ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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ミドガルズオルム

俺たちはロキの襲撃後、遠山家でこれからのことを話し合っていた。

 

イッセーの回復も良好で、部屋で寝ていたが起きてきて参加している。

 

ヴァーリが提案した「赤龍帝と白龍皇が手を組んで共闘する」という事も、場のほとんどの者が驚いていたが、流れを組むと次第に納得していった。

 

夜食の準備ができ、VIPルームから一階に降りて各々が席に座り食卓を囲う。

 

食事を始めてすぐ、ヴァーリ、アーサー、金華、美猴の表情が一変した。

 

「これは……おいしいですね」

 

アーサーが感嘆の声を漏らす。

 

「羨ましいのにゃ~、白音と黒歌は毎日食べているなんて」

 

金華もお気に召してくれたようで何より。

 

「おいしいですね。オーディンさま」

 

ロスヴァイセもお気に召してくれたみたいだ。

 

「そうじゃのぅ、また腕を上げおったのぅ、リュースケ」

 

俺は旅をしていたときに、ヴァルハラでオーディンの爺さんに食事を振る舞った過去がある。

 

それからはちょっとした宴会となっていた。

 

深夜を過ぎた頃、その宴会も終わってヴァーリたちは帰る準備をしていた。

 

「ヴァーリ、これを持って行け。もう一人のメンバーの者に渡してやってくれ」

 

俺は重箱の入った包みをヴァーリに手渡す。

 

「申し訳ないな。――アーサー」

 

ヴァーリは包みをアーサーに渡す。

 

「ありがとうございます。妹もきっと喜ぶと思います」

 

アーサーが一礼をしてきたので、俺は軽く手を振った。

 

「べ、別に大したものじゃないから。まぁ、喜んでもらえるのなら嬉しいけどさ」

 

そうして、玄関から外に出る四人。

 

「また、明日な」

 

俺は帰っていく四人の背に言った。

 

美猴が後ろに手を振って返事をくれる。

 

夜の闇に消えていく背を見送った俺は、玄関のドアを閉めて就寝の準備に入った。

 

――食器洗いは分身に任せるか。

 

                    D×D

 

翌日、遠山家の地下一階に皆が集まっている。

 

「さて、ロキ対策についてだが、ロキとフェンリルの対策をとある者に訊く予定だ」

 

アザゼルが提案を出す。

 

「ロキとフェンリルの対策を訊く?」

 

アザゼルがリアスの言葉にうなずく。

 

「そう、あいつらに詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ」

 

「誰ですか?」

 

イッセーが挙手して訊く。

 

「五大龍王の一匹、『(スリ)(ーピ)(ング)(・ド)(ラゴン)』のミドガルズオルムだ」

 

「まぁ、順当だが、ミドガルズオルムは俺たちの声に応えるだろうか?」

 

ヴァーリの問いにアザゼルは答える。

 

「二天龍、龍王――ファーブニルの力、ヴリトラの力、タンニーンの力、邪龍――アースの力、ムラクモの力、(ウロ)(ボロ)(ス・)(ドラ)(ゴン)の辰巳の力で(ドラゴン)(・ゲート)を開く。そこからミドガルズオルムの意識だけを呼び寄せるんだよ。本来は北欧の深海で眠りについているからな」

 

「もしかして、お、俺もですか……?正直、怪物だらけで気が引けるんですけど……」

 

匙がおそるおそる意見を言う。

 

「仕方がないだろう?ヴリトラの(セイクリッ)(ド・ギア)を宿しているのだからな」

 

「まぁ、要素の一つとして来てもらうわけだ。大方のことは俺たちや二天龍に任せろ。とりあえず、タンニーンと連絡が付くまで待っていてくれ。俺はシェムハザと対策について、話してくる。おまえらはそれまで待機。バラキエル、付いてきてくれ」

 

「了解した」

 

アザゼルとバラキエルは大広間から出ていく。

 

残されたオカルト研究部と生徒会。遠山家とヴァーリたち面々。

 

「赤龍帝!」

 

美猴が挙手をしてイッセーを呼ぶ。

 

「な、なんだよ」

 

おそるおそるイッセーが訊くと、美猴は悪戯のような笑顔で言った。

 

「この下にある屋内プールに入っていいかい?」

 

完全に変化球な質問にイッセーは返す言葉もないようだ。

 

突然、リアスが美猴に指を突きつける。

 

「ちょっと。ここは私と赤龍帝であるイッセーの家よ。勝手な振る舞いは許さないわ」

 

――おいおい、『自分の家だ』と言っているけど、ここは元々俺の家なんだぞ?

 

「まーまー、いいじゃねぇか。スイッチ姫――」

 

ベチンッ!!

 

リアスは美猴の頭を激しく叩いた!……結構いい音がしたぞ!?

 

美猴は頭を押さえながら涙目で訴える。

 

「いってぇぇぇぇぇっ!!何すんだぃ!スイッチ姫!!」

 

「あなたね!あなたのせいで私は……冥界で変な名称で呼ばれているのよ!!」

 

リアスも同じく涙目だった。

 

「いいじゃねぇか。おっぱいドラゴン、俺も見ているぜ。光栄だぜぃ、俺の名付けたのが使われているからさ」

 

美猴はカラカラと楽しそうに笑うだけ。

 

「うぬぬぬぬ!どうしてくれましょうか……ッ!!」

 

逆にリアスは全身わなわなと震わせていて、紅いオーラをまとっていた。――お願いだから、ここでぶっ放すなよ?

 

俺は部屋を出ようとして立ち、廊下へ向かい歩く。

 

「――にゃん♪」

 

部屋を出た辺りで、誰かが背中に飛びついてきた。

 

「……何のようだ?金華」

 

俺は振り返って言う。

 

すぅーと身軽に離れた金華。そして、俺の前に立って覗き込むように近づいてきた。

 

ぺろっ。

 

不意に俺の頬を舐める金華。その瞬間、金華は体をビクつかせて俺のほうへしな垂れ掛かってきた!!

 

「お、おい、だいじょうぶか?」

 

「あ…、危なかったにゃ…。不思議な味ねん、……発情しかけちゃったにゃん」

 

――発情って、ちょっと俺の頬を舐めただけなのにか!?

 

「あ~、発情だけはやめておいた方がいいと思うぞ。金華、後ろにいる黒歌がとんでもない質量のオーラをまとっているからさ……」

 

そう、金華の後ろ…俺の目の前に黒歌が立っていて、ドス黒いオーラをまとわせながらギラリと鋭い眼光で睨みつけている。

 

「――な~にかにゃ~。……金華、『発情しかけた』って…どういう事かな~?」

 

廊下のフローリングの板が弾け飛ばんばかりに、オーラの質量が上がり続ける黒歌。

 

「そのままの意味よ。ねぇ、リュースケ。私と子供作ってみない?」

 

「……え?」

 

「にゃっ!!」

 

突然の金華の言葉に俺は間の抜けた声を出し、黒歌は先ほどまでまとっていたドス黒いオーラを消失させて狼狽していた。

 

「私ね、ドラゴンの子が欲しいの。特別強いドラゴンの子。ヴァーリにも頼んだんだけど、断られちゃって。だったら、赤龍帝か八岐大蛇(やまたのおろち)の魂を体内に宿しているあんたしかいないし。邪龍で最強の転生者の遺伝子なら十分だし。子供は残したいんだよねー。だから、遺伝子提供者が欲しいにゃん」

 

「「……」」

 

俺は呆けにとられて何も言えないし、黒歌は顔を真っ赤にして激しく狼狽している。

 

そんな俺と黒歌にかまわずに金華は続ける。

 

「にゃはは、いまならお買い得にゃん。妊娠するまでの関係でいいからどうかにゃ?」

 

「俺は――」

 

断ろうとしたとき、黒歌が割って入ってきた。

 

「ダ、ダダダ、ダメに決まっているにゃ!龍介の(てい)――はじめては私が貰うんだからっ。ダメッ!金華には渡さないにゃっ!!」

 

もっと顔を赤く染める黒歌。物凄く恥ずかしい単語が聞こえたのは気のせいだろうか…?

 

「それは残念ね~。でも、諦めたわけじゃないにゃん。隙があれば襲っちゃうから♪」

 

金華はにんまりと笑って立ち去っていく。

 

――結局、断れずに先延ばしされることとなって俺は、深くため息をついた。どうして、俺の周囲は問題ばかりが起こるのだろうか…?

 

                    D×D

 

俺は手洗いから帰ってくると、アザゼル、イッセー、辰巳、匙、ヴァーリ、アースと共に転移魔方陣で遠山家から飛んだ。

 

(スリ)(ーピ)(ング)(・ド)(ラゴン)』のミドガルズオルムを呼び寄せるための特殊な儀式場。

 

到着した場所は――白い空間だ。周囲を見回すと、巨躯のドラゴンを見つけた。

 

「先日以来だな、おまえたち」

 

「タンニーンのおっさん!!」

 

イッセーはテンションが上がって嬉しそうにしている。

 

「……そちらがヴリトラか」

 

匙を見るタンニーン。

 

「ド、ド、ドラゴン……龍王!最上級悪魔の……!!」

 

匙は緊張と尊敬が混じっている様子だ。

 

「緊張すんなよ。おっさんは強面だけど、いいドラゴンなんだ」

 

「バ、バカ!最上級悪魔のタンニーンさまだぞ!お、お、おっさんだなんて!!」

 

俺はイッセーと匙の会話に笑いそうになった。

 

「……白龍皇か。妙な真似をすればその時点で俺は躊躇いなく噛み砕くぞ

 

タンニーンがヴァーリを睨みつける。威嚇されたヴァーリは苦笑するだけ。

 

「さて、魔方陣も基礎はできた。あとは各員、指定された場所に立ってくれ」

 

俺たちは指示されたとおりに各指定ポイントの文様の上に立つ。

 

カッ!

 

淡い光が下の魔方陣を走りだし、イッセーのところは赤く、ヴァーリのところは白く光る。アザゼルのところは黄金に、匙のところは黒く、タンニーンのとこは紫に、辰巳ところは匙のところより一層黒く、アースのところは暗い銀色に、俺のところは灰色に光り輝く。

 

『それぞれが各ドラゴンの特徴を反映した色だ』

 

イッセーの方からムラクモを伝ってドライグの説明が聞こえてきた。

 

『ここにはいないが、ティアマットが青。玉龍(ウーロン)が緑を司っている』

 

ティアマットかぁ……。今頃、何をしているんだろうな…?エールたちがいないから、暴れているんだろうか?

 

そして数分後、魔法陣から何かが投影され始めた。

 

俺たちの前に投影されたのは、この空間を埋め尽くさんばかりの巨大な龍だ。

 

その龍の姿は、巨大な蛇のようで、長い体をとぐろを巻くようにして寝ている。

 

ムラクモと同じ東洋型のドラゴン。

 

「ドラゴンの中で最大の大きさを誇るからな、こいつは。グレートレッドの五、六倍はあるだろう」

 

単純計算で五、六百メートルか…。

 

『………………ぐごごごごごごごぉぉぉぉおおおおおおん………』

 

「案の定、寝ているな。おい、起きろ、ミドガルズオルム」

 

タンニーンが話しかけると、ミドガルズオルムはゆっくりと目を開いていく。

 

『……懐かしい龍の波動だなぁ。ふあああああああああああっ……』

 

大きいあくびをするミドガルズオルム。その大きな口はタンニーンを一口で喰らえるほどの大きさだ。

 

『おぉ、タンニーンじゃないかぁ。久しぶりだねぇ』

 

かなりゆったりとした口調だ。……リエと勝負したら、いい具合じゃないかな…?

 

ミドガルズオルムは周囲を見渡す。

 

『……ドライグとアルビオンまでいる。……ファーブニルとヴリトラも…。オーフィスとアポプス……ヤマタノオロチもだぁ…。なんだろう、世界の終末なのかい?』

 

「いや、違う。今日はおまえに訊きたいことがあってこの場に意識のみを呼び寄せた」

 

タンニーンが説明するが……。

 

『…………ぐ、ぐごごごごごごん…………』

 

ミドガルズオルムはいびきをかきだす。

 

「寝るな!まったく、おまえと玉龍(ウーロン)だけは怠け癖がついていて敵わん!!」

 

『ミドガルズオルム、おまえのところまで出向いて吸い取ってやろうか?』

 

怒るタンニーンとムラクモ。

 

『……タンニーンとヤマタノオロチはいつも怒ってるなぁ……。吸ってくれるの?あれ、安眠できるから便利なんだよねぇ』

 

――いやいや!ムラクモは「殺すぞ」って意味で言ったんだけどなぁ…精気を吸い取りにだけど。

 

『ミドガルズオルム、我の名は叢雲(ムラクモ)。昔とは別の名で過ごしているのでな、気をつけてくれ。あと、オーフィスは辰巳、アポプスはアースと名乗っている』

 

ムラクモは、今呼ばれている名を訂正させた。そこ重要なのかな…?

 

『ん~、わかった。それで、僕に訊きたいことってなんなのぉ?』

 

「おまえの兄弟と父について訊きたい」

 

タンニーン訊いた。

 

『ダディとワンワンのことかぁ。いいよぉ。どうせ、ダディもワンワンも僕にとってはどうでもいい存在だし……。あ、でも、タンニーン。 ひとつだけ聞かせてよぉ』

 

「なんだ?」

 

『ドライグとアルビオンの戦いはやらないのぉ?』

 

ミドガルズオルムはイッセーとヴァーリを交互に見る。

 

「あぁ、やらん。今回は共同戦線でロキとフェンリルを打倒する予定だ」

 

タンニーンの言葉にミドガルズオルムは笑うように答えた。

 

『へぇ、おもしろいねぇ……。二人が戦もせずに並んでいるから不思議だったよぉ』

 

「そんなところだ。ところで、質問の答えを聞きたい」

 

俺はミドガルズオルムに言う。

 

『ワンワンはダディよりも厄介だよぉ。牙で噛まれたら死んじゃうことが多いからねぇ。でも、弱点もあるんだぁ。ドワーフが作った魔法の鎖、グレイプニルで捕らえることができるよぉそれで足は止められるねぇ』

 

――一応言うけど、花楓は一度貫かれて死んでいます。

 

「それはすでに確認済みだ。だが、北からの報告ではグレイプニルが効かなかったようでな。それでおまえからさらなる秘策を得ようと思っていたのだ」

 

『……うーん、ダディったら、ワンワンを強化したのかなぁ。それなら、北欧のとある地方に住むダークエルフに相談してみなよぉ。確かあそこの長老がドワーフの加工品に宿った魔法を強化する術を知っているはずぅ。長老が住む場所はドライグかアルビオンの(セイクリッ)(ド・ギア)に転送するからねぇ』

 

すると、アザゼルはヴァーリを指さす。

 

「情報は白龍皇に送ってくれ。こちらは頭が残念なんだ」

 

アザゼルの一言に俺は吹きかけた。

 

「――把握した。アザゼル、立体映像で世界地図を出してくれ」

 

しばらくして、ヴァーリはアザゼルと話し出す。

 

「――ミドガルズオルム、ロキ対策の方はどうだ?」

 

話し合っている二人をよそに、俺は話を進める。

 

『そうだねぇ。ダディにはミョルニルでも撃ち込めばどうにかなるんじゃないかなぁ』

 

「ミョルニルか……。雷神トールの武器だったっけ?」

 

『そうだよぉ。あのビカビカのビリビリならダディも倒れるはずぅ』

 

「さすがにトールが貸してくれるのは無いに等しいだろう?」

 

『それなら、さっき言ったドワーフのとダークエルフに頼んでごらんよぉ。ミョルニルのレプリカをオーディンから預かってたはずぅ』

 

「物知りで助かるよ、ミドガルズオルム」

 

話が終わったアザゼルが、苦笑しながら礼を口にする。

 

『いやいや。たまにはこういうおしゃべりも楽しいよ。さーて、そろそろいいかな。僕はまた寝るよ。ふああああああっ』

 

「あぁ、すまんな」

 

『いいさ、また何かあったら起こして』

 

ミドガルズオルムの映像がブレて消えてしまった。

 

「ちょっといいか?遠山龍介。二人で話がしたい」

 

ヴァーリが呼んだので、俺は皆から少し離れた場所に移動した。

 

「何だ?話とは」

 

「すまない、協力してほしいことがある」

 

珍しくヴァーリが頼みごとをしてきたぞ!?

 

「内容は…?」

 

「あぁ、俺はロキの傍にいるフェンリルを引き入れたい。そのためにある程度弱らせてほしい」

 

仲間に引き入れる!?

 

「何が目的だ?」

 

「牙が欲しくてね。もちろん、そちらには向けないさ」

 

「……わかった。ある程度は協力しよう」

 

「感謝する」

 

こうして、俺はヴァーリの頼みごとを引き受けることとなった。

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