翌日、俺たちはグレモリー家主催で冥界のイベントに参加していた。
「どうぞ、ありがとうございます」
握手とサイン会だ。
俺の前には長蛇の列ができ、子持ちのお母さんや同年代の女性の一人一人に色紙を渡して、握手をしていく。
慣れた手つきで書いていく悪魔文字のサインを女性たちが受け取って握手をすると、顔を赤らめて応援の言葉をくれる。
まぁ、俺はイッセー『おっぱいドラゴン』の敵役なんだけどね…。闇の軍団を率いるボス『ドミニオン』。直訳で支配か…。
俺の服装は、暗部の仮面を斜めに被ってに白衣を着ている。傍から見ればただの
隣では正義の味方『おっぱいドラゴン』ことイッセーが子供たち一人一人にサインした色紙を手渡して握手をしている。
そのイッセーがリアスの乳を突いた子供にムキになって注意していた。それを宥めるリアス。
ちなみに、リアスは『おっぱいドラゴン』のヒロイン役『スイッチ姫』としてサインしている。
その隣では、祐奈と白音が並んでいる女性や男性にサインを書いて笑顔で握手をしていた。白音は『ヘルキャット』、祐奈は『ヘルナイト・ファング』として、『おっぱいドラゴン』の味方役となって番組内では戦っている。
反対側の俺の隣では、奏が狐の尾を一本生やして巫女服を着てサインと握手をしている。奏は『ダークネス』のボス『ドミニオン』の直属の部下で、創りだされた
奏の隣では飛段と角都もサインと握手をしている。二人も『ダークネス』の戦闘員で、『ドミニオン』の創りだしたホムンクルス役だ。不死身と異形を体現しているためだと言う。飛段の役名は『イモータル・ヒューマノイド』、角都は『ダークネス・アバター』。それで、角都の異形四体は、角都の隣で握手をしている。
サイン会を一通り終えた俺たちは、楽屋のテントへと戻っていた。
イッセーも鎧姿から素の状態に戻り、俺も私服に着替える。
そこへスタッフが近づいてきた。
「イッセーさま、お疲れさまですわ」
タオルをイッセーに渡しているのは――縦ロールヘアで、ライザーの妹のレイヴェル・フェニックス。
「おー、レイヴェル。わりぃな」
俺たちはこのあとにオーディンの爺さんの護衛が入っているため、その準備をする。
イッセーとレイヴェルの仲のいい会話を聞きながら、俺は巻物から『大団扇』を取り出して背負う。
「イッセー、リュースケさん、そろそろ人間界に帰還する時間よ」
リアスが楽屋のテントに入ってきて知らせてくれる。
俺は荷物を
「はい、イベントのときは呼んでください。わ、私でよろしければ、手を貸して差し上げますから」
イッセーとレイヴェルのやり取りが終わり、出演組全員がそろったのを確認して遠山家へ転移した。
D×D
冥界のイベント後、オーディンの爺さんの日本観光に付き合ったあと、俺とイッセーとギャスパー、飛段、角都の男組で戦闘の訓練をしていた。
イッセーに対して、角都と飛段が相手をする。
『
イッセーは倍加して、瞬間的なダッシュで角都に接近する。
「あめぇーよっ」
ギィィィィィィンッ!!
プロモーションで速度を上げた飛段が角都とイッセーの間に割り込み、『三刃の大鎌』でイッセーのアスカロンを防ぐ。
「そろそろ俺も本気でいこうか」
角都は右腕を前に出し、『
「
ドォォォォォォォォォォンッッ!!!!
火、風、雷の三性質が合体して撃ち出され、飛段とイッセーが巻き込まれた。
爆風が止むと、飛段は全身から煙を上げながら立っている。しかし、イッセーは吹き飛ばされ鎧の複数個所を破損して倒れていた。
「そ、そこまでですぅ!制限時間がきましたぁ!ス、ストップですよぉぉ!!」
ギャスパーが大きなベルを持って、ぴょんぴょんと跳ねていた。
「ここまでだな。イッセー、少し休憩しようか」
俺はイッセーを起こして肩を貸し、ゆっくりと歩かせてベンチに座らせた。
「いくら不死身だろーと、痛いもんは痛い」
「それぐらい我慢しろ。おまえの不死身があってこその大技だ」
ベンチに座って会話(?)中の飛段と角都。
「つーかよ、旦那。この空間じゃなきゃ、今頃風景が吹き飛んでたぞ!」
「そのときは手加減をする。安心しとけ」
「安心できるかぁー!!」
何か、漫才でも見ているような会話だな……。
まぁ、二人の話の通り。ここはアザゼルとサーゼクスの作ったかなり頑丈なフィールドだ。
冥界のグレモリー領のとある地下にあるバトルフィールド。先ほどの角都が放った強力な一撃でも、ここの造りは頑丈過ぎてヒビ一つ入っていない。
俺は鎧を解除してベンチに座ったイッセーにスポーツドリンクを渡す。
ゴクゴクと勢いよく飲むイッセーを見て安心した俺は、背後に立っている人物に声をかけた。
「……アザゼル、何か用か?」
「おっ、もうバレていたか。ほら、差し入れ。女子たちのお手製おにぎりだ」
アザゼルは五人分の袋を渡してくる。俺はその袋を分けて中を覗いた…二段に重ねられた重箱が入っていた。
隣に座っているイッセーの重箱を覗いてみると、全く同じ配列で並んでいるおにぎり…という事は、一人五個ずつ作ったことになるな。
「おっ、ウメーな。リュースケ、おまえこんないいモンいつも食ってんのか?」
「あぁ、まぁな。あいつらはお互いに磨き上げるように料理しているから、食べきれない量を作ることがあるんだよ」
「へぇ~」的な感じでおにぎりを頬張る飛段。
「いい体つきになってきたな、イッセー。龍介の鍛錬は厳しいだろ?」
「厳しいってものじゃないですよ。手加減された角都さんの一撃で動けなくなりましたから」
すると、角都が食べるのを一旦止めて口を開いた。
「ほぅ、俺の加減を見抜いていたか」
「はい。駒の力を使わないで撃ちましたよね?」
「その通りだ、俺はそのままの力で放った。駒の力を使えば確実に消し飛んでいたぞ?」
そりゃそうだろ、『
「ハハハ、とんだ連中だな……転生者ってのは」
「その通りだよ、アザゼル。俺たちは神々さえも殺すことが出来る。世界を敵にまわせば、数日で世界を掌握だってできるぐらいだ」
転生者の力は再生と破壊の類が多い。
アザゼルは俺の言葉を聞いて笑う。
「そうなればこの世も終わりってわけだ。だけどな、おまえたちはそれをしない」
「そうだな、俺たちは征服するなんて一滴たりとも考えたことはないさ。何せ、今の生活が気に入っている。このままの生活を送りたいとも思っているさ。だが、もしこの生活を邪魔するものが出たときは、そいつを全力で排除するまで」
「ま、おまえたちの生活自体に割り込んでくる奴はいないだろうな。負けるのをわかっていて来るやつはバカだ」
アザゼルは何気に酷いことを言っているが、ある意味そうだと思う。
俺はおにぎりを食べる。おっ、これは珍しい味が混じっているじゃないか……辰巳だな?
それからはアザゼルがイッセーに将来のことを話したり、どう逸れたのか、途中から胸のことを話していたが、別段…聞いていて面白いとは思っていた。
しばらくして全員が食べ終わり、休憩時間を終えようとしたときだった。
「イッセー、ちょっといいか?」
アザゼルがイッセーを手招きする。
「なんスか、先生」
「実は、おっぱいドラゴンの新商品の試作品があがってきてな。ちょっと見ろ」
「な、何ですか?これは……」
イッセーはアザゼルが懐から出してきたものを見て目を点にしていた。
――アザゼルが出したのは、小さな人形だった。
「『乳龍帝おっぱいドラゴン』が冥界のハンバーガーチェーン店とコラボすることになってな。お子さま用のセットを頼むとついてくるおもちゃだ。こちらがおまえの人形。こっちがスイッチ姫ことリアスの人形」
俺も興味本意でイッセーの後ろから人形を覗いてみた。
「へぇ~、結構精巧にできているんだな。リアスにそっくりだし、『
俺は感心して見ていた。
「ギミックもあってな。両方集めるとお得なんだ。スイッチ姫の胸の部分をおまえの人形でつつくと――」
『イヤーン』
その直後、俺はズッコケそうになった。――俺の感心を返せやっ!!
「と、音が出る」
自慢げにアザゼルが胸を張った。
「何これ!チョー欲しいっスっ。うわー!これ、ヒット商品になりますって!!」
俺は話についていけず、二人から離れた。
「そろそろ再開するか?二人は放っておいて」
俺と角都は少し離れてところで対峙する。
ドォォォォォォォォンッッ!!!!
模擬戦を開始した早々に爆風が周囲を包み込んだ。
D×D
オーディンの爺さんが来日して数日経ったある日の夜。
スレイプニルという八本足の巨大軍馬の馬車にイッセーたちリアス眷属、カミュ、アザゼル、オーディンの爺さん、ロスヴァイセが乗って、辰巳と冴子とエールとユーと黒歌は奏と一緒に七尾の
俺たちの後方にバラキエルとイリナが飛んでついてきている。
しばらく飛んでいると、いきなり前を飛んでいたスレイプニルが鳴き声を上げて急停止した!!
――嫌な予感がする。危険予知も警戒レベルを最大の五に上げやがるし、…マズイな。
俺は辰巳や角都たちに
「その腕輪は空中で移動するためのモノだ!俺と同じ『浮遊』する力を込めてある!!」
俺はそう言い残し、バラキエルと共に馬車の前に出て戦闘態勢に入る。
宙を飛んでいるメンバーは全員、馬車を囲むように陣を描く。
腕輪を填めて効力で浮いて移動してきた辰巳たちも戦闘の態勢に入った。
――前方に若い男が浮遊している。
その男が黒マントをバッと広げると、口の端を吊り上げて高らかにしゃべりだした。
「はっじめまして、諸君!我こそは北欧の悪神、ロキだ!」
「悪神ロキか……また面倒なのが出てきたな……」
俺はボソリとつぶやく。
アザゼルが黒い翼を羽ばたかせて馬車から出てくる。
「これはロキ殿。こんなところで奇遇ですな。何か用ですかな?この馬車には北欧の主神オーディン殿が乗られている。それを周知の上での行動だろうか?」
アザゼルが冷静に問い掛ける。
すると、ロキは腕を組みながら口を開いた。
「いやなに、我らが主神殿が、我らが神話体系を抜け出て、我ら以外の神話体系に接触していくのが耐えがたい苦痛でね。我慢できずに邪魔をしに来たのだ」
ロキの悪意全開の宣言。
それを聞いたアザゼルは、口調を変えた。
「……堂々と言ってくれるじゃねぇか、ロキ」
声音にかなりの怒気が含まれている。
俺はいつでも行動できるように眼を『万華鏡写輪眼』へ変化させる。
アザゼルの一言を聞いて、ロキは楽しそうに笑う。
「ふはははは、これは堕天使の総督殿。本来、貴殿や悪魔逹と会いたくはなかったのだが、致し方あるまい。――オーディン共々我が
「おまえが他の神話体系に接触するのはいいってのか?矛盾しているな」
「他の神話体系を滅ぼすのならば良いのだ。和平をするのが納得出来ないのだよ。我々の領域に土足で踏み込み、そこへ聖書を広げたのがそちらの神話なのだから」
「……それを俺に言われてもな。その辺はミカエルか、死んだ聖書の神に言ってくれ」
アザゼルは頭をボリボリ掻きながらそう返す。
――と言うか、後方にはその『死んだ聖書の神』の子がいるのですが?
「どちらにしても主神オーディン自らが極東の神々と和議をするのが問題だ。これでは我らが迎えるべき『
アザゼルは指を突きつけて訊いた。
「ひとつ訊く!おまえのこの行動は『
ロキはおもしろくなさそうに返す。
「
それを聞いて、アザゼルは体の力を抜いた。
「『
俺が馬車の方に顔を向けると、オーディンの爺さんがロスヴァイセを引き連れて馬車から出るところだった。足下に魔方陣を展開して魔方陣ごと空中を移動していく。
「どうにもの、頭の固い者がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向く
オーディンの爺さんは白い髭をさすりながら言った。
「ロキさま!これは越権行為です!!主神に牙を向くなどと!許される事ではありません!!しかるべき公正な場で異を唱えるべきです!!」
ロスヴァイセは瞬時にスーツ姿から鎧姿に変わり、ロキに物申した。
しかし、ロキは聞く耳を持たない。
「一介の戦乙女ごときが我が邪魔をしないでくれたまえ。オーディンに訊いているのだ。まだこのような北欧神話を超えたおこないを続けるおつもりなのか?」
返答を迫られたオーディンの爺さんが平然と答えた。
「そうじゃよ。少なくともお主よりもサーゼクスやアザゼル、リュースケと話していたほうが万倍も楽しいわい。日本の神道を知りたくての。あちらもこちらのユグドラシルに興味を持っていたようでな。和議を果たしたらお互い大使を招いて、異文化交流しようと思っただけじゃよ」
それを聞いたロキは、苦笑した。
「……認識した。なんと愚かなことか。――ここで
すると、ロキから凄まじいまでの敵意が放たれてくる。
「それは、抗戦の宣言と受け取っていいんだな?」
アザゼルの最後の確認にもロキは不敵に笑んだ。
「いかようにも」
バヂヂヂヂヂヂヂヂッッ!!!!
スパークノイズと共に『雷遁の衣』をまとって、俺はロキに神速で接近して右ストレートを撃ちかました。
バキッ!!
俺の拳は、ロキの手に現れた北欧式の魔方陣に阻まれていた。
「なかなか、いい反射力だ。さすがは転生者だ。だが、軽い」
「それはどうも。あまり挑発すると、後悔するぞ……ロキ!!」
――
バキバキバキッッ!!
ロキの手にある北欧式の魔方陣にひびが入るが、砕ける見込みがない。
「ほう、急に拳が重くなったか。何らかの術をかけたのか?」
「悪いな、俺たち転生者にしか理解できないモノを使っているんでね。――これもそうだな」
パキパキパキ――。
俺は背に
バキンッ!!
離れながら
「ふはははっ!やるではないか!!」
ロキは左手を俺の方にゆっくりと突きだす。
――マズイ!こんな至近距離だと、体が吹き飛びかねない!!
俺は頭蓋の
『
『
後方で聞きなれた機械音がしたが、時すでに遅し。
「――っと、そうだったそうだった。ここには赤龍帝もいたんだったな。良い調子にパワーを身につけているじゃないか」
ロキは左手を俺から、俺の後方より高速で突進してくるイッセーに向けた。
――クソッ!
「神を相手にするにはまだ早い!!」
放たれたロキの波動。俺は
『
ドッバァァァァッァァァッッ!!!!
その直後、イッセーが倍加したドラゴンショットを撃ち出して宙で波動とぶつかり、勢いよく弾け飛ぶ!
それによる爆風が皆を襲うが、ラーの羽ばたきによって相殺された。
この様子を見ていたロキが、嬉しそうに口の端を釣り上げた。
「……特別手を抜いたわけではないのだがな。これはまたおもしろい限りだ。うれしくなるぞ。とりあえず、笑っておこう。ふははははっ!!」
リアスや朱乃たちも翼を広げて馬車から出てくる。
「紅い髪。グレモリー家……だったか?現魔王の血筋だったな。堕天使幹部が二人、天使が一匹、悪魔がたくさん、赤龍帝、邪龍、
「お主のような大馬鹿者が来たんじゃ。結果的に正解だったわい」
オーディンの爺さんの一言にロキは不敵な笑みでうなずく。
「よろしい。ならば呼ぼう。出てこいッ!我が愛しき息子よッ!!」
ロキの叫びに対し、空間に歪みが生じる。
ヌゥゥゥゥ。
その空間の歪みから姿を現したのは、十メートルほどの体躯の灰色の狼。
『――主よ、あのオオカミには十分注意したほうがよいぞ』
『わかっている。あいつは神を噛み殺せるオオカミ――』
『『――
俺の内にいるムラクモが警戒の声を上げる。
「全員、そのオオカミには手を出すな!!特にエールはオーディンの爺さんの傍で結界を張って接触しないように逃げてくれ!!」
俺はイッセーと
「……このオオカミは
俺はエールの言葉に「あぁ」とだけ答えて前を向き直す。
「兄さん!あのオオカミ、一体――」
俺はイッセーの言葉を遮り、最後まで言わせなかった。
「イッセー、
「マジかよッ!!」
イッセーが警戒態勢を一層高めた。
「そうそう。気をつけたまえ。こいつは我が開発した魔物のなかでトップクラスに最悪の部類だ。何せ、こいつの牙はどの神でも殺せるって代物なのでね。試したことはないが、他の神話体系の神仏でも有効だろう。上級悪魔でも伝説のドラゴンでも余裕で致命傷を与えられる」
ロキの指先がリアスに向けられる。
「本来、北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくはないのだが……。まあ、この子に北欧の者以外の血を覚えさせるのも良い経験となるかもしれない」
イッセーのオーラが極端に跳ね上がる!無意識なのだろうが、それでもかなりの質量になっていやがるぞ!!
「――魔王の血筋。その血を舐めるのもフェンリルの糧となるだろう。――やれ」
オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオンッッ!!
闇の広がる夜空で灰色のオオカミ――フェンリルが透き通るほど見事な遠吠えをしてみせた。
『
一迅の風の瞬間、フェンリルとイッセーが視界から消え――。
「触るんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
ドゴンッ!!
イッセーが神速で襲いかかるフェンリルよりも
「ぶ、部長!だいじょうぶですか!?ケガは?」
イッセーはリアスの怪我を心配しているが、鎧の腹部に――。
「ごふっ」
「イッセーッ!!」
――やられたっ!!先ほどの一瞬で、フェンリルが左前脚の爪でイッセーの腹部を鎧ごと貫きやがった。
体勢が崩れるイッセーを祐奈が支える。
「イッセーくん。しっかり。すぐにアーシアさんの力で回復させよう!!」
「イッセーさん!早く!!」
馬車から回復役のアーシアが身を乗り出し、手元に回復のオーラを作って放とうとしていた。
「いや、そうはさせん。赤龍帝、フェンリルの動きに一瞬とはいえ追いついた。恐るべきことだ。今のうちに始末しておこう!!」
ロキが再びフェンリルに指示を送る。
――クソッ!!距離が開いていて
俺は右目に集中して
血の涙が右頬を伝い、今まさに放とうとしたときだった――。
「── 我がもとに来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我がために輝ける
東の空に太陽が昇り、そこから
「ごめんね、発動条件がさっき揃ったの」
『
「ロキ、家族を襲ったことは万死に値する。
完全にキレている花楓。
「悪いな、ロキ。こちらにも神を殺せる力を持っている者が数人いるのでね。フェンリル一体じゃ、分が悪いよ」
俺は右目に溜めていたチャクラを解放した。
「――
黒炎はロキに発火する。
「――これが噂で聞いた『消えない黒炎』か」
ロキの手元には北欧の魔方陣が幾重にも展開されていた。
――たったあの一瞬で、発火点を正確に予測できたのか!?
俺はロキの洞察力と反射力に驚愕した。
「では、次はこちらの手番だな」
黒炎で焼失した魔方陣をよそに、右手を薙いだ。
――瞬間、俺の横にホバリングしていた花楓の胸部にフェンリルの爪が突き刺さっていた。
「ごふっ!!」
花楓は大きく吐血し、力なく俺の方に倒れ込んできた。
俺は
「……ご、ごめんね。心配しないで…、少し寝たら起きるから……」
俺の腕の中で静かに目を閉じる花楓。力が抜けて全身の体重が俺の腕にかかる。
「――
サッ!!
俺は一瞬でエールの前に飛んだ。
「エール。少しの間、花楓を頼む」
花楓をエールに渡し、神速でフェンリルに肉薄して蹴り上げた。
フェンリルは俺の移動速度に追いつけていないらしく、体勢を立て直すと「ぐるるるるる」と威嚇の唸りを上げていた。
「どうやら、俺の出番はないみたいだな」
突如として聞こえた声。俺の隣に白銀が降りてきた。
「久しぶりだな、遠山龍介」
「ヴァーリ…」
俺の目の前に現れたのは、白龍皇ヴァーリ。
「おいおい、おっぱいドラゴンと神器の姉ちゃんは致命しょうかぃ?強いんだか、弱いんだか、わからねぇぜぃ」
横からは金色の雲に乗った美猴が出てきた。
「――ッ!おっとっと、白龍皇か!!」
ロキがヴァーリの登場に嬉々として笑んだ。
「初めまして、悪の神ロキ殿。俺は白龍皇ヴァーリ。貴殿を屠りに来た」
「二天龍と転生者が見られて満足した。今日は一旦引き下がろう!」
ロキはフェンリルを自身のもとに引き上げさせる。
ロキがマントを
「だが、この国の神々との会談の日!またお邪魔させてもらう!!オーディン!次こそ我と我が子フェンリルが、主神の喉笛を噛み切ってみせよう!!」
その瞬間、俺の堪忍袋の緒がキレた。
「させるかぁぁぁぁぁぁあああッッ!!」
万華鏡写輪眼を変更させ、武将の
「うおぉぉぉぉぉおおッッ!!くたばれぇッ!!」
ブゥゥゥゥゥンッッ!!
俺は
「……逃がしたか」
静かに
「怖いな、あなたを怒らせると…」
俺の近くにいたヴァーリがそう言った。
「悪いな、見っとも無いところを見せちまって」
俺はゆっくりと空中を移動しながら馬車の方へ戻る。
馬車の周囲にいる皆は、ロキが退散したことで肩の力を抜いていた。
「……リュースケ、花楓の調子が戻ったみたい」
エールが傍まで寄ってきて花楓を渡してくる。
俺は砂を浮遊させて花楓をその上に寝かせた。
「移動するぞい、アザ坊、ここら辺で安全な場所は無いかのぅ」
「あぁ、龍介の家が一番安全だ。いいだろ?」
俺に問うてきたアザゼル。
「別にかまわない。腹が減ったから、夜食でもしながらでいいか?」
「そうだな、それでいいか?爺さん」
「わしはかまわんぞい。それよりお主らがどうするかが問題なんじゃが」
オーディンの爺さんはヴァーリを見る。
「俺たちも話があるからな。ちょうどいい」
「そうか、なぁ…ヴァーリ。この間の約束、夜食でいいなら…」
「あぁ、かまわないさ。一人いないが、帰りに貰って行けばいいか」
ヴァーリは少し考える素振りをして了承した。
「それじゃあ、行きましょうか」
それぞれが空を飛んで移動する。
――帰ったら、少し忙しくなるな。