――翌朝…イッセーと朱乃のデートの日。
俺は朝食後の片づけを終え、自室で出かける
……そう。俺も今日はデートをすることになったんだ。
これは昨日、浮かれていた朱乃の一言により、黒歌たちが大喧嘩。最終的にジャンケンで収まったものの…夕、朝食時間の沈黙は痛かった。
そのジャンケンで勝ったのがリエだ。しかも、『デート』をかけたジャンケンだったそうで……。
着替え終えて部屋を出る。廊下を歩いて玄関で靴を履き、約束の待ち合わせ場所に向かう。
偶然にもイッセーと同じ方向だったため、会話をしながら歩いていた。
ある駅のコンビニの前で待ち合わせらしいイッセーと別れて、俺は駅内にある本屋の前でリエを待つ。
周囲に目を配らせてみる。先ほど通ってきた街路樹は多少、秋の様相を見せてきていたが、まだ少し夏の陽気は残っている。俺の服装は長袖。特別暑くは感じないが半袖でも良かったかもな……。
再度自身の服装を見てみる。上は刺繍の入った黒地のシャツに『朱』の字が入っている指輪をチェーンに通したネックレス。下はチェーンがついたアクセサリー付きのダメージジーパンだ。
待ち合わせ時間である午前十時になろうとしたとき、白一色のワンピースを着たリエが俺の眼前に立っていた。
「お待たせしましたぁ」
「おはよう。さっき来たばかりだから、気にしないでいいよ」
リエが着ている白一色のワンピースは、転生前に俺が買って渡したもの。懐かしさと清楚さの両方を感じていた。
リエが俺の隣に立って腕を組んでくる。すると、周囲から殺気めいたものを感じ取った…。
俺はそっと目配せしてみると、隣のコンビニの中で本を読むフリをして、こっちを見ている四人組や、携帯電話をいじりながら様子を見ている者など、変装しているがバレバレだ。まぁ、その中にはエールとユーの姿は見当たらない…おそらく、家で留守をしていることだと思う。
クスクスと隣で笑っているリエ。
「リエの服、懐かしいね。ここに来て見ることが出来て嬉しいな」
「そうですかぁ?」
リエは小さく首をかしげ、頬を薄く朱に染めている。
「よし、行こうか」
「はい♪」
ご機嫌なリエを見たあと、腕を組んだまま街へ繰り出した。
D×D
俺は常時、写輪眼を発動している。特殊なコンタクトの効果で瞳は通常時と変わらない黒色だ。…エスコートするのに、人にぶつかっては元も子もないからな。
町中にある服のブランドショップへ足を踏み入れると、そこは男子禁制の園。とても居心地が悪いが、リエの威厳を損ねれば確実にこれより痛い所に連れ込まれかねない。
俺は恥を忍んで女性の聖地へ入っていく。
進んでいくと、服などを見ていた女性の視線が俺たち……特に俺へ集中する。
変態を見る目だと思っていたら、「きゃあ、イケメンよ!どこのアイドルかしら?」とか、「芸能人かしら?あの子が羨ましい…」など、小声で話していますが、写輪眼を通して読唇術が使える俺は「聞こえていますよ?」と言ってやりたい……恥ずかしいからしないけどね。
「リュースケさぁん、これとこれはどちらが似合いますかぁ?」
リエが右手に黒地にピンク色の刺繍が入ったワンピースと、左手に黒地に白の水玉模様の入ったワンピースを比べてくる。
「ん~?試着してくれないか?それから選んでみようと思う」
リエはクスリと笑って試着室へ入る。その間俺は、近くにある待機用の椅子に腰を下ろして静かに待っていた。
それから数分が経ち、試着室からリエが黒地にピンク色の刺繍が入ったワンピースを着て出てきた。
「どうでしょうかぁ~?」
いつもと違う感覚が押し寄せる。何て言うのかな?可愛いと言うべきだろうか…?
「う、うん。似合っているよ。いつもと違う雰囲気でいいよ」
「どんな風にですかぁ?」
覗き込むように俺を下から見上げるリエ。
「そ、そうだなぁ…。もう一着も見てみたいな」
我ながら苦しい逃げ言葉だ。だが、リエはクスリと笑って試着室に戻った。
「…ふぅ。さすがにあれは卑怯だな……」
俺は先ほどリエが見上げてきたシーンを思い出す。少しばかり顔が熱くなったのを感じたので、頭を振って現実に帰還する。
それから数分が経ち、試着室からリエが黒地に白の水玉模様の入ったワンピースを着て出てきた。
「う~ん……両方とも似合っていて可愛かったからなぁ。…両方じゃダメか?俺は両方を着こなしているリエが見てみたいな」
「そうですねぇ~」
リエは少し嬉しそうな表情で考える素振りを見せた後、俺の顔を覗き込んで言う。
「両方とも買いますねぇ~♪」
俺は抱きつきかけた手を素早く引っ込めて頷く。
――危うく変質者扱いになるところだった……。
俺は着替えてきたリエから二着のワンピースを受け取り、会計を済ませて店を出る。
「さて、次はどこに行く?」
「そうですねぇ~、リュースケさんのお勧めはありますかぁ?」
「ゲームセンターでも行くか?向こうにいた頃、シューティングで勝負したよな」
「あぁ~、あの銃で撃って倒していくゲームですねぇ。いいですよぉ、勝負しましょう~」
そういう事で、俺とリエは近くにあるゲームセンターへ足を運んだ。
D×D
ゲーセンに入ると、お目当てのゲームコーナーへ足を進めていく。
「お、あったあった。これで勝負だな」
俺は二人プレイヤー用の機械の前に立ち、百円玉を二枚入れて準備をする。
リエも隣に立って銃を構える。
俺とリエの構えは片手。ゲームがスタートすると同時に足元のバーを踏み込み、射撃体勢に入る。
基本使う銃はセミオートのハンドガン。足元のバーを踏み放して手元の専用の銃のトリガーを引くことで、小銃、ショットガン、
物陰から現れる敵の武装集団。灰色の武装服は普通のハンドガンで撃ってくるが、黄色は小銃、赤は投撃を中心に攻撃を仕掛けてくる。しかも、灰色は一発当てるだけで倒れてくれるが、黄色や赤はHPバーがあり、ある程度当てないと倒れてくれない。その分、小銃やショットガンの有限である弾の補充には欠かせない。
被弾しそうになると、モニターに赤い輪が被弾する銃弾や武器の周囲に出現する。着弾する前に足元のバーを放せば回避可能だけどね。
「しつこいですねぇ~」
俺とリエは無傷のまま、第一ステージの奥まで進んでいる。そこで、機密に作られていた小型の昆虫兵器(ゴルフボールぐらい)が敵に使用されて大量に前方の壁を伝ってこっちへ来る。
「おっと」
ギリギリの場所までハンドガンで応戦し、小銃に切り替えて一掃していく。
制限時間終了とともに、デモが流れて第一ステージを終了する。
第二、第三、第四を何無くクリアし、第五ステージのボス戦へと突入する。
敵の起動させた大型機械兵器を停止させればゲームクリアだが、これが中々難しい。
「よっと」
俺は被弾してきたロケットパンチを回避して、相手の防御が緩むまでハンドガン、小銃、ショットガンを撃ち込んでいく。リエも同じように撃ち込んでいた。
「そこ!」
俺は防御の緩んだ兵器の顔面を狙って
兵器のHPバーがかなり減り、また防御が厚くなる。
この動作の繰り返しで、最後の一発を同時に撃ち込みHPバーを全損させた。
デモが流れ、トータル画面が出現する。
今までの最高記録を遥かに超える数値が叩き出され、上位の一位と二位がリエと俺のネームと入れ替えられた。
点数はリエの勝ち。120ポイント差で負けた…。もちろんだが、ライフは一回も削られてないぞ。
俺とリエは銃を置いて荷物を持つ。そろそろ移動しようかと思い、振り向くと――。
パチパチパチ――。
ギャラリーが出来ていて、拍手の喝采だった。
俺とリエは軽く頭を提げながらあとにする。
――余談だが、この記録を超すものは現れなかったそうな……。
次に訪れた場所は――。
「懐かしいですねぇ」
ボールを転がしてピンを倒していくゲーム場――ボーリング場に来たんだ。
手続きを済ませてシューズを借り、各々に合った球を選ぶと準備万端。
俺は16ポンドのボールを。リエは……同じく16ポンド…!!
「リ、リエ。さすがにその球は不釣り合いじゃ…?」
「いいえ~、これでも少し軽い方ですよぉ?」
そうだった…。リエは『
俺は渋々頷いてボールをセットする。
「一投目は…リエだな」
リエはボールを持って……投げる。
一般人より二回りほど速い速度でストライクをキメた。
戻ってきたリエとタッチを交わし、ボールをとる。
「よっと」
俺はリエより遅い速度で投球した。
余裕でストライクを取る俺。
その時、あの殺気を背中に感じた…。
俺はそっと後方に目をやる。すると、少し離れたビリヤードのコーナーで俺たちに目を光らせている集団がいた。しかも、ビリヤードを打ちながら…。
俺は視線を急いで戻し、ストライクを取ったリエとタッチを交わして投球する。
交互に投球していき、二ゲームを終わらせた。
勝負は五分と五分。どっちも連続パーフェクトゲーム。
シューズを返却して外に出る。ちらりとリエが手鏡で後方を確認した後、俺の手を取って駆け出した!?
「面白そうなのでぇ、
俺は携帯電話の自撮りモードで後方を確認する。そこでは、黒歌たちは俺たちが逃げ出すと知って慌てて駆け出していた。リエに引かれるまま、町中を右に曲がったり、左に曲がったりして、黒歌たちを撒こうとする。
数分走ったところで、小道に入ったのが運の尽きだった。
「行き止まりか……」
目の前には建物の壁がそびえ立っており、後方からは「見つけたにゃっ!!」と黒歌たちの声が聞こえる。
「リエ、悪いがしっかり掴まっていろよ」
「え?え~とぉ……」
俺は袋をリエに持たせてお姫様抱っこをする。直後、後方で慌てて駈け出した靴音が複数聞こえた。
「――
俺は間一髪のところで
その転移場所は――。
「――に、兄さん?」
イッセーと朱乃の前だった!