オータは多分お酒好き。
「タイガ、トライブレード!」
ヒロユキの掛け声とともに、タイガスパークが煌いて剣が現れる。握ったトライブレードへ、手を当てた。
「燃え上がれ!仲間と共に!」
「『『『バディーーー…ゴォォォ!!』』』」
重なったフーマ、タイタス、タイガのビジョンと共に、ヒロユキは剣を掲げた。そうして、三つの光が集まり友情の炎が燃え上がる。
『セヤッ!』『フン!』『シュワっ!』
三人それぞれのポーズを取りながら、巨大化する。そして剣を構え、敵、ゼガンへと駆け出した。
『俺はウルトラマンタイガ…トライストリウムだっ!』
「いやぁーあなたも恐ろしい人ですよ、霧崎さん」
「お褒めに預かるほどじゃないさ」
その戦いを眺める、二つの影。霧崎ことウルトラマントレギアと、マーキンド星人オータである。シャドー星人を唆した犯人でもある霧崎は、箱と引き換えにエネルギー結晶体のようなものをオータへ渡した。
「確かに受け取りました。ゼットンニウム感応石、間違いありません」
「ああ、コレも…本物のスペースビースト因子で間違いなさそうだね。ご苦労様」
そして、彼は階段を上って屋上へ。箱を開き、街へとビースト因子を解き放った。彼が笑い声を上げた、そのとき。
「風真烈火斬!!」
『セイヤッ!』
タイガの放った光輪と、ゼガンの放ったゼガントビームがぶつかり、ブラックホールが発生した。その出力故か、時空間レベルの歪みまで発生している。
「…ゼガンを行かせたのは失敗だったか」
ため息をついた霧崎を前に、ビースト因子はブラックホールへと飲み込まれていく。それを追ってか、謎の光が飛び込み、それを最後にブラックホールは消えた。
「本当にお世話になりました!」
「いえ、今度は健康な時にお会いできればと思います」
頭を下げる衣玖に対し、さとりも深々と返す。いかにも大人な付き合いの横で、天子は相変わらず偉そうな態度である。しかし、その奥には治ってよかったという安堵も見える。対し紫苑はいつも通りの雰囲気。
「おかげさまで明日には復帰できそうです」
「それは大変よかったです」
そして、こいしが三人を見送る。空へ舞う少女達へ手を振り、彼女は地霊殿へと帰って行った。
「あれ、それは?」
「お礼ととして佐島さんがくれたのよ」
ダイニングに座ったこいしの前に、さとりはお菓子を置いた。結構お高い天界のクッキーらしい。仕事が休憩に入ったお燐も呼び、三人はお茶を始めた。
「……言っていいのかな」
「言わなくてもわかるわよ」
さとりが読んだお燐の心は、「味が薄い」というモノである。しかしそれはさとりも同じこと。苦笑いのまま砂糖をかけた。
「あ、おいしい!」
「コレぐらいがちょうどいいわね」
「そうですネー。…おっと、あたいは」
「いってらっしゃい」
「頑張ってねおりーん!」
手を振る姉妹に振り返し、お燐はその場を去って行った。置かれたクッキーを食べ進めながら、二人は話を続ける。
「…仲間って、いいね」
「どうしたのよ急に」
「天子と衣玖とか…地上の妖怪達を見ててね」
そんな風に楽しげに語る。妹が幸せで、さとり自身もうれしく感じてしまう。にこやかに時は過ぎ、こいしは腕時計を気にし始めた。
「…時間?」
「うん、菫子とね」
「そういえば彼女はまだ地底にいたわね」
聞けば、もうそろそろ予定の時間だという。ささっと準備をさせ、寝癖が消えない頭へ押し付けるように帽子をかぶせる。
「そうそう。何かあるかもわからないわ」
こいしの持つ鞄の中に、ライドデバイザーを持たせる。あなたの助けになるわとその背を押したのち、問題ないことを確認してそうして彼女を見送った。
「…仲間」
そんな彼女に、消えぬ違和感が残る。こいしが今までと違いすぎるのだ。心を開き、そして他人を受け入れるようになった。喜ぶべきことであるが、変化が急すぎるように感じてしまう。
「そりゃあそーだよ」
「…!?」
そんな時、さとりの肩の上にこいしの顎が置かれた。戻ってきたのかとも思ったが、どうもまとう雰囲気が違う。何者か、ゆっくり問うてみる。
「んー?私はね、夢の世界のこいし。あの子のホントのこ・こ・ろ!」
さとりの輪郭をなぞりながら、そんな風に呟く。ゾッとする心を抑え、彼女は夢の世界のこいしへ、目的は何かと続ける。
「この腐った世の中を潰すのよ。汚れに汚れたこの世界をね」
「…そう」
「なんで私の心が読めないかって顔だね?おねーちゃんや私のサードアイは意識の接続で成り立ってる。潰しちゃえば意識のコネクトが消えて認識されなくなっちゃう。つ・ま・り…夢という意識下の世界ならそんなのいくらでもいじられるってわけ」
さとりのまわりをクルクルと歩き回りながら、夢のこいしは続けた。ひとしきり自慢げに語り終えると、彼女はさとりに別れを告げて戸を開けた。とっさに電撃銃を放ち、気絶を狙うが、すでに姿を消しており、影もなかった。
「…夢の世界……ねぇ」
その言葉に、さとりはドレミー・スイートの姿を思い浮かべる。こいしは『ビランアニヒレイトは心が読めない』と語っていた。その言葉に、不安を抱いてしまう。
「こいつが…」
「ウルトラマンゼロよ。こいつは仮面ライダークウガね」
約束の時刻には間に合い、二人はジュース片手に話をしていた。その内容は、直球に仮面ライダーUの姿についてである。
「えっと、クロニクルゼアルはこの二人っぽいのね?で…ライジングアップは仮面ライダー1号と…ウルトラマン」
「ええ。戦闘スタイルを見てるとどうもね」
Uの写真と、ウルトラマンやライダーのフィギュアを置いて菫子は語る。写真を畳の上に置き、その上にSHフィギュアーツを立たせる。もっとも、ウルトラマンは大半がソフビだが。
「バスターエネミーが…このエイティとRX」
「そう。ウィンドギャラクシーは分かりやすくギンガとWね」
戦闘の様子について語りながら、原作のヒーローたちについて聞かせていく。興味が湧いてきたのか、こいしは見てみたいと言う。昭和作品は集まるか分からないと言いながらも、菫子は嬉しそうだった。
「映像買うお金なら私からも出すからさ!」
「ありがたいわね。…ま、私も実際はそんなに詳しくないんだけど」
そうして次の話題に移ろうとした、その時。
「いたいた、こっちの私」
扉を蹴り壊し、現れたのはこいしである。雰囲気の異様さ以外は、何一つ自分と変わらない。夢の世界の自分であることにこいしが気づくのにそう時間はかからなかった。
「くらえっ!」
「あぶなっ!」
振り下ろした包丁を避け、こいしは外へ。夢のこいしはそれを追いながらアンノウンドライバーを装着した。
『Mクリスタル!』『Sクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
「…変身!」
『スケアードマッドネス!』
その身に闇をまとい、爆発するように黒が燃え立つ。そうして、黒と赤と銀が狂気的に光る戦士が現れた。仮面ライダーU スケアードマッドネスである。
『恐怖に駆られる狂気の心、向かい合わねば勝機はない!仮面ライダーU、スケアードマッドネス!』
「…シャドームーン…ダークメフィスト!」
「へぇー。あなたヒーローに詳しいのね?」
そんな風に言いながら、菫子の方へと目を向けた。しかし狙うつもりもない。あくまで、こいしの方である。対し彼女もOとDのクリスタルをその手にしていた。
「偽物ってわけ?シャドーUってわけね」
「違うわよ。あくまで仮面ライダーUの一つの姿。あんたがくれればウィンドギャラクシーにでもライジングアップにでもなってあげるよ。そうね、わかりやすさのためにも
確かに目は黒いが、シャドーのような紫のオーラはない。それはただただ、仮面ライダーUそのものであり、ただただ闇を使うだけの戦士なのだ。偽物などでは、ない。
「フン、そんなのどうだっていいわ。あなたはこれから強制送還だもの!そのボディを壊してやれば夢の方に消えるでしょう?」
『Dクリスタル!』『Oクリスタル!』
「…あれ?剣は!?」
鉤爪を構えるUEを前に、こいしはあたふた。いくらやってもエレメンタルカリバーは姿を現さない。仕方なく、彼女はウィンドギャラクシーへ。
「変身!」
『風が銀河に吹く時に、受け継がれしは英雄譚!仮面ライダーU、「ウィンドギャラクシー!」』
「はっ!」
「効かないよ!」
素早くキックを繰り出していくが、このフォームはすでに
「マキシマムサンダーボルトぉ!!」
Uはやけくそで雷光をため、黄色く染まるクリスタルを煌めかせながら解き放った。しかし簡単に振り切られ、至近距離での一撃を叩き込まれてしまった。
「…!」
そんな時、彼女はさとりに渡されていたライドデバイザーの存在を思い出す。それをすぐさま腕に装備。瞬間、呼応するように新たなクリスタルがUの手の上に現れた。
「…いけるわ、これ」
『Xクリスタル!』『Fクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
「行くよ!」
『ザナドゥフォーエバー!』
X字の光と蒸気が溢れ出し、菫子とUEは思わず目を背けてしまった。溢れるスチームの中、サイバーに煌く戦士が姿を現した。白と銀をアーマーのメインカラーに取り入れ、バイザーのかかった目やヘッドギアのような頭部が目を引く。
『
「宇宙キターーーーーーーーーッッ!!!…って、あれ、なんだこれ」
「…こいしちゃん、フォーゼ見たことあるの?」
「分かんない…頭に浮かんだ」
新たな姿に戸惑いながらも、彼女は殴りかかっていった。予想外の事態ゆえか、UEもそれなりにダメージをくらっている。さらに、直感でライドデバイザーの使い方もわかった。ホルダーにマウントされているUSBから4本抜き取り、ライドデバイザーにセットする。
『サイバーブラックキャッツ・アクティブオン』
「たあっ!」
『装着』を押すと同時に、右腕にはサイバーブラックキャッツのクローがセットされた。相手のクローとぶつかり合い、ギリギリ音を立てる。さらに。
『サイバーアトムアヴェム・アクティブオン』
「おりゃ!」
「…っと」
左腕に装備されたのは制御棒型の砲身モジュールである。相手もいい加減苛立ったのか、電撃をばら撒き始める。直撃したダメージはかなり大きい。既に何発かもらったが、これ以上は危ないとアーマーを起動する。
『サイバークレイジィラビット・アクティブオン』
右足のアーマーで空中へとハイジャンプ。さらに波長がずれ、狙いが定まらない。そんな中、彼女は左腕のアヴェムアーマーをロケット型に展開。ブースターで高速移動しながら、続けてアーマーを起動した。
『サイバーハピネスラビット・アクティブオン』
『放て!友情の力!ヒーロータイム!』
「いいいいいいぃぃぃぃぃっ、さああああああああああ!!」
『ライダーロケットザナディウム!』
幸運のパワーにより、攻撃がほとんど当たらない。電撃を突き抜けながら、X字のエネルギーとともに急降下キックを繰り出した。
「うぐぅっ!」
軽く爆煙が舞い上がるが、大ダメージではない。変身こそ解けて居るが、余裕の態度で立ち上がり、ニヤッと笑う。
「一杯食わされたなぁ。でもこれで勝ちじゃないよ。……私が見てきてみにくい者達の心を…潰してやる」
そう吐き捨て、彼女はその姿を消した。ほぼ同時に、ライドデバイザーへとさとりから連絡が入った。曰く、夢のこいしが地上を狙うであろう点から、地底の入り口の封鎖を行っているため、一旦去るようにヤマメらに言ってきてくれとのことである。
「いいよいいよ。他の子達もここから立ち退くってんだし」
案外、素直に彼女らはOKした。ぼんやりとではあるが、『古明地のとこの子だし従っとかなきゃ』やら、『こいしの言うことならNoとは言えない』やら、それぞれの思惑が読める。それでも、話を聞いてくれたことが彼女にとっては嬉しかった。
「それで……!?」
「地震!?」
何かをヤマメが言おうとしたその時、凄まじい地震が大地を襲う。さらに、その原因と思われる、巨大なロボットが立ち上がった。それはどうやら例の騒音騒ぎの場所である。こいしはヴァースサイクロンに乗り、そこへと急行した。
「うぅ…くっ…」
「しっかりして!」
「…これは」
「こいし…!正邪が怪我を…!」
ロボットのすぐ下で、倒れ伏す正邪とその治療をする針妙丸の姿が。曰く、空間に歪みができたと同時に、謎の粒子がロボットに入り込んだと言う。指差す先に、その歪みが。
「…ブラックホールってのに似てるわね。もっと強いと聞くけど」
彼女らには知りようのないことだが、それはスペースビーストがツクモガミロボに取り付いたが故の事態。とにかくどうにかせねばと思い、アンノウンドライバーを手にした。瞬間、落ちてきた瓦礫にこいしが下敷きに。
「うぐっ…」
大怪我は免れたようだが、挟まって動けない。手を伸ばすが、ギリギリアンノウンドライバーに届かない。あとちょっと頑張ればという時、現れた夢のこいしが、そいつを蹴り飛ばしてしまった。
「あははっ!好都合好都合!このまま腐った生き物どもを消し去っちゃいなさい!」
そんな風に愉快そうに笑いながら、去っていく。針妙丸ではアンノウンドライバーを持ち上げられない。どうすればいいのか。ロボが足を振り上げ、絶望に染まろうかというとき。
『諦めるな!』
そんな声が聞こえた気がした。こいしはただ必死に、歪みから現れた光を掴み取る。動けないまま、なんだそれはと吐き出す正邪を前に、こいしは頭に流れ込んだ光を、ただ言葉にした。
「絆…ネクサス!」
そして、手の上で形をなした光、『エボルトラスター』を引き抜いた。ただただ、夢中…ほぼ無意識下のことであった。
「シュワ!」
溢れ出る光の中、右腕を突き上げながら、巨人がその姿を現す。銀の体が煌めく巨人を見て、遠巻きに見ていた菫子は感嘆のため息と驚愕の表情を見せた。
「ウルトラマン…ネクサス!?」
何が起きたのだろうかと、こいしは自分の体を見る。意外にも、巨大化することに違和感やその類はない。むしろどうすればいいかは頭に流れ込む。
「デュアッ!」
駆け出し、キックを放つ。怯んだツクモガミロボにさらに拳を叩き込んでいき、一気に突き飛ばした。そんなロボを前に、ネクサスの姿が変わる。
「シュアっ!」
体に全体的に青が入り、さらに緑の差し色が多くかかる。ジュネッスブルーに近いが、しかし一目で違うとわかる。それがこいしのジュネッスである。
「だあああああ!」
全身でぶつかっていくようなファイトスタイルで飛び込み、連続でパンチやキックを叩き込んでいく。ツクモガミロボはどんどんとダメージを負っていく。そう、その付喪神の恐怖心こそがビーストの餌。ゾンビのように、ロボは何度でも立ち上がった。
「…はっ!」
その腕のアローアームドネクサスからシュトロームソードを出現させ、一気に斬りかかる。ばちばち雷光を放つロボへさらに追撃を行い、爆破。分子レベルで消滅し、ビースト因子は跡形もなく消えた。
「一瞬だけの付き合いですが…ありがとうございました!」
自分の元を去っていく光へと礼をし、こいしは見送った。彼女へと、『信じることを諦めないでくれ』と残してウルトラマンネクサスは去っていく。
こいしの手に、Nのクリスタルを残して。
「あーあー結局どうするのが正解なのかなー」
「その…ドーンオースってのになりたいんだっけ?さあねぇ。鍛え足りないとか?」
「一回変身できたよ」
「じゃあ力を貯め直さなきゃいけないとか?」
「そんな長期間?」
あまりにいろいろあり過ぎた。訳がわからなくなったこいしは呑むことにした。勇儀達鬼に混ざり、談笑と共に酒を減らしていく。結構楽しいものである。
「…はぁ、切り札も暴走して謎の巨人が破壊かぁ」
「ウルトラマンネクサスっていうらしいよ」
「んなことどうでもいいんだよぉ」
すぐ近くの席で、正邪と針妙丸がヤケ気味に呑んでいた。一応里の争いでは対立する者同士だが、いくらかかわいそうにも思う。そんなこいしへ、二人は睨みの視線を向けた。何せ、彼女は目の前でネクサスの正体を見たのだから。
「…ま、実際は助けてもらったんだよね」
「それはそうだけどよ」
正邪は納得いかない様子である。そんな二人を見届けながら、勇儀はこいしへと、最近はどうなのかと問うた。
「んー?すっごく楽しいよ、みんないい人だし!」
「そ、そうか」
あまりにも昔と違いすぎるというのは、さとりが思ったのと似た感覚。だが、無理をしているわけでも嘘をついているわけでもなさそうなのが、さらに変であった。
「なんか…うーん、『感じ』がこもってないんだよ」
「え…?」
「こいしの中の優しさだけを残したっていうかさ。前の人間や妖怪の心の汚さへの怒りがさ、ないんだよ。乗り越えたとか受け入れたじゃなくて…消滅」
それを聞き、こいしの心へと浮かんだのは夢の自身の存在であった。奴の言うことは、かつてこいしが思ったことを極端化させたもの。そう、言うなれば自分の思いが『分離』したのだと彼女は気づいた。
「…結局アイツも私…なのかな」
もしかして、ドーンオースになれないのも。そんな風に、ぼんやりと考え始めたそのとき。
「んだこれ!?」
突如大声と共に正邪が立ち上がった。あまりにも急だったので、鬼達もほぼ全員同時にビクッとしていた。曰く、付喪神達の魔力が勝手に動いてると言うのだ。
「なんで分かるの?」
「状態把握の術を仕込んでるからな。…ったく!」
そう言って面倒そうに駆け出していく。ほぼ同時にリヴァーシブルの変身音も響き、さらには正邪が苦しむ声まで。流石に異常事態であり、こいしや鬼達は何事かと外へ出た。
「うぐっ…」
「何よアレ…」
リヴァーシブルを蹴り倒していたのは、ラルジュネヌが着てガイアと戦ったツクモガミアーマーであった。だが、中身はなく、鎧だけがカタカタ音を立てて歩いている。
「…死ネッ!」
正邪の元へ駆け寄る針妙丸に近づき、鎧は掴みかかった。その手に力を込めるのは、握り潰すためであろうか。こいしは考えるより先に変身していた。
『仮面ライダーU、「ライジングアップ!」』
「ぜああああ!」
「邪魔ヲスルナ…我々ハ叛逆スル!」
右腕にブレードを展開し、鎧はUへと切り掛かった。バリアでそれを防ぎ、相手がのけぞった瞬間につかみかかる。その隙を見て、正邪は針妙丸を変身させた。
『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』
「感謝するわっ!」
人間大へ変化しながら、ラルジュネヌは針で斬りかかる。しかしあまりダメージは入らない。怨嗟の声を上げながら、鎧はさらに暴れた。
「…オマエ達ハ理解シテクレルト思ッテイタ!ダガ…都合ガ悪ケレバスグ破壊…ドイツモコイツモ同ジダッ!」
「…っ!この子たちの言ってることはもっともだわ…」
「だからって…死ぬつもりないでしょ針妙丸!」
「でも!」
ラルジュネヌの決意が揺らぎ、さらに不利な状況に。そもそもパワー面でも2人でやっとどうにかできたレベルである。UはDとOのクリスタルを悲しげに見つめた。
「モット…進化シテヤル!生キテヤル!」
「うぅっ…」
さらにラルジュネヌは心理的にも迷いが見られる。そんな中、追い討ちのようにUEが現れた。Uの首を掴んで投げ飛ばし、クローで斬りかかる。
「ライダーアタックパンチ!」
リング状のエネルギーをまとったパンチをくりだす。初めて見る技が故か、いくらかダメージが入る。しかし、2、3発は効くがだんだんと対処するようになるのはさすが自分というところか。
「やれやれ…」
『時が終わりを告げようと、倒すは悪の侵略者!仮面ライダーU、「バスターエネミー!」』
エイトケインを構え、改めて飛びかかる。激しい動きと共に、プロレス技やら武道の投げ技。さらにはフェンシングのフォームまで試し、新たな方向から攻めていく。読み物の知識だけではあるが、ある程度は効果を見せる。
「…はっ!」
「っ!」
しかしネタも尽きるというもの。杖からの光線は、もはやあまり効果を見せない。ある程度の疲弊はあるようだが、UEは未だ優勢だ。
「にしてもさ、あなたは何だって私を邪魔するの?」
「何でって…大事な人を傷つけられるかもしれないってのに!」
「大事な人?薄汚い欲に塗れた汚い生き物達が?」
「薄汚っ…!」
「違わないよね?そう、結局みんなそんなもんよ!この世界を変えられる力を持っている今…大チャンスでしょ?」
UEが心底謎であるかのように言う。それはこいしの「人を信用できなかった心」である。今のこいしの元にあるのは「人を信用しようと決めた心」。
「……結局誰かを信じることなんかできないのかな」
「そーだよ!だって夢のあなたが私として……感情の分離までしちゃってるぐらいだもん!無理するよりさぁ、もう諦めよ」
「……」
「あの付喪神もだよね。進化したいとか何とか思ううちに…だれかを疎んだり心の奥底で嘲笑う醜い心を持つんだ。そういう意味では…生まれるべきじゃないのかもねぇ」
「…!」
夢の自分のささやきを聞き、こいしの中に怒りが沸き始める。それは、こんな心を抱え、さらにはごまかし続けていた過去の自分に対するものでもあった。
「先に進もうとする意思を…笑うな……」
「だって愚かじゃない。これはあなたが思ってる事なんだよ?」
「違う!!私は…先に進もうと」
「うっさいなさっきからァ!先に進んだ結果がこれだ。結局心の闇に負けちゃうんだよ」
苛立ってきたUEが爪を振り上げたそのとき、こいしの手の中に新たな光が煌めいた。そのAクリスタルを改めて握り、そして前を見据える。
「違うね。あなたのおかげで…本当に信じる事に気づけたのよ。一種の自問自答だね!
『Nクリスタル!』『Aクリスタル!』
『エレメントフュージョン!アナーキーノーチス!』
眩い光がUを包み込み、爆発するようにその姿を現す。黒のボディをメインに、金と銀が光る。さらには赤と青の鎧が乗るその姿は、美しきものであった
『叛逆の魂に気づくとき、目覚めるは進化の絆!仮面ライダーU、アナーキーノーチス!』
「…はっ!」
ネクサスと融合した時と同じように、駆ける。その新たな攻撃一発一発がダメージを与えていく。さらにグリップを出現させ、そこに光剣が現れた。
『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』
「くらえッ!」
『オーバーレイ・セイバー!』
「ううっ!」
炎をまとった光の一撃が爆裂し、UEを一気に吹き飛ばす。続けて光剣を縮め反対側からも同じ長さに展開。薙刀の形状にし、続けて斬りかかった。
『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』
「ぜあっ!」
『アローレイ・ハルバード!』
「ぐぅあ!」
続けて薙刀を弓の形に変え、射出。打ち上げる形で飛ばし、地面に墜落した。さらに足にエネルギーを貯め、連続でキックをぶつけていく。
「…なんで…こんなに強いの!」
「お前が諦めた進んでいく力だからだよ!」
『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』
ふらふらとしたUEを前に、ボタンを押し、スロットを展開する。そうして今一度押し込み、三度目の必殺を発動させた。
『クロスレイ・ライダーキック!』
「であああああああ!」
「うぐぅあああ!」
大地に出現した紋章を吸収し、スパークさせた光と共に空へ跳び上がる。そしてそのまま急降下キックを叩き込み、爆発と共についにUEの変身を引き剥がした。
「…っ、私のボディを壊すのね。…また、見ないフリを」
「しないよ。もう逃げない…受け入れる!」
膝をつく夢の世界のこいしへ、ゆっくりと歩み寄り、変身を解いて視線を合わせるように彼女も膝をつく。その目は優しく、決意に満ちたもの。
「私は…自分を信じることを諦めない。あなたの憎しみも全部…受け止める!」
「…そんなのできなかったじゃない」
「だけど今は違う。昔より強くなれたはずだよ、みんなのおかげで」
そう言って抱きとめると同時に、夢のこいしは溶け、夢塊へと戻っていった。夢が夢へと戻っていったのだ。そして、こいしの手の中にはSとMのクリスタルが。
「…っ」
ふと、あんな奴ら助けなきゃいけないのかと、疑問が浮かぶ。しかし彼女はそれを振り払い、駆け出した。
「こいし…!」
ようやく立ち上がったリヴァーシブルと共に、ラルジュネヌは鎧相手に粘っていた。しかし二人とも今にも負けそうである。こいしは今一度クリスタルを構えた。
『Sクリスタル!』『Mクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
「変身!」
『スケアードマッドネス!』
まとう闇のオーラから、雷光と共にその姿を現す。しかしもう迷いはない。今や心の闇は受け入れ、彼女のものなのだから。
『恐怖に駆られる狂気の心、向かい合わねば勝機はない!仮面ライダーU!、「スケアードマッドネス!」』
「闇を抱いて光となる!」
正義の闇でもって、彼女は鎧を追い詰めていく。しかし、相手は意思の集合体である。その攻撃にこもった感情のパワーは凄まじい。
「…今ならいけるよね」
そして、彼女はDとOのクリスタルを手にした。きっと、自分の本当の心を解き放って変身できるのであろう。初めての時は、まだ分離する前で、さらに本心からやらねばと思ったから。
「闇を受け入れた…本当の私なら!」
そうして、二つのクリスタルを握ったとき、心の中のヴィジョンが映る。子供達の声、大人達の夢。愛された、二人の旅人が。ハーモニカが響く中、カメラのシャッター音が刺さる。
「何で変身解い…えっ何その格好!?」
「ふざけてんのか!」
「…こういうものなんだよ」
瞬間、こいしは黒の全身タイツになっていた。だが、それがどういうことなのかは、とうにわかっていた。
「ディケイドさん!」
『Dクリスタル!』
『フン』
「オーブさん!」
『Oクリスタル!』
『デュワッ!』
こいしが二つのクリスタルを入れると、それぞれのタイミングで仮面ライダーディケイドとウルトラマンオーブ オーブオリジンのヴィジョンが現れる。
『ネオフュージョン!エレメンタルカリバー!!』
そして現れた聖剣を握り、ポーズをとってベルトへ接続。二横に出現したディケイドとオーブも動きをリンクしながら、オーブカリバーとライドブッカーを動かした。
「心の力、お借りします!」
『纏え、心の力!』
「変身!」
『ドーンオース!!』
ハーモニカとギターが優しく奏でるリズムの中、二人のヴィジョンがこいしに重なり、光が足元からその形を成す。さらに10個のアーマーが全方位から合体した。そうして、胸のクリスタルの形状に合わせてO字を手で作り、仮面ライダーU ドーンオースがその姿を現した。
『自身を取り戻した時、夜明けに誓う物語が始まる!覚醒せよ!仮面ライダーU、「ドーンオース!」』
「通りすがるは銀河の光!これが…私の心だあああああッ!」
手をぱぱっと払い、エレメンタルカリバーを構え、今一度駆け出した。その攻撃にもはや迷いなどない。吹き飛ばした鎧を前に、Uは今一度剣を握る。
「あなたの生きたい、進みたいという意思は素晴らしいものだよ。でも、誰かを傷つけるってなら…今は力を失っていて」
「ナゼダ…我々ハ……!」
リヴァーシブルとラルジュネヌが押さえ込む鎧へパンチを叩き込み、改めて向き合う。相手の感情は否定できない。だが、怒りに駆られる付喪神をそのまま自由にさせることはできない。そんな鎧を前にこいしは、三つのクリスタルを空へ解き放った。
「ゼロさん!ギンガさん!エックスさん!」
『デエエリャァ!』『シャオラ!』『イィーーサァァーーーッ!」
フルムーンウェーブ、ギンガコンフォート、ピュリファイウェーブ。三つの光が重なり、エレメンタルカリバーで空中に描いたOの文字と重なる。
「はっ!」
そして放った粒子が鎧を浄化し、暴れる力だけを鎮静化させた。
「…ごめんね、みんな」
「潰しといた方が楽だろうが…」
変身を解いて膝をつく針妙丸に対し、正邪は腑に落ちない様子だが、一旦はそれを見守っていた。
「どいつもこいつもアホばっかよ!ほんときったないことばっかでさー!まあそーいうのも面白いんだけどね!」
翌日、こいしは鬼達と昼間っから飲んでいた。いつもと違い、その内容は愚痴や文句である。
「分かるよそーゆー気持ち。すぅーぐ嘘つくからさ!」
「勇儀さん分かってる!ほんとだよ!一回ぶっ飛ばそうかなみんな」
ゲラゲラ笑いながら吐き出す文句に、勇儀は「本音」を感じ、どこか嬉しく感じた。
フォーム名:アナーキーノーチス
概要:黒と銀のスーツに赤と青二色のアーマーを乗せ、金の模様を多く入れた複雑な姿。その特徴は『進化』という点。経験を積んでいくとともに必殺技や武器が進化していく。『仮面ライダーアギト』と『ウルトラマンネクサス』を思わせるフォーム。
武装:アームドグリップ
光剣が飛び出すグリップ。薙刀と剣になる。
変身アイテム:
アンノウンドライバー
ライダークリスタル(NA)
変身シークエンス:
『Aクリスタル!』
『Nクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
『アナーキーノーチス!』
必殺技:
『クロスレイ・ライダーキック』
全身にエネルギーをまとい、スパークさせてから放つキック技。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『クロスレイ・ライダーキック!』
『オーバーレイ・セイバー』
グリップから展開するブレードで放つ必殺斬撃。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『オーバーレイ・セイバー!』
『アローレイ・ハルバード』
光の槍を弓状に射出する必殺技。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『アローレイ・ハルバード!』
変身口上
『叛逆の魂に気づくとき、目覚めるは進化の絆!仮面ライダーU、アナーキーノーチス!』
フォーム名:ザナドゥフォーエバー
概要:黒地のスーツに白と銀が入り、四肢には白黒ツートンのアーマーが重なる。頭部はヘッドギアっぽくなっており、クリアのバイザーがちょっと宇宙服っぽい。全体的にゴツく、堅い。『仮面ライダーフォーゼ』と『ウルトラマンエックス』を思わせるフォーム。
武装:モジュールアーマー
両手足に付く装備。サイバー怪人から作ったアーマー。
『キャッツアーマー』
ブラックキャッツの爪
『アヴェムアーマー』
制御棒型砲身
変身アイテム:
アンノウンドライバー
ライダークリスタル(FX)
変身シークエンス:
『Fクリスタル!』
『Xクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
『ザナドゥフォーエバー!』
必殺技:
『ライダーロケットザナディウム』
モジュールアーマー発動でのキック技。X字のエネルギーをまとうz
『放て!友情の力!』
『ヒーロータイム!』
『ライダーロケットザナディウム!』
変身口上
『
いうまでもありませんが、ネクサスとアギト、エックスとフォーゼですね。スケアードマッドネスはすでに貰っていた設定で、使いどころがなかったのをこのタイミングで。Uは並列フォームをいっぱい妄想できて楽しいですねぇ。個人的にはニュージェネ以外の平成ウルトラマンがゼロしか居ないのが寂しかったのでネクサスを加えた感じです。ティガか迷いましたが。
好き勝手やったの極みみたいな回でしたね我ながら。ギチギチすぎた感はありますが。結果としてはドーンオースに落ち着く感じで。挿入歌演出も今後たまーにやろうと思います。
タイトルは直球に石鹸屋の「いと恋し idこいし」から。ネクサス風に!