ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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観光

俺はふと目を覚ました。

 

喉が渇いたので、テーブルの上に置いてあるペットボトルの水を飲む。

 

時間は深夜の三時すぎ。

 

……裏京都で過ごしたあと、イッセーたちと時間をずらして金閣寺に戻った。そして、観光に戻り、金閣寺を見たあとホテルへ戻った。

 

時間が夕食前だったので、入浴を済ませて夕食についた。

 

夕食後は部屋に戻り、テレビを見ていたらいつのまにか寝てしまっていた。

 

――そこで、いまに至る。

 

俺は水を飲み終えると、浴衣を整えてベッドに戻る。

 

シーツをはぐると、そこには……そこには――。

 

「……なぜ、黒歌がここにいる?」

 

そう、そこには全裸の黒歌が寝ていた。

 

――なぜ気づかなかったんだ?俺。

 

よくよく考えると、点けっぱなしのテレビが消されていた時点で気づくところだった。

 

目の前で寝ている黒歌が寝返りを打とうと体を動かし――。

 

「おっと……!!」

 

俺は慌てて黒歌の首元までシーツをかけた。

 

危うく色々なものを目にするところだった…。

 

俺はどう寝ようかと考えて、仕方なく浴室の浴槽(バスタブ)の中で寝ることにした。

 

                    D×D

 

翌朝、ベネチアによって俺は起こされた。

 

さすがに体勢の悪かったことが災いして、体中が痛む。

 

「黒歌!起きろ!!」

 

「みぎゃー!へびはらめぇ!!」

 

サルベリアと黒歌のやり取りが聞こえてきた。

 

「……あいつら、朝から何やってんだ…」

 

俺は嘆息しながら浴衣を着終えた黒歌をよそに、寝癖を手櫛で無理やり直した。

 

「…朝食か。もう、全員起きているのか?」

 

俺はベネチアに確認を取る。

 

「はい。角都さまと飛段さまは先ほど、廊下ですれ違った際に『先に食べにいく』とおっしゃられておりました」

 

給仕の癖が抜けないのか、たまにこういうかしこまった対応をしてくるベネチア。

 

「別に、かしこまらなくてもいいよ。いまは旅行中なんだしさ」

 

「はい。リュースケ、今日はどうするの?」

 

「あぁ、俺はユーを連れて九重(くのう)の護衛だ。皆には自由かつ、不審な者がいないかを見まわってもらう予定だ」

 

俺は全員出たのを確認して部屋の鍵を閉める。

 

                    D×D

 

――時間は過ぎ、俺は身支度をした後…ユーと共にある場所へ向かう。

 

京都駅からバスに乗り、嵐山方面へ向かう。

 

「……到着だな」

 

俺とユーは嵐山前のバス停で降車し、徒歩で待ち合わせ場所まで行く。

 

少し遠回りになるが、渡月橋を渡って風景を眺めながら歩く。そのだが……歩いている間はユーと手をつないでいた。

 

天龍寺前に到着すると、賽銭箱の前に巫女服姿の小さな少女が立っていた。

 

「待たせたか?」

 

俺は待ち合わせのときによく使う単語を発した。

 

「あまり待ってはおらぬ。今日は約束通り、護衛をしてもらうからの。代わりに私が案内をするのじゃ」

 

「案内はイッセーに…じゃないのか?」

 

胸を張る九重に俺が突っ込むと、顔が赤くなったのが目に見えた。

 

「……まぁ、いじるのはこのくらいにしておいて、案内は頼んだ」

 

『よろしく』

 

メモ帳に丸ゴシック体で書かれた文字を見せるユー。服装は、紫地に白の縦のしまが入ったドレス調にローヒールといった感じだ。

 

「う、うむ。こっちじゃ」

 

そっぽを向くように歩き出した九重。……少しやり過ぎたか?

 

くるっと回り込むように天龍寺を眺めながら歩いていると…境内に入っていき、受け付けのある場所についた。

 

ちょうど受付のところに見知った面々がいたので、声をかけてやろうと思ったら――。

 

「おぉ、お主たち、来たようじゃな」

 

九重に先を越された…。

 

「九重か」

 

「うむ。約束通り、嵐山方面を観光案内してやろうと思うてな」

 

イッセーが九重と会話を交わして、ふと俺を見た。

 

「………」

 

「………」

 

「…兄さん?」

 

「イッセー、そこはもう少し驚くところだろうよ」

 

沈黙を破ったイッセーに俺は突っ込む。――何気ない挨拶だな、我がブラザー(義弟)よ。

 

「いや、もう色々と諦めたところだから」

 

イッセーがジト目で見てくる。

 

「あ~、皆で楽しんでいるところ悪いね。俺たちはそこにいる姫さんのご両親の知り合いでね…仕事中のご両親に頼まれて面倒を見ているところなんだ。イッセーたちとは面識があるみたいでね、修学旅行の案内と言う名目で将来のために頑張るそうだ。皆仲良くしてあげてほしい」

 

俺はアドリブで九重を紹介した。イッセーたちに案内するために出ている九重の護衛についているとはいえ、邪魔はできないし、何たって九重の母親と縁のある天狗の爺さん直々の頼みだしな……この護衛は。

 

まぁ、俺の登場に皆の目が丸くなっていたのは確かだが。

 

「はー、かわいい女の子だな。なんだ、イッセー、おまえ現地でこんなちっこい子をナンパしてたのか?」

 

「……ちっこくてかわいいな……ハァハァ……」

 

イッセーの()友二人が、九重を見て興奮している……というか、眼鏡のほうは見るからに度を行き過ぎようとしていた。

 

――だが、そこは心配いらないらしい。眼鏡をかけた女生徒がその眼鏡を吹っ飛ばし、九重に抱きついたからだ。

 

「やーん!かわいい!!何よ、兵藤、どこで出会ったのよ?」

 

「は、放せ!馴れ馴れしいぞ、小娘め!!」

 

抱きついて頬ずりしている眼鏡女生徒から、九重は嫌がって離れようとしている……どうも、その行動と言動が眼鏡女性徒を喜ばせるだけみたいだ…。

 

「お姫さま口調で嫌がるなんて、最高だわ!!キャラも完璧じゃないの!」

 

俺はその光景の中、イッセーに耳打ちをする。

 

『……イッセー、九重の紹介でもしたらどうだ?俺は、護衛役以外にやることはないからな』

 

『わかったよ。…まさか、兄さんが同行するなんて思わなかったからさ』

 

俺はイッセーから離れると、イッセーは眼鏡女生徒を九重から引き離して…俺の続投で話を再開させた。

 

「こちらは九重。俺やアーシアたちのちょっとした知り合いなんだ」

 

「九重じゃ、よろしく頼むぞ」

 

イッセーが紹介すると、九重は堂々とした態度で名乗る。

 

「それで、九重。観光案内って、何をしてくれるんだ?」

 

イッセーが訊くと、九重は胸を張って自信満々に答える。

 

「私が一緒に名所へついて回ってやるぞ!」

 

「じゃあ、さっそくこの天龍寺を案内してくれよ」

 

「もちろんじゃ!」

 

イッセーが頼み込むと、九重は笑顔を輝かせた。

 

                    D×D

 

九重に案内され、天龍寺を回る。

 

一生懸命に京都の町を案内している九重の微笑ましい姿を見ながら、あとをついて行く。

 

大方丈裏(だいほうじょううら)の庭を見たが、色づいた秋の山景色と池で泳ぐ鯉がマッチ……見事なものだ。

 

「ここの景色はどうじゃ。絶景じゃろ?何せ世界遺産じゃからな」

 

世界遺産だけはある庭をあとに、法堂に案内される。

 

堂内に入ると、そこの天井には――。

 

「でかいな」

 

『大きい』

 

俺とユーの感想だ。

 

「これは雲龍図。どこから見てもにらんでいるように見える『八方睨み(はっぽうにら)』じゃ」

 

確かに、全角度から見てもにらまれているな。

 

『目の瞳が茶碗』

 

俺はユーが言ったことの意味が一瞬理解できなかったが、ユーの視線を追って理解した。

 

「……そういうことか」

 

眼でそれを捉えるが、すぐに視線を外した。

 

『撮影禁止』

 

ユーには俺の眼のことがバレていたから、すぐに視線を外したんだ。まぁ、記憶していればいつでも見せることはできるんだけどね…。

 

天龍寺を一通り回り、外に出た。

 

「さて、九重。次はどこだ?」

 

イッセーが訊くと、九重は各方向を指差して楽しそうに言う。

 

二尊院(にそんいん)!竹林の道!常寂光寺(じょうじゃっこうじ)!どこでも案内するぞ!!」

 

――ハハハ、こりゃ参ったね。

 

俺は九重の天真爛漫っぷりを見て苦笑した。

 

こうして俺たちは九重の先導のもと、嵐山観光をすることになった。

 

                    D×D

 

「かなり回ったな」

 

俺たちは九重の勧めで、湯豆腐屋で昼食を取っている。

 

軽く息を吐いた俺は、イッセーたちが座っている席の一つ隣にある、二人掛けの席にユーと座っている。

 

天龍寺のあと、九重の案内で嵐山を見て回った。二尊院に竹林の道を見て回ったな…竹林の道では、人力車に乗って移動した。運よくペア人数分停まっていたから、全員で移動することができたよ。

 

「ほら、ここの湯豆腐は絶品じゃ」

 

隣の席では九重が全員に湯豆腐を救って器に入れて渡していた。

 

俺はふと思った。

 

――絶対に、リエはここを訪れている……と。

 

リエは京豆腐が好物で、名前を聞いただけでテンションが上昇するほど好きなんだ。そんなリエが京豆腐のあるこの店に来ないわけがない。

 

『どうぞ』

 

湯豆腐の()がれたを持った器を持った右手を突き出してくるユー。

 

「ん?あぁ、ありがとう」

 

俺はユーから器を受け取り、美味しい湯豆腐をいただく。

 

「あ、イッセーくん」

 

「あれ、リュースケ?」

 

「お兄ちゃん!」

 

そのとき、近く……眼前で声が掛けられた。

 

「なんだ、奏たちか」

 

俺は食していた手を止めて二人を見た。

 

「何だ…じゃないでしょ。…で、ここで何をしてるの?」

 

「何って……観光だが?」

 

「観光ねぇ」

 

二人は九重を見ながらそう言った。

 

――気づいてますよね?お二人さん。

 

祐奈はイッセーと話しているが……せめて隣にいてやれ、マイシスターズよ。

 

「おう、おまえら、嵐山堪能しているか?」

 

ちょうどそこに介入してきた者――アザゼルが、会話に入ってきた。

 

「先生!先生も来てたんですか?って、教師が昼酒はいかんでしょう」

 

イッセーが非難すると、「その通りです」と対面の席に座る女性――ロスヴァイセが同意する。

 

「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三言ってはいるのですが……」

 

ちらりとロスヴァイセの隣に座っているツインテールの女性――リエが湯豆腐を食しているのが見えた……しかも、とびっきりの幸せそうな顔で。

 

「まぁ、そういうな。嵐山方面を調査した後でのちょっとした休憩だ」

 

――調査か。

 

「だがな、ロスヴァイセ。ちったぁ要領良くいかないとよ。そんなだから、男のひとりも出来ないんだぜ?」

 

バンッ!アザゼルの一言に真っ赤になってテーブルを叩くロスヴァイセ。

 

「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないでください!もう、あなたが飲むぐらいなら私が!!」

 

アザゼルの杯を奪って、ぐびっぐびっ……と見事に酒を飲み干したロスヴァイセ。

 

「ぷはー。……だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがダメなんれすよ……」

 

「い、一杯で酔っぱらったのか?」

 

「あらら~、大変なことになりましたねぇ」

 

驚くアザゼルとリエだが、ロスヴァイセは二杯めの酒を注ぎ、豪快に飲み干した。目の座ったロスヴァイセは、アザゼルに絡む。

 

「わらしはよっぱらっていやしないのれすよ。だいたいれすね、わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしてるころから、おさけにつきあっていたりしててれすね。……だんだん、おもいだしてきた。あのジジイ、わらしがたっくさんくろうしてサポートしてあげたのに、やれ、おねえちゃんだ!やれ、さけだ!やれ、おっぱいだって!アホみたいなことをたびさきでいうんれすよ。もうろくしてんじゃないかってはなしれすよ!ヴァルハラのほかのぶしょのひとたちからはクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね、やすいおきゅうきんでジジイのみのまわりのせわしてたんれすよ?そのせいれすよ!そのせいでかれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉぉぉぉ!!うおおおおおおおおおんっ!!!」

 

ロスヴァイセが大号泣して、イッセーたち…いや、俺やアザゼルたちもどうしたらいいのかわからなくなってきた……。

 

アザアゼルが頭をポリポリとかきながら言う。

 

「わかったわかった。おまえの愚痴(ぐち)に付き合ってやるから、話してみな」

 

アザゼルがそう言うと、ロスヴァイセは明るい表情になる。

 

「ほんとうれすか?アザゼルせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。

 てんいんさーん、おさけ、じゅっぽんついかでー」

 

「大丈夫なのか……?」

 

『仕方がない。巻き込まれる前に離れた方がいい』

 

「そういうことだ。おまえら、さっさと食って他に行け。ここは俺が受け持つからよ」

 

イッセーたちが顔を見合わせ、アザゼルの言う通りに昼食を急いで平らげる。

 

「ひゃくえんショップ、サイコーれすよー!アハハハハ!」

 

店を出る寸前、酔ったロスヴァイセの爆笑が背後から聞こえてきた。

 

                    D×D

 

店を出て、次の目的地――渡月橋をめざしていた。

 

「残念ですねぇ~。もう少し食べたかったのですがぁ……」

 

物惜しそうに店の方を見つめるリエ。

 

「仕方がないだろう。ああなったロスヴァイセの面倒をみられるのは、いまはアザゼルぐらいしかいないからな…」

 

『私もそう思う。あの場にいたら、私たちも絡まれていた』

 

ユーのメモ帳に目を通したリエが、「そうですねぇ~」とつぶやいた。

 

俺たちは気持ちを切り替えて、観光を続行する。

 

――次は、確か……渡月橋だったな。

 

それから数分ほど観光街をあるくと目の前に桂川(かつらがわ)が姿を現した。

 

すぐ目の前には、古風な木造の橋が架かっている。

 

『着いた。渡月橋』

 

「着きましたねぇ~」

 

「あぁ、着いたな」

 

橋を渡る寸前で、イッセーたちの会話が盛り上がりだした。

 

「知ってる?渡月橋って渡りきるまでうしろを振り返っちゃいけないらしいわよ」

 

「なんでですか?」

 

「それはね、アーシア。渡月橋を渡っているときに振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしいのよ。エロ三人組は振り返ったら終わりね。真の救いようのないバカになるわ」

 

「「「うるせえよ!」」」

 

「あと、もうひとつ。振り返ると、男女が別れるって言い伝えもあるそうね。まぁ、こちらはジンクスに近いって話だけど――」

 

「絶対に振り返りませんから!」

 

桐生の説明を遮って、アーシアが涙目でイッセーの腕にしがみついた。

 

ぎゅっ。

 

……なぜか、俺の両腕がホールドされた。

 

「おいおい。いまのはうわさ話だろう?何の根拠もない――」

 

「わかってますよぉ。それでも~、そうしたいと思うのが性でしてぇ」

 

『私も。リエと同じ心境』

 

――わ、わからんぞ。女性の心というものは…。

 

「「「…………」」」

 

ちくちくと正面から殺意的なモノを感じているのは…気のせいだろうか?

 

「気にせんでいいと思うのじゃが……。男女の話は噂に過ぎんのじゃ」

 

九重もそう言ってくれているのだが、両腕に捕まっているお二人さんは離れようとはしなかった。

 

俺は仕方なく、両手に花束状態で渡月橋を渡る。終始、前方で歩いている辰巳と奏と花楓から殺気を感じていた。こっち――うしろを振り向かないところを見ると、どうやら……リエたちと同じ心境らしい。

 

無事に渡りきり、対岸に到着する。両手にくっ付いていたお二人さんは、パッと腕から離れてくれた。

 

――はぁ。帰りはどうしようか?

 

俺は帰りの渡月橋を渡ることを考えていた。

 

「――っ!!」

 

俺は嫌な予感を察知し、脳内で危険予知のアラートがマックスで鳴りだした!!

 

「全員――」

 

俺の声が届く前に、全身を生暖かい感覚が襲った――。

 

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