ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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京都入り

――京都旅行当日。

 

早朝に俺は叩き起こされた。

 

誰かと思い、目を開けたら――。

 

ゴスンッ!!

 

一瞬何が起きたか分からなかったが、一秒後に俺は呼吸ができないことに気づいた上、腹部に激しい痛みを覚えた。

 

「ごふっ!!」

 

吐くかと思った…。

 

目の前には……般若を背後に出現させたリエが、鬼の微笑みで拳を握ってきた。

 

「…………っ!!」

 

ゴスッ…ドスッ!!!!

 

無言で俺の腹部を連続で強打してくるリエ。

 

戦車(ルーク)』の力と魔装少女の力が相まって、バカ(ぢから)もいいところ……シロナガスクジラだって軽々と持ち上げられるほどだ。

 

その拳打が俺の腹部を襲っている。貫通しないのは、俺が橘花(きつか)で上手く勢いを逃がしているのと、内臓が破裂しないように内蔵避け(オーガンスルー)で内臓の間を通しているからで……そうそう、回天(かいてん)の要領で骨の間にも勢い通して軽減しているため、骨折もしない。そして、それらを可能にしているのは紛れもなく、両眼の写輪眼だ。

 

「…………」

 

ニッコリ――とほほ笑んだ瞬間、最後の一発が俺の腹部にヒット。ベッドを真二つにして床をぶち抜き、物置部屋の床に叩きつけられた。

 

「ごふッ!!」

 

さすがに落下時の処理ができず、背中から激突して床を軽く損傷させた。

 

「朝食ができていますのでぇ、早く顔を出してくださいね~」

 

完全にキレているな…リエのやつ。

 

そういえば、やられている時に視界に入っていたが……カラワーナと冴子とマリアは部屋の隅に避難していたな。

 

俺のベッドと部屋の床が犠牲になっただけで、リエはリビングに戻っていった。

 

「はぁ……。結局直すのは俺なんだな…」

 

俺は軋む体に鞭を打ち、軽く跳躍して部屋に戻る。飛ぶ際に物置の床の損傷は直しておいた。

 

部屋に戻ると、三人の姿はない。

 

――自室に戻ったな……まぁ、いいか。

 

破壊されたベッドと床に向けて右腕をかざす――。

 

「――自()()()()()法」

 

空間を固定し、時間を巻き戻すことで修復することが出来る。

 

すべての現場証拠を隠滅した後、仙術を練って掌仙術(しょうせんじゅつ)で腹部のダメージを消していく。

 

さすがに何発もあの拳を受ければ、普通は失神している上に、腹部にモザイク掛けた地獄絵になっているところだ……俺だから軽く全身打撲で済んだものの。

 

全身の痛みが仙術によって回復され、快復した俺はリビングに顔を出す。

 

――入った瞬間に、リエからのストレートを腹部に食らったけどな。

 

 

                    D×D

 

――それから三時間後、移動して東京駅の新幹線ホームで待機中。

 

「全員、必要な荷物は持っているかの?」

 

「あぁ、問題はない」

 

カミュが送り出しにホームに来ていた。いつもと話し方が違い、母親モードになっている。

 

角都と飛段は、俺たちが到着してすぐに待ち合わせのカフェの前に姿を現した。

 

全員の服装は、不信感が無いように流行りのコーディネートをしている。しかも、全員の目にはカラコンが入っており、一般の人間にしか見えないようにしている。

 

角都は俺の腕輪の効力により、人の顔になっている。

 

「ほら。ルリエルたちは、これを懐に入れておいてくれ」

 

俺は悪魔であるルリエルたち八人に『悪魔専用フリーパス券』を手渡す。もちろん、京の妖怪か陰陽師からアジュカ、サーゼクス、俺へと転送されてきたものだ。

 

「それがあれば、寺などの聖域でも優に入れるだろ」

 

ルリエルたちはそれを受け取ると、服の胸ポケットやスカートのポケットの中にしまう。

 

一両分開けたお隣は、イッセーたちが通っている駒王学園の生徒が並んで話していた。

 

――一両隣にイッセーたちがいるとか、話しに行きたくなるな…我慢だけど。

 

                    D×D

 

新幹線に乗車し、指定席に座る。

 

俺が座る席は二人用で横にはユーが静かに座っている。

 

――出発して十分後。

 

俺はあまりにも静かなお隣さんの空気に耐えられず、話しかけてみる。

 

「なぁ、外の景色は楽しいか?」

 

『楽しい……と思う』

 

そのゴシックな文字を見て、俺はため息をついた。

 

「ユー、声は出せなくても感情は出していいんだぞ?」

 

『分かっているつもり。まだ慣れていないだけ』

 

ユーは満面の無表情で俺を見つめる。

 

「そうか。まぁ、今までより楽だろ?鎧を外せて」

 

『そう、少し軽い。でも、違和感がある』

 

「それは仕方ないさ。十年間、肌身離さなかったんだろ?」

 

『確かにその通り。入浴以外のときは外さなかった』

 

ユーはペンを走らせると、窓の方を向いた。

 

『たまにお湯が出ないで水が出たり、最悪のときは水すら出てこなかった』

 

俺はそのメモ書きに苦笑した。

 

「……くちゅん!」

 

俺は鼻がむず痒くなり、くしゃみをした。

 

『びっくりした』

 

ユーが俺を見て、驚いた顔(無表情だけど)をしていた。

 

『……意外と、可愛いくしゃみだった』

 

「風邪をひいたわけでもないし、イッセーかそこらへん辺りが噂話でもしたんだろう」

 

『……((((((((´・ω・`;)』

 

「顔文字で誤魔化すな」

 

俺はユーのお茶目に付き合ってみたが、なるほど…なかなか面白い。

 

「笑い話では勝てそうにないな」

 

『私は笑いには厳しい』

 

「そうだな」

 

『(`・ω・´ゝ)』

 

「止めてくれ、笑いそうになる」

 

『私の勝ち』

 

あ、勝負していたのか?全然気がつかなかった。

 

そんな風に他愛のない話をして眠くなってきたので、仮眠をとることにした。

 

                    D×D

 

『――ん……うぃ…?』

 

俺は目を覚ますと、目の前には――。

 

『おもしろい起き方をしよるのぉ。目覚めたわけでもないが、目覚めたようだな』

 

八頭八尾の大蛇……ムラクモがいた。

 

『あぁ、ここは俺の中か…』

 

『いや、違う。ここは主と赤龍帝との意識の境だ』

 

――意識の境……?どういうことだ?

 

『もうすぐ、赤龍帝の意識に潜る。話はその後のぉ』

 

はぐらかされた上に後回しね……。

 

俺はひょいとムラクモの胴体から移動して頭の上に座る。

 

這って移動するムラクモ。徐々に周囲の風景が変わっていく――。

 

『着いたぞ』

 

――そこは、一面が白い空間だった。

 

『我はここまでしか入られぬ。あとは任せたぞい』

 

俺はムラクモの頭から降り、白い地面に着地する。

 

『ありがとうな、ムラクモ』

 

ムラクモは何も言わずに、元来た道を這って帰っていった。

 

俺はしばらく歩いていくと、少し離れた場所に人ごみのようなものが映りこんできた。

 

俺は駆け出し、そこの眼前まで高速で移動した。

 

――いちおう、イッセーの意識の中と思うが…ある程度なら力を出せるみたいだな。

 

止まると、目の前には異様な光景が映りこんできた。

 

……そこには、テーブル席が置かれており、青年たちが座っているが……どいつもうつろな表情でうなだれているだけだ。

 

『に、兄さん!?』

 

その近くにイッセーといつしか話した女性が立っていた。

 

『お久しぶりね、えーと…確か…』

 

『義兄の龍介だ。忘れていたな?』

 

『そうそう、お義兄さんの龍介くんだったわね。思い出したわ』

 

俺は女性――エルシャと会話をして、軽く周囲を見回した。

 

『ここは相棒が「(ジャガーノー)(ト・ドライブ)」を使用した際に解放された空間だ。俺でも迂闊に入ることができないのでな……おまえさんの中に居る八岐大蛇(やまたのおろち)に頼んで連れてきてもらったわけだ』

 

――そういうことか。先ほどムラクモがはぐらかしていたことは、このことだったのか…。

 

『そうそう、ベルザードがね、いまの赤龍帝くんに興味を持ったらしくてね。――これを渡してくれって』

 

エルシャが取り出したのは――鍵穴のついた箱だ。

 

『懐かしいな。……本当のことを言えば、ベルザードと共に出てこないかと思っていたのだが…』

 

『そんなこと言わないでよ、ドライグ。でもね、私だって驚いたわよ。あのとき、無理やり引っ張りだされたのだからね』

 

『そうだったな、そいつはここにいる「最強の存在」によるものだろう…。それよりも、ベルザードは出てこれるのか?』

 

『出てはこれるけど、彼は意識を失いかけているの……』

 

エルシャの表情が少し陰る。

 

『――その話は後にして、話を戻しましょう……あなた、現ベルゼブブに「鍵」をもらったんでしょ?』

 

『えぇ』

 

そういえば、いつの日かイッセーがアジュカに駒を見てもらったって言っていたな…そのときに授かったものか。

 

すると、イッセーの手元が光り輝きだし、シンプルな宝箱の鍵を模したものが出現した。

 

『「鍵」ってそのもののことをさしていたわけじゃないけれど、手っ取り早く「鍵」も箱もそれらしいものが表現できたみたいね。この箱は赤龍帝のデリケートで、可能性に満ちた部分が入っているのよ。本来開けちゃいけないイタズラできない部分。けれど、ベルザードがね、あなたなら案外やれるんじゃないかって言うのよ。もちろん、「(イーヴ)(ィル)(・ピ)(ース)」を得たあなただからできることだと思うけどね』

 

突然、エルシャが笑いだす。

 

『ふふふふふ!おっぱいドラゴン!乳龍帝!ベルザードと一緒に見てたわ。ここに来て、初めて彼も私も大笑いしたわよ』

 

……と、カラカラと笑っていた。

 

『恥ずかしがらないで。ドライグも落ち込んでいないで、楽しみなさいよ。こんなにおもしろい赤龍帝は初めてだわ。――「(ジャガーノー)(ト・ドライブ)」の不気味で呪われた呪文。あれを吹き飛ばすぐらい、「おっぱいドラゴンの歌」は私とベルザードの心を楽しませてくれた。私も彼もまともな最期じゃなかったから……』

 

エルシャがイッセーに箱を差し出す。

 

『だからこそ、私も決心がついた。あなたを信じてみるわ』

 

イッセーは箱を受け取り、「鍵」を鍵穴に近づけていく。

 

『あなたと今回の白龍皇はいままでと別物ね。お互いを求めているわりに、目標が別にある。なんだろうなぁ。私たちがガチってたのが馬鹿らしくなるわ。――お開けなさい。ただし、開けたら最後まで責任を持つこと。半端はダメ。何が起こってもそれを受け止めて一歩を踏み込むの』

 

イッセーは鍵穴に鍵を入れ、カチリと箱を開けて蓋を開いた瞬間だった――。

 

『くっ!!』

 

俺は眩い光に眼を瞑る。

 

数秒後、目を開けると…イッセーは眩い光と共に退場していた。

 

『……あら、あなたは戻らないのかしら?』

 

エルシャが佇んでいた俺に話しかけてくる。

 

『まぁ、時期に強制送還されるだろうな…。その前に、エルシャ――生き返ってみたいと思わないか?』

 

俺の突然の言葉に目を丸くさせるエルシャ。

 

『俺はあの世から現世へ魂を呼び戻すことができる。ただ、器になる体がないと転生自体できないが……それはどうとでもできる。そうだな、ベルザードも生き返らせてみようか。できれば……いまは無理かもしれないが、ここにいる歴代赤龍帝の全員の転生も可能だ。どうだ?呪われた時間を取り戻すことができるぞ……強制はしないがな』

 

すると、時間がきたのだろうか……俺の体が発光しはじめた。

 

『……そうね。それもおもしろそうだわ。ベルザードと話してみるわ。その後で返事を返すわね』

 

俺はエルシャの言葉を聞き届けて――。

 

                    D×D

 

……目を開けば、そこは新幹線の指定席の上だった。

 

『おかえり。話はあなたの中にいる者に聞いたから』

 

――おいおい、ムラクモめ……俺の精神がいないことを理由に勝手に乗っ取っていたな?

 

『……いいではないか。我だって少しは他人と会話をしてみたいと思うこともある。……それよりもどうだ?小娘の膝枕は』

 

「……ん?」

 

俺はいまの自分が置かれている現状を即時判断すると、ゆっくりと起き上る。

 

『私の膝枕……どうだった?』

 

ユーが俺の顔を覗き込みながら、メモ書きを見せてくる。

 

「あ、あぁ。気持ちよかったよ」

 

俺は照れて顔少しだけ逸らす。

 

『そう、それはよかった』

 

ユーはメモを一枚めくって書き込む。

 

『(つω`*)テヘ』

 

――っ!文字が入っている。しかも、可愛いし。

 

「顔文字が上手くなったな」

 

ユーは、さっと窓の方へ顔を背けた。

 

「…………」

 

無言になり、少しさびしくなってくる。

 

『間もなく京都に到着します』

 

アナウンスが流れてきた。俺は少し早く荷物をまとめて降車の準備に入る。周囲のみんなも荷物をまとめて降車の準備をしていた。

 

新幹線が京都駅に停車し、俺たちはまとめていた荷物を持って、そのまま外へ出る。

 

ちょうど駒王学園の生徒たちと同じ方向のようで、後方を追尾するように歩く。改札口を通って、新幹線広場から出た。

 

「広いな」

 

角都が第一声でそう呟く。

 

「さて、早くチェックインしましょう。荷物が重いですし、京の都を見てまわりたいですからね」

 

ベネチアが目を輝かせて意気込んでいた。

 

……と、そのとき――。

 

「きゃー!痴漢(ちかん)!!」

 

駅内から女性の声が聞こえてくる……って、すぐ目の前だし。

 

「お、おっぱいを……!」

 

痴漢しようとしている男が手をわしゃわしゃさせて女性に近づいている。

 

「……仕方がない」

 

俺は荷物をその場に置いて「行ってくる」と言い残して、男に向けて駆け出す。もちろん、一般人並みの速度でね。

 

俺は男に近づき、後方から左腕を絡め取って、怪我をしないように勢いを逃がしながら伏せさせた。

 

「お、おっぱいを……」

 

まるで、どこかの誰かさんのように女性の胸を求めているような目をしている。

 

その後、すぐに駅内の交番の警官が駆けつけてきて、俺の取り押さえていた痴漢をし損ねた男を連れて行った。

 

俺は女性にお礼を言われたあと、すぐに皆の待つ所へ駆け戻る。

 

「悪い、少し手間がかかった」

 

俺は謝辞を入れて荷物を持つ。

 

――チェックインをしにホテルに行きますか。

 

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