幻想仮面少女   作:さわたり

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まだ7月なったばっかという恐怖。


第25話 夏の氷精 - 動 -

「正直言っちゃうと私達はまあ楽しけりゃいいんだけどね」

 

「妖精は大半がそうよ」

 

「まああたいもそうだけど…。でも!やっぱ正体が分からない敵は警戒しないとだし」

 

博麗神社の裏の林にて、三月精は絶賛会議中であった。ライダーに変身できるルーミアとチルノの二人も呼び、今後の不安についての会議である。

 

「ひとんちの敷地で何やってんのよ」

 

「会議だけど?」

 

「迷惑行為よ。退治しようかしら?」

 

スペルカードを片手に睨みつける霊夢に対し、自信ありげにチルノが歩み出る。そうして弾幕ごっこが始まろうかというとき、突如落ちてくるかのような砂埃を巻き上げてクラウンピースが現れる。

 

「…リベンジさせてもらうぜ、霊夢!」

 

『EMAXAJENSIXI!WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!』

 

「霊夢とチルノは続けてなさい。…私も一回戦っておかなきゃ、データ収集なのだァーーっ!」

 

シャドウライトを出現させながら威勢よく蹴り込み、ベルトを装備した状態で二人は格闘を始める。そして距離を置いた、その一瞬。ピースは松明をぶん投げ、ルーミアがその手を十字に広げた。

 

「「変身!」」

 

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

蹴っ飛ばされた松明をS・スピアーで弾き飛ばし、リライは飛びかかった。その横で、二人は構える。そうして始まった弾幕ごっこを尻目に、リライとフールの戦いは続く。

 

「…ったく、らちがあかねぇや」

 

『RISING!GURO-RIASU!超・高・熱!太陽の一手!審判の業火!』

 

「こっちのセリフなのだー…っと」

 

お互いの戦闘能力はどっこいどっこいな様子。クラウンピースがサンに変身したのとほぼ同時に、リライはW・カオスへ。お互いの拳がぶつかり、両者体勢を崩す。

 

「すごいのーどだねっ!あたいがあまりに強いから本気出しちゃったわけ!?」

 

「誰が妖精なんぞに…」

 

上空で綺麗な弾が飛び交う中、混沌と爆熱の拳がぶつかり合う。そもそも長時間変身のできる形態ではない。お互いささっと戦いを終わらせてやろうという気であった。

 

『太陽の一撃!』

 

「とあああああああ!」

 

「ハアアアアアアアァァァァ!」

 

二人が繰り出したキックがぶつかり、闇と光と炎が溶け合う。同時に爆風が起こり、上空の霊夢とチルノの髪を揺らした。

 

「…ったく!」

 

「…っ!」

 

ほぼ同時に転げ出た二人であったが、体勢を立て直してから駆け出すのはフールが速かった。自身のスーツを一気に高熱化させ、タックル。凄まじい大爆発と共に、リライの変身が解けた。

 

「うっ…ぐぅ……」

 

「ハァ…ハァ…」

『愚者の一手!破滅の一手!』

 

だがフールとて無事ではない。流石に維持してはいれず、フールフォームへと逆戻りである。その様子を見て、ぎょっとした様子で霊夢とチルノが止まる。流石にこれはということで、命名決闘を中断し降下。

 

『がっちーん☆』

 

『読み込み!神霊!』『&仙獣!』

 

「「変身!」」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

『煌き!ハジャケンセイ!魅惑の神霊!』『戦乱!閃光!仙獣タートルゥ!!』

 

そうして変身しながら同時に着地。カラフルな閃光と華麗な冷気がふわりと広がり、フールへと飛びかかった。しかしその瞬間、二人に向けて光弾が飛び出す。リブレッスは防ぐが、ラビは吹っ飛ばされてしまう。

 

『全く…考えも無しに神社襲撃なんかするもんじゃないわよ』

 

「あんたも一昨日似たことしてただろ〜!」

 

ビランである。フールへ適当に言葉を送ると、剣を構え、ナーグフレイムと共に斬りかかった。リブレッスはそれを霊体化で避けながら、冷静にパンチを叩き込んでいく。

 

「あいててて…」

 

砂を払いながら、ラビがダイヤモンダーをビランへ向け、銃撃開始。リブレッスにもだいぶ当たっており、ちょうどよくビランは彼女を盾に。

 

「いったいわね…ちょっとなんのつもりよチルノ!」

 

「えっ…別に…攻撃したかっただけだけど」

 

「もっと攻撃範囲ってものをねぇ…」

 

ビランをぶん殴りながら、リブレッスはため息。相手にあまり怯む様子はなく、フールも疲弊しながらもリブレッスへキックをぶつけた。仮面の奥でチルノは考える。もっとどうにかできないものか。そんな時、ふと別の思考が浮かび上がる。

 

「あっちー…」

 

いや、口から飛び出ていた。7/1とはいえその日光は凶暴。スーツ内部はひんやりしてはいるものの、顔だの関節だのは蒸れるのだ。そんな時、ふと思い立つ。そう、ウィンタースフィアはチルノの氷の力で生み出す冬の力。

 

「…えいやっ!」

 

試しにやってみたら、出来た。夏のロックスフィア、サマースフィアである。砕けたウィンタースフィアを取り出し、改めてクロッカーへセット。そのレバーを回転させた。

 

『がっちーん☆』

『ばっきーん!』

 

「なるほど…これが…夏!」

 

「………いや、それたぶん溶けてるだけよ」

 

霊夢に言われ、自分の手を見てみる。どうも夏という感じがしない。…と、いうか、ウィンゲルそのままである。よくわからないままダイヤモンダーを構えるが、いきなりふらついてしまう。

 

「溶けて…あっ」

 

まさかと思いながら、池に自分を写してみる。…溶けていた。ウィンゲルメルトとでも呼ぼうか。これはこれでデザインとしてはありだが、まともに戦えないようではどうしようもない。だが、ビランからの銃撃の中、今一度ウィンゲルに戻るのは難しい。

 

「…だあああああああ!」

 

「おごっ!?てめっ…離せコラ!」

 

半ばヤケクソでフリーズパーフェクターを展開。フールにつかみかかり、そのまま炸裂させた。爆風の中、変身の解けたチルノとピースが転がる。

 

『…っと、最悪ね』

 

その状況を見て、撤退することに。だが、易々逃しはしない。一瞬のうちに霊体化し、もぎ取るようにクラウンピースを取り返した。

 

「…あっ!てめっ!置いてくんじゃねぇ!ちょっ…コラァ!おい!」

 

「よぉーやく捕まえたわよ」

 

「…えへへ?」

 

数分後。縄で柱にくくりつけられ、謎の札を貼られていた。さらに霊夢は呪文を唱え、バタバタあばれながらピースは抗議する。

 

「…なんのつもりだ!このヤロー!」

 

「よし、あとは猛烈なパワーを叩き込めば()()()()はずよ」

 

「えっ何が!?何があたいから出てくるの!?」

 

「やって」

 

「あいあいさー!」

 

「ちょっ嘘だろチルノ!私達友達だろ!?」

 

「縄ほどいたら襲いかかってくるくせに」

 

「そーだぞ!」

 

「ご名答、こっちもなんでかわかんないけどライダーをぶっころさ…待て待て待てなんでそんなためらいなく拳振り上げられんだよチルノォ!」

 

「今正気に戻してあげる!」

 

「フン!あたいはそもそもルナティックな妖sぶほぉっ!おげっ!」

 

「弱いわね、殺す気でやって。どうせ妖精なんだし」

 

「あいあいさー!」

 

「はァ!?抗議!お前もあいあいさーじゃねぇよ!あたいは妖精の人権をしゅちょおぐぇっ!?」

 

「がまんしろー!あたいと同じ妖精なんだろ!しかも地獄の!」

 

「おっぶっっっ!!……ゔっ、ゔぉお…うぉええぇ」

 

最終的に、チルノが放ったヤクザキックが決め手になり気絶。同時に、ゲロでも吐くようにびちゃびちゃと紫のゲル状の何かを吐き出した。数秒のうちに消滅したそれが、夢塊であるのは明らかである。

 

「…どんな気持ち?」

 

「ピースがあれで助かるなら…って。……ちょっとどうかとは思うけど」

 

その光景を眺めるヘカーティアに、ルーミアは問う。戦いが終わる頃にちょうど来た彼女だが、見ていればこれである。複雑に思うのも仕方がないというものだ。

 

 

 

「つまりあたいは強くなりたい。うぉんと、とぅー、びー、べりー、すとぉおおおおんぐ!!」

 

「うっさいわね…幻想郷はいくら隔離されてても日本なんだからそこの言語喋りなさいよ」

 

数分後、境内だと怒られたのを受け、三月精宅にてチルノは会議中であった。遅れてきたメディスンとリグルを加え、お菓子片手の会議だ。仮面ライダードライブを流しながら、話は進む。

 

「強くなりたい…ねぇ」

 

「さっき草むらで見てたけどさ、夏の力を全く引き出せてなかったよね」

 

「ざっつらいと!」

 

「だからなんなのよさっきから」

 

「早苗が英語を教えてくれる。マンマミーアはイタリア語らしい」

 

「あっそう…」

 

「あっ、針妙丸のラルジュネヌは…」

 

「脱線はいいから!どう強くなるかでしょ?」

 

サニーと盛り上がる中、ルナチャイルドはそれを止め、話を戻す。しかし特訓と言っても何をすればいいのか、というもの。それぞれで考える中、リグルが口を開く。

 

「…この前、幽香さんと銭湯行ったんだけど、そこで……」

 

「むしろそれについて詳しく聞きたいわね…」

 

「どういう状況かしら」

 

「私は絶対嫌…」

 

リグルの出す話題にスターとメディスンが食いつくなか、ルーミアは顔をしかめる。幽香の威圧感を受けてよく平気だなと、チルノとリグルを除くその場の者ほとんどが思っていた。

 

「いや、早苗もいたわよ?」

 

「なにその緑の集い…」

 

「どうせなら閻魔さまいればいいのに!」

 

「…で、そこで私はサウナってとこに入ったの。暑すぎてすぐ出ちゃったんだけど…それなんかどうかしら?」

 

「ん、いいんじゃない?」

 

「そうと決まればいくぞー!」

 

そうして、全員が外へ出て行こうとする中。スターが待ったをかける。曰く、修行で行くのにこの人数で動くのは面倒とのこと。じゃあ誰が行くかとなり、ライダーは一人は付いて行った方がいいのではということに。

 

「…むり」

 

包帯に巻かれた右手を上げ、ルーミアは言う。そうして、全員の視線が向いたのはメディスンである。

 

「はぁ…仕方ないわね」

 

「あと…なんか夏っぽいからサニー、行ったら?」

 

「頭は春なのに」

 

ベロを出してふざけるルナの方を睨みながら、サニーは家を出た。リグルはささっと地図を描き、チルノへ。見送られながら、三人は空へと舞っていく。

 

「あっはっはっはっはっはっはっは!だはははは!!!」

 

「笑うなー!」

 

「いやだって滑稽じゃないか!サウナだの釜茹でだの色々やって()()()()ってさぁ!あっはっは!!」

 

翌日の早朝。相変わらず凄まじい日光の中、妹紅が笑う。人里でたまたま会った彼女にことの顛末を話したためだ。度重なる実験に耐えきれず、チルノは融解。先ほど復活したばかりだと言う。

 

「仕方ないな!そんなら私が稽古付けてあげようか?」

 

「いいの!?」

 

「ああ、お前らのチーム、言ってたメンバーと同じだろ?つまりは愚かにも今日も特訓しにきたわけだ」

 

妹紅はチルノ、メディスン、サニーを順に指差しながら言った。ため息をつくメディスンを横に、サニーとチルノは恥ずかしそうである。

 

「ただ…今日はちょっと寺子屋に用事あってな。昼過ぎに来てくれりゃ稽古できるさ。だからそれまでは死なないように頑張ってこーい!」

 

そう言ってチルノの背中を押すと、食べていたアイスの皿を店員に返し、立ち上がる。そして何かを取り出したかと思うと、チルノの背中へと当てた。

 

「それあげるよ。天子がチルノに渡してくれとさ」

 

「これは…」

 

ベルトが胸や脇に巻きつき、肩甲骨のあたりに機械が装備される。同時にチルノの羽が巨大化し、それを見送って妹紅は寺子屋へ去っていった。

 

「いいわねこれ!めっちゃ早く飛べそう!」

 

「いいなー!」

 

サニーの羨ましげな視線を受けながら、チルノは誇らしげにする。そんな中、ふと彼女は思案を始める。

 

「……あっ、そうだ!あたいはさては天才か…!」

 

「んー?なに思いついたのよ」

 

「今は夏の始まりだよね?」

 

「そうだね」

 

「春の要素が消えれば真夏に近づくよね」

 

「んん?まあ…多分…」

 

「リリーを倒せばあたいの中の夏のパワーもげっとすとろんぐ!行くわよー!」

 

「まってリリーはダメ!!勝てないわ!」

 

「春の話でしょ!今ならいけるいける!」

 

そういうと、メディスンとサニーの手を掴み、空へと飛び上がってしまった。そうして真っ直ぐに進む先は妖怪の山。途中で侵入がどうのとごちゃごちゃ言う文を無視しながら、九天の滝前の吊り橋に着地した。

 

「たのもーーー!」

 

「うるっさいですねぇ…」

 

「あわっ…リリーを起こしてしまった…」

 

「春じゃあないんですよぉ、今はッ!私の季節が終わってイラついてるんです出てってください!」

 

早口に言ってチルノを追い返そうとするが、チルノ的にそうするわけにもいかない。バシバシたたくリリーに対しとった行動は、顔面へのビンタであった。

 

「えっっっっ……私…なんかしました?」

 

「ごめんリリー!…あたいのパワーアップのえっと…そう、かてになって!」

 

「か、糧ぇ…?いったいなにをおっっぶえぇ!?」

 

「とりあえず死ねぇ!」

 

「あっ…頭おかしいですよぉー!」

 

慌てふためき、サニーに近寄るリリー。サニーもサニーでなんと言えばいいのか分からない。数秒考えたのち、リリーをぐっとチルノの方へ。

 

「恨まないでねリリー。これもチルノが強くなるためだから!私は殴らないからさ!」

 

「殴るのも殴らせるのも同じでしょう!ええいこうなれば!」

 

向かってくるチルノに対してファイティングポーズを取り、氷と春。二つの属性の拳が今ぶつかった。

 

「なんか根本的に間違ってる気がするわ…」

 

「……言われてみれば」

 

メディスンとサニーの会話をよそに、二人は戦いを続ける。噛みつきや目潰し、落ちてた廃棄蛍光灯でのぶん殴りに春パワー全開リリー汁の毒霧。果てには壊れたパイプ椅子など、見てられない戦いに激化していく。

 

「だぁーっはっはっはっはっはっは!こりゃおかしい、いっひっひっひっひっひ!!ひぃーっ」

 

「引き笑いまでしやがって…」

 

「こちとら必死だったんですよ…いででで」

 

「いやーでもさぁ!面白いじゃんそんなの!なにがどうなれば暑さ克服したいでそうなるんだよかっはっはっは!!!」

 

昼過ぎの人里。妹紅は涙目のチルノのとどでかいたんこぶのリリーを指差しながら笑っていた。メディスン曰く、リリーの毒霧パフォーマンスとテクニックはぜひ参考にしたいとのこと。

 

「なんだよ毒霧って!!あっチルノの目痒そうなのってそういう!?ギャハハハハハハ!!!」

 

ゲラゲラ笑い転げる妹紅。ひとしきり笑ったのち、笑いすぎかすこし息苦しそうに話を始める。

 

「…で、特訓したいんだって?」

 

「また私のとこカチコミ来られても困りますからね…。さっさと教えてあげてください」

 

半ギレ気味にリリーが言ったのを受け、妹紅はチルノを招く。メディスンとサニーに加えてなぜかリリーもそのあとを追い、妹紅について行った。

 

「無様見せんじゃないわよ妹紅!」

 

「うるせぇー!」

 

そうして稽古をつけるべく竹林の自宅に向かってみれば、輝夜が様子を見ているではないか。適当に暴言を飛ばし、視線をチルノへと戻す。

 

「…熱さを操れるようになりたいんだな?」

 

「ああ!あたいがんばるよ!」

 

「できるかなぁ…氷の妖精が」

 

「できなくても無駄にはならないはず!だから教えて!」

 

本気のチルノの様子を受け、妹紅にも火がつく。やるかと叫んで気合いを入れると、チルノのそばへ立った。

 

「まず…霊力っていうか妖力かな!それを一点に集中するんだ」

 

「……こうかな。はっ!」

 

チルノが力を貯めると、それは氷として現れた。指先に氷の塊が弾け、そうじゃないんだとチルノは肩をがっくし。そこへ輝夜が近づき、手を当てる。

 

「息、吸いなさい」

 

「…?うん、すうううぅぅぅ………」

 

「どう?夏のけがr…生命力を感じる?」

 

チルノはよく分からないという顔をした。だが輝夜は続ける。その口調は、まるで先生のような優しさだ。

 

「ゆっくり…その息を指先に流し込む感じ」

 

「こうか…?…!?」

 

「うおっ!?」

 

「な…なによそれ」

 

ぱぁんと弾ける音ののち、人差し指の先端が爆裂する。サニーや妹紅がびくっと驚く中、チルノは喜び飛び跳ねていた。先ほどと違い、『熱い』し『溶けている』のだ。

 

「これって…あたいがあついのを出したってことか!」

 

「そうなるみたいだな…。輝夜に助けてもらうとは。癪にさわるね」

 

「フフフ、そっからは貴女の領分でしょう?生み出せたならあとは扱うだけ」

 

「わかってるよンなこと」

 

そうして、指を治すチルノへと妹紅は説明をする。『包み込んで外で解放する感じ』というアドバイスが効いたのか、指を犠牲にせずとも火は出ないが暖かい空気を飛ばすことぐらいはできるように。

 

「これは予想以上の出来だな。さて、今度は温度を上げるか」

 

「どうやるの?」

 

「いっぱい吸った分を、ギチギチに詰め込むんだ。ぎゅって圧縮すると物は熱くなる」

 

「豆腐はならないよ」

 

「崩れるからな。崩れないよう、エネルギーの形をを保ったままぎゅーぎゅーにするんだ」

 

そのアドバイスが決め手となってか、ついに指先から火炎が。縁側に座っていたメディスンとサニー、リリーは立ち上がりながらびっくり。楽しげにチルノに近づいた。

 

「すごいのねチルノ…」

 

「あんたならやると思ってたよー!!」

 

「私の殴られ損…」

 

サニーが肩をバンバン叩き、チルノは照れ臭そうにする。そうして火を扱う特訓をしていると、もう夕方に近づく頃に。買い物をしなければと妹紅は人里へ。また、チルノ達もその後について行った。

 

「…特訓するチルノさん!これは何かネタになるかしら」

 

「さあねぇ?ま、まだ全部憶測を出ないわ。もうちょっとチルノ張ってみましょ」

 

その後ろに、文とはたてがつく。カメラ片手に、二人はバレない位置を飛んだ。

 

「ほらほら!しっかり運ぶんだぞ新入り!」

 

「はいはい…」

 

人里を行くチルノ達の目の前に現れたのは、ぬえと女苑であった。大量の野菜を持っているあたり、買い出しで間違いないだろう。カッコつけていっぱい袋を持つぬえであるが、明らかに女苑よりキツそうである。

 

「ねーぬえ大丈夫なの?」

 

「ふ、ふふん!命蓮寺仕込みの肉体をなめちゃいけない!」

 

「鍛えてるって話なら私の方が自信あるんだけどなぁ」

 

そうして筋肉自慢が始まった二人の元へ、チルノは割り込んでいった。あまりに突然なので、ぬえは驚いてしまう。

 

「あんた怪人になれるんだろ!あたいと戦え!」

 

「えっ…?いいけど…」

 

「荷物なら私が持ってくわよ」

 

「いいよ別に。さっさと終わらせるから待ってて」

 

そう言って荷物を丁寧に道端に置き、女苑にそこに立っていてくれと指示。クロッカーを構えるチルノを前に、ターンブレイカーを取り出した。

 

「おっと、戦うみたい」

 

「これこそネタになるじゃないの!」

 

物陰の中の天狗二人が話す中、かたやウィンタースフィア、かたやUSBをセット。ほぼ同時にシークエンスを終えた。

 

「変身!」

 

「惑変!」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

『turn on!mysterious girl!アンファイルド!』

 

槍に対して銃弾を送るのを見て、メディスンもメディットブレスを構える。だが妹紅はそれを止めた。これはあいつの特訓の成果なのだと言い、仕方ないなとでも言うような雰囲気でメディスンは下がった。

 

「とぅっ!たいしたことないねぇ…所詮妖精ッ!」

 

槍の持ち手で殴りつけ、怯むラビへ今度は刃を叩き込む。転ぶギリギリでかかとのフォールアイシクラーをぶつけるが、ダメージはたいした物ではない。見物人も集まり始めた中、このままでは勝てないと、ラビは決心する。

 

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「うわびっくりした!いきなり叫ぶんじゃないわよ…」

 

驚くアンファイルドをよそに、ラビは気合いを入れる。そして全身から夏のエネルギーを吸い集め、炎を作ったときのように氷として固め上げた。そうして生まれたサマースフィアをセット、ラビは構える。

 

「うああああああ!」

 

『がっちーん☆』

 

突如爆発するかのように熱波が溢れ出る。ラビの装甲は溶け、中からはチルノが現れる。この状態、普通なら死んでもおかしくはないが…特訓の成果で耐えていた。

 

「…っ」

 

「何か来ると思って警戒したの、判断ミスだったかなァ!」

 

しかし、チルノは膝をついてしまう。何事かと近づくサニーは、チルノの頬に()()()()()()。そう、溶けているのだ。慌てふためくサニーをよそに、チルノの表情が沈み込んでいく。

 

「…ダメだ…操りきれない…。あたいはダメなのか…」

 

悔しげに地面を殴ったチルノ。いい加減待ってられないのか、アンファイルドも歩み寄る。そんな彼女に、柔らかい光が当たる。振り向けば、リリーが春の生命力を送り込んでいた。

 

「春は…冬から夏に向かう力ですっ!あなたの力の制御に役立つはずっ!!」

 

「それなら…私もっ!」

 

さらに、サニーが屈折させた日光をチルノへと送る。制御する力と加速させる力。それを吸い込んだ彼女は、すでに解き放ち方を知っていた。

 

「ギチギチを包み込んで…外で放つ!」

 

「…!?」

 

瞬間、彼女の体から再び爆熱が放たれ、みるみるうちに姿が変わる。そう、日焼けしたのである。そして今一度レバーに手をかけ、グルンと回す。

 

『ばっきーん!さむ・らいずふぉーむ!』

 

「…負ける気がしねーぜ!!」

 

爆炎の中、日焼けしたチルノに灼熱の鎧がまとわれる。紅蓮にオレンジ色が煌めき、さらに炎でできた花びらが全身に揺らめく。炎の華、そう呼ぶのがまさにふさわしい姿だ。

 

「…これまたあっつそうなのが」

 

「行くぜー!」

 

アンファイルドが槍を構え直す中、仮面ライダーラビ サム・ライズフォームが構える。夏のエネルギーが手のひらへと集まり、それが直剣『サンフラワリングソード』を生み出した。

 

「これはまた…見てる方が暑くなるわねぇ」

 

屋根に登り、戦いを見下ろしながら文は語る。そのすぐ下の軒下で、妹紅と妖精達ははしゃいでいた。メディスンも飛び跳ねながら喜び、その戦いを見届ける。

 

「どらああ!」

 

「っ!」

 

素早い連続斬りをくらい、アンファイルドは怯んでしまう。一撃一撃が帯びる高熱に、体力を奪われていく。

 

「ぜりゃああああああ!!」

 

「うっぐぇ!急に強くなりやがって!!」

 

斬りかかったソードを弾き飛ばし、チャンスとばかりにアンファイルドが槍を振り上げる。瞬間、ラビから溢れ出た蒸気がアンファイルドの視界を阻む。排熱機能『クールアイシング』である。

 

「見えねぇ…っ!」

 

「どりゃああああ!」

 

そして、腕からブレード『サマーパーフェクション』を展開し、殴る勢いで斬りかかる。飛び散った火花に、サニーがテンションを上げながらガッツポーズを取る。

 

「優勢だぞチルノー!」

 

「そうですよっ!私の毒霧も耐えたんですっ」

 

「毒霧…?」

 

「こっちの話だぜ!」

 

一瞬戸惑うアンファイルドへ、落ちてきた剣を掴みながら斬り付け。槍を杖代わりに立ち上がる彼女に対し、ラビは身を低く構えた。

 

「あたいっくダイナマイト!!」

 

ソードを投げ捨て、パーフェクションに熱を集中。さらに全身からクールアイシングを使って超高熱を放ち、アンファイルドへと突っ込んだ。相手が盾にした槍を弾き飛ばし、そのまま全身から熱を解き放った。

 

「うぐぇっ!!」

 

そして、大爆炎が巻き上がる。中から変身が解けた両者が現れ、膝をつくのはぬえの方。あたりの炎を消しながら、チルノは喜びながら飛び上がった。

 

「イェスッ!よっっしゃーチルノさんサイコー!!」

 

「うっさ……あんたやけにチルノに甘いわね」

 

「べ…別にそういうわけでは……」

 

同じくチルノの勝利に喜ぶ文であるが、その喜びようはメディスンやサニー以上。柄にもなくガッツポーズをしながら、はたての言葉に少し赤面した。

 

 

 

 

「いやーそれにしてもほんとお疲れ様!」

 

完全に日は落ちて、チルノを囲みながら妖怪や妖精達は酒を飲み始めていた。三月精の家に、幽香という来客は珍しいものである。だがチルノはあまり物怖じはしない。

 

「…黒くなったわね、なんか」

 

「おう!あたいはなんたって夏の氷精だぜ!小麦色の肌と真っ白な歯!」

 

「なんかいつも以上に暑苦しいのね」

 

ふふっと笑いながら、幽香は酒を飲み進める。妖精でもこんな良い酒を持ってるのだと意外に思いながら、三月精たちを見やる。

 

「それは…」

 

「コーヒーよ」

 

「苦いものを好く妖精ね…。変わってるのねぇ」

 

そんなことを言ったのち、視線をチルノに戻す。今日、三月精宅のこの夜は、チルノのためのものである。毒舌な評論を交えながらも、彼女を褒め称えながらその夜は続いた。

 

 

 

 

50年後、どこかの廃墟ビルにて。

 

「ダメ…ダメよ蓮子目を閉じないで!」

 

「…ごめん、もう……」

 

焦点の合わない目で、蓮子は言う。メリーの腕の中で、その息吹は沈んでいく。もう、助からない。大きく引き裂かれた胸がそう教えてくれる。

 

「お願いよ…メリー!」

 

「そんな…これは…あなたが使ってたものじゃない!!」

 

震える、冷たい手でメリーへと赤いライドレンズを渡す。受け取ろうとしないメリーを無視し、無情にも蓮子の手はもう掴む力を失った。彼女の手から離れ、レンズは濁り、赤だったその色を失う。

 

「ママ…パ…パ……お…ばあ、ちゃん…ごめん…なさい…。メ……」

 

「ああっ…うっ…うああああああああああ!!!」

 

ついにその体は鼓動をやめ、冷たく力を失う。涙と共にメリーはライドレンズを拾い、立ち上がる。蓮子を抱き上げ、破壊された武装警備ロボの山の上を行く。蓮子は命を犠牲に、メリーを救ったのである。

 

「…許さない……蓮子を奪ったこと…」

 

引き返せば、追われることはないはず。それでもメリーは先へと進み、厚い扉を開く。広大な空間の中、カーテンに囲まれた何者かの影。

 

「…また、ダメか」

 

「なんなのよ…あなた一体!……許せない…!」

 

「やはり運命は収束する。いい加減にして欲しいものだがな」

 

メリーは怒りを胸に叫ぶと、蓮子を壁に背をかけて寝かせる。そしてアイズバックルを装備し、白く曇った…そう、蓮子が託したライドレンズをセットする。

 

『can't look…』

 

「…変身」

 

『I was star night fantasy!』

 

レバーを倒し、現れたのは白く曇りがかった目のスターボウモードであった。蓮子の姿のはずだが、今変身しているのはメリー。そもそも、ヒールであるのに蓮子は後ろで静かに眠っている。

 

「…あんたのせいなのよね。……何が目的!?」

 

「私の最終目標は単純。平和だよ。だが…そのためには君達の力が要るんだ。だから一つ愚かな問いを。稀神サグメと…レミリア・スカーレット。彼女らは生きているか?」

 

「それがどうしたの…。生きてるわよ」

 

吐き捨てるように言うヒールであるが、カーテンの奥の女の「そうか」という声はどこか嬉しそうであった。そして、女は立ち上がり、剣のような何かを持った影が映る。

 

『ON……Villain……』

 

「…結構、苦労したんだ。少しずつではあるが報われているな。君たちの次の挑戦が…どうか正解であることを願わせてくれ」

 

「どういう意味なの?次があるって言うの!?」

 

「ああ。宇佐見蓮子を失ったのは君としても私としても失敗だ。似たような失敗を繰り返している。我々はね。だから例の如く…試させてもらおう」

 

「…」

 

「今度こそ消えてもらおう。今はまだ…再ロードでセーブ地点からやり直せる。…チェンジ!」

 

『……Rogue the Nought Elimination』

 

女は剣を振り、カーテンを切り裂く。しかし黒い炎と闇に包み込まれたその姿はよく見えず、次に見えたときには、スーツを着て変身を終えていた。その姿に、メリーは顔をしかめる。

 

「…あなたは!!」

 

「ん?ああ、過去の私が…世話になってるかな?」

 

その黒いボディや、その手の()()()()()()()()。放つ黒い炎。そう、見まごうことなくビランアニヒレイトのものであった。

 

「…であああああ!」

 

殴りかかったヒールの拳をその手で受け止めると、チェンジブレイドを叩き込み、さらにはナーグフレイムでの追撃まで。一度戦ったビラン以上にその動きは洗練されている。

 

「…っ!」

 

「甘いな。…まだ、もう少し強くなる必要がある。それに必要なのはマエリベリー・ハーン、お前だけではないというのは分かるな?」

 

そう言って指を弾く。同時に世界は揺らぎ、ズレた世界線の位相と共に、彼女たちの意識もぶっ飛んだ。

…これが何度目であるか、もう数える事もやめた。

 

Continued on next episodes.




「ここのところ…こうではなかった…!でも……なぜか怒りが湧き立ってくるの…!あの……巫女や…鈴仙が来た日からッ!」

月を燃やし、その憎しみの瞳は何を見る。

次回、「僅か38万キロよりのボヤージュ」



グリウサを買いたいものの機会と金がない男…スパイダーマッ!
そういうわけでリリーのセリフを見たことがありません。多分普通に女口調なのでしょうけれど、とりあえず春ですよー準拠の敬語口調。でもグリウサ買ったらセリフ差し替えると思います。密かに更新されてたらそう思ってくだせ。
さて、久しぶりの一週間以内更新ですねぇ。お待たせしました。
ビランの正体が分からんと思ったら正体のわからん女がビランに変身しましたね。誰か推測してみよう!
あ、言うまでもないですが、1話の廃ビルですぞ。
明るい話だったところで唐突に蓮子死亡!いやなんかシリアスたりねぇなと思いましてね?まあ嘘なんですけどね。元々入る予定でした。
ちなみに。戦いが終わった後、ぬえはバテバテになりながら野菜を持ち帰ったとさ。
ま、そんなこんなで!みんなの!変身ポーズコーナー!
ブロッサムです!
単純ですね。チェリムドライバーを巻き、広げたフロードジャビ片手にくるん!そしてフロードジャビを前方に向け、「変身♪」
あとはセットして完了です!
ではまた!
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