翌日、俺たちはイッセーたちの修行に付き合うために例の――グレモリー領の地下にある広大な空間のトレーニングルームにいる。
「――螺旋丸!!」
「ぐっ!」
ドォォォォン!!
俺の『瞬身からの螺旋丸』を腹部に受けた『
チャージの最中に一発ブチ込んだ俺は、イッセーの前に立って手を差し出した。
「立て、休憩にするぞ」
「いっつ……」
苦悶の声を漏らしながら俺の手を取って立ち上がった。
「……兄さん、少しは手加減してくれよ」
「仕方がないだろう。これでも四割方で手をぬいているが、これ以上加減するとおまえのためにならない」
俺はそう言って、一休みのために少し離れた場所にシートを敷いて座った。
しばらくして修行中の一部のメンバーを連れてきたイッセーが俺の隣に座る。
俺は
それを取り囲むように座る修行中のメンバー。
模擬戦を一時中断して昼食をとる。
「うーん、トリアイナのコンボは『
イッセーがおにぎりを頬張りながら俺に訊いてきた。
「そうだな、トリアイナの『
「うん、それはそうなんだけどさ。体力の消耗がハンパないんだよな。初めよりはいくらかマシにはなったけど……」
トリアイナの『
「その二点はいいとして、『
俺は頭をひねった。思いつくのはロクでもないアイデアばかり…。
「あ、あの、ふと思ったのですが……」
見学に来ているレイヴェルが俺とイッセーの会話を聴いていたのだろう、挙手をしてきた。
「先ほどの特化型の『
それを聞いたイッセーは――。
「………」
しばしの間、無言だったが…。
「それはいいね!」
笑顔でうなずいた。
俺は少し計算したあと、そのことを言った。
「ふむ、レイヴェルの言う通りの使い道があることに間違いはなさそうだ。だが、イッセーは攻撃型……それも、超火力方面だ。その技を会得するにはかなりの時間を有することになる。あくまで俺の考察の結果だ」
それを聞いたイッセーが訊いていた。
「兄さん、可能性はどのくらい?」
「ざっと見積もって五分――いや、六、七割で会得可能だ。かわりに相当な時間を費やすが」
それを聞いたイッセーは歓喜した。
「よし!俺、そっち方面でも頑張ってみるっ!」
ガッツポーズをとったイッセー。
「問題はゲームフィールド、でしょうね。集団戦ができる場所ならいいのだけれど……」
ゼノヴィアとマリア、ロスヴァイセと花楓の勝負が決したのか、二人のアドバイザー役のリアス会話に参加してきた。
向こうを見るとゼノヴィアとロスヴァイセがぶっ倒れていて、マリアと花楓は手傷を負ってはいるがピンピンしている。
リアスは続ける。
「サイラオーグは私たちのすべてを受け入れると上役に打診し、上役もそれを許可したわ。私たちにとってシトリー戦ほどの力の束縛はないでしょう。けれど、上役はそれを踏まえた上での特殊ルールを敷いてきそうだわ」
「と、特殊ルールですか?」
イッセーの言葉にリアスがうなずく。
「今回の会場は大公アガレスの領土にある空中都市でおこなわれるわ。大勢の観客を呼び込むそうだから、最初から長期戦は見越してはいないわね」
……
『――You've got mail♪』
「うぉ!」
いきなり鳴った携帯電話の着信音に驚いた俺。ポケットから出してサブを確認すると『ユー』と表記されている。
「…悪い、少し席を外す。気にせず続けていてくれ」
俺は少し離れた場所で携帯をいじる。
ユーからは『ティアマットが暴れているから早く帰ってきて(´д`l||)』と絵文字付きのメールが来ていた。
俺は『わかった。すぐに戻るからな(゚Д゚,,)』と送っておいた。
皆にこのことを伝えるために戻ると、「え、えええええええええええええっ!?」とイッセーがいきなり叫んで俺は軽く引いた。
D×D
家に帰ると、文字通り
まるで酒乱の如くフラフラしながら……って、なんか酒臭い?
急いで数人がかりでティアマットの動きを止めた。ジタバタともがき暴れるティアマットからは酒――アルコールのにおいがしてきて、完全に酔っぱらっていることを確認した俺は仙術を用いて一時的に体の自由を奪う。
『ゴメン、ティアマットがうっかり間違って飲んだみたい』
ユーの手には二つの缶が握られている。片方はビール缶。もう片方はレモンサイダーの缶だ。
「……なんつーベタな間違いをしているんだ?ティアマットは」
俺は半眼になってティアマットを見る。当の本人であるティアマットは……「…くぅくぅ」と寝息を立てて寝てしまっていた。
俺は眉間を抑えて頭を軽く振る。
「ロスヴァイセといい、ティアマットといい……ここには酒乱しかいないのか?って、そもそもビールがあること自体がおかしい。……アザゼルだな?あの
俺は軽いノリつっこみをしたあと、軽く毒吐いた。
ユーからビール缶を受け取って、天照で処分しておく……左眼のリハビリがてらにな。
月読の反動で失明した眼も八割方回復している。
酔い寝をしてしまったティアマットをアースに頼んで、新しく割り当てたエルシャの部屋へ連れて行ってもらった。
その後、俺は風呂に入りベッドの上に横になった。
……朝起きたら、ベッドの上でリエたちが寝ていて俺が床の上に落とされていたことは言うまでもない。
D×D
その日の夜、イッセーたちと共にグレモリー領にある高級ホテルに向かった。
現在、俺たちは上階の控え室に待機している。かなり広い一室で高価な家具が一式揃っている上に、テーブルの上にはフルーツ盛りやケーキ、菓子などが並んでいる。
ここの二階のホール会場でこれから、グレモリーとバアル両眷属の合同記者会見が行われる。
……内容は「ゲーム前の意気込み」だそうだ。
いつもの制服姿だが、いつもと雰囲気の違うイッセーたち……緊張しているせいだろうな。
この部屋にはイッセーたちグレモリー眷属と、飛段、角都を除いた暁のメンバーがいる。
鏡の前ではアーシアにメイクを施しているマリア。その横でカミュからアドバイスを受けているロスヴァイセ。
白音はイッセーの膝の上に座り、ケーキをパクパクと食べている。
ゼノヴィアは薄化粧だけ済ませてレイナーレたち三人と話をしている。
リアスと朱乃は準備万端な様子でソファに腰を掛けて話をしている。
「出たくないですぅぅぅぅぅぅッ!引きこもりの僕には記者会見なんて場違いすぎて耐えられません!!」
「でーるーのぉぉぉ!!」
「きゃっはー!!いいね!いいね!お二人さん!!」
いつもの女子制服姿で段ボールに隠れるギャスパーを引きずり出そうと両腕を引っ張っている春奈。その近くでデジカメにその様子を収めている理子。……何してるんだか。
少し離れた場所で祐奈と奏が剣について話し合っていた。
そんな中、控え室の扉が開かれた。そこにはスタッフの人がいた。
「皆さん、そろそろお時間です」
記者会見がおこなわれる時間ようで…イッセーたちを見送ったあと、俺たちは家に帰ることにした。
D×D
一足先に帰宅した俺たち。
俺は自室で着替えてすぐに地下の大浴場へ向かった。
さすがにイッセーたちの特訓で体が疲れており、早く寝たいという気持ちで一杯だった。
脱衣所で服を脱いで洗濯かごに入れ、浴場のスライドを開けて中に入る。
ここ、大浴場は二カ所ある。例の改築の際、地下に備えつけられたものと、元々備えつけていたものがあり、新設のほうはイッセーたちが使い、旧のほうは俺たちが使っている。元々は一階にあったのだが、改築の際に地下へ移動されていたんだ。まぁ、そのほうが気を休められるからいいんだけどな。
俺は軽く体を洗って湯に浸かる。
のんびりと浸かって体をほぐしていく。この時間が俺にとって最もリラックスできるときだ……誰も入ってこなかったらの話だけどな。
「………………」
俺は瞼の上に湿らせて折り畳んだタオルを乗せてくつろぐ。
それから少しし時間が経った頃だった。
ガラガラガラ――。
突然開かれる浴場のスライド。俺は体が硬直して動けなかった。
――いつもと違う気配…。
俺は湯を被る音を聴きながら正体を探っていた。
ちゃぷと、隣で聞こえた入水音。それとほぼ同時に俺の左腕に柔らかい感触が伝わる。
俺はタオルを除けて隣を見た。
「リ、リエ……」
「リュースケさぁん、お背中を流しますねぇ」
少しずつ抱きつく力を強めるリエ。
どうやら、否が応でもさせないと離れてくれないようだ。
「あぁ、頼んだ」
その言葉にリエは微笑んだ。
俺はタオルで前を隠しながら用意する。椅子に座った俺の後ろで、リエが石鹸で泡立てたタオルでゆっくりと背中をこする。
「加減はどうでしょうかぁ?」
「あぁ、ちょうどいいよ」
そのまま眠りたくなるような心地よさに身を任せ、俺はのんびりとしている。
「リュースケさん……私のことはいまでも好きですか?」
ふにゅっと、小さくともその存在を主張してくるものが俺の背中に当たり、肩からリエの顔が出てくる。
「…………っ」
いつもおっとりとした話し方とは違い、ごく普通の速さで話しかけられてドギマギする俺。
そんな俺にかまわず密着を強くしてくるリエ。
「私はリュースケさんのことがいまでも好きですよ。リュースケさん、あなたの気持ちを聞かせてほしいです」
リエの突然の告白に目を丸くさせる俺。少しして俺は口を開いた。
「……俺もリエのことが好きだ。前世とは違う環境だけど、もう一度……もう一度付き合いたいと思っている――」
俺は一呼吸してリエの目をしっかりと見つめて言った。
「俺と付き合ってくれ。前世のときより上手くいかなくてもいい。ゆっくりとした長い付き合いでかまわないなら……リエ、返事を聞かせてくれ」
俺の告白にリエは頬を朱に染めて笑顔を見せた。
「……はい。私でよければ……よろしくお願いします。リュースケさん」
「あぁ。こちらこそよろしくな、リエ」
お互いの気持ちを確かめたあと、ゆっくりと顔を近づけていく。近づけて――。
『きゃあっ!!』
……と悲鳴じみたものと同時に、バシャバシャバシャッ!!と湯に落ちる音が聞こえたことで俺とリエは驚いてしまい、お互いに目を開いてしまった。
『………』
一瞬だけ目と目が合い見つめ合ったが、すぐに状況を理解してお互いに顔を背けてしまった。
俺は音と声のしたほうを見ると、大風呂の中に黒歌をはじめルリエルたち七姉妹と龍巳とユー、三龍娘と双子狼娘、花楓と奏、カラワーナと冴子、マリアとアイムがここの天井の数枚の板を外して…そこから落下したようで、湯の中に落っこちていた。
「何やってんだ……おまえら」
俺が呆れた声で言った隣でリエがクスクスと笑っていた。
ガラガラ……と脱衣所のドアがスライドされる音がした。
「……あらら、結局失敗してたのね」
そこには、エルシャがバスタオルを巻いて立っていた。