ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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九尾の姫君

「僕たちの部屋は……ここだね」

 

前を歩いている祐奈が一角の部屋の前で立ち止まった。

 

ガチャ……と鍵を開け、中に入ってみると――。

 

「へぇ~。結構広い部屋だね」

 

「ベッドがふたつと、和式もあって……あ、あった。布団があったよ!」

 

私は豪華な洋式の部屋内の一角にある和式の畳部屋の上に上がって、奥の押入れを開けて中を確認していた。

 

『……カナデ、町の外れに妖気が集まってるぞ。何かあったようだな』

 

内より九喇嘛(くらま)が教えてくれる。

 

「ねぇ、今から少し出掛けない?」

 

花楓訊いていたので、「ちょっと待ってて」と手で制してケータイをかける。

 

機械のコール音が数回鳴る。

 

『――もしもし』

 

「ゼノヴィア?少し話があるんだけど…」

 

ケータイに出たのはゼノヴィア。

 

「えーと、この後用事ある?」

 

『いや、無いが……あ、先ほどイッセーから「稲荷伏見に行かないか?」と誘われたんだが』

 

「稲荷伏見?……ちょっと待ってて」

 

私は保留ボタンを押して、祐奈と花楓に訊く。

 

「祐奈、花楓、ゼノヴィアたちが稲荷伏見に行くって言うんだけど、一緒に行く?」

 

「稲荷伏見?う~ん…することもないからね~。いいよ」

 

「僕も行くよ。一人になるのは嫌だからね」

 

私は二人の意見を聞いて、保留を解除してゼノヴィアと話す。

 

「ゼノヴィア、祐奈と花楓と私もついて行くよ」

 

『そうか……了解した。イッセーたちにも伝えておく』

 

「うん……わかったよ。じゃあ、また後で」

 

ケータイを切る。そして用意を済ませた後、三人で担任の先生の部屋に行き、許可をもらった。

 

「行きましょうか。稲荷伏見へ!」

 

私は心躍らせながら待ち合わせ場所へ歩き出す。――だって、九喇嘛(くらま)と同じ狐を祭っているんだよ?気にならないわけないじゃない!

 

                    D×D

 

京都駅から一駅進んだところに「稲荷駅」があり、そこから下車することで伏見稲荷の参道に入ることができる。

 

俺たちは電車に揺られて稲荷駅へ到着した。

 

「おーっ、見ろ、アーシア、イリナ、夕麻。珍しいものがたくさん店頭に並んでいるぞ」

 

「わー、かわいい狐ばかりですね」

 

「ここでお土産ちょこっと買ってもお小遣い足りるかしら?」

 

「ふむふむ…」

 

「アーシア、こっちにもかわいい狐があるわよ」

 

「この狐のお饅頭……おいしそう」

 

「おぉ!奏、来て来て!!九尾の狐!」

 

「さすが、狐を祭っている場所だね。ミニ九喇嘛(くらま)がたくさん」

 

着いて早々皆はさっそく京都の空気を堪能していた。

 

「美少女ノクテット(九人)の京都風景。まずは一枚目!」

 

隣で松田がアーシアたちを撮影していた。

 

「ちょっと、私は撮らないの?」

 

桐生が半眼で物申していた。

 

……あ~。あとで現像した写真もらおうかな?リビングに飾るためのね。

 

大きな門の前の両脇に狛犬のような狐の像が立っている。

 

「……魔除けの像だな。本来なら、私たち魔なる存在を寄せ付けない力があるのだが、例のパスのおかげで騒ぎは起きないようだ」

 

「やっぱ、何かに見られてる?」

 

俺は駅から降りたときより、誰かに監視されているような気配を感じていた。

 

『……監視されているのは仕方ありませんが、それでも、八方向からされているとなると……気になって仕方がありませんね』

 

いつの間にか隣にきていた奏さんの口からは、違う女性の声が発せられていた。

 

まぁ、確かに俺たちは彼らにとって部外者だ。しかも、悪魔や堕天使が入ってくれば、事前に話はしていても監視はするだろう。

 

無事に門を抜け、進むと本殿。さらに歩くと稲荷山に登れる階段が見えてくる。

 

「山登りしようぜ!」

 

元浜の何気ない言葉で、千本鳥居を見ながら山登りに挑戦することになった。

 

                    D×D

 

歩き始めて数十分。

 

「……ぜーはー……ま、待ってくれ……。ど、どうしておまえたちはそんなに動けるんだ……?」

 

元浜はすでに息があがっていた。……おまえが言い出しっぺだろうに。

 

松田が嘆息しながら階段の上から言う。

 

「おいおい、元浜。情けないぞ。アーシアちゃんたちだってまだ元気だってのに」

 

松田は運動神経バツグンだから、これぐらいでは根をあげない。

 

まぁ、俺たちは悪魔とかの異形な存在だから基礎能力は人間より上がっているからね。それに俺たちは厳しい訓練もしているから、これぐらいならまだ平気だ。この程度で根をあげていたら、兄さんのバリツのフルコースの受けることになる。

 

途中、休憩所のお店を見ながらも伏見山への挑戦は続く。

 

「わりぃ、俺、ちょいとお先にてっぺんまで行ってみるわ」

 

つい、冥界での山で修業したせいで得てしまったようだ……山の頂上が見たいってね。

 

皆に断りを入れてから、階段を勢いよく駆け上がった。

 

降りてくる人の邪魔にならないように階段を上っていく……って、あれ?人が一人もいないんですけど…?

 

そんなことを考えているうちに、気がつけば頂上らしき場所に出ていた。…………そこにあったのは古ぼけたお(やしろ)だ。

 

辺りは木々でうっそうとしていて、まだ日が出ているというのに薄暗い。

 

俺はお社で手を合わせて下山することにした。

 

お社でパンパンと手を合わせ、

 

『おっぱいをたくさん見て触れますように!彼女ができますように!部長や朱乃さんたちとエッチ出来ますように!』

 

と、()わいで正直な願いを念じて、その場をあとにしようと――。

 

「……京の者ではないな?」

 

突然の声。周囲に気を配らせると……。

 

なんか、俺……囲まれている?明らかに人間じゃない気配を複数感じる。

 

……あ~、兄さんが言っていたっけな?「囲まれる前に気配を察知して、先手を打つこと」って。

 

俺ってまだまだ未熟なんだな~っと、呑気なことを考えていた。

 

そんなことはさておき、身構える俺の前に現れたのは――巫女装束を着た小さな可愛らしい女の子だった。

 

キラキラと光る金髪に、金色の双眸。小学生低学年ほどの容姿だ。

 

だが、頭部に生えているものを見て人ではないと理解する。

 

――獣の耳。

 

視線を下へもっていくと、お尻からはもふもふしてそうな尻尾が!どこかで見たような……。犬の妖怪?いや、ここは伏見稲荷だから、狐……あ、思い出した。確か奏さんがいつの日か狐耳と九本の尻尾を出していたっけ?

 

などと考えていたら、獣耳の少女は俺を激しく睨み、吐き捨てるように叫ぶ。

 

余所者(よそもの)め!よくも……ッ!かかれっ!!」

 

少女の掛け声と共に林から山伏の格好の黒い翼を生やした頭部が鳥の連中と、神主の格好をして狐のお面を被った奴らが大量に出現してきた!!

 

「カラス?天狗に……狐?」

 

驚く俺だが、少女は容赦なく指を俺に向ける。

 

「母上を返してもらうぞ!」

 

天狗と狐神主が同時に襲いかかってきた!

 

俺は瞬時に籠手を出現させ、攻撃を躱していく。

 

「は、母上?何を言ってんだ!俺はおまえの母ちゃんのことなんて知らないぞ!」

 

俺は少女にそう叫ぶ!しかし、少女は問答無用のご様子だ!

 

「ウソをつくな!私の目は誤魔化しきれんのじゃ!」

 

ウソンッ!京都について早々誘拐犯扱いとか……運がねぇ!!

 

「理不尽なッ!」

 

俺は叫びながら攻撃を躱すが、バランスを崩したところに天狗の錫杖が俺に降りかかってきた!!

 

一撃食らう覚悟をしたそのとき――。

 

「――秘剣、燕返し!!」

 

ギギンッ!!

 

目の前に降りかかってきていた錫杖(しゃくじょう)が二つに分断されていた。

 

天狗は武器を損傷したことに気がつき、後方へ下がった。

 

「お待たせ。九喇嘛(くらま)たちの言う通りだったよ」

 

「どうした、イッセー」

 

「何々?妖怪さんよね?」

 

「面倒なことに巻き込まれたわね」

 

「理子りんも到着しましたー♪」

 

「ゴメンね、少し遅れたよ」

 

「さすがに多対一は卑怯じゃないかなぁ?」

 

ゼノヴィアたち七人が加勢しに来てくれた!

 

ゼノヴィアとイリナは祐奈から聖魔剣を創ってもらって握っている。

 

少し遅れてアーシアと辰巳が駆けつけてきた。

 

俺たち十人が集まったことで、少女一行さまは驚き、怒りを一層深めた様子だった。

 

「……そうか、おまえたちが母上を……もはや許すことはできん!不浄なる魔の存在め!神聖な場所を(けが)しおって!絶対に許さん!」

 

話し合いは無理そうだ…。一方的にやられててすごい不快だけどさ!!

 

『ふん、わしに楯突くとは……身の程を知った方がいいぞ!小娘ども』

 

奏さんの声音と話し方が変わると……全身を黄色いオーラが覆い尽くし、羽織をまとった姿になった。

 

「……九喇嘛(くらま)、脅しをかけるだけって言ったけど……少し言い過ぎ」

 

もとの声音に戻った奏さん。……いろいろ大変ですね、尾獣というのは。

 

「来い!(サン)(ダルフ)(ォン)!!」

 

花楓ちゃんは右足で境内の地面を強く踏みつける。すると、石造りの玉座が現れて、その背もたれに刺さっていた大剣を引き抜いた。

 

天沼矛 (あまのぬほこ)!」

 

夕麻は神槍を創りだし、重心を低くして構える。

 

「アーシア!部長から例のものを受け取っているな?」

 

「はい!」

 

俺の問いにアーシアはポケットからグレモリーの紋章入りカードを取り出した。

 

「行くぜ!えーと……」

 

ここは破壊しないように凌ぐしかないから、『女王(クイーン)』と『戦車(ルーク)』は使えない。ならば……。

 

「『騎士(ナイト)』にプロモーション!」

 

体に力が流れ込み、体が軽くなった感覚を得る。

 

「アーシアは私が守るから、全員は安心して戦って」

 

辰巳がアーシアはの隣に立って黒いオーラを身にまとう。

 

俺たちは戦闘の態勢に入る。もちろん、周囲を破壊しないように武器の破壊だけを破壊し、追い返すだけ。

 

ダッシュをかけようとした――その時だった。

 

一陣の風が俺たちと相手の間に吹き荒れた!!

 

その風は出現して二秒後に止んだ。すると、相手の得物がすべて破壊されていた。

 

「おいおい、おまえたちはこんなところで何をしている?」

 

その聞き覚えのある声と共に大きな扇が双方の間に舞い降りていた!

 

その上に乗っていたのは――兄さん!!

 

「京の姫君、ここは一度引いてもらえると助かるのですが……」

 

兄さんが扇から降りて少女に申し立てた。

 

少女は俺たちを憎々しげに睨んだあと、手をあげる。

 

「……撤退じゃ。いまの戦力ではこやつらに勝てぬ。おのれ、邪悪な存在め。必ず母上を返してもらうぞ!」

 

少女がそれだけ言い残すと、一迅の風と共に連中は消えていった。

 

                    D×D

 

――初日の夜。

 

俺はあのあと、境内を掃除してこのホテルに帰ってきた。

 

その後は疲れを癒しに露天風呂へいき、ゆったりと外の景色を楽しんでいた。

 

現在は夕飯を食べ終え、部屋にてベッドの上に横になりテレビを見ていた。

 

俺の部屋は一人用でベッドもひとり分しかなく、部屋の位置は階の角にあたる。

 

スペースは多少なりと狭いが、それでも豪華なのだから文句はない。

 

ニュースでは、京の駅やその周囲で痴漢騒ぎが起きていることが報じられていた。

 

俺はチャンネルを変えてお笑い番組に入れる。

 

コンコン……。

 

突然ドアがノックされたのでビクついたが、平然とした態度で応答した。

 

「どなたでしょうか?」

 

「…………」

 

……返事がない。

 

コンコン……コン……。

 

再度ノックされたが、先ほどより回数が多く、タイミングが不規則だ。

 

もしかしてと思い、モールス信号で解読してみると……案の定だ。

 

『WATASHIHAYUUDAYO』

 

「私はユーだよ……か」

 

俺は鍵を外してゆっくりとドアを開ける。

 

『こんばんは』

 

目の前には長い銀髪をツーサイドアップに結って、浴衣姿でメモ帳を待ったユーが佇んでいた。

 

「何か用か?」

 

俺が問うと、ユーはペンを縦に棒を書くように走らせて見せてくる。

 

『皆が夕食後のお風呂に行ったから、一人…だから来た』

 

「そ、そうか……中に入るか?」

 

コクリと小さく縦に首を振るユー。

 

「……っと、その前に置き手紙ぐらいしてきたか?」

 

『大丈夫、ちゃんとテーブルの上に置いてきた』

 

ユーはトコトコと部屋の中に入って、テレビの見えるようにベッドの横へ椅子を持ってきた。

 

『お茶、もらえる?』

 

丸ゴシック体で書かれているメモ帳を見て、俺は備えつけてある茶葉でお茶を入れた。

 

「テレビ…面白いか?」

 

『おもしろい。特にお笑い』

 

俺はユーに湯呑を出すと、ユーは湯呑を受けとって熱いお茶を音を立てずに少し飲む。

 

俺はテレビに映っているお笑い芸人のネタが終わり、判定が行われているところでユーに訊いてみた。

 

「なぁ、ユー的にいまのネタは何点ぐらいだ?」

 

ユーはメモ帳にペンを走らせる。

 

『85点』

 

85点って高い方なのか?

 

『そこそこ面白かった』

 

「意外と点数高いね」

 

『平均以下』

 

「……厳しいな」

 

ハハハ……逆だったか。

 

ちょうどそのとき、俺の携帯電話が着信を知らせてくれる。

 

ディスプレイには――アザゼルか。

 

「…もしもし、何だ?アザゼル」

 

『龍介か。今どこにいる?』

 

「あぁ、お隣の下宿ホテルの中だけど?」

 

『隣か……今から集まって欲しいんだが、全員来れそうか?』

 

「ん~、もう少ししたら部屋に帰ってくるだろうから……待ち合わせ場所は?」

 

『そっちのホテルのロビーでいいか?こちらは見つかると面倒だからな』

 

「はいはい。ここのロビーね。揃いしだい降りるから」

 

『りょーかいっと。んじゃあな』

 

「はいはい」

 

俺は携帯電話を切り、貴重品を携帯してユーと部屋を出る。

 

「ユー、皆にこのことを伝えてきてくれるか?飛段と角都には俺が伝えておく」

 

『わかった。またあとで』

 

ユーは泊まっている部屋へ帰っていった。

 

俺は飛段と角都を呼びに部屋に入っていった。

 

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