ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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疑似京都

ホテルを出て京都駅のバス停に(おも)く。

 

ここからバスに乗って二条城まで行く予定だ。イッセーたち学生は冬の制服、俺たちは全員が動きやすい戦闘服、もしくは私服だ。俺は例の暗部の戦闘用の装備を私服の下に隠している。

 

「うっぷ……」

 

ロスヴァイセが口を手で押さえて、時折襲ってくる吐き気と戦っている。黒歌が隣で仙術を用いて体調を整えようとロスヴァイセを支えていた。

 

「……すみません、何から何まで」

 

「いいのよ。戦闘で倒れられたら困るし、白音に顔見せできなくなるもの」

 

相変わらず着物姿の黒歌。――動きづらくないかと突っ込みたくなるが、そこは抑えておこう。

 

――と、そのときだった。イッセーの背中に飛び乗るシルエットが。

 

「赤龍帝!私も行くぞ!!」

 

金髪の巫女服少女――九重(くのう)だ。

 

「おい、九重。どうしてここに?」

 

イッセーの肩に肩車の格好で座る九重は、イッセーの額をぺちぺち叩きながら、イッセーの問いに答える。

 

「私も母上を救う!!」

 

――ハハハハハハ、そうきましたか。

 

イッセーが反論するように言う。

 

「危ないから待機しているよう、うちの魔王少女さまや堕天使の総督に言われたろ?」

 

「言われた。じゃが!母上は私が……私が救いたいのじゃ!!頼む!私も連れて行ってくれ!!お願いじゃ!!!」

 

困惑するイッセーに俺は言った。

 

「イッセー、おまえもわからないでもないだろう?九重が望んでいるのなら、連れて行ってやれ。ただし、責任を持って守れよ?怪我一つでもすれば……わかっているな?」

 

「……わかってるよ、兄さん」

 

イッセーは九重に微笑みかけた――そのとき!

 

「――来たか。花楓、頼んだ」

 

「任せてね。お兄ちゃん♪」

 

足元に薄い霧が立ちこめるなか、花楓は作戦通りに(セイクリッ)(ド・ギア)を発動させた。

 

――薄い霧に黒く濃い霧が混じりだす。

 

同時に生暖かさと冷たい感触が全身を襲う。

 

――『(ディメンシ)(ョン・ロスト)』。向こうが仕掛けてくるのはわかっていたから、こちらも組んだ班をバラされないように花楓の『(ディメンシ)(ョン・ロスト)』で無理やり転送させる手段だ。

 

両方の霧が俺たちの全身を包み込んだ。

 

                    D×D

 

霧が晴れたとき、そこは地下鉄の線路上だった。

 

「花楓…上手くやれたようだな」

 

俺は横にいるユーを見てつぶやいた。

 

『転移成功』

 

ユーのメモに書かれる可愛らしい丸ゴシック文字。

 

――そう、花楓には『(ディメンシ)(ョン・ロスト)』を使ってもらい、「組んだツーマンセルを崩されないようにしてくれ」と頼んでおいた。

 

予定通りに俺はユーと転移させられた。他も組んだツーマンセルごと転移させられているだろう。

 

「……って、ここはどこの地下鉄の線路なんだ?地図はあるが、目安の場所が分からん!」

 

俺は地団太を踏む。

 

『この先に六体のアンチモンスターがいる』

 

ユーのメモを見て、俺は影を一筋伸ばした。

 

「来い!エンテイ!!」

 

影のなかから飛び出すシルエット。

 

『寝飽きたぞ』

 

テレパシーで会話をしてくるエンテイ。

 

『ゴメンね』

 

ユーがメモをエンテイに提示する。

 

『かまわん。何をすればよいのだ?』

 

…以外にも文字は読めるみたい。

 

「いまから仲間と合流するんだが、移動するのにユーを乗せて行ってやってくれないか?」

 

『つまりは、乗り物になれと言うのか?』

 

「いや、戦闘にも参加はしてもらうさ」

 

『…うむ、了承した。乗るがよい』

 

エンテイはゆっくりと腰を下ろす。

 

『ありがとう』

 

ユーがメモを提示してエンテイの背に(またが)る。

 

「俺は自力で飛べるから、ユーを任せた」

 

俺はエンテイにユーを預け、術で宙に浮く。

 

俺とエンテイは高速で線路を移動する。

 

『――いるぞ!』

 

エンテイが止まると、俺も急停止した。

 

アンチモンスターがこちらに気がつき、光を放ってきた!

 

『なめるな!』

 

エンテイが攻撃を躱して口を大きく開け、大量の火炎を噴き出す!

 

その火炎は中央の二体を燃やし尽くすが、まだ四体残っている。

 

「今度は、俺の番だな」

 

俺はエンテイの前に立つと、印を素早く結ぶ。

 

火遁(かとん)――」

 

体を仰け反らせ、一気に前へ体重をかける。

 

「――豪火滅失(ごうかめっしつ)!!」

 

地下鉄の壁全域に巨大な炎の塊を放つ。その炎の塊は残りのアンチモンスターを跡形も無く燃やし尽くし、地下鉄の壁を焼け焦がした。

 

「……さすがに、火力が高かったか?」

 

俺とエンテイは再び移動を開始する。

 

しばらく進むと、ユーがメモを見せてきた。

 

『もう少しで広い場所に出られる。』

 

俺はうなずき、正面を見る。

 

高速で移動する俺たちの前に、広いホームが近づいてくる。

 

ホームにたどり着くと、駅の名前を確認した。

 

『二条城前』

 

――結構近い所に転送されていたのか。

 

そのままエンテイと共に階段を駆け上がり、外に出る。

 

『複数の気配……あっち』

 

ユーがメモを見せてくれると同時に、ある方向を指差した。

 

その指の先は…壁?――いや、ここは確か…二条城だ。

 

二条城の東大手門に向かうと――数人のメンバーが集まっていた。

 

「――全員、無事だったか?」

 

俺は着くと、声をかけた。

 

「全員は来ていないけど、何とかペアは崩さずに転移できたみたい」

 

俺の声に答えたのは、花楓だ。

 

「すまなかったな。無茶をさせて」

 

「別にいいよ~。一デート分の貸しだから」

 

……一デート分って。まぁ、いいか。

 

「わかったよ」

 

俺は溜め息を吐きながら承諾した。

 

『ありがとう』

 

『礼は要らんよ』

 

ふと見ると、ユーとエンテイが会話している。

 

俺はあることを思いついたので、影を伸ばして二十七本に枝分かれさせた。そこから、エンテイと同じように影から飛び出してくる二十七のシルエット。

 

――フリーザ、サンダー、ファイヤー、ミュウツー、ライコウ、スイクン、ルギア、ホウオウ、レジロック、レジアイス、レジスチル、ラティアス、ラティオス、グラードン、カイオーガ、レックウザ、デオキシス、ユクシー、エムリット、アグノム、ディアルガ、パルキア、ヒードラン、レジギガス、クレセリア、ダークライ、アルセウスだ。

 

これなら、目立つから仲間の誘導に問題がない。ただ、敵からこちらの様子を伺われていることは気をつけなければならない。「ここにいますよ~」という目印なのだから。

 

それからしばらくすると、続々とメンバーが集まりだす。

 

「――残るは、イッセーと九重だけか」

 

二人以外のメンバーは全員無事に到着していた。

 

「わりぃ、遅れた――」

 

イッセーと九重が姿を現したとき…。

 

「おげぇぇぇぇぇ……」

 

近くの電柱でロスヴァイセが我慢できず、黒歌に仙術を背中に当ててもらいながら嘔吐していた。

 

「……だいじょうぶ…なのか?」

 

「…いや、あれは…無理なんじゃ?」

 

周りから心配の声が上がる。

 

ちょうどそのとき――。

 

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

鈍い音を立てながら、巨大な門が開き始める。

 

「あちらもお待ちしていたようだよ。演出が行き届いているね」

 

「まったくだ。舐めてんな」

 

『o(o・`з・´o)ノ=3プンプン』

 

祐奈が皮肉を言い、イッセーがため息を吐く。――なぜかユーは絵文字で「怒っているよ」をアピールする…可愛い。

 

全員、確認し合うと二条城の敷地へと歩を進めようとした直後――。

 

『少し待ってください!』

 

テレパシーで話しかけられた。

 

全員が頭に?を浮かべている中、語りかけてくる。

 

『私たちは、この姿のままでは動きにくいと思いまして…少しだけ時間を下さい』

 

誰が言ったかはわからないが、俺は首を縦に振った。

 

「わかったが、あまり時間はないぞ?」

 

『はい、少しの時間で十分ですので。……少々お待ちください』

 

そう言うと同時に、二十八体の体が輝きだす!!

 

光の輝きが眩しくて、目の前に腕を交差させてしまった。

 

しばらくすると――。

 

「もういいですよ」

 

声と共に、俺の手が誰かの手によって掴まれていた。

 

俺は両手を下ろす……目の前に白い着物を着た女性が立っていた!

 

「おまえは…」

 

俺の問いに、その白い着物を着た女性が答えた。

 

「――アルセウスですよ」

 

「……はい?」

 

俺はつい聞き返してしまった。

 

「だから、アルセウスです」

 

「…………」

 

俺は何も言えず、黙り込んでしまった。

 

それを見かねたのか、白い着物を着た女性――アルセウスは続ける。

 

「…これは、『人化』ですよ。『擬人化』とも言いますね」

 

目の前で人の言葉を話しているアルセウス。

 

「……本当に、アルセウスなのか?」

 

「はい」

 

アルセウスは俺の言葉に微笑んで答えた。

 

「皆さまへの説明は(のち)ほどで。行きましょう、敵のアジトへ」

 

そう言って歩き出したアルセウス。それについて行くように少女や女性が次々と歩き出す。

 

「――何をしている?早く行くぞ」

 

声をかけてきたのは、白髪に青いメッシュが入った青年だ。

 

「お兄さま、早く参りましょう」

 

その青年の手を引っ張って門を抜けていく、白髪に赤いメッシュの入った少女。

 

「わかったから」

 

青年も門をくぐり、行ってしまう。

 

「……と、とりあえず行こう。皆」

 

俺はぎこちなく歩き出す。そのあとを皆がついてくる。

 

――何がどうなっているんだ…色々と!!?

 

                    D×D

 

「僕が倒した刺客は本丸御殿で曹操が待っていると倒れる間際に言っていたよ」

 

後ろを走っている祐奈がイッセーに話している。

 

――本丸御殿ね。

 

敷地内を進み、二の丸庭園を抜け、本丸御殿を囲む水掘りが見えていた。本丸御殿に続く『櫓門(やぐらもん)』を潜り抜ける。

 

たどり着いたのは――古い日本家屋が建ち並ぶ場所。整備された庭園にライトが当てられており、闇夜の世界でも映えている。

 

――ここまで再現できるとはな…ゲオルクだったかな?かなりのやり手だ。

 

英雄派の気配を探るイッセーたち…俺は仙術によって場所は特定していた。

 

(バランス)(・ブレイカー)使いの刺客を倒したか。俺たちのなかで下位から中堅の使い手でも、(バランス)(・ブレイカー)使いには変わりない。それでも倒してしまうキミたちはまさに驚異的だ」

 

――残念ながら、俺はアンチモンスターのみとの戦闘だったよ…しかも、こちら側の一方的な攻撃でしたね。

 

俺は曹操の姿を捉えている。月読の準備はできているぞ。

 

向こう側も、建物の陰から構成員が姿を現す。

 

「母上!!」

 

九重が叫んだ。その九重の視線の先――着物姿の女性が佇んでいた。頭部に狐耳、九本の尾。――絵画で見た姿と同じ、彼女が九尾の八坂さんか…。

 

「母上!!九重です!お目覚めくだされ!!」

 

九重が駆け寄り声をかけるが、八坂さんは反応しない。瞳も陰り、無表情だ。

 

――俺は仙術を通して感じている…八坂さんは、操られていると。

 

「おのれ、貴様ら!母上に何をした!!」

 

「言ったでしょう?少しばかり我々の実験に協力してもらうだけですよ、小さな姫君」

 

曹操はそういうと、聖槍の石突きで地面をトンッと叩く。刹那――。

 

「う……うぅぅぅ、うああああああああああっ!!」

 

八坂さんが悲鳴を上げ、様子が変化していく。体が光り輝き、その姿を徐々に変貌させていく。

 

オオォォォォォォンッ!!

 

夜空に向かって咆哮を上げた巨大な獣。

 

イッセーが曹操に問い詰める。

 

「曹操!こんな疑似京都まで作って、しかも九尾の御大将まで操って、何をしようとしている!?」

 

曹操は聖槍の柄を肩にトントンとしながら答える。

 

「京都はその存在自体が強力な気脈で包まれた大規模な術式発生装置だ。名所と呼ばれるパワースポットが霊力、妖力、魔力に富んでいる。この都市を生んだ古き陰陽師たちが都そのものを巨大なひとつの『力』にしようとしたからだ。まぁ、それゆえに様々な存在を呼び寄せてしまったわけだが……。この疑似空間は京都から極めて近く限りなく遠い次元の狭間に存在し、気脈のパワーはこちらにも流れ込んできている。そして、九尾の狐は妖怪でも最高クラスの存在。龍王クラスとも言われている。京都と九尾は切っても切り離せない関係だ。だからこそ、ここでおこなうことに意味がある」

 

息を吐く曹操。

 

「――都市の力と九尾の狐を使い、この空間にグレートレッドを呼び寄せる。本来なら複数の龍王を使ったほうが呼び寄せやすいんだが、龍王を数匹拉致するのは神仏でも難儀するレベルだ。――都市と九尾の力を代用することにしたのさ」

 

「グレートレッド?あのでっかいドラゴンを呼んでどうするつもりだ?あいつ、次元の狭間を泳ぐのが好きで実害がないんだろう?」

 

「あぁ、あれは基本的に無害なドラゴンだ。――だが、俺たちのボスにとっては邪魔な存在らしい。故郷に帰りたいのに困っているそうだ」

 

――オーフィスか。

 

「……それでグレートレッドを呼び寄せて殺すのか?」

 

イッセーの問いに曹操は首をひねる。

 

「いや、さすがにそれはどうかな。とりあえず、捕らえることができてから考えようと思う。いまだ生態が不明なことだらけだ。調査するだけでも大きな収穫を得ると思わないか?たとえば『(ドラゴ)(ンイ)(ーター)』がどれぐらいの影響をあの赤龍神帝に及ぼすのかどうか、まぁ、どちらにしろ、ひとつの実験だ。強大なものを呼べるかどうかのね」

 

――『(ドラゴ)(ンイ)(ーター)』だと?

 

俺の後ろで待機しているアース、メイル、スバルが震えている。『(ドラゴ)(ンイ)(ーター)』と聞いた瞬間に表情が強張って震えだしたんだ。

 

俺は後ろに下がり、そっと三人を引き寄せて背中をさする。

 

「……よくわからねぇ。よくわからねぇが、おまえらがあのデカいドラゴンを捕らえたら、ろくでもないことになりそうなのは確かだな。それに九尾の御大将も返してもらう」

 

イッセーが言うと、ゼノヴィアが剣を曹操に向ける。

 

――鞘ごとかまえたデュランダル。鞘の各部位がスライドしていき、変形していく。

 

ズシュゥゥゥゥゥゥ!!

 

激しい音を立てながら、鞘のスライドした部分から大質量の聖なるオーラが噴出し始め、刀身を覆い尽くし、極大のオーラの刃と化していく!

 

「イッセーの言う通りだ。貴様たちが何をしようとしているのかは底まで見えない。だが、貴様の思想は私たちや私たちの周囲に危険を及ぼす。――ここで屠るのが適切だ」

 

ゼノヴィアの宣戦布告に祐奈がうなずく。

 

「意見としてはゼノヴィアに同意だね」

 

「同じく」

 

イリナも応じて光の剣を作りだす。

 

「グレモリー眷属に関わると死線ばかりだな……」

 

嘆息しながら匙が言う。俺は苦笑せざるを得なかった。

 

俺は左目を瞑り、月読へ大半のチャクラを集中させ始める。……その間は天照以外の瞳術は使えない。

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