Boost(ブースト)!!』と鳴り……あんまり変わらねぇ!!

 

「それ、かなりの自信作なんだぜ?今は試作品だが、直ぐに発売してやるさ!」

 

商魂がたくましくなりつつあるアザゼル。

 

『いくぞ、邪悪な怪獣よ!とおっ!ドラゴンキィィィィィィィィックッ!!』

 

見事なまでに決まる必殺技だが、直後に強力な技によりピンチに陥る主人公。

 

『おっぱいドラゴン!来たわよ!!』

 

そこにヒロインが登場する。ドレスを着たリアス――実際は、背格好の近い役者にCGの顔を使用したもの。

 

『おお!スイッチ姫。これで勝てる!』

 

『おっぱいドラゴン』がスイッチ姫の胸にタッチする。すると、主人公の体が赤く輝き始め、パワーを取り戻していく。

 

「味方側におっぱいドラゴンとスイッチ姫がいるんだよ。そして、ピンチになったとき、スイッチ姫の乳を触ることで無敵のおっぱいドラゴンになるのだ!!」

 

アザゼルがノリノリで説明をする。

 

スパンッ!!と、リアスがアザゼルの頭をハリセンで叩いた。

 

「……ちょっとアザゼル。グレイフィアに全部聞いたわよ?ス、スイッチ姫の案をグレモリー家の取材チームに送ったのはあなたよね?おかげで私が、こ、こんな……」

 

リアスはわなわなと震えている…噴火寸前と言ったところだろうな。

 

「いいじゃねぇか。ガキどもからも支持を得るようになって、逆におまえの人気が高まったって聞いたぜ?」

 

「……もう、冥界を歩けないわ」

 

アザゼルの言葉にため息交じりにつぶやくリアス。

 

『――守鶴(しゅかく)、タイムリミットです。主さまからの帰還の(めい)が降りていますよ?』

 

突如現れた巫女服の少女。顔は仮面で隠されていて正体不明。

 

『ケッ!仕方ねぇーな。覚えてろよ赤龍帝!今度会うとき、貴様の本当の最後だぜ!』

 

そう適役の守鶴(しゅかく)が言い残して、巫女服の少女と共に砂嵐の中へ消えて行った。

 

「シャハハハハハハ!!結構おもしろかったじゃねぇーか!」

 

「そうですね。話の流れではそろそろ私でしょうか?」

 

「僕も出るのかな?」

 

「オレも出たいぜ!ウキーッ!!」

 

(わたくし)もですね」

 

「俺もよ。出演してみたいってもんだ」

 

「ラッキーセブン。おもしろそう」

 

「ヘヘ、結構楽しめたな」

 

テーブルの上に両手の手の平サイズになって鎮座している守鶴(しゅかく)又旅(またたび)磯撫(いそぶ)孫悟空(そんごくう)穆王(こくおう)犀犬(さいけん)重明(ちょうめい)牛鬼(ぎゅうき)が話している。犀犬(さいけん)はプラスチックのトレイの上に座っているけど…。

 

九喇嘛(くらま)が『くだらん』って言っていたけど、内心嬉しそうだったよ」

 

奏が内にいる九喇嘛(くらま)のことを言ってきた。

 

九喇嘛(くらま)がツンデレ期に突入か?

 

「そういえば、イッセーくんって小さい頃、特撮ヒーロー大好きだったものね。私も付き合ってヒーローごっこしたわ」

 

と、イリナがはしゃぎながら変身ポーズをとる。――懐かしいな、俺は修行に明け暮れていたけど、たまに雑魚キャラ役を演じたことがあったな。

 

「確かにやったなぁ。あの頃のイリナは男の子っぽくて、やんちゃばかりしてた記憶があるよ。それが今じゃ、美少女さまなんだから、人間の成長ってわからない」

 

無自覚に口説き文句を言ったイッセーの言葉に、顔を真っ赤にするイリナ。

 

「もう!イッセーくんったら、そんな風に口説くんだから!!そ、そういう風にリアスさんたちを口説いていったのね……?怖い潜在能力だわ!!堕ちちゃう!私、堕天使に落ちちゃうぅぅぅっ!!」

 

展開していた翼を白黒と点滅させるイリナ。天使と堕天使の瀬戸際か…。

 

それを見てアザゼルが豪快に笑う。

 

「ハハハハ、安心しろ。堕天歓迎だぜ?ミカエル直属の部下だ。VIP待遇で席を用意してやる」

 

「いやぁぁぁぁっ!!堕天使のボスが私を勧誘してくるぅぅぅぅぅっ!!ミカエルさま、お助けくださぁぁぁぁぁいっ!」

 

イリナは涙目で天へ祈りを捧げていた。

 

その様子を見て笑っている堕天使三人――カラワーナ、レイナーレ、ミッテルトに声をかける。

 

「なぁ、確か…おまえたちは『神の()子を()見張()る者()』の幹部に昇進したんだよな?アザゼルから聞いた話だが…」

 

「はい。アザゼルさまから昇進の話を受けて、私とカラワーナ、ミッテルトは承諾しました。今は仮の幹部ですが、いずれは正式になるそうです」

 

俺の問いにレイナーレが答える。

 

「…そうか。また、子の鳥を手放す親鳥の気分になりつつあるな……」

 

俺はボソリと聞こえない程度につぶやいた。

 

エンディングの終わった『おっぱいドラゴン』の映像を切って投影機械を片付ける。

 

「イリナちゃんを口説くのもいいですけれど、そろそろ約束を果たしてもらわないと困りますわ」

 

突然、イッセーの背中に抱きついて顔を寄せた朱乃。

 

「約束?」

 

「デートの約束ですわ。ほら、ディオドラ・アスタロトとの戦いでイッセーくんが言ってくれたでしょう?」

 

「あー、確かに言いました。覚えていたんですね」

 

あれは俺の悪戯的(イタズラ)なアドバイスだったのだが…。朱乃は本気になっているみたいだぞ、イッセー。

 

「もちろん。……もしかして、あれはウソだったの……?」

 

目を潤ませて悲しそうな表情をする朱乃。俺もあの系統の精神攻撃に滅法弱い。

 

「ウ、ウソじゃないです!!」

 

少し慌て気味に返事をしたイッセー。おまえも同志か…。

 

すると、朱乃はさらに力強くイッセーを抱きしめ、心底嬉しそうな声音で言う。

 

「うれしい!じゃあ、今度の休日、デートね。うふふ、イッセーくんと初デート♪」

 

そんな中、二人を睨むリアスたち……。

 

俺はその空気に当てられ、そっと部屋を出ようとしたとき、黒歌たちの目がこちらを向いて光った。

 

「(…何か、すごく見られている気がしてならないんだが……)」

 

直後、速足で大広間をあとにする俺であった。

 

                    D×D

 

駒王学園昼休み。俺は松田と元浜、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、夕麻、理子、辰巳と桐生で弁当を食べていた。

 

「そういや、もうすぐ修学旅行だぜ?班を決めないとな」

 

元浜が卵焼きをつまみながら言う。

 

「えっと、三、四名で組むんだっけ?」

 

「そうそう。泊まるとこが四人部屋らしいからな。ま、俺ら三人で組むしかない。嫌われ者だからな。俺ら」

 

そうだな…俺たちと組む女子はないな。アーシアたち七人とは仲がいいから…こうして、一緒に弁当も食ってるし。しかし、他の女子は全滅に近い。

 

「エロ三人組。修学旅行のとき、うちらと組まない?美少女七名でウッハウッハよ?」

 

「あぁ、おまえ以外の美少女六人組な」

 

桐生の申し出にうなずく松田。その頭を思いっきり桐生が叩いた。

 

「俺はもちろん、OKな」

 

そう返事をしたとき、アーシアとゼノヴィア、イリナ、夕麻、理子の表情が明るくなったように見えた……気のせいかな?

 

「うーむ、最近、イッセー専用のフラグが辺りに散らばっているように思えるぞ?……そんなもの視認できたら、全力を用いてハンマーで叩き壊すんだけどな……」

 

 呪詛のように言って眼鏡をくいっと上げる元浜…。

 

「てなわけで、修学旅行はこの十人で行動しましょう。清水寺!そして金閣寺銀閣寺が私たちを待っているわ!!」

 

桐生がメガネをキラリとさせながら宣言した。

 

というわけで、旅行の班が決まった。男子は俺、松田、元浜の三名。女子はアーシア、ゼノヴィア、イリナ、桐生の四名と夕麻、理子、辰巳の三名の七名。このメンバーで京都の町を巡ることになる。

 

……そういや、俺、二天龍のドライグを宿しているから、天龍寺に行ってみるのもいいかも。

 

よし。そうなれば、今度アーシアたちと旅行に必要な品を買いに行こうかな。

 

                    D×D

 

――放課後の部室。

 

俺たちは学校の下校時間を狙い、こっそりと裏口から旧校舎へ侵入する。部室に入ると、お茶をしていたイッセーたちが、初めての修学旅行のことを楽しそうに話していた。

 

顧問で部室にいるリエ。副顧問のアザゼルは来ていない。冥界に帰って会議をしている。俺は面倒見の係としてその会議には出席をしていない。

 

「部長と朱乃さんは去年どこに行ったんですか?」

 

イッセーの質問に朱乃が答える。

 

「私たちも京都ですわよ。部長と一緒に金閣寺、銀閣寺と名所を回ったものですわ」

 

リアスがうなずきながら続ける。

 

「そうね。けれど、以外に三泊四日でも行ける場所は限られてしまうわ。あなたたちも高望みせず、詳細な時間設定を先に決めてから行動したほうがいいわよ?日程に見学内容と食事の時間をキチンといれておかないと痛い目に遭うわね。バスや地下鉄での移動が主になるでしょうけれど、案外移動も時間がかかってしまうものだわ」

 

「移動の時間まできちんと把握しておかなかったのがいけませんでしたわね。部長ったらこれも見るあれも見るとやっていたら、最後に訪れる予定だった二条城に行く時間がなくなってしまって、駅のホームで悔しそうに地団駄踏んでいましたわ」

 

朱乃が小さく笑って言うと、リアスは頬を赤らめた。

 

「もう、それは言わない約束でしょう?私もはしゃぎすぎたわ。日本好きの私としては憧れの京都だったから、必要以上に街並みやお土産屋さんに目が行ってしまったの」

 

思い出を楽しそうに語るリアス。かなり京都が楽しかったのだろうな。

 

「修学旅行で訪れるまで京都に行ったことなかったんですか?移動は魔法陣ですればいいと思いますし」

 

イッセーがそう言うと、リアスは人差し指を左右にノンノンと振るう。

 

「わかってないわね、イッセー。修学旅行で初めて京都に行くからいいのよ?それに移動を魔法陣でするなんて、そんな野暮なことはしないわ。憧れの古都だからこそ、自分の足で回って、空気を肌で感じたかったの」

 

あ~あ、リアスの目が爛々と輝いているぞ。

 

「あ、そうそう。俺たちも家族旅行という項目で京都に行くので、そこのところよろしく」

 

俺がそう言うと、リエ以外の全員が驚いていた。イッセーなんか、カップを危うく落としそうになるほど慌てていた。

 

「そ、そうなのですか…。そうだわ!旅行もいいけれど、そろそろ学園祭の出し物についても話し合わないといけないわ」

 

慌てて切り替えられた話題…おいおい。

 

「あー、学園祭も近かったですね。うちの高校って、体育祭、修学旅行、学園祭は間が短くて連続でおこなうからな。そう考えると俺ら二年生は大変だ」

 

いい話を聞いたぞ?学園祭かぁ……転生前以来だな。

 

リアスは朱乃からプリントを受け取って、テーブルの上に置いた。どうやら、オカルト研究部の出し物をそれに書いて生徒会に提出するみたいだ。

 

「だからこそ、いまのうちに学園祭について相談して、準備しておかないと。先に決めてしまえば、あなたたちが旅行に行っている間に三年生と一年生で準備できるものね。今年はメンバーが多くて助かるわ」

 

……多くてじゃなく、多すぎるのでは?

 

「学園祭!楽しみです!!」

 

楽しそうにアーシアが言った。

 

「うん。私もハイスクールでの催しは楽しいぞ。体育祭も最高だった」

 

ゼノヴィアの瞳は輝いている。この間の体育祭で応援席から見てはいたものの、ぶっちぎりで各種競技の一位を乱獲していた。

 

「私もこういうのは初めてだから楽しみだわ~。良い時期に転入したよね、私!これもミカエルさまのお導きだわ!!」

 

と、イリナが天に祈るポーズでそう言う。後ろで話しているカラワーナたちも同じようで、教会セブンスは学園祭を心底楽しみにしているみたいだ。

 

「去年は……確かお化け屋敷でしたっけ?俺、その時は所属してませんでしたけど、本格的な造りで話題になっていましたよ」

 

イッセーの質問に白音が答えた。

 

「……兄さま、それは本物のお化けでしたよ」

 

「あら、バレていたのね。そうよ。本物のお化けを使っていたわ。それは怖かったでしょうね」

 

白音の返答にリアスがネタばらしをした。

 

「ほ、本物だったんですか……?」

 

イッセーが驚きながら訊くと、リアスは笑顔で答えた。

 

「えぇ。人間に危害を与えない妖怪に依頼して、お化け屋敷で脅かす役をやってもらったわ。その妖怪たちも仕事が無くて困っていたから、お互いちょうど良かったのよ。おかげで大盛況だったっわね」

 

ぷっ!…………リストラされたサラリーマンか!!

 

「あとで、生徒会に怒られましたわね。当時の副会長だったソーナ会長から、『本物を使うなんてルール無視もいいところだわ!』って怒られましたわ」

 

朱乃が少し懐かしそうに言った。……誰から見ても、反則は反則だな。

 

「じゃあ、今年もお化け屋敷ですか?段ボールヴァンパイアのサーカスでもやりますか?」

 

イッセーの発言に、ギャスパーが頬をプクリと膨らませてイッセーの頭をポカポカと叩く。

 

「先輩のいじわるぅぅぅぅぅっ!!すぐに僕をネタにするんだからぁっ!」

 

「イッセー、ギャスパーをあまりいじるなよ?唯一の男子の後輩だから、大切にしてやれ」

 

「わかっているよ。ちゃんと面倒見るから。でも、その分いじるけど!」

 

俺の言葉に半笑いで返してきたイッセー。

 

「うーん…………とりあえず、新しい試みを――」

 

もう少しで話し終わるところで、イッセーたちの携帯が一斉に鳴った。

 

全員が顔を見合わせる……合図だ。

 

リアスは息を整えたあと、真剣な声音で言った。

 

「――行きましょう」

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