俺は周辺を見渡す。俺を含め、リエ、ユー、イッセー、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、祐奈、レイナーレ、辰巳、理子、花楓、奏、九重、このメンバーしかいない。
「――この霧は」
霧を見て驚いたのはアーシア。
「十中八九、『
花楓が皆に告げた。
「そ、そうだったな。カエデは
「どう?フィニア」
『…ぼ、僕も間違いないと思う。この霧は「
花楓の背中から出現した金色の翼の
「おまえら、無事か?」
宙からの声。そこには黒い翼を羽ばたかせているアザゼルがホバリングしていた。
すぐに着地するアザゼル。翼をしまいながら言った。
「俺たち以外の存在はこの周辺からキレイさっぱり消えちまってる。俺たちだけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。……この様子だと、渡月橋周辺と全く同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか?」
『そ、その通りですね…。空間自体遮断されていて、外とは連絡が取れないみたい…』
アザゼルの疑問にフィニアが答えた。
「ここを形作っているのは悪魔の作るゲームフィールドの空間と同じものですか?」
イッセーがアザゼルに訊く。
「あぁ、三大勢力の技術は流れているだろうからな。これはゲームフィールドの作り方を応用したんだろう。――で、霧の力でこのトレースフィールドに転移させたというわけだ。 『
と、アザゼルは言った。
イッセーの横にいる九重が震える口を開く。
「……亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に口にしておった。気づいた時には霧に包まれていた、と」
俺は気配を感じ取り、イッセーたちの前に跳躍して着地した。
その気配の持ち主は渡月橋のほうから出現する。薄い霧のなかから複数の気配と共に複数の人影が近づいてきて、俺たちの前に姿を現す。
「はじめまして、アザゼル総督、赤龍帝。そして、うちはイタチ」
俺の裏の名前を呼んで挨拶してくれた者は――学服を着た黒髪の青年だ。
その学服の上から漢服を羽織っている。しかも、そいつの手には槍――最悪の代物を持っている。
その青年の周囲には似た学服をきた若い男女が複数人いる。歳は俺たちとさほどの差はない……ざっと同年だとみる。
アザゼルが一歩前に出て訊く。
「おまえが噂の英雄派を仕切ってる男か」
アザゼルの問いに中心の青年が肩に槍の柄をトントンしながら答える。
「曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫だ。――いちおうね」
花楓の金色の翼からフィニアが言う。
『み、皆!あの槍の
「面倒だ。
俺は毒づいた。相対なんかしたくないよ…『
『――っ!!』
俺とフィニアの言葉にイッセーたちが酷く狼狽していた。
「あれが天界のセラフの方々が恐れている聖槍……っ!」
イリナが口元を震わせて言う。ゼノヴィアも低い声で言った。
「私も幼い頃から教え込まれたよ。イエスを貫いた槍。イエスの血で濡れた槍。――神を貫ける絶対の槍っ!」
「あれが聖槍……」
『見てはダメッ!!』
うつろな双眸で聖槍を見つめるアーシアに、フィニアが警告した。
バッとアザゼルがアーシアの両目を素早く手で隠した。
「アーシア。信仰のある者はあの槍をあまり強く見つめるな。心を持っていかれるぞ。
九重が憤怒の形相で曹操に叫ぶ。
「貴様!ひとつ訊くぞ!!」
「これはこれは小さな姫君。なんでしょう?この私ごときでよろしければ、なんなりとお答えしましょう」
曹操の声音は平然としているが、明らかに何かを知っているふうな口調だ。
「母上をさらったのはお主たちか!」
「左様で」
「母上をどうするつもりじゃ!」
「お母上には我々の実験にお付き合いしていただくのですよ」
「実験?お主たち、何を考えておる?」
「スポンサーの要望を叶えるため、と言うのが建前かな」
それを聞き、九重は歯を剥き出しにして激怒している。目にはうっすらと涙が溜まっていた。悔しいのだろう……母親をさらわれた上に、実験に利用されそうなのだから…。
「スポンサー……。オーフィスのことか?それで突然こちらに顔を見せたのはどういうことだ?」
アザゼルが問い詰める。
「いえ、隠れる必要も無くなったもので実験の前にあいさつと共に少し手合わせをしておこうと思いましてね。俺もアザゼル総督と噂の赤龍帝殿とイタチ殿にお会いしたかったのですよ」
アザゼルは手元に光の槍を出現させる。
「わかりやすくてけっこう。九尾の御大将を返してもらおうか。こちとら妖怪との協力提携を成功させたいんでね」
俺はアザゼルが戦闘の態勢と取ったのを確認して、印を結んだ。
「――
地面に両手をつくと、左右の腕に填めている腕輪が光を帯びていく。
「無駄ですよ。ゲオルクの創ったこの空間では、こちら以外の転移系のものはすべて使えませんからね」
俺は曹操の言葉を返す。
「そのことは想定済みだ。俺のはただの転移系ではない……この腕輪の効力と俺の
後方では、奏たちの腕輪が俺の腕輪と同じ現象を起こしている。
これは驚いたという表情をしている曹操。
「最強は伊達ではないようですね」
「
俺は地面に出現している口寄せ術式から両手を離した。
「こちらも、向こう側にも送り込んでいるのでね。いまごろは――」
「あまり、なめない方がいいぞ?火傷するからな」
ノンアクションで仙術に入った俺は、索敵でこの場の状況を把握する。
「……ロスヴァイセは店で…ダウン中か」
たぶん、酔いつぶれたのだろう。イッセーとアザゼルの会話からもそのことが伺えたしな。
――と、曹操の横に少年が並ぶ。曹操がその少年に話しかけた。
「レオナルド、悪魔用のアンチモンスターを頼む」
それだけを頼むと、少年表情もなく、コクリと小さくうなずいた。――途端。少年の足下に影が現れて広がる。
影はさらに広がり、渡月橋を包むほどになる。すると、その影が盛り上がり、形を成していく――。
腕や、足や、頭が形成されていき、目玉生まれ、口が大きく避けた。その異形は百を優に超している。
「ギュ」
「ギャッ!」
「ゴガッ!」
耳障りな声と共に、そいつらは影から現れた。
全身は黒くてぶっとく、二本足で立っている。肉厚な上に、爪は鋭く、牙はむき出しで、大きさはざっと三メートル越えがザラリといる。
アザゼルがつぶやいた。
「――『
曹操がアザゼルの言葉に笑んだ。
「ご名答。そう、その子が持つ
イッセーがちんぷんかんぷんのようで、見かねたアザゼルが説明を始めた。
「あの男児が持っている
「お、俺のよりも強いんスか?」
「直接的な威力ならおまえとヴァーリの
「は、はい」
「『
「どっちも世界的にヤバい
イッセーの言葉にアザゼルが苦笑した。
「まぁ、いまのところ、どちらもそこまでの事件は前例がない。何度か危ない時代はあったけどな。しかし、『
俺は無視されて話が進んでいくので、口を挟むことにした。
「悪いけど、俺が使っている『
それを聞いたアザゼルが驚愕の表情をしていた。
「なぜ、そこまで驚くんだよ。知っているだろ?俺の
それを聞いて、イッセーが「そういえば、そうだった」みたいに思い出したようだ。
アザゼルが俺の隣で納得した表情になって、ある言葉を口にした。
「――
俺はその言葉に笑んで口を開いた。
「そうだ。俺の『
俺は言った……世界の
「
俺は花楓に手を突き出す。すると、花楓は理解したようで『
「『
俺はオーラをまとう聖槍をかまえた。
「――なるほど、久々に驚いたよ。もしかすると…破壊されても死ぬことはないのか?」
曹操が『
「さぁ?そこは、ご自分の目で確認するといいよ」
俺は周囲に影を展開させた。
「――こいっ!!フリーザー、サンダー、ファイヤー、ミュウツー、ライコウ、エンテイ、スイクン、ルギア、ホウオウ、レジロック、レジアイス、レジスチル、ラティアス、ラティオス、グラードン、カイオーガ、レックウザ、デオキシス、ユクシー、エムリット、アグノム、ディアルガ、パルキア、ヒードラン、レジギガス、クレセリア、ダークライ、アルセウス!!」
……長い!!噛むところだったよ!
広がる影からは、呼んだ二十八体が姿を現した。
合間合間をぬって出現させたため、まばらな位置に出現していた。
俺は『
ドッッパァァァァアアッ!!!
渡月橋の向こう側の山半面が地に沈み、広大な湖へ姿を変えた。
――錬金術。俺の創造したロッドは錬金術に特化したもので、攻撃型と変化型が多い。
約四分の一から六分の一ほどのアンチモンスターが湖に飲み込まれて浮上していた。
『僕をあの湖まで飛ばせる?』
いつの間にか奏が八体の尾獣を召喚しており、
「リエ!カイオーガと
俺の問いにクスクスと笑うリエ。
「もちろんですよ~。いきますよぉ?」
リエはカイオーガの尾と
二匹は空中で自由落下の原理によって、弧を描きながら湖にダイブした。
「さて、曹操。そちらの『
俺は「自分の番は終わったから、お次はどうぞ」的なことを言う。
「何と言っていいかわからないが、イタチ殿。この子はあなたのように生産力と想像力がない。――ただ、ひとつの方面には大変優れていましてね相手の弱点をつく魔物――アンチモンスターを生み出す力に特化しているんだな、これが。いま出したモンスターは対悪魔用のアンチモンスターだ」
曹操が手を――フィールドに存在する店の一つに向けた。
ビィィィィィィィィッ!
一条の光線が放たれた刹那――。
ドオオオォォォォォンッ!!
店が吹き飛び、強烈な爆発を起こした。
「光の攻撃か――各陣営の主要機関に刺客を送ってきたのは、俺たちのアンチモンスターを創りだすデータをそろえるためだな?」
爆風の中、俺は静かに言った。
「半分正解かな。送り込んだ
なるほど…。そこまでのアンチモンスターを創りだしていたか。だが――。
憎々しげに睨むアザゼルだが、一転して笑みを作り出した。
「だが、曹操。神殺しの魔物だけは創りだせていないようだな?」
「…………」
アザゼルの一言に曹操は反論はしなかった。
「どうしてわかるんですか?」
イッセーが訊くとアザゼルはにやけながら答える。
「やれるならとっくにやってる。こうやって俺たちに差し向けてくるぐらいはな。各陣営に同時攻撃ができた連中がそれを試さないわけがない。それに各神話の神が殺されたら、この世界に影響が出てもおかしくないものな。――まだ、神殺しの魔物は生み出せていない。これがわかっただけでも収穫はデカい」
「それだけではないだろう。俺たち転生者の弱点『人間』という部分以外でのアンチモンスターは創れていない。尾獣も同じ。なにせ、尾獣は俺が創造したものだからな」
――居るといえば居るが……神殺しの
曹操は聖槍の切っ先をこちらに向けた。
「神はこの槍で
それが開戦の言葉となった――。
『ゴガァァァァァッ!!』
不気味な鳴き声を唸らせてアンチモンスターが大挙してこちらに向かってくる。
「開戦だ。行け!進撃だ!!」
俺は聖槍の切っ先をアンチモンスターへ向ける。すると、待機していたモンスターたちがアンチモンスターに向かって一斉に攻撃を開始した。
水、氷、炎、風、雷、etc……。ありとあらゆる属性の攻撃が飛び交ってアンチモンスターを屠っていく。
「おまえたちもだ。行け!」
俺は
そこへ尾獣たちも参戦して、大怪獣決戦へと発展していく。
「曹操、おまえは俺がやらしてもらおうか!」
アザゼルが龍玉――ファーブニルの宝玉を取り出して、素早く人工
「これは光栄の極み!聖書に記されし、かの堕天使総督が俺と戦ってくれるとは!」
曹操は
「――全員、
『はい!』
お互いに組み合って卍を築いていく。
「イッセー、これをレイナーレに渡してくれ。天使化すれば、消耗諸々は抑えられるだろうから」
俺は聖槍をイッセーに手渡して、レイナーレへ届けるように伝えた。
「ゼノヴィア、イリナ、祐奈、奏、ちょうどいい!四人はアーシアと九重を陣の中に入れて護衛を!!」
指示を飛ばすと、奏が二人を抱き上げて神速で陣の中心まで連れてきて護衛に入った。
「ユー。おまえはどうする?」
俺は隣に立っていたユーに訊く。
『大丈夫。何か役に立ちたいから立っているだけ』
何かの役に……そうだな。
俺は『
「おまえは心優しい。だから、攻撃型ではなく防御型。守りを中心とした能力を入れてあるから、自分であったものを引き出して使うといい」
ちょうどいいタイミングで、光の攻撃が流れて被弾してくる。
『任せて』
ユーはスタッフを光の攻撃に向けた――刹那。
パッ!と、光の攻撃が一瞬にして消えた。
『ミニブラックホールで吸収した』
――なんか、与えてはいけないモノを与えてしまったような…。
「ユー、おまえは後衛で陣を取っている全員をそれで守れ。ミニを作って流れ弾を防ぐんだ」
『わかった。コツは掴んだから任せて』
ユーはとてて……と小走りで後方へ下がる。
「兄さん!夕麻に渡してきたよ」
イッセーが戻ってきて、俺の横に並ぶ。
「あぁ、いまからが正念場だ……行くぞ!」
「おう!!」
俺の掛け声にイッセーが返してくれた。
俺とイッセーは駆け出す――。