幻想仮面少女   作:さわたり

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鬼形獣体験版ネタバレ注意です


酔鬼外伝 萃剣〜 Suika‘s wine

「祭りの始まりだあああ!!!」

 

魔理沙のけたたましい叫び声に合わせ、この日の祭りはショーダウンした。時刻は4時半。まだ日が高いその頃に、この長い長い一夜が始まったのだ。

 

「本当にもうなんと詫びればいいか、頭を下げても下げきれませんいや本当に」

 

神社の中で、椛は埋まろうかという深さの土下座を決めていた。諸君達に合わせメタなことを言うなら…本日は第18話の直後だ。つまり彼女はノーザンウルフとして暴れたことに関してを謝罪をしていたのだった。

 

「幸い死人はいない。ストームスネイクがあんたを洗脳しちゃったからだしね、根本的にはあいつも操られてる状況だし」

 

「…とはいえですよ、私は!」

 

「あーもうかったいわねあんたも!」

 

強情に星座を続ける椛に霊夢は呆れつつ、祭りの方の様子見に戻った。そんな時、黒い羽を舞わせながらはたてがそこに飛びよる。

 

「あんたどうしたのよ」

 

「あ、姫海棠様」

 

「堅苦しいわね、はたてでいいってば」

 

そんなことを言われてもと彼女は強情に言った。そんなもみじに呆れつつ、はたては彼女の手を掴んだ。

 

「なんでもいいけど行きましょう。…私も罪の意識で潰されそうな時もあったわよ。でもね、誰もあんたを責めない。みんなあんたを大切に思ってるの。あげるって厚意を受け取らないのは失礼でしょ?」

 

「…それは」

 

「まあんなメンドクサイこと考えるよりさ、楽しもうよお祭りをさ!踊らにゃ損て言うでしょ!」

 

そしてその手を握ったまま、外へと飛び出す。人妖関係なく入り乱れる。それがこの夜なのだ。

 

「あんた達が出店ていうからまた珈琲かと思えば…果実酒とはねぇ。いやー美味しい」

 

「そうね、やっぱいいものよねー」

 

「葡萄酒もいいが…林檎や柑橘の酒もいいなー」

 

そんな他愛のない話をしながら、二人は酒を減らしていく。そうしてワイングラスを空けたころ、萃香は屋台を後にした。

 

「お、チルノじゃん!いつもみたいにかき氷?」

 

「でも毎年進化してるよ。今回は練乳をメインに扱ってるのよ!」

 

「じゃあいちご練乳くれよ」

 

「まいどあり〜!」

 

萃香はサングラスを頭の上に掛け直しながら、チルノの様子を楽しげに眺めていた。こいつも結構成長してるもんだとどこか上から目線に思いつつ、代金を払って店を後にする。

 

「あ、萃香さーん!」

 

「ん、ミスティアじゃんか。ってぇと…夜雀庵出張版てとこかい?」

 

「ええ、縁日メニューなんかもあるんですよ。このミニうな重とだし汁セットとか」

 

「ん、じゃあそいつ頼むよ」

 

そう言ってかき氷をかっこんで空にすると、ワクワクとその商品の登場を待つ。そんな中、ヤツメウナギを焼きながらミスティアは萃香の方に目を向けた。

 

「ずいぶん着崩した浴衣ですね。はだけまくってるけどいいんですか?」

 

「せくしーなふぁっしょんってやつだよ。かっこいいだろ?」

 

「縁日をエンジョイしてるのはすごく伝わりますね」

 

そんなことを言いながら、うな重をテーブルの上に置いた。萃香はそれを一瞬でかっこみ、汁物を飲むと、たいそう満足した様子で出張夜雀庵を後にした。

 

「なかなか美味しいじゃない!」

 

「まさか本気で焼き鳥始めちゃうとはね」

 

「私自身ここまで美味いと思わなかったわ」

 

次に目に飛び込んだのは天子と蓮子とメリーである。見れば、どうやら妹紅が焼き鳥屋を開いていた。タレとお肉の香りが鼻をくすぐり、萃香の口にはつばがこみ上げた。

 

「タレももちょうだい」

 

「お、萃香!なんかライダーがわちゃわちゃしてんなー」

 

「惹かれ合うんかねー」

 

「まあ私たち四人は共闘してたり話し合ったりしてたもんだから」

 

そんな様子になるほどと頷きつつ、萃香は渡された焼き鳥を口に運んだ。するとどうだ、かなりの味である。萃香は続けて皮とぼんじりも買い、満足げに頬張った。

 

「外来人…宇佐見と半ってんだっけ」

 

「ハーンよ。日本語じゃないわ」

 

「そっか、あんたたちは幻想郷どう?」

 

藪から棒にそんなことを尋ねてみる。いきなりのことにふふっと笑いつつ、蓮子は口を開いた。

 

「私はとっても気に入ってるわよ。想像してた以上のものを暴いちゃったわ。こんな混乱してる時じゃなきゃもっと良かったんだけどね」

 

「まあこれも縁ってやつよ。私もここ、好きだわ」

 

「そいつは良かった」

 

萃香は嬉しげにその言葉を受け止めると、最後の一粒を口に放った。

 

「いやー、美味しい!こいつは今後の出店にも期待だ。じゃあね!」

 

「あ、待て萃香。私も行くわよ」

 

そうして去ろうとした背に天子が付いた。二人で妹紅の店を後にし、あたりの散策へと戻っていく。

 

「あ、ネムノじゃないか」

 

「んー?お、酒呑童子でねぇが!元気やっとったか」

 

「名前で呼べよなー。なんだ、牡丹肉?猪とかここんとこ全然食ってないなー」

 

通りがかりに見かけたネムノの店で立ち止まり、横のテーブルに座った。見れば、あまり見かけないような肉料理がメニューに並んでいる。

 

「外でジビエって呼ばれてるやつね。こういう珍しい肉は食べたことないわね」

 

「おススメは紅葉肉だ。クセがなくていい。別にあの天狗じゃないからな?」

 

「鹿肉でしょ?知識としてならあるよ」

 

「あと桜肉もだな。んだども、ここの塩問屋がやらかしたせいで馬は出しづれぇんだべ」

 

ため息混じりにネムノは語った。文々。新聞に乗っていた塩屋敷の馬肉と首無し馬の騒ぎこそがその原因である。

 

「残念極まるわね…あ、この鹿と猪のステーキセットちょうだいよ」

 

「じゃあ私は小鍋にしよ」

 

「了解だべー」

 

注文を受け、ネムノは手早く肉を焼き始めた。いい香りが二人の食欲をさらに加速させていく。

 

「レアがいいか?ミディアム?」

 

「生っぽく。にしてもステーキといいあんた結構外来語知ってるのね」

 

「最近人里に来るようにしててな。だからたまーに聞くだよ。さ、天人さんのは完成だべ。味わってくんろ」

 

「こいつは美味そうだな、いただきます」

 

天子はがっつき気味に箸を伸ばした。一口運んだかと思えば、思いっきり米をかっこむ。

 

「米泥棒ってやつだな。このクセは最高のアクセントになってる。焼き加減や塩味も申し分ない。メチャクチャに美味いわ」

 

「えーうまそー!鍋が楽しみだね」

 

「ん、完成だべ」

 

「お、言ったところにちょうどだ!いただきます!」

 

そして小鍋をつつき、口へと運んでいった。柔らかい食感と特有の風味が広がり、その手が止まることを知らない。

気づけば、二人は一瞬で皿を空にしていた。

 

「あー、うまかったー!こいつはいいね、あんた人里で店開けるよ。じゃあね!」

 

「考えておくべ。じゃあな!」

 

そうして店を後にし、人ごみに流れていく。相変わらずの活気にあふれた祭りをエンジョイしながら歩いていく、その時。

 

「紐引きどうよお姉さんたち〜」

 

聞き覚えのある艶かしい声がかかった。見れば、女苑が胡散臭さ全開の紐引きを広げているではないか。手に取らなくてもインチキとも思える風貌だ。

 

「…って、お前比那名居天子!…ここで会ったが百年目!!姉さんを救うのは私だぁー!!」

 

「なんだその金型でとったみたいな悪役セリフは!」

 

天子を見るなり表情を変えて飛びかかった。エックスゴースターはその手にないが、そもそもステゴロスタイルの格闘戦こそ強みである。激しい肉弾戦が始まった。

 

「おいおい大丈夫かよ」

 

「私は平気だよ。あんたは先に回ってて。…来な、女苑!!」

 

「おい待て何やってんだお前らー!!」

 

突如始まった喧嘩へと霊夢がすっ飛んでいく。騒がしい喧嘩をカラカラと笑いながら眺めつつ、萃香は店巡りを続けた。

 

「ん、あ、潤美!!ひっさしぶりだなー!!」

 

「あ、伊吹さん」

 

「萃香でいいよ」

 

「お得意さんは大事にするさ。間をとって萃香さん」

 

そんな最中見つけたのは潤美の店である。正直飯はもういいかという気分の萃香であったが、並べられたうまそうな珍魚たちを見れば腹が減るのも当然極まる事実だ。気づけばカウンターに腰掛けていた。

 

「炙り古代魚盛り合わせちょうだいよ」

 

「了解!…っと、ほい!」

 

「いただきます!」

 

そして口に運んでみれば、初体験の味がそこに広がった。酒に合うのか、萃香はぐびぐびとその瓢箪から飲み込んでいく。

 

「いやー、こりゃ美味い!新鮮さが流石だよ」

 

「そりゃさっき釣った奴らさ。また魚買ってくれよ」

 

「もちろん!よろしくね!」

 

そしてカウンターから立ったとき、レミリアがそのそばを通った。すばやくお代を払い、レミリアを追う。

 

「あら、萃香じゃないの。そんな目立つのに気づかなかったわ、ごめんなさい」

 

「私は気づいていましたわ」

 

「じゃあ言えっての」

 

咲夜と小漫才のようなことをしつつ、流れていく。そんな中、目に留まったのはお面屋である。もしやと思ったとおり、店主はこころだ。

 

「おー、仮面ライダーのお二方ではないか。見ていけ見ていけ」

 

「聞けばさっき、白蓮と神子が活躍したんだっけ?」

 

「したともさ。私にとってみてもちょっと誇らしい。…さて、お一つお面などいかが」

 

世間話の流れから、こころはお面を取り出してみせた。見れば、仮面ライダー桜刀のものである。よもやと見てみれば、あるではないか、酔鬼が。

 

「いいねぇ〜、こういうの面白い。そこのライダーちょうだい。白いやつ」

 

「酔鬼か、お前自身に合わせてだな!…いや、実は早苗が言ってたんだ…ヒーローのお面は売れるとなー!」

 

「そこのヒソウテンソクもか?」

 

「かっこいいだろー」

 

「じゃあ私それ買いますわ」

 

ヒソウテンソクを指差したのは咲夜である。よりにもよってそれかという萃香とレミリアの視線を受けつつ、ウキウキと代金を払った。

 

「うぅー…」

 

そんな中、男が焦った様子で神社の方へ向かっていった。見ればそこには、ヤマメが担がれているではないか。

 

「…またか。ったく…、これで何人目よ、倒れたやつ」

 

「飲み過ぎだろ?みんな飲みすぎる日もあるさ」

 

萃香の呑気な言葉に体操、レミリアはかぶりを振った。どういうことだという萃香の視線に、重げに口を開く。

 

「酒飲み勝負に負けたって話だが…あれは違う」

 

「なんでさ。この祭りならあり得るでしょ」

 

「あの聖白蓮が公衆の面前で飲むとでも?彼女が雲山に抱えられてくのを見たわ」

 

それを聞き、萃香は口にをつぐんだ。あの頑固坊主が酒を飲みにいくとは到底思えないのだ。

 

「ヤマメの来た方を戻りましょう。この祭りには…何者かが…居る!」

 

「聞き捨てならんねぇ、楽しみを荒らすモンは!」

 

萃香はそう息巻いて歩き始めた。そうして向かったのち、少女が倒れている店があるではないか。人混みをかき分け、その『正体不明酒』とかいう出店に向かった。

 

「お前…何をしてるんだ!…事情によっちゃ命はないぞ」

 

「勘弁してくれよ、俺はただ賭けをしてるんだよ。アイツらが勝手に盛り上がって倒れちまうだけさ」

 

そこでは、ぬえが客の男に詰め寄っていた。大まかの事情を察し、真っ先に動いたのはレミリアだ。男の向かいに座り、上のトランプを適当に退けた。

 

「ずいぶん近代的にやってんのね、トランプカードとは」

 

「…お嬢さんもお客か?一つ、賭けをしないかい?」

 

レミリアの睨みつける視線にも怯まず、男は酒を注文した。余裕綽々の態度で、その視線をレミリアに返している。

 

「席を使うなら飲み物を頼まねぇとな?」

 

「…フン」

 

そして男は机に置かれた二つ黄緑色の酒の片方レミリアに渡した。しかしレミリアは男のものと自分のものをすり替え、口をつけた。

 

「毒なんか仕込まれてたらたまったもんじゃないからね」

 

「…私は入れてないわよ。このお酒は私の能力で色、香り、味がバラバラになった文字通り正体不明の酒だ」

 

「状況が状況じゃあなきゃうまそうなんだけどね」

 

そんなことを言いながら、ぬえに二杯目を注文した。そして、届いたコップを机の中央に起き、男にコインを渡した。

 

「外の世界のコミック本で知ったゲームなんだがね。ここにこのコインを入れるんだ。一枚でも二枚でも。で、自分のターンで溢れたら負けってね」

 

「面白そうだな。…いいだろう、乗ってやる」

 

「あんたが何やってるか知らんけどね、祭りの空気を乱した罪は重いのよ」

 

そう告げ、レミリアは先行を任せるといった。そして男がコインを入れようとした時、レミリアは男の手に鋭いチョップを入れる。

 

「ぐぎゃああああ!!!俺の左手が曲がっちゃいけない方向に!!何しやがんだー!!」

 

「右手じゃないからいいじゃないのよ。あんたさてはジョジョ読んだことあるわね?なんでこれでいけると思ったのよ」

 

そんなことを言いながら、レミリアは酒のコップの底を拭いた。するとどうだ、チョコがついてるではないか。

 

「適当なタイミングでそのランタンを机の上に置いて溶かそうしたわね?」

 

「どういうことだレミリア」

 

「傾いてたら溢れやすくなるでしょう?そして私がギリギリに入れた時にランタンの熱でチョコを溶かすの。そうすれば平に戻ってでアイツが一回入れる分だけ許容量が増えるのよ」

 

「チョコってとあの洋菓子か。薄汚いねぇ…」

 

「さて、切り札は無くなったわね」

 

「…じゃあ、君がコインを削ってるのは何故かな?」

 

「…っ!」

 

そうして数秒睨み合ったのち、二人は同時に笑い声をあげた。二人ともイカサマを仕掛けていたという点で、この勝負はリセットである。

 

「さて、次だが…」

 

「…どいてレミリア。私がやるよ」

 

「…いいだろう、君と賭けよう」

 

萃香の提案を受け、レミリアは席を譲った。そして萃香はレミリアが飲みかけた正体不明酒に視線をやり、次に男の酒に目を向ける。

 

「…同じ酒、らしいな?」

 

「そうだ」

 

「じゃあちょうどいい。私は利き酒を提案しようじゃないか」

 

萃香はコイン勝負用に置かれた酒を飲みきると、次の酒に手を置いた。男の方も男の方で酒に手を伸ばし、勝負体制が完成する。

 

「…なるほど、ここの正体不明酒の正体を突きとめろ、と」

 

「ああ、頼れるのは味だけだ。…だから宣言してやる。お前の仕込んだ毒に関係なく、私が勝つとな」

 

「…なんのことかな?」

 

「鬼をなめるな、妖力で分かる。お前、蛇の妖怪だな?何かしらの術、いや、純粋な化学物質か?とにかくお前の毒で中和される毒が仕込まれている。感覚を狂わせる毒か?私が今そこの酒を飲みきったが…お前の毒など物ともせず勝ってやるさ」

 

「…何を言ってるかわからないな。さぁ、行くぞ」

 

強引な男の合図と同時に、二人は緑色の酒を飲み干した。そしてコップを置き、萃香が先に口を開いた。

 

「…芋焼酎だ」

 

「白ワインだ」

 

やはり香りが違うためか、二人が言ったのはかなり大まかな種類である。だが、大きく種類の違う酒だ。勝敗が決まるのは確実であった。

 

「驚いた、萃香の正解だよ。この正体不明酒Eは芋焼酎にビールの香りと黄緑色を合わせた酒だ」

 

そんなぬえの言葉に、男は驚いて立ち上がった。そんなはずはないとばかりに萃香の方を見るが、萃香は表情を崩さない。

 

「感覚の誤認具合から白ワインを導き出したか?残念だが私の味覚は正常だよ。…線香に乗せて水溶性の毒でも撒いてたかな?」

 

「…」

 

「毒ってからにはタンパク質だろうな。アルコールとの分離なんざ容易い。私の力がありゃね。言ったろ?お前の毒なんざ物ともしないとね」

 

「なんだと…」

 

「危なかったわ。イカサマ見つけてなきゃ私やられてたわね」

 

レミリアがそんなことを言って安堵するその横で、萃香は男の左に置かれた酒に手を伸ばし、飲み干した。

 

「…これには毒と結合して昏睡毒に変わるやつでも入ってんのかな?負けたらこれを一気飲みしろとでも言ったか?…何が目的かは知らんが」

 

「貴様ら…」

 

男は口をつぐみ、震えているではないか。もう言い逃れはできないと萃香が語りかけたのに対し、男は激昂した。

 

「黙れ!貴様らが邪魔をしなければ…!!」

 

「ねぇ咲夜、こういうの外来語でなんて言うんだっけ?」

 

「逆ギレです」

 

「そう。それそれ!」

 

殴りかかった男へと構えを取りつつ、レミリアは余裕の態度だ。そして男のパンチへカウンターをしようとしたその時、すでに男の拳がレミリアに届いていた。

 

「痛いっ!!…何よ、なんでパンチが当たんないんだ…」

 

「…感覚がズレてるんだ、毒の影響で」

 

そうして飛びかかったのは萃香である。その膝蹴りは男の胸をとらえ、軽く吹っ飛ばした。

 

「俺は…お前に勝たなければいけない…!!!絶対にだっ!!!」

 

男が叫んだかと思えば、その体が肥大化していく。そして、瞬く間に巨大な蛇の化け物と変わった。人々が逃げ惑う中、萃香はサカズキドライバーを腰に装備した。

そして変身しようとしたその時、レミリアが萃香を呼び止めた。

 

「…このワインボトルね、河童を参考に術を仕込んでみたのだけれど…術の再生機がなくてね」

 

「というと…私が?」

 

「使ってちょうだい」

 

投げ渡された小さなワインボトルをセットし、一度レバーを引いた。

 

『set confirmed』

 

『confirmed change standby……3……2……1ready?』

 

さらにジェヴォーダンを真似て顔に手を重ねるポーズをとり、続けていつもの拳を包むポーズののちレバーを引いた。

 

「たまにはこんな酒も…ね!変身!!」

 

『formname is 紅鬼 GOGOGO!』

 

そして全身に赤いワインが流れていき、装甲を成した。赤いが派手にその身を彩り、血管やコードのようなパーツが目立つ。さらに小さな三本角と騎士のようなバイザーが顔面に存在感を見せ、赤黒いマントがはためいた。

 

「さて、宴の始まり…ではないな、とにかく祭りを邪魔するもんはぶっつぶす!」

 

そしてショーテル『血斬』とレイピア『緋閃』を構え、大ヘビへと駆け出した。一発目の血斬は防がれるが、緋閃の一撃は鋭くヒットする。

 

「ぐっ…」

 

「くらえっ」

 

続けて蹴りを叩き込もうとするが、大ヘビの重いタックルがダメージとなる。さらにその隙に尻尾を打ち付けられ、大きく怯みが生まれる。

 

「うごおおおお!!!」

 

口を開いて噛み付こうとしたその瞬間、口に緋閃を突き立て、カウンターを決める。だがそれで怯む大ヘビでもない。毒液を吐いて反撃した。咄嗟にマントで防いだものの、ダメージは未知数である。警戒を強めた、その時。

 

「たああああ!!!!」

 

青い閃光が大ヘビに激突した。さらに連続で蹴りを叩き込み、銃撃で追撃をぶつけた。

 

「うぐおぉ…」

 

「ったく…毒ヘビってなら私の得意なタイプの敵よね」

 

その姿はまさしく仮面ライダーメディスである。スターライトペンタスフォームの煌めきが素早く連撃をぶつけていく。

 

「だあっ!!」

 

「ぐあっ!」

 

そして酔鬼も血斬と緋閃を叩き込んだ。怯んだ一瞬を追うように激しい連続斬りを浴びせ、続けてエクスブライガンの援護が入る。

 

「やぁっ!おらっ!!」

 

「俺は勝つんだァーーー!!!」

 

そんな中、大ヘビが暴れを増す。さらには妖力を増しながら体格も大きくなっていき、回復しているようにも感じる。

 

「くそっ…今んとこ毒がどうにかなんのって私たちだけなのか!?」

 

「そのはずよ!頑張って倒すのよ!」

 

自分を鼓舞するように叫びながら、メディスはエクスブライガンにランチャープルーネラをセットした。必殺を構えるその横を抜け、酔鬼は攻撃を続けた。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「おりゃりゃりゃりゃー!!!」

 

そしてメディスによる連続射撃がぶつかっていき、少しずつ相手の体力を削っていく。だが、決定打にはならない。

 

「捕らえた!」

 

しかもメディスは大ヘビに絡め取られ、その身を拘束されてしまった。超高速でバタ足をしてみるものの、効果はない。酔鬼が助けるべく駆け出した。

 

「無駄だな!」

 

だが、尻尾を叩きつけられ、膝をついてしまう。そうして追撃をもらいそうになったその時、どこからマミゾウが駆け寄り、口からパイプの煙を吐き出した。

 

「うぐっ、あんた、うおおおおお!!」

 

突如、大ヘビは苦しみ始め、その体がさっきほどのサイズへと戻った。そして今が隙だとばかりに酔鬼は攻め込む。そして大きく怯んだところに、脱出したメディスが構えた。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「スターシャワードロップ!!」

 

メディスが駆け出し、流星のように走り回る。すれ違いざまに連続で大ヘビに攻撃を当て、最後に飛び回し蹴りをかました。さらに、そこに酔鬼が向かう。

 

「センケツザシッ!!」

 

そして大ヘビの反撃を血斬で押し返し、胸元を緋閃が捉えた。続けて血斬で切りつけ、同時に大ヘビは爆発した。

 

「くそっ…なんでだ…!!」

 

すっかり術の解けた男は、だらしない様子で座り込んでいた。戦闘が終わったそこに永琳が駆けつけ、解毒剤を振りまいていく。

 

「なんだってこんなことしたんだい…」

 

「…俺は強くなければいけなかった。あの人は自分を守ってくれるほど強い人がいいって言うんだ。だから俺なりに悪知恵を働かせて…」

 

そんな風に男がうつむいた時、早苗が様子を見に来ていた。男は目を見開くと、トボトボと早苗に近づいた。

 

「早苗さん、俺…」

 

そうして何か言おうとしたとき、その頰を早苗は思いっきりひっぱたいた。思わず倒れ、涙を浮かべながら男は早苗を見つめた。

 

「まずはその性根を直してくるのよ。私はね、そういう関係ない人を騙す騙すような強さは嫌いです」

 

ツンとした態度で背を向け、去っていった。その背を悲しげに見つめる男の襟を掴み、マミゾウが引きずっていく。

 

「儂の教育が足りんかったのか?前も食い逃げだの悪さしおって…。今度という今度は人間の常識を儂がみっちり叩き込んでやるわい」

そうして影は小さくなり、路地裏に去った時にはすでに何事もなかったかのように祭りは再開していた。

 

「あのザコ妖怪が……営業妨害で訴えてやろうか…」

 

ぬえはそんなことをぶつぶつと言いながら店を片付けていた。あんな騒ぎが起きただけあって、やはり客足はあまり向かないようである。萃香はそこに座り、正体不明酒Bを注文した。

 

「あんだけ騒いじまったせいでろくに味わなかったよ。だからね」

 

「じゃあ私も飲んで行こうかしら」

 

続けてレミリアも正体不明酒Cを頼み、届いた奇妙な色のドリンクを口に運んだ。萃香は疲れたとばかりにため息をつき、肩を鳴らす。

 

「やれやれだよ…」

 

「お疲れさん、私のワインどうだったかしら」

 

「結構戦いやすかったよ。速い動きが要るから疲れるけどなー」

 

それを聞いて、レミリアは満足げに頷いた。その時、メディスンがテーブルにちょこんと座った。咲夜含めた三人で座っていたために、席が空いていたのだ。

 

「…私も飲むわ。この紫のやつ」

 

「はいよ、正体不明酒Aね」

 

そうして置かれたお酒をおっかなびっくりに飲みながら、メディスンも疲れ気味に息を吐いた。

 

「美味しいじゃない!私お酒自体ちょっとしか飲んだことないけど…これが一番だわ」

 

「この奇妙な味わいは本当に面白いと思うなぁ〜」

 

「そう?私に会いに来れば飲ませてやれるわよ」

 

「私も新しいお酒を作ってみましょう」

 

「咲夜が作る酒はうまいときとまずいときの波がひどいんだよなぁ…」

 

そんな風にぬえも含め笑い合いながら、時間は夜へとさらに近づいていく。

これが、この長い長い縁日の夜のごくごく一部分である。

 

夜は、まだまだ続く。




フォーム名:紅鬼(こうき)
概要:ワイン『コウシュ』で変身したもの。基本的に酔鬼らしいデザインで、赤い血管的パーツとコード的パーツがより浮き立つ。ちょっとグロテスク。角は小さな三本角で、目のあたりに龍騎のようなバイザーがあり、背中の赤黒いマントが西洋的雰囲気を醸し出す。
武装:
『血斬』
赤いショーテル。酔鬼の武器にしては珍しく短い。
『緋閃』
赤いレイピア。刃渡り20cmほど。
変身アイテム:
『サカズキドライバー』
通常と同じ。
『コウシュ』
術を仕込んだ小さめのワインボトル。レミリアがこっそり開発してたものの、術の再生用機器がなかったため萃香にあげた。
変身シークエンス:
1ドライバーを装着
2部品に[マシュボトル『コウシュ』]をセットレバーを引く
「set confirmed」
3レバーを一回引くとマシュヒョウタンから酒がサカズキドライバーに注がれはじめる
4全てが注ぎ終えられたときにもう一度レバーを引く
「confirmed change standby……3……2……1ready?」
5最後にもう一度レバーを引くとサカズキに満ちた酒が光り全身に広がり始め
徐々に形を作りながら装甲へ変化し変身完了する
「formname is 紅鬼 GOGOGO!」
必殺技:
『センケツザシ』
相手の攻撃を血斬で押しのけ、緋閃で心臓を突き刺す。更に血斬で袈裟斬りする技。



お分かりでしょうけど、今回の敵たるヘビくんは鈴奈庵の蟒蛇です。マミゾウのセリフからお察しください。そういうわけでオリキャラでないですね。
しかしもっと上手く博打の表現できんかったのか…?クソみたいなテンポ……でもどうしようもない…。しかも短い。
クレーエさんにすごく申し訳ない出来…。
メディスンが出たのは、彼女がメディス外伝であんまり動かなかったからというのもあります。それなしに毒云々もあるけど。
書き直す必要あるかも……。
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