ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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幕引きと子フェンリルの行方

『――あんたがたどこさ。ひごさ、ひごどこさ』

 

平屋建ての小さな家の庭で、まりつきをしている女の子が見えている。

 

『朱乃、どこ?』

 

朱乃そっくりの女性が小さな女の子――朱乃を呼ぶ。

 

『母さま!』

 

朱乃が母――朱璃に呼ばれて、勢いよく抱きついた。

 

――懐かしい。あの事件以降、会っていなかったな…。

 

『母さま。父さまは今日のいつごろ帰ってくるの?』

 

『あら、朱乃。父さまとどこに行くの?』

 

母の問いに小さな朱乃は満面の笑みを浮かべる。

 

『早く帰ってきたら、一緒にバスに乗って町へ買い物に行くの!』

 

〈寂しかった〉

 

……朱乃の声か。

 

場面が移り、バラキエルと小さな朱乃が風呂に入っていた。

 

『父さまの羽、嫌いじゃないよ。黒いけど、つやつやで朱乃の髪の毛と一緒だもの!』

 

『そうか、ありがとう。朱乃』

 

〈いつも父さまがいてくれたら、良かったのに〉

 

場面が再び移る。

 

家の縁側で母に髪をすいてもらっている小さな朱乃。

 

『ねえ、母さま。父さまは朱乃のこと好きかな?』

 

『ええ、もちろん』

 

母は微笑みながら朱乃の髪をやさしくとかしていた。

 

〈たまにしか父さまに会えなかったから〉

 

そして、場面は急展開を迎える。

 

ボロボロの室内。タンスが倒され、畳が大きく抉れていた。

 

部屋の中がすべて荒らされていた。

 

――そう、あの事件の日だ。

 

『――朱乃、イッセーくん、早く逃げなさい』

 

『嫌です!母さま!』

 

『朱璃おばさん!しっかりして!』

 

背中から血を流して倒れている朱璃を、心配している小さなイッセーと小さな朱乃。

 

『少年よ、そこを退きたまえ。関係のない者を巻き込みたくはない』

 

刀を振り上げる男。

 

『いやだっ!朱璃おばさんと朱乃ちゃんは僕が守る!』

 

男たちの前に立ちふさがり、両手を広げる小さなイッセー。

 

『……仕方がない。その雄姿を称え、苦しまないよう斬ってやろう!』

 

〈父さまが助けに来てくれると思っていた…願っていた〉

 

場面が再び移る。

 

影が術者たちの首を絞め、倒していく。その影は仮面を被った男のもの…。

 

その男は――俺だ。

 

そいつは小さな朱乃の母の治療をする。

 

「朱璃!朱乃!無事か!」

 

遅れて入っていたバラキエル。

 

それとすれ違うように青年は家を出て行った。

 

場面が再度移る。

 

今度は寝室のようだ。バラキエルが朱璃をベッドに寝かせる。

 

『……朱乃……』

 

バラキエルが震える手で小さな朱乃の頭に触れようとするが――。

 

『触らないでっ!』

 

小さな朱乃が怒りをバラキエルにぶつける。

 

『どうして!どうして母さまのところにいてくれなかったの!?ずっとずっと父さまを待っていたのに!今日だって、早く帰ってくるって言ったのに!今日はお休みだって言っていたのに!父さまがいたら、母さまもイッセーくんもこんなことにならなかったのに!』

 

『…………』

 

『あの人達が言ってた!父さまが黒い天使だから、悪いんだって!黒い天使は悪い人なんだって!私にも黒い翼があるから悪い子なんだって!嫌い!嫌い!こんな黒い翼大嫌い!あなたも嫌い!皆嫌い!大嫌いっ!!』

 

〈父さまが悪くない事ぐらいわかってた。けど――。そう思わなければ、私の精神は保たなかった。私は……弱いから……。寂しくて……ただ、三人で暮らしたくて……〉

 

『朱乃』

 

意識の中で朱乃の母でバラキエルの妻――朱璃さんの声が聞こえる。

 

『何があっても、父さまを信じてあげて。父さまはこれまで他者をたくさん傷つけてきたかもしれない。――でもね』

 

とても優しい声で話す朱璃さん。

 

『あの人が私と朱乃を愛してくれているのは本当なのだから。だから、朱乃も愛してあげてね。それと、いつでも顔を出してね……また三人でお話をしましょう』

 

意識が戻ったとき、イッセーの隣で朱乃が涙をこぼしていた。

 

「母さま……ッ!!私は……、父さまともっと会いたかった!父さまにもっと頭を撫でてもらいたかった!父さまともっと遊びたかった!父さまと……父さまと母さまとまた三人で暮らしたい……話をしたい……ッ!!」

 

それが朱乃の心の奥底に秘めていた本音なのだろう。

 

先ほどの風景は、イッセー、俺、朱乃、バラキエル、リエ、奏、花楓、尾獣たち、角都、飛段に見えた。

 

横たわるバラキエルは、朱乃の告白を聞いて一言だけつぶやいた。

 

「すまなかった……許せとは言わない。ただ……おまえのことを……朱璃のことを……一瞬たりとも、忘れたことなどないよ」

 

バラキエルの震える手を朱乃がその手に取る。

 

「……父さま」

 

そのときだった。

 

パァァァァァッッ!!

 

(ブース)(テッド)(・ギア・)(スケイ)(ルメイル)』の全宝玉が光り輝き、ミョルニルが極大の光を発し始めた。

 

『乳龍帝よ。聞こえていますか?乳龍帝よ』

 

例の乳の精霊がイッセーに語りかける。

 

『あなたはこの娘の想いを、おっぱいを救ったのです。乳神さまの加護をいまこそ、あなたへ――』

 

ゴオオオオオオオオンッ!!

 

『おっぱいドラゴンよ。いいですか、乳神さまからの力の付与は一度のみです』

 

イッセーの持っているミョルニルから、相当な波動を感じられる。

 

「覚えの無い神格の波動を感じるな。異世界の――乳神?今回の赤龍帝は不思議がいっぱいだな!!」

 

ロキはそう言うとマントを広げ、再び自身の影を拡大させる。そこから量産型ミドガルズオルムの一団が現れる……。ざっと数えて三十ってところか。

 

上空に稲光が走りだし、豪雨が降りだした。

 

「――ちょうどいい、俺の新技を披露しよう」

 

俺はミドガルズオルムの軍団の右翼の数メートル前に浮遊して、右手に雷切をまとわせる。

 

「術の名は『麒麟(きりん)』…………雷鳴と共に――」

 

青光りする巨大な稲妻が雲を割って迸る。

 

「――散れ」

 

俺が右手を振り下ろした直後、稲妻がミドガルズオルムの右翼に被雷し、跡形も無く消し去った。

 

ズオォォォォォッッ!!!!

 

守鶴(しゅかく)又旅(またたび)磯撫(いそぶ)孫悟空(そんごくう)穆王(こくおう)犀犬(さいけん)重明(ちょうめい)牛鬼(ぎゅうき)――そして、尾獣化した花楓を覆うチャクラがそのまま九喇嘛(くらま)の姿になって、全員で尾獣玉を生成している。

 

――そう来るか。

 

俺は瞬時に眼を『輪廻眼』に変化させ、手元に黒い球体を作り出して空中に上げる。

 

地爆天星(ちばくてんせい)!!」

 

すると、かなり上空へ上がったところで静止して引き始めた。

 

周囲の湖、地面や岩、山などが揺れ出し、所々から大きな岩の塊となって黒い物体に引き寄せられ始める。

 

「奏ッ!今だ!!」

 

「「「「「「「「「『尾獣玉――一閃!!!』」」」」」」」」」

 

尾獣たちと奏の声が重なり、高出力で高圧縮された尾獣玉を放つ。尾獣玉は左翼を巻き込み、五体ほど残してミドガルズオルムごと地爆天星(ちばくてんせい)の引力に引っ張られて高速で衝突する。

 

ゴオォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオ――。

 

拡散しようとする尾獣玉を超圧縮する地爆天星(ちばくてんせい)の核。地爆天星(ちばくてんせい)の核と尾獣玉が相殺し合い、轟音と共に閃光を放ち――霧散した。

 

ブオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

残りの五体とロキが黒い炎に包みこまれた。

 

「――ッ!!この漆黒のオーラは!?黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)のヴリトラか!?」

 

タンニーンがそう叫んだ。

 

地面に現れた巨大な魔方陣から黒い炎のドラゴンが出現してくる。

 

シェムハザから緊急用のイヤホンマイクに連絡が入る。

 

『兵藤一誠くん。聞こえますか?私はグリゴリの副総督シェムハザです』

 

どうやら、イッセー宛のようだが……聞くだけ聞いておこう。

 

「あ、どうも。あのでっかい黒いドラゴンを送ってくれたのはシェムハザさんですか?」

 

『ええ。アザゼルに匙くんのトレーニングが終わったら、こちらに転送するよう言われましたから』

 

「あれ、やっぱり匙ですか!?」

 

『はい。ちなみに、彼へヴリトラの(セイクリッ)(ド・ギア)を全部くっつけました』

 

――アザゼルも無茶をするなぁ……。

 

『ヴリトラは退治されて(セイクリッ)(ド・ギア)に封じ込まれるとき、何重にもその魂を分けられてしまった。そのため、ヴリトラの(セイクリッ)(ド・ギア)所有者は多いのです。だが、種別で分けると「黒い龍脈(アブソーブション・ライン)」、「邪龍の黒炎(ブレイズ・ブラック・フレア)」、「漆黒の領域(デリート・フィールド)」、「龍の牢獄(シャドウ・プリズン)」、この四つです。これらの(セイクリッ)(ド・ギア)が多少の仕様違いで各所有者に秘められていたのですよ。そして、我が組織グリゴリが回収し、保管していたそれら――ヴリトラの(セイクリッ)(ド・ギア)を匙くんに埋め込みました。あなたとの接触でヴリトラの意識が出現していたので全ての(セイクリッ)(ド・ギア)が統合されるかもしれないとアザゼルは踏んだのです』

 

――そういうことで匙を連れて行ったのか。

 

『結果、(セイクリッ)(ド・ギア)は統合され、ヴリトラの意識は蘇りました。――が、蘇ったばかりで暴走してしまったようですね。しかし、匙くんの意識は残っているようなので、あなたがドライグを通じて語りかければ反応するはずです。あとはあなたにお任せします。できますか?』

 

「……ええ、なんとかやってみます。いざとなったら、力ずくで匙を止めます」

 

ロキが躍起になってヴリトラの炎を消そうともがいている。

 

「全員構えろ――」

 

俺が右手を挙げて言うと、何人かが理解したらしく攻撃の構えを取る。それを見て理解したのか、残りの者たちが攻撃の構えを取った。

 

「――一斉掃射!!」

 

俺が手を下ろすと同時に一斉に攻撃を仕掛ける。

 

半分はミドガルズオルムに、もう半分はロキへ矛先を向ける。

 

ロキが匙の呪炎を解いて逃げようとしたところに、一斉掃射の嵐が降りかかる。

 

親子の雷光、消滅の魔力、聖剣のオーラ、光の矢、破魔の矢、破邪の突き、神炎、氷、蒼雷、蒼炎、紅蓮の炎、etc……。

 

すべての力がロキに降り注ぐ!!

 

ゴオォォォォォォォォォォォオオンッッ!!!

 

一瞬の爆風と砂塵のあと、そこには全身ボロボロのロキが立っていた。

 

『……もう一発』

 

匙がロキの周囲に呪炎を展開させる。

 

『……やれ、兵藤っ!!』

 

「おりゃあああああっ!俺式ミョルニルゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

巨大化したハンマーの頭がロキの全身へ完全に打ち込まれる。

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

倍加されたパワーがミョルニルに送り込まれて――。

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

 

刹那、ミョルニルから特大の神雷が発生し、ロキを呑み込んでいった。

 

                    D×D

 

大きなクレーターのど真ん中にロキが煙を上げて突っ伏していた。

 

『乳龍帝よ。見事でした。またいつか会える日を楽しみに――』

 

遠ざかっていく乳の精霊。――おもしろければ何でもいいか。

 

「さ~て、戦後処理という事で……リエ、理子、春奈…この土地を元に戻すぞ」

 

三人は魔装少女の姿で「メカワルエフメカワルエフ……」と呪文を発しながら、両手を光らせて破損した場所を戻している。

 

自空間制御魔法(ときわたり)!」

 

俺はリエたちが修復できない個所を『自空間制御魔法(ときわたり)』で元の空間に巻き戻している。

 

ざっと十数分で作業が終わり、リエたち三人は変身を解きながら私服を再生させる。

 

まぁ、その間にバラキエルとイッセーが誤解を解いて仲良くなっていたのは、俺的に良かったと思う。

                    D×D

 

「あ、俺……用事を思い出したから、先に帰るわ!」

 

俺はある用事を思い出し、全員に伝えておく。

 

――そう、ハティとスコルのことを今思い出したんだ。

 

俺は神威(カムイ)で異空間に飛び、スコルとハティの目の前に降り立った。

 

ハティとスコルは四肢を縛られた状態でもがいていた。

 

「いくら神殺しの牙で斬り裂こうとしても無理なんだが……」

 

二匹は自身の口を前足にもっていって、神殺しの牙で裂こうとするが『熔遁(ようとん)護謨紐(ゴムひも)』は柔軟性と伸縮性が尋常でないため、容易くは切ることが出来ない。

 

「はぁ、仕方ないか――」

 

俺は手元にクナイを取り出して、風遁のチャクラを纏わせる。

 

ヒュン!!

 

そのクナイを投げて四肢の護謨紐(ゴムひも)に掠らせると、パサッ!!と、簡単に斬れる。

 

すると、ハティかスコルのどちらかが俺を襲い殺そうと飛びかかってきた。

 

「――これ一本で十分だ」

 

俺は牙を軽々と避け、中指でフェンリルの側面からデコピンをする。

 

ザザザザザザザ――。

 

勢いよく異空間の地面を滑る子フェンリル。

 

もう片方の子フェンリルの四肢の護謨紐(ゴムひも)も切ってやると、すかさずもう一匹の子フェンリルの下に駆けつける。

 

その子フェンリルが立ち上がるのを確認した子フェンリルは、「ぐるるるるるるる」と威嚇をしてくる。

 

――あ~、こいつらの支配を解かないといけないのか。

 

いまだにロキの支配を受けているため、二匹は言うことを聞かないだろうな。

 

サッ!!

 

俺は神速で二匹の子フェンリルの前に立ち、目線を合わせる。

 

「ぐるるるるるるるるるるる」

 

まだ警戒して威嚇をやめない。

 

「こいつを使わせてもらうよ」

 

俺は両目を別の万華鏡写輪眼に変化させた。

 

「――別天神(ことあまつかみ)!!」

 

幻術を掛けた直後、二匹の子フェンリルが体をビクつかせた。

 

「ハティ、スコル……おまえたちは自由だ。今から外の世界へ行きな」

 

――そう、俺の掛けた幻術『別天神(ことあまつかみ)』は対象者を、幻術に掛けられたと自覚することなく操るもの。ただし、リスクとして再発動まで十数年の周期(サイクル)が掛かる。

 

そして、この瞳術には俺の意思を反映させている。先ほど掛けたときは『誰にも支配されない、自由の身だ』と掛けた。

 

俺は再度、万華鏡写輪眼を変化させて神威(カムイ)を発動させようとした……その時だった。

 

「くぅぅぅぅん」

 

「くぅぅぅぅぅん」

 

二匹の子フェンリルが俺の横に来て、その大きい頭で俺に懐いてきた!!

 

「……まさかと思うが、俺についてくるのか?」

 

ハティとスコルは肯定するように「ウォン」と吠えた。

 

「……参ったな。このままだと家におけないし、食事も大変だろうな」

 

俺はしばし考え込む、少しして「あっ」と思い出した。

 

「そういえば、つい最近『生態魔法』を使って男を女に転換したんだよな…。ん~、ハティ、スコル、どうする?『生態魔法』なら、その体型を小さくできるかもしれないぞ」

 

俺の問いに二匹はお互いの顔を見合わせ、俺の前でお座りした。

 

「肯定でいいんだな?承諾なら一回吠える。却下なら二回吠えてくれ」

 

俺の問いにハティとスコルは「ウォン」と一回吠えた。

 

「……いいんだな?使用した後は二度と元に戻れないし、ランダムですべてが決まる。しかも、行使は一度きり。二度目は無い……それでもいいのか?」

 

俺の問いに再びハティとスコルは「ウォン」とだけ吠えた。

 

「――わかった。すぐに始めるからな」

 

俺はハティとスコルの頭に両手をそれぞれ置いて、『生態魔法』を掛ける。

 

カァァァァァァァ――!!

 

二匹は眩い光に包まれる。

 

数秒後、その光は徐々に低くなっていき、俺の顔半分低い位置で留まる。

 

光が止むとそこにいたのは――。

 

「んなっ!!」

 

少女が二人……しかも、全裸で突っ立っていた。

 

二人は要所を隠そうともせず、ぼーと俺を見つめているだけだった。

 

俺はこのままだと理性を失いかねないと判断し、神威(カムイ)で暁の装束の予備を取り出して二人に渡す。

 

「え~と…これを着ておけ。そのままだと風邪ひくぞ」

 

俺の意志が伝わったのか、二人は装束を手に取ると共に自身の姿を確認して、現状を理解したようだ。

 

途端に顔を真っ赤にするハティとスコル。人間そのものだな…。

 

装束を着たのを確認すると、俺は状況の把握のためにいくつか質問をすることにした。

 

「まずは、どちらがハティで、スコルなんだ?」

 

俺の問いに灰色の長髪の少女が言う。

 

「私がハティです」

 

「そうか、スコルはキミでいいんだな?」

 

「そう、私がスコル」

 

…と、灰色の短髪の少女が返してきた。

 

意外と外見で判断できそうだ。長髪がハティ、短髪がスコルね。

 

その他にわかりやすい特徴は……な、無いぞ。

 

二人のスタイル、輪郭など、体のどのパーツも同じだ。多少の差があるかもしれないが、パッと見ただけでは髪型以外で判断が出来ない。

 

「次の質問に移る。その頭にある獣耳と、ふさふさの尻尾は収納できるのか?」

 

俺の気になるところの一カ所だ。

 

「は、はい。できます」

 

二人は獣耳と尻尾を収納して、肘と膝から先まである獣の腕を人の腕に変化させていく。

 

「ふむふむ、変身能力あり……と。他にあるか?言語は人間の言葉を話せるとして、逆に獣の言葉とかわかるか?」

 

「わかる。私もハティも」

 

スコルが即答してくれる。

 

「ふむふむ。感情とかわかるか?」

 

「か、感情……」

 

ハティが考え込む仕草をして頭をひねっている。

 

「まぁ、先ほどの反応で見ていくしかないな」

 

俺は顔を真っ赤にするハティとスコルを思い出して言う。

 

「ところで、神殺しの牙は健在か?」

 

俺の質問に二人は首を横に振った。

 

「そうか、質問は終了だ。おおよそのことは把握できたからな……家に帰るか」

 

俺はハティとスコルの両肩に手を置いて、神威(カムイ)で家の庭に飛んだ。

 

――これから、少し大変になるだろうな……二人のことで。

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