ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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父と娘

「――に、兄さん?」

 

二メートル先ほどにイッセーと朱乃が、ぽかんとした表情で突っ立っていた。

 

「悪いな二人とも。追っかけに会ったから、安全そうなところに避難してきたつもりだったんだが……」

 

俺はリエを下ろしながら周囲を見回してみる。……視界には『休憩○円』『宿泊○円』の文字があちらこちらに……。この辺り一面は、ラブホテルばかりだ。

 

「……仕方ないか。隠れ(みの)として使わせてもらおうか」

 

「リュースケさん?一応言っておきますがぁ、イッセーくんと朱乃さんは高校生ですよぉ?」

 

「あ~、そうだったな。どうしたものか……」

 

俺が悩んでいると、目の前でいきなりイッセーが鼻の下を伸ばして鼻血を大量に流していた!!

 

その隣では、もじもじと顔を真っ赤にさせてイッセーの服の端を掴んでいる朱乃の姿が目に入る。

 

「「………」」

 

俺とリエは言葉が出ない。俺なんか、二度見をしてしまったぐらい驚いているんだぞ!?

 

ちょうどそのとき、イッセーの後ろ……俺の正面から話しかけてくる者がいた。

 

「まったく、昼間っから、女を抱こうなどとやりおるわい、赤龍帝の小僧」

 

白髭を伸ばし、帽子を被ったラフな格好のお爺さん。その左目には水晶の入った眼鏡をしている。

 

その背後にはガタイの良い男と、パンツスーツを着込んだ銀髪のストレートヘアの女性。

 

俺はこの三人を知っている……と言うか、顔見知りにも程度あるけどね。

 

「オーディンの爺さん、お久しぶりです」

 

「ほっほっほ、久しいの。北の国から遠路はるばる来たぞい」

 

オーディンの爺さんは、相変わらずのいやらしい笑みを浮かべて笑う。

 

「ほっほっほ」

 

「ど、どうして、ここに?」

 

イッセーが展開に頭が追い付いていない。

 

「オーディンさま!こ、このような場所をうろうろとされては困ります!か、神さまなのですから、キチンとなさってください!」

 

オーディンの爺さんに付きそいであるヴァルキリーことロスヴァイセが叱るが、オーディンの爺さんは軽くあしらう。

 

「よいではないか、ロスヴァイセ。お主、勇者をもてなすヴァルキリーなんじゃから、こういう風景もよく見て覚えるんじゃな」

 

「どうせ、私は色気のないヴァルキリーですよ。あなたたちもお昼からこんなところにいちゃだめよ。ハイスクールの生徒でしょ?お家に戻って勉強しなさい勉強」

 

ロスヴァイセに怒られるイッセーと朱乃。俺の隣では、リエがクスクスと笑っている。

 

俺はふとイッセーと朱乃を見ると、朱乃がもう一人のガタイの良い男――バラキエルに詰め寄られていた。

 

「……あ、あなたは」

 

朱乃は目を見開いて、驚いている。……無理もないことだな。

 

「朱乃、これはどういうことだ?」

 

バラキエルはキレ気味で、声音に怒気が含まれている。

 

「……か、関係ないでしょ!そ、それよりもどうしてあなたがここにいるのよ!」

 

朱乃は目つきを鋭くして、にらみ付けていた。そこには先ほどの雰囲気は微塵もない。

 

「それはいま、どうでもいい!とにかく、ここを離れろ。おまえにはまだ早い」

 

朱乃の腕をつかみ、強引にイッセーから引き離そうとしている。

 

「いや!離して!」

 

抵抗している朱乃とバラキエルの間にイッセーが割り込んで、バラキエルの腕を引っ張った。

 

「何だか、わからないけど、朱乃さんに触れないでくれ。嫌がっているだろう。つーか、あんた何者だよ?」

 

『…………』

 

一瞬、空気が固まったが、直ぐに戻ったようにバラキエルが口を開いた。

 

「おまえ、俺のことを覚えていないのか?」

 

「……?」

 

バラキエルの質問に頭をかしげたイッセー。

 

仕方なく俺が間に入ってバラキエルの紹介をする。

 

「はぁ…、イッセー。この人は、堕天使バラキエル。朱乃の父親だ」

 

「……あぁ~、思い出したよ。そう言えば――」

 

少しの間を開けてイッセーは叫んだ。

 

「――って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!な、なな、何でこんなところにいるんですか!?」

 

おいおい、状況から判断しろよ。どう見てもオーディンの爺さんの護衛だろうに…。

 

「思い出したか…改めて名乗っておこう。堕天使組織グリゴリ幹部、バラキエルだ。今日はオーディン殿の護衛として来ている」

 

ハハハ、あとで頭を下げておかないとな……諸々の理由で。

 

                    D×D

 

「ほっほっほ、というわけで訪日したぞい」

 

遠山家の最上階にあるVIPルームでオーディンの爺さんは楽しそうに笑っている。

 

家には遠山家の全員とグレモリー眷属全員、アザゼル、緊急招集で冥界から角都と飛段を呼んで暁のメンバーもそろっている。

 

結局、俺とリエ、イッセーと朱乃のデートは中断。そのあと、黒歌たちに連絡し全員と合流して、家までオーディンの爺さんを連れて帰ってきた。

 

バラキエルと朱乃の邂逅後、朱乃は不機嫌になってしまっている。

 

あの日の出来事が、この二人の溝を深くした状態のままだな……。

 

「どうぞ、粗茶になりますが」

 

ベネチアがお盆に乗せた湯呑をオーディンの爺さんの前に置く。

 

――緊急だったから黒歌たちに何もされなかったが、これが終わった後には確実に息の根を止めに来るな…俺のだけれど。

 

 

「かまわんでいいぞい。しかし、相変わらずデカいのぅ。あっちも、こっちも、そっちもデカいのぅ」

 

相変わらず女性の大きな胸を見回すオーディンの爺さん。殺されても知らないぞ、特にリエから…。

 

「もう!オーディンさまったら、いやらしい目線を送っちゃダメです!!こちらは魔王ルシファーさまの妹君なのですよ!」

 

ヴァルキリーのロスヴァイセがオーディンの爺さんの頭をハリセンで叩いていた。

 

「まったく、堅いのぉ。サーゼクスの妹といえばべっぴんさんでグラマーじゃからな、そりゃ、わしだって乳ぐらいまた見たくもなるわい。と、こやつはワシのお付きヴァルキリー。名は―――」

 

「ロスヴァイセと申します。日本にいる間、お世話になります。以後、お見知りおきを」

 

オーディンの爺さんの紹介でロスヴァイセがあいさつをする。

 

「彼氏いない歴=年齢の生娘(きむすめ)ヴァルキリーじゃ」

 

爺さんがいやらしい顔つきで言うと、ロスヴァイセが酷く狼狽し始めた。

 

「そ、そ、それは関係ないじゃないですかぁぁぁっ!わ、私だって、好きでいままで彼氏ができなかったわけじゃないんですからね!好きで処女なわけじゃないじゃなぁぁぁぁぁいっ!うぅぅっ!!」

 

ロスヴァイセはその場に崩れおれて、床を叩きだした。

 

「まあ、戦乙女の業界も厳しいんじゃよ。器量よしでもなかなか芽吹かない者も多いからのぉ。最近では英雄や勇者の数も減ったもんでな、経費削減でヴァルキリー部署が縮小傾向での、こやつもわしのお付きになるまで、職場の隅にいたのじゃよ」

 

オーディンの爺さんはうんうんとうなずきながら言う。

 

「人間界のリストラ同様に氷河期なんですね……」

 

花楓が頷きながらそう言った。

 

「そうじゃのぅ。どこの世界も厳しいからのぅ」

 

……って、話が脱線しているし!

 

アザゼルがやり取りに苦笑しながらも、脱線から戻すように口を開く。

 

「爺さんが日本にいる間、俺たちで護衛することになっている。バラキエルは堕天使側のバックアップ要員だ。俺も最近忙しくて、ここにいられるのも限られているからな。その間、俺の代わりにバラキエルが見てくれるだろう」

 

「よろしく頼む」

 

と、言葉少なめにバラキエルがあいさつをくれた。

 

オーディンの爺さんの護衛か……楽しそうだな。

 

「爺さん、来日するのにはちょっと早すぎたんじゃないか?俺が聞いていた日程はもう少し先だったはずだが。今回来日の主目的は日本の神々と話しをつけたいからだろう?ミカエルとサーゼクスが仲介で、俺が会議に同席――と」

 

アザゼルが茶を飲みつつ訊いた。

 

「俺はパスだからな」

 

俺は間髪入れずに拒否の意を表した。

 

「安心しろ、龍介の同席はないよ。今回はミカエルとサーゼクスが『休ませてあげたらどうだ?』と切り出してきてな…。俺も無理ばかりはさせたくないってことで、おまえは出席しなくていい」

 

「二人に礼を伝えてくれ。ここ最近、尋問やら会議やらで疲れているんだよな……」

 

俺は軽く伸びをした。

 

「まあの。それと我が国の内情で少々厄介事……というよりも厄介なもんにわしのやり方を批難されておってな。事を起こされる前に早めに行動しておこうと思ってのぉ。日本の神々といくつか話しをしておきたいんじゃよ。いままで閉鎖的にやっとって交流すらなかったからのぉ」

 

オーディンの爺さんは長い白髭をさすりながら嘆息していた。

 

「厄介事って、ヴァン神族にでも狙われたクチか?お願いだから『神々の黄昏(ラグナロク)』を勝手に起こさないでくれよ、爺さん」

 

神々の黄昏(ラグナロク)』と言う語を聞いて、周囲の空気が一瞬だけ変化した。

 

「ヴァン神族はどうでもいいんじゃがな……。ま、この話をしていても仕方ないの。それよりもアザゼル坊。どうも『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』は(バラン)(ス・ブ)(レイク)できる使い手を増やしているようじゃな。怖いのぉ。あれは稀有(けう)な現象と聞いていたんじゃが?」

 

イッセーやリアス達は皆驚いて顔を見合わせていた。

 

「ああ、レアだぜ。だが、どっかのバカがてっとり早く、それでいて怖ろしくわかりやすい強引な方法でレアな現象を乱発させようとしているのさ。それは(セイクリッ)(ド・ギア)に詳しい者なら一度は思いつくが、実行するとなると各方面から批判されるためにやれなかったことだ。成功しても失敗しても大批判は確定だからな」

 

「例のアレか?アザゼル」

 

俺の言葉にアザゼルは答えた。

 

「そうだ、リアスたちの報告書でおおむね合っている。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦だよ。まず、世界中から(セイクリッ)(ド・ギア)を持つ人間を無理矢理かき集める。ほとんど拉致だ。そして、洗脳。次に強者が集う場所――超常の存在が住まう重要拠点に(セイクリッ)(ド・ギア)を持つ者を送る。それを(バランス)(・ブレイカー)に至る者が出るまで続けることさ。至ったら、強制的に魔方陣で帰還させる。おまえらの対峙した影使いが逃げたのも(バランス)(・ブレイカー)に至ったか、至りかけたからだろうな」

 

アザゼルは話を続ける。

 

「これらのことはどの勢力も、思いついたとしても実際にはやれはしない。仮に協定を結ぶ前の俺が悪魔と天使の拠点に向かって同じことをすれば批判を受けると共に戦争開始の秒読み段階に発展する。自分はそれを望んでいなかった。だが、奴らはテロリストだからこそそれをやりやがったのさ」

 

俺はイッセーの方を見る。

 

「イッセー、冥界での特訓の事…まだ根に持っているか?」

 

「似た状況で(バランス)(・ブレイカー)に至ったんだよ?半分根に持っているよ」

 

「よし、今度の修行は『九割がた死亡しました』と言えるものでしてやろう」

 

「――っ!!酷いよ、兄さん」

 

当たり前だ、ファイトだイッセー!

 

「どちらにしろ、人間をそんな方法で拉致、洗脳して(バランス)(・ブレイカー)にさせるってのはテロリスト集団『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』ならではの行動ってわけだ」

 

「それをやっている連中はどういう輩なんですか?」

 

イッセーの問いにアザゼルは続ける。

 

「英雄派のメンバーは伝説の勇者や英雄さまの子孫が集まっていらっしゃる。身体能力は天使や悪魔にひけを取らないだろう。さらに(セイクリッ)(ド・ギア)や伝説の武具を所有。その上、(セイクリッ)(ド・ギア)(バランス)(・ブレイカー)に至っている上に、神をも倒せる力を持つ神滅具(ロンギヌス)だと倍プッシュなんてものじゃすまなくなるわけだ。報告では、英雄派はオーフィスの蛇に手を出さない傾向が強いようだから、底上げに関してはまだわからんが」

 

「今は様子見だな…。その時が来れば、花楓の(セイクリッ)(ド・ギア)で同等のものを用いればいいのか」

 

俺は花楓に視線を向けると、花楓は小さくともしっかりと頷いた。

 

「まぁ、調査中の事柄だ。ここでどうこう言っても始まらん。爺さん、どこか行きたいところはあるか?」

 

アザゼルが訊くと、オーディンの爺さんはいやらしい顔つきで両手の五指をわしゃわしゃさせた。

 

「おっぱいパブに行きたいのぉ!!」

 

「ハッハッ!!見るところが違いますな、主神殿。俺んところの若い娘がこの町でVIP用の店を最近開いたんだよ。そこに招待しちゃうぜ!!」

 

「うほほほほっ!さっすが、アザゼル坊じゃ!わかっとるのぅ、でっかい胸のをしこたま用意しておくれ!たくさん揉むぞい!!」

 

「ついてこい、クソジジイ!!おいでませ、和の国ニッポン!!着物の帯をクルクルするか?あれは日本来たら一度はやっておくべきだぞ!和の心を教えてやる!!」

 

「たまらんのー、たまらんのー」

 

「龍介たちも来るか?年齢は合法だろ?」

 

俺と飛段と角都は顔を見合わせて、はぁっ…と息をついて言った。

 

「「「行かんッ!!」」」

 

それを聞いたアザゼルだが、顔色一つ変えずにオーディンの爺さんと退室してしまった。

 

「オーディンさま、わ、私もついて行きます!!」

 

そのあとをロスヴァイセが追って付いて行ってしまった。

 

                    D×D

 

俺は風呂の用意をして階段を上っていると、五階廊下から何やら話し声が聞こえてきた。

 

「あ、逢い引きは認めん!!」

 

バチッ…バチッ!!

 

スパークノイズと共に、バラキエルの怒声が聞こえた。

 

俺は階段の隅で様子をうかがってみる。

 

そっと角から気配を消して覗くと、朱乃がバラキエルとイッセーの間に入り込み、イッセーを庇うように抱きしめていた。

 

「彼に触らないで。私からこの人を取らないでください。いまの私には彼が必要なのよ……。だから、ここから消えて!あなたなんて私の父親なんかじゃない!!」

 

「……すまん」

 

朱乃の叫びに瞑目したバラキエルが、ゆっくりとこっちに向かって歩いてきた。

 

俺は目の前を意気消沈させて降りていくバラキエルに声をかけた。

 

「……バラキエル、少し風呂にでも入らないか?」

 

「……そうだな、そうさせてもらおう」

 

その背中は寂しそうに見えたが、優しい言葉をかけるのは無粋な真似だ。

 

俺は最上階にいる角都と飛段を呼びに階段を駆け上がった。

 

                    D×D

 

――カポーン。

 

俺と飛段と角都とバラキエルは、地下一階にある大浴場でのんびりと風呂に浸かっていた。

 

「――バラキエル、朱里さんは元気にしてる?」

 

俺は切りだすのに手間負いながら、一番気にしていることを訊いてみた。

 

「あぁ、朱里は元気にしている。いまは神社に部下を二人つけているから安心している」

 

「そうか、イッセーと朱乃がデート…逢い引きしていたことに激怒していたが、義弟(おとうと)は嫌いなのか?」

 

「いや、そういうことではない。いい青年に育っているよ。ただ、噂で『若い娘の乳を食うドラゴン』と聞いていてな…。どうしても娘のことが心配で……」

 

そういう事か…。噂って……イッセーの胸フェチがドンドンすごい方向に進んでいるな。

 

「安心しろ、イッセーは胸を食べたりはしないさ。まぁ、ただ……」

 

俺は言葉を濁してしまい、バラキエルの不安を逆に煽ってしまった。

 

「ど、どうした?ただ…何だ?」

 

「あ~、気をしっかり持って聞けよ、バラキエル」

 

俺は真剣な表情で言うと、バラキエルはゆっくりと頷いた。

 

「イッセーは、乳を食らうのではなく、吸う…だ」

 

「……はっ?」

 

「いや、吸うんだよ。部屋で意気込んでいたところを立ち聞きしたんだが……」

 

それを聞いてバラキエルは――。

 

「……っん」

 

気を失ってしまった……というか、単純にのぼせたって言った方がいいか。

 

仕方なく、居眠りをしていた角都を起こして、二体借りてバラキエルを脱衣所の椅子まで運んでもらう。

 

俺は扇風機をかけて赤くなったバラキエルの体の温度を下げる。

 

――そのあと、目を覚ましたバラキエルに客間へ戻ってもらい、休んでもらうことにした。

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