「あんた…!」
「久しぶりね、巫女さん」
「結構最近だと思うけどねぇ…」
7/5、昼前。縁側でぐでんとしている霊夢のもとへ、純狐が現れた。キョロキョロとする彼女へ、霊夢はヘカーティアとクラウンピースはもっと奥に居ると告げる。それに頷き、純狐は歩き始めた。
「友人様ァ!」
「えっ、あっ純狐!!」
「心配したのだからね…二人とも」
チルノと遊ぶクラウンピースと、それを見守るヘカーティア。そんな彼女らの元へと純狐は寄り、ヘカーティアの横へと腰をかけた。
「…髪、黒くなったのね」
「私としたことが力を失っちゃってね。腑抜けてたのかなぁー」
「確かに、あなたらしくもないわ」
「それもこれもピースを操ったドレミーのせいよん!ただでさえ月に味方してる点で気に入らないのに!!」
「そうね。でも…あまりにも急で、これまたドレミー・スイートらしくもない手段だわ」
「それもそう。だから事情を掴み兼ねてんのよね〜」
ため息をつく主人を、ピースは心配そうに、そして申し訳なさそうに見つめる。ボールを投げようとしていたチルノもその手を下ろし、視線の先を追う。
「ピースも知り合いきたなら話したいでしょ!あたいサニーたちんちこ行ってくる!」
「わりーなチルノ!」
手をふりながら、ピースも純狐のもとへ。ヘカーティアとピースで純狐を挟む形になり、彼女は少し照れ臭そうにした。
「…大変だったのね、ピース」
「ええ。あんまり記憶はないんですけど、ご主人様にもいっぱい迷惑かけちゃって」
「あーもうそんなの気にしちゃダメ!」
がしっと、少し激しく肩を組み、ヘカーティアは告げる。面倒見がいいものだなと、純狐は友人として誇らしく思う。そんな二人の姿が『何か』と重なり、純狐の胸に虚しさのようなものが膨らむ。
「…っ」
「……?」
「どうしたの純狐」
「いえ、なんでもないわ」
己の何かを振り払うかのように言うと、純狐はおもむろに立ち上がった。曰く、人里に行きたいのだとか。どうせ幻想郷に来たのだし、それも悪くない。ヘカーティアとピースはささっと準備を終える。
「あっそーだ。あんた誕生日6月よね。暴れてる間だから渡せてなかったわね」
「えっ!?いいんですか!?」
ヘカーティアが魔術で呼び出したのはバイクであった。真白いボディに炎と星のステッカーが煌く、スポーツタイプである。ヘカーティアの方もベルトからマシンラピスを出し、乗り込んだ。
「よっし!お前の名前は今日からCRAZY=CROWNだっ!」
「素敵だわ」
「かっこいいじゃないのよん!」
ニカっと笑い、続けて純狐へ後ろへ乗るように言う。そして二つのバイクが神社を後にして、人里へと向かった。
「そいつを渡しなさいっ!」
「渡せないってのが聞こえないのかー!」
「知ったことじゃないわね!」
人里に到着し、いきなり遭遇したのはリライとエレンツの戦いだ。H・サンとツバイスターターの空中銃撃戦を眺め、純狐は楽しげである。戦いの方だが、W・カオスによりリライの勝利だった。
「あー、いてて」
カオスグライダーに乗って去っていくルーミアを見届け、アリスは悔しげに砂を払う。その様子を観戦していた者たちの中には、サグメも居た。
「あー、サグメちゃん!」
「…ヘカーティア女史。って、そっちは!?」
「………」
「あ、純狐は知らないわよね!こっちのサグメちゃんはね…」
「ああああああぁぁぁ!!」
「おっぐぇ!?」
ヘカーティアが紹介しようとする声も聞かず、純狐はサグメの首を掴んだ。誰の顔に浮かぶのも見たこともない、必死の形相にサグメはかなり気圧されてしまう。
「何してんですか友人様!?」
「ちょっとどうしたのよ純狐!!」
ピースがサグメを、ヘカーティアが純狐を掴み、引き剥がす。それでも執念で掴みかかろうとする純狐だが、数秒ののち、ハッと正気を取り戻す。
「……ご、ごめんなさい!」
「な…何すんのよいきなり!」
「おいちょっと女神サマ、口調。作ってる口調崩れてるぜ」
「え?あっ…!そうだな…。ごほん、なんのつもりだ純狐ッ!」
「いえ、こんなつもりでは…」
離した手を震え気味にさせながら、純狐は首を振る。サグメは戸惑いは隠し切れていないが、状況を把握すべく、かすれ気味の息で話を続けた。
「…恨みは薄まっているとか、言っていた気がするんだがな。この前も我らの策略に満足したとも」
「ええ、そうね…。その時はそうだったわ」
「その時…は?」
「わからない…!わからないのよっ!」
今度は泣き始めてしまう。今度こそヘカーティア、ピース、サグメ三人揃ってあたふたし始める。慰めようとするヘカーティアに対し、純狐はいいのだと止める。
「ここのところ…こうではなかった…!でも……なぜか怒りが湧き立ってくるの…!あの……巫女や…鈴仙が来た日からッ!なぜかはわからない!まるで『あの日』みたいに…あいつが…嫦娥が憎い!お前ら月人もっ…なぜか憎い!」
「…そ、そうか」
魂を吐き出すような純狐の叫びを受け、サグメは静かにため息をつく。少しののち、ヘカーティアへと目配せ。近づき、小声で作戦会議を始めた。
「不本意ながら…ほんの少しでも…スッキリさせてやろう。それしかない。私がヒール…じゃ外来人だな。ビラン…でもないな。ローグ、そう、ローグをやる」
「素直に悪役と言いなさいよん」
「かっこがつかんだろう」
「…ま、いいわ。ヒーローショーってわけね」
サグメはワードレッサーを、ヘカーティアはヘルドライバーを装備する。うつむいていた純狐の視線は、二人の方へと向いた。
「フーッハッハッハッハ!我こそは
『コトダーマ!観!』
「許さんぞ!三界の女神、ヘカーティアここに見参!お前の野望など止めてみせる!」
「「変身!」」
『Perfect!HellGod Balance!』
『ブレイクオープンドレスアップ!メイクアナライズ!ワードレス!』
ヘルゴットバランスフォームと、アナライズワードレス。睨み合う状態の中、純狐は唐突なことに戸惑う。だが、ルンルンした様子のクラウンピースや、先ほどのセリフを思い返し、演じて行う遊戯なのだと納得した。
「やったれご主人様ー!」
「この宇宙を守るのよー!」
二人の声援を受け、ヘルゴットは駆け出した。両者がクロスカウンターでぶつかり、一瞬体勢を崩す。しかしすぐさま立て直し、改めて組み合う形へ。
「…適当なタイミングで合図をしろ。そこで私が負ける」
「あら、悪役としてその辺はわかってんのね。でも…んなことしてくても私のが強いわよん」
「どうだかね」
小声で応酬を続けながら、二人は近接戦を繰り広げる。たしかにお互い互角なようではあるが、疲れが見えてくるのはサグメの方である。
「…そうねぇ」『Set!Tierra power!』
『Perfect!HellGod Tierra!』
「なんのつもりだ」
「見た目を変えるのは大事よん?パフォーマンスってやつ」
「なるほどな!」『コトダーマ!戦!』
『ブレイクオープンドレスアップ!メイクバトル!ワードレス!』
『シューターフィール!』
お互いがその姿を変え、戦いが再開する。ヘルゴットの素早い攻撃をかわしながら、ワードレスは銃撃を放っていく。
「…っと!」
「へぇ、粘るのね!」
「すぐ負けるわけにもいかないからなっ!」
そんな状況を、大勢が観戦していた。一発食らわせるたびにガッツポーズをきめるクラウンピースというのも後押しになっているのか、ヘルゴットは派手に、かっこよく、パフォーマンスらしく戦う。
「ヘカーティアと…サグメが…!」
その様子を、妹紅が見ていた。状況がよく分からない彼女からすれば、少なくとも協力中の二人がああなっているのは異常事態である。焦り気味に、その辺の少年へ声をかけた。
「ボーヤ、悪モンはどっちだ!」
「…あの人」
正直、手を組んでるとはいえ月の民も地獄の連中も妹紅的には信用ならない。オーディエンスに頼ることにしたのだ。少年が指さしたのはもちろんサグメ。妹紅は寂しげにバーンスマッシャーのグリップを5回握った。
『over change!』
「変身!」
『burn up complete!phoenix feather!』
フェザーチェイサーが合体し、フェニックスフォームへ。そして、組み合う二人の元へブースターで急速接近。ワードレスへバーンスマッシャーを叩き込んだ。
「うごぇ!?」
「えっ誰!?あっ妹紅か!ちょっと、え、どうしたのよ」
「裏切りモンを倒すんなら手伝ってあげるよ」
『over drive!』
「フルブライト…ドロオオオオオオォォォォッップ!!!」
有無を言わせず、爆熱のキックを叩き込む。完全に不意打ちだったので、対応しきれず爆散。変身が解けたサグメが転がり、同じように変身を解いたヘカーティアはその様子をぽかんと眺めていた。
「あーっはっはっはっはっは!妹紅ってば早とちり!」
「そうではないだろ…笑い事では…」
数分後。ぐったりしたサグメと大爆笑のヘカーティアとピースに対し、妹紅は申し訳なさそうな様子だった。自分の思い込みでショーを台無しにしたのだから。だが、純狐は満足であり、サグメ的にも最悪の形ではあるが目的達成である。
「にしても…戦わせちゃってごめんねサグメちゃん」
「フン…私はお前らの味方ではない。この戦いだってな」
「あら、あなたはヘカーティアの味方ではないの?裏切ったのでしょう?」
「……根本的に言えば、裏切ったのも月のためさ」
それを聞き、純狐の表情は複雑なものになった。ヘカーティアとピースは、先ほどのように錯乱しないかと純狐を心配そうに見つめていた。
「あなたは…月の味方?なら…我々の敵?」
「…お互い利用し合ってる敵…かな」
「ま、サグメちゃんはその辺の損得わかってるわ。敵と手を組むのもオツでしょ?」
ヘカーティアの言葉を聞き、妹紅は考える。明確な敵対勢力が手を組むという、かなりの緊急事態である。彼女自身輝夜を宿敵と認識しているが、この状況ならばもはやそうは言っていられない。
「…永遠亭、行ってくるよ」
そう言い出す妹紅に対し、四人は付いていくと言う。特にそれを止めず、彼女らは永遠亭へと向かった。
「あ、純狐さんだ。長旅お疲れ様です」
「あなたは…そう、鈴仙。元気だったかしら?」
「そりゃもう!」
「鈴仙ちゃん今日は薬いいの?」
「てゐの方に売らせに行ってますよ。お願いして」
門の掃除を終えたところだったらしく、鈴仙は妹紅を置いてぞろぞろ入っていく三人に付いていく。妹紅とサグメの方は横から庭へと向かい、輝夜の元へ。
「居ると思った」
「…あら、今日だったかしら」
「いや?でも…ちょっと気が向いたからね」
「そう?観客まで連れてくるだなんて」
「…いい機会だからな」
「フフフ、まあいいでしょう。来るがいい!」
サグメを観客に、殺し合いを始める、そんな頃。掃除を終えた報告とともに鈴仙が永琳の部屋へ。それに続き、三人が永琳の元へ。なかなかに濃い面子で、永琳はフフっと小さく笑った。
「…今日は何の御用でしょうか?」
「相談です。私の心の…中の……」
「?…どうしたのですか?」
答えようとして止まる純狐に対し、永琳は不思議そうに顔を覗く。瞬間、純狐は思いっきり手を振り上げた。しかし、すぐに正気に帰り、フラフラと後ずさる。駆け寄る少女達をよそに、顔を押さえて泣き始めてしまった。
「ぇう…月人は憎いけど…それを……理性的にしていられない自分が怖いっ!……いつか、いつか…大事なものまで…!」
そう言って涙を流したかと思えば、そのままへたり込んで気を失ってしまった。
「お師匠様曰く…単なる過労だそうです。精神的にも疲弊してるんでしょうね」
「私達が話してた頃はそんなでもなかったのにねぇ…」
「あなたや…私や霊夢、早苗に魔理沙。そういう出会いが刺激になってるんでしょう」
輝夜と妹紅の凄まじい戦いを眺めながら、ヘカーティアと鈴仙は話していた。サグメも静かに聞いており、どこか不安な様子。それもそうだ、いつ何をしでかすか分からないのだから。
「今は色々吐き出すフェーズなんですよ、きっと」
「そうねぇ、ならいいのだけど」
「…ランパースは?」
「ん?ピースは純狐の様子見てるわよん」
「お前はいいのか」
「ウサちゃんに相談したかったの」
ヘカーティアはぼんやりした目でそう言った。その瞳の奥にあるのは、やはり純狐。友を心配するが故、見守るだけではなく解決を探る。いい友情なのだなと、鈴仙は思った。
「…んしょっと。なんだこの金属…。一応地球素材の合金っぽいけどなー。うむむむ」
そんな風に考えながら、彼女は機械をいじり続ける。異世界から来た機械、バーサークドライバーだ。とはいえ、ヘカーティアやサグメの話はちゃんと聞いているようだが。
「見たことない…な」
「ですよねぇ?サグメ様も分からないなら…フィーリングでいくしかないわね!」
「見せてくれ」
「ヤですよサグメ様おっちょこちょいですから」
「えっ、サグメちゃんそうなの」
「一応ワードレッサーを作ったのは私なのだが…」
サグメはため息をつき、左腕を見る。それでも鈴仙は自分の手を離さない。異世界の自分が作ったものが故に、自分自身が最も信用できるのであろう。この世界で長時間使うべく、改造が要るのだ。
「っぐえ!」
そんな時、ふすまを張り倒してクラウンピースが吹っ飛んでくる。ヘカーティアがうまくキャッチするが、異常事態に変わりなし。見渡した奥には、立ち上がった純狐が。
「…邪魔をするというのね!?」
純狐はそう叫び、掴みかかる永琳を投げ、ピースの元へと駆け寄った。だが永琳もただの月人ではない。特にダメージはなく、今一度掴みかかる。
「…離しなさい。穢れていても…月の民は許せないッ!」
そんな永琳へ、至近距離で光弾をぶちこみ頭部爆散。再生する間に再びピースの元へ。錯乱しているのだろう。予想以上の深刻さで、ヘカーティアはため息をついた。
「本当になんだっていうのよ!」
「ハァ、ハァ、あなたも私の邪魔をするのね…?残念だわヘカテー!」
ヘカーティアへ飛んだのは、純粋極まる拳であった。弱体化しているヘカーティアである。そのダメージはかなり大きい。さらに、同時に後ろで大爆音。燃えカスになった妹紅とバラバラに飛び散った輝夜を尻目に庭へと押し出され友人同士の戦いは続く。
「ご主人…様っ!」
ピースは未だ立てない。この状況の中、サグメは永琳の方へ向かうことを決めた。脳みそをグズグズ復活させている彼女をしっかり部屋へ運び、再生の助けになるよう医療器具を用意する。そんなさなか。
「…っ!?」
突如後頭部に重い痛み。完全なる不意打ちだ。薄れる視界の中、黒と赤の影が見えた。ビランアニヒレイトである。
『……?なによ、この感じ』
倒れるサグメを見て、ビランは不思議そうに首を傾ける。だが、その違和感の正体はよく分からない。白い髪と肌に触れてみるが、特に何かを感じ取れず、ひとまず部屋を抜けて純狐達の元へ。
「…っ、なんで…こんなに……」
頭を抱えながらも、馬乗りになってヘカーティアを殴り続ける純狐。その様子にビランは仮面の中で笑い、駆け出した。その手には、どこからともなく取り出したターンブレイカーが。
『ねぇお嬢さん?自分に素直になりなよ』
純狐へとターンブレイカーを握らせ、ヘカーティアから引き剥がす。何を言ってるのよと抗うが、その手はもはや準備を完了しているようだった。
『ほら、初めっから
「違う…私は……仕方なく…」
『あっはっはっはっ!仕方なくであぁーんなえげつないことできないわ・よ・ん♪』
その声に完全に負け、純狐はUSBをターンブレイカーへとセットした。電子音声が響き、純狐はゆっくりとナックルを押し込む。紫のオーラが爆発するように放たれると、そのまま鎧を形成する。
『turn on! girl!フィルトレッジ!』
彼女の服がそのままアンダースーツとなり、クリアーのアーマーが装備された。さらに顔の狐風のマスクも若干透け、純狐の虚ろな顔が見える。
「……あぁ…うぅあああ!」
「…変身」
『Perfect!HellGod Luna!』
言葉を忘れた憎しみの絶叫とともに、駆け出す。ヘカーティアも防御に寄った形態に変身し、フィルトレッジとビランの攻撃を耐え凌ぐ方向へ。妹紅は再生中、サグメは気絶中、ピースは再起不能。ライダーのアイテムを持つのは鈴仙のみ。
「…最終調整なしのぶっつけねぇ」
『セット・ジェネラル…』
「C、H……011000!」
『コード認識・チェンジモード』
トランシーバー型アイテム『バーサークドライバー』へカードをセットし、コードを音声入力。待機音が響く中、左手にバーサークドライバーを持ちかえ、円盤を回転させる。
「変身!」
『全てをcontrol…アルナブジェネラル!』
奥のフィルトレッジを指差し、バーンと銃のモーション。同時にカードの模様が畳サイズに出現。そこから現れたホログラムの兎が畳をぶん投げ、鈴仙へ叩き落とす。同時に粒子がスーツを成し、アルナブへ変身が完了した。
「ブチ抜いてあげるわっ!」
そうして手を銃のようにし、狙うのはビラン。そうしていつもの弾幕のように、指先から光弾を放つ。だがその威力は、弾幕ごっこの『遊び』のためのものからは程遠い。
「目を覚ましなさいよっ!」
「あああああああ!!!」
同時に、ヘルゴットは友人のため剣を構え斬りかかる。割れたアーマーがすぐ再生し、ひるみもしない。放ってくる光弾を防ぎながら、ヘルゴットは何度も立ち上がる。
「…うぅおおおおおおおおお!」
「なんとか言いなさいよッ!」
斬りかかるヘルゴットを蹴り飛ばし、同時にアルナブもビランの切り返しに後ずさる。意図せず背中合わせになった二人はクルンと位置を入れ替え、敵を交換した。
『Perfect!HellGod Alien!』
「たっ!」
ヘルゴットがフォームチェンジする中、アルナブはサイドバックルから『ルナティックマグナム』を取り外し、銃撃戦を繰り広げた。だがフィルトレッジの攻撃は激しい。ビランとヘルゴットが拮抗する中、アルナブは押されつつあった。
「…っ!」
「…?」
突如、アルナブが攻撃の手を止める。疑問を浮かべ、フィルトレッジが攻撃を止める。しかしコレはチャンス。絞め落としてしまおうと、腕を伸ばした。
「…フフフ。あっはっはっはっは!もう危ないなァ純狐さぁあん!!」
「!!」
しかし次の瞬間、アルナブはフィルトレッジへと超至近距離銃撃を浴びせる。怯む彼女へヤクザキックを叩き込み、さらに首につかみかかる。
『セット・ナックラー…』
「CH 011000!」
『コード認識・チェンジモード』
さらにパンチを叩き込まれ、割れたマスクを再生させながら純狐はアルナブを睨み付ける。体勢こそ怯むが、体へのダメージは小さい。そんな彼女を前に、アルナブはカードを入れ替えてフォームを変えた。
『全てをdelete…アルナブナックラー!』
「アッハハ!ハッハッハッハッハッハ!!なんか楽しいです!うふふふふ、ねぇ純狐さんっ!」
「……うぅえあああああああああああああ!!!!」
駆け出すアルナブのアーマーが変化する。頭部や胸部の赤紫のアーマー、全身のブースター、赤いつり目。凶悪なデザインが目を引くナックラーフォームである。
「はっははははは!!!」
「…ぅうええええああ!」
ルナティックマグナムをナックル型に変形させ、思いっきり殴りかかる。受け止めるフィルトレッジだが、そのダメージは先ほどより明らかに増している。
「あっはぁ!ははははははは!!」
「…っ」
さらにアルナブはその手を止めない。ゴリゴリと攻め込んでいく。…が、まだひと押したりない。アルナブの手は緩まないが、しかしフィルトレッジも下がらない。
『…くっそ』
「あんたもタフねぇ」
また、ビランとヘルゴットの戦いも一進一退を抜けない。パワフルに攻め込むが、それが単純に通じる相手でもないのだ。そうして全く進展しない、そんな時。
「…見つけましたよ。困るんですよねぇビランさんこういうの」
『X!』
どこからともなくドレミーが現れ、ビランへ告げる。その手には、エックスゴースター。「眠妖」の掛け声とともに、そのトリガーを引いた。
『tipper…change』
放たれた粒子が鎧とスーツを形成し、ズェッケロティパーへ。後ろから殴りかかったヘルゴットへ、振り向きもせず銃撃。キックでも食らったような衝撃波とともに、ヘルゴットは地面に叩きつけられた。
「…純狐さんは問題なさげですね。ライダーたちにやらせちゃっていいでしょう。で、も、あなたにはもう少し落ち着いていただこうかと」
『何よ偉そうに…私に指図しないでくれるかしら?そもそもへぶっ!?』
「減らない口ですねぇ。ほら、帰りますよ」
抗議するビランへぶつけたのは、軽い蹴りであった。だがそれだけでも竹をなぎ倒して9mほどぶっ飛ばす威力である。仮面の下で気絶した様子のビランを引っ張り、そのまま姿を消した。
「ちょっと予想外だけど…邪魔者が減ったわね」
「きゃはっ!!えへへへへ!!行きますよ純狐さーん!」
「…ユルサナイ…ジョウガ……邪魔ヲスルナァ!!!」
透けるマスクの下、純狐は必死の形相で叫ぶ。ようやく言葉を取り戻しつつあるようだが、片言だ。ただ一応言葉の様相を呈した、恨みの塊とでも言うか。復活が進み、引きずりながら身を起こす妹紅は、その様子にかなり気圧されていた。
「だああああああ!」
「あっはっはっは!えーい!」
だが、地獄の女神と狂気にあてられた兎は怯まない。両者駆け出し、同時にフィルトレッジにパンチを叩き込んだ。攻撃特化形態二人での攻撃というのもあり、大きめに隙を晒した。
「そいやー!」
「うぉらああ!」
「レイ…セン…ヘカー…ティア……ナゼ…!」
続けてアルナブが光弾を掌底と同時にぶつけ、ヘルゴットが斧を思いっきり叩きつける。純狐は恨み言のように、なぜ邪魔をするのかと吐き出した。暴れ続けるアルナブをよそに、ヘルゴットはその手を止める。
「…余裕を失ってはいけないわ。今回は見逃してやる、っていう余裕!それがなければ勝てないわよ。相手がアレならね」
「…ヨ…ユウ……アァ…ああああああああ!!」
「叫んでて楽しそうですねっ!ふふふふ!」
戸惑うフィルトレッジへ、アルナブは攻撃をぶつけていく。ヘカーティアとしても、変身の影響で純狐がおかしくなっているのは想像に難くない。ゆっくり必殺を構え、同時にアルナブもカードをマグナムにセットする。
『InvocationDeathblow!』
「ぜああああああああ!」
『ナックラー!マインドストライク!』
「あっはは!ツインナックル〜マグナム!!ハハハハハハハハハ!!!」
ヘルゴットは腕から鎖を放ち、フィルトレッジへ巻きつける。そしてその鎖を引き寄せ、その勢いで近づきながら拳を叩き込む。同時に、アルナブは左手にナックル型のエネルギーを作り出し、右手のナックルモードのマグナムと同時に発射。ロケットパンチがフィルトレッジへ追撃を繰り出した。
「ぅあぁ…ああああああああ!!!」
絶叫を上げ、爆発と同時にアーマー弾け飛ぶ。煙の中から、純狐が膝をつく。さらに追撃を繰り出そうとするアルナブからドライバーを奪い、カードを抜きながら、変身を解いたヘカーティアは純狐を見つめる。
「……あぁ…私…あなたに…こんなこと…ごめんなさい…」
「いいのよん。貴女は一度落ち着いて吐き出す必要があるわ」
そんな二人の様子を、ようやく完全回復した輝夜が眺めていた。それから程なくして、純狐は仙界へと帰ると告げた。永琳のカウンセリングも断り、彼女は夕陽と共に竹林へ出た。
「…また、何かあったらくるのよん?」
「ええ、でもここは刺激が多すぎるわ。私は大人しくこもっていることにします。また、来てね?ヘカテー」
「もちろんよ」
純狐の背中に静かに抱きつき、ヘカーティアは数分を過ごした。寂しいけれど、コレが一番純狐のためになるのだ。ヘカーティアとクラウンピースは少し悲しそうな顔で手を振った。
(…月の要人……まさか…
無言無表情であるが、心の中の稀神サグメはかなり表情豊かである。永遠亭のあたりの謎の電波を探りながら、サグメは考える。PCのようなマシンをいじる、そんな中。
「…財団X!?」
驚愕のあまり声を上げてしまう。そう、電波の発信源と発信先を探るなかで、謎の組織のサーバーへ侵入できたのだから。横で地球産のPCをいじり、財団Xを検索する。
(聞いたことある名前だと思ったら、やっぱりね。でも、このサーバーが…本当にTVの架空組織のパロディなんかだったりするのかしら?)
さらにハッキングを行い、部分的だがエックスゴースターの設計図を発見した。なぜ『平成仮面ライダーシリーズ』に登場する組織と同じ名前か。そんなことはもはやどうでも良くなっていた。いったい何であるのか。それが最も重要だ。
『……わ…さ……ぐ………、っと、繋がった。サグメさんってば良くないですよ?ハレンチです、覗きだなんて♡』
「…!?」
画面に現れたのはドレミーであった。ノイズがかった映像の中彼女は語り、最後に指を弾くと同時に画面が割れた。ため息をつきながら、サグメは続ける。
「……鈴仙の通信機ね」
発信源は突き止められた。どこかで盗聴器具でも付けられたのだろう。携帯通信機を破壊させるべく、サグメはその席を立った。
「…つまり…君は永遠亭の側に着くということだな?」
「ああ、そうさ」
「いいんじゃないか?君も輝夜を他に殺されたくはないだろう?」
「アイツはあんまり出歩かないけどね」
同じころ。中途半端な形の月光に照らされながら、妹紅と慧音は話す。酒を片手に、静かに夜は進む。
「…寺子屋の子達もな、怪人に対してそれなりに恐怖を吐き出している」
「…そっか」
「ああ、頼んだぞ。頼りにしてるからね」
慧音の言葉を受け、妹紅は改めて覚悟を決める。カチンと器をぶつけ、今一度乾杯。酒へと月光を写し込んだ。
Continued on next episodes.
「豊聡耳さん…私は……霍青娥を殺す!本尊としてではなく…ただの虎として…!」
「変身!」
仏教と道教、その行末は?
次回、「数多の欲望の星空」
皆さんこんにちは!フランはキャハハ壊したい!系のクレイジーでは絶対ない根拠は文花帖侍のサードニクスです。なのでその役割は暴走モードのアルナブへ。フランはどうなるのか。お楽しみに(?)
実はこの26話、めちゃくちゃ急に差し込んだものでして、31話プロット作成後に挟んだものだったりします。対し次の会は前々から予定のあったもの!書きたかった話であります!
今回はアルナブ初変身でした。急な気はしますが、仕方ないね!!!
さて、みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はプランゼございます!余談ですが、私の提案した「プランツェ」が発音しづらいとのことでそう言う名前になったという経緯があったり…。
あまりポーズをつけるべからずという発注通り、ほとんど無いと言って差し支えないポーズですね。
まず両手を下腹部あたりにかざし、ベルト出現!ゆっくり手を広げることで変身完了です。