幻想仮面少女   作:さわたり

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第28話 人形革命 〜 人の形と生けし少女

『X!』『get started!』

 

「行くわよ」「えぇ」

 

廃ビルの中、ビランアニヒレイトを前に二人はターンブレイカーとエックスゴースターを構えた。ビルでたまたま見つけ、ホコリかぶるそいつを引っ張り出したのだ。

 

「「醒妖!!」」

 

『fantasia…ready』『exposing girl!break out!』

 

幻想と秘封のメモリをセットした二機を合体させ、変身。二人の体が一つになり、白黒のシンプルなアーマーが着せられる。怪人、ミスティックの誕生である。

 

「…へぇ、やっと二人揃ってくれたと思えば、そんな隠し球が」

 

チェンジブレイドを構えるビラン。対するミスティックの腰に巻かれているのは大きく亀裂の入ったアイズバックルだ。ヒールに変身できないが故の応急処置、それがこのミスティックだ。

 

「だあああ!」「おらぁ!!」

 

「おっと……」

 

二人が融合して、やっとスターボウとナイトメアよりちょっと弱いミスティックだが、ビランをむしろ押しているようにさえ見えた。

 

「…あんた、結構弱いのね」「幻想郷にいた頃のあんたは強かったのよ」

 

「フフフ、ハッハッハ!!なぜ私が負けているか、分かるか?」

 

「え?」「…どういうこと」

 

「お前らが揃っているからさ。これはちょっとした試験だよ。まだ君たちが戦えるのかという、ね」

 

ビランは笑いながら言う。男とも女ともつかないエフェクトとは違い、こちらは女性であることがはっきりと分かる。落ち着いた調子だが、どこか焦っているようでも作っているようでもある。

 

「…まあいい、よぉーくわかったとも。やっと運命がお前らに向いたと言うことが。もう何千回目だろうかね。いや、何万だったか?案外数十回だったり」

 

「…」「何が言いたいの?」

 

蓮子の問いには答えず、ビランは静か指を弾いた。

 

「やはりここにいられては邪魔だ。運命が今一度収束した以上、貴様らは目障りでしかない。では、良きタイムスリップを」

 

突如暴風が吹き荒れる。あの時と同じだ。幻想郷へと飛んでいく!

風にぼやけていくビランのシルエットが言う。

 

「レミリア・スカーレットの好奇心を止めるべからず。稀神サグメの言葉を止めるべからず。そして…君たちの探究を止めるべからず。まだ幻想郷には秘封ばかりだ。暴いてくるがいいさ」

 

その言葉を最後に、二人の視線は暴風から突き抜ける青空へと変わった。その身を起こす蓮子。見てみれば、そこは見知らぬ場所。だが、阿求の話からそれが無縁塚であることが分かった。そして、訝しげにこちらを見るアリスの姿も飛び込んでくる。

 

「…戻って、来たのね。秘封倶楽部(あんたたち)

 

「どうやら」

 

メリーはなんとも言い難い表情で頭をかいた。どうやら、自分たちが去った後の幻想郷へと来たようだ。聞けば、この日は7/9だとか。とりあえず人里に連れてってやるという優しさで、三人はその場を後にする。

 

「うわああああああん!!!」

 

人里に到着した頃、同時に凄まじい泣き声と同時にバイクが道を駆け抜けた。三人を横切ったのち、突き当たりにストップ。乗っていた少女がヘルメットをかぶった頭を抱え、泣き喚く。

 

「ひいいいい!助けて…た…助けてー!」

 

「ふーっはっはっはっは!!」

 

そのあとを、真っ赤なスーツを着た誰かが追う。ステレオタイプなショッカー怪人のようでもある。遊んでんのかなと思い、三人はその場を後にしようとする。

 

「ひいいいいいいいいいい!!うえええええええええん!!!」

 

しかしうるさくてたまらない。アリスもイライラしてきたのか、怪人へとヤクザキックをくらわせた。転ぶ赤い変質者、そいつを尻目に、アリスは少女へ手を差し伸べた。

 

「ありがと〜…」

 

「泣くにしてもうるさすぎるのよね」

 

「…あらら?」

 

ヘルメットを外した少女が、蓮子の視線に気付いて慌ててフードをかぶる。だがもはやバレバレである。少女改め今泉影狼は、恥ずかしそうに俯く。しかし、思い出したかのように視線の先を変える。

 

「そ、そういえば外来人さん!!黒髪と金髪の女性の外来人さんよね?ヒーローだって聞いたわ!!怪人を倒して!!」

 

涙ぐんだ目で二人に駆け寄り、変質者を指差す。その声を聞き、不審者はピタッと止まり、ゆっくり起き上がった。布製のフルフェイマスクをグイッと持ち上げ、赤い髪とともに耳を晒した。

 

「…な、なんのつもり!?」

 

「その声…まさか」

 

そう言いながらマスクを外し、赤蛮奇がその顔を現した。驚く影狼とアリス、そしてピンと来ていない秘封倶楽部をよそにうちわで顔を仰ぎ始めた。どうやら蒸れるようだ。更に櫛を通し、リボンを結び直す。

 

「…え、ばんきちゃん?」

 

「やっぱり影狼だ。なーんか楽しくないと思ったら…通りで」

 

ピッチピチの全身タイツのままスカートとシャツを装備し、何食わぬ顔で影狼が倒したバイクを起こしてやった。そんな赤蛮奇の赤い線のある首筋を眺めるメリー。彼女に対し、赤蛮奇は言ったら殺すという視線を送った。

 

「結局なんでこんなことしてんのよ」

 

アリスの問いはもっともである。路地裏に五人だと流石に密集しすぎというのもあり、人里へとそのまま繰り出していた。そんな中放たれた問いに、赤蛮奇は小さな声で答える。

 

「…ああやって人間を脅かさないと存在意義が保てない。深夜の警戒がここ最近しっかりしてるじゃない」

 

「その姿のままやればいいのに」

 

「私はハイカラな少女お(せき)で通してるのよ。あそこの呉服屋、私の勤め先」

 

「なるほどね」

 

赤蛮奇は深くため息をつく。怪人やライダーの騒動はこんな形でも波及しているのかと、バイクを押しながら影狼は考えた。

そうして大きめの道に出た時、魔理沙とクラウンピースに引きずられながら青娥がやってきた。

 

「はーなーしーてーくーだーさーいーまーしーーー」

 

「いいから変身しろ」

 

「でもォー」

 

「しろってんだよ。早く!!!」

 

何事かと、人がざわざわ集まり始める。アリスたち五人もその様子を見物することにした。

 

「全く…芳香ちゃん!!」

 

「おう!戦えばいいのかー?」『get started!』

 

「あら、太子様から返していただいたのね、ターンブレイカー。掛け声は覚えてる?」

 

「えっと……」

 

「芳嚼、よ」

 

「そうだった!ほーしゃく!!」『turn on!decayed girl!メタリカ!』

 

変身した芳香に対し、魔理沙もサォルブドライバーを装備して立ちはだかる。そして飛んでくるコウモリマジシャンを掴み取り、バラしてバックルにセットした。そしてスペルホルダーからカードを取り出し、見せつけるようにポーズを取る。

 

『reading!vampire!』

 

「ヴァンパイアー?」

 

「吸血鬼だよ。レミリアみたいな」

 

「誰だそいつー」

 

「会ったことないのか?」

 

律儀に変身するのを待ちながら、メタリカは首を傾げた。対し魔理沙は腕をグルンと回し、ポーズをとってバックルの円盤を回す。

 

「変身!」

 

『brad drain!dark night ruler!perfect vampire!』『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

水色をメインとした、マジシャンヴァンパイアフォームだ。赤い目が煌めき、マントがはためく。バットウィングアローは両腕にばらけ、バットウィングスィーパーとなっている。しかしどうも動きづらい。夕方とはいえ日があるうちに使うフォームではなかったななどと思いながら、スパークは構えた。

 

「それは貴女は変身しないの?って顔か?それとも逃げ損ねちゃったわ、かな?どっちにせよあたいはお前を逃がしやしないぜ」

 

スパークとメタリカがぶつかるその横で、青娥を指差してピースは言う。青娥はため息をつき、タオブレイカーを取り出す。そうこなくっちゃと笑い、ピースもアルカナドライバーを装備した。

 

蒼光(ツァングァン)!」「変身!」

 

(turn on)!desire girl!アズーロレイ!』

 

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

「はっ!」

 

「ずおりゃあああ!!」

 

変身を終え、二人のキックがぶつかる。そのままアズーロレイの足を土台に跳ね上がり、急降下でパンチを放った。しかし光剣で跳ね飛ばし、さらには仙術でぶっ飛ばす。

 

「がんばれようせーい!!」

 

どうやら神子がその様子を見ているようだ。青娥は自分を応援してくれりゃいいのにと思いつつ、今一度駆け出した。

 

「どりゃーー!!」

 

「っと…死んでりゃ恐怖心はないのかね。気の毒だぜ」

 

そして、スパークはバットウィングスィーパーのブレードをぶつけていく。それによってエネルギーを奪えるのだが、相手に生気はない。奪えるエネルギーは少なく、さらに日光下。だが今更フォームチェンジも面倒である。さっさと終わらせるべく、スパークは構えた。

 

「ったくよぉ……」

 

その横でフールは立ち上がり、新たなカードを取り出した。警戒するアズーロレイに、にじり寄りながらドライバーへセットした。

 

『DEVIL』

 

「…行くよ」

 

『GENOCIDE!FANNTAZUMA!絶 対 悪!悪魔の一手!崩壊への王手!』

 

そして炎が灯るように闇が集まり、爆発。新たな姿を現す。渦巻いた角と、紺青のオッドアイ。肩に燃える紫の炎が煌めく仮面ライダーフール デビルフォームだ。道化と悪魔を混ぜたような不気味な外見が、地獄の妖精によく似合う。

 

「だァ!!」

 

「…っ」

 

構えたかと思えば、凄まじいスピードでアズーロレイへと迫った。さらに空気を裂く高速蹴り。ぶっ飛ばされたアズーロレイへ、翼を広げて狭った。

 

「こりゃまた派手にやるのね」

 

「魔理沙も戦ってんのねぇ、ずいぶんがっつりと」

 

アリスと影狼が関心深く眺めるその前で、二人は必殺を構えた。

 

『vampire!super wrecking spark!』

 

『悪魔の一撃!』

 

「はっ!」

 

あたりにコウモリが飛び、それに紛れてスパークが駆け出した。防御態勢のメタリカから離れ、狙ったのはアズーロレイ。奪ったエネルギーでキックを放った。

 

「どりゃああ!!」

 

さらにフールはメタリカのほうへ、蹴り上げを飛ばす。そして空高く高くぶっ飛んだメタリカに続けて飛び蹴りをぶつけ、地面に叩きつけた。魂に直接食らわせるその一撃は、肉体がゾンビであろうと大ダメージだ。

 

「…負けましたわね」

 

「そうだなー」

 

地面に大の字で倒れる青娥を神子が抱え、帰っていった。更に布都が芳香を抱える。連れて行かれる青娥に、二人はこれに懲りたらもう面倒ごとに巻き込むなと吐き捨てるのであった。

 

「…凄かったわね、なんか」

 

「派手に戦うわねぇー」

 

きゃいきゃい騒ぐ蓮子とメリーの横で、影狼はぼそっと「力が欲しい」と呟いた。アリスは彼女の方をチラッと見て、赤蛮奇はしっかり目線を向ける。

 

「天人から買えばいいんじゃないか。あいつ鎧を売っているんでしょ?」

 

「だね!天子さんか…ら…買え、ば……」

 

言いながら、影狼の顔は沈んでいく。あらかた察しはつくだろう。赤蛮奇は直球に、金がないんだなと突っ込んだ。悲しそうにため息をつく彼女に対し、赤蛮奇はバイクへの視線を送る。

 

「……あー…姫と乗り回す夢はもう叶ったからいいんだけど… でも買い手が居ないなぁ」

 

「その辺もまた考えなきゃね。そうだ、私お腹が空いたわ。何か食べましょうよ」

 

アリスの提案に、一行はうなずいた。影狼もそのお金はある。…が、むしろ蓮子とメリーは置いてきてしまったようだ。どうしようかと悩む、そんな時。

 

「あら、我が孫にその親友じゃないの。帰ったて聞いたのだけど。挨拶も無しに」

 

幽香と二人の菫子が二人へ声をかけた。聞けば、地底を去った直後に会ったらなんか仲良くなったのだとか。財布を前に立ち尽くす二人を見て、菫子はニヤリと笑う。

 

「おばあちゃんからお小遣いよ。ご飯でも食べるんでしょう?」

 

それを受け取り、ぱあっと明るくなる二人。満足げな菫子だが、周りを見て人数が思わず結構多くなってしまったなと考える。

 

「あ、私お昼食べたよ」

 

「私も」

 

「私もだ」

 

「じゃあこの四人で行きましょうか。じゃあね幽香!」

 

「ええ、またね」

 

秘封倶楽部とアリスで食事する店を探すことに。残された幽香は影狼のバイクへと視線を向けた。その威圧感に押されながらも、影狼は近づいてみる。

 

「…コレ、欲しいかしら?」

 

「ええ、素敵な車ね。くれるの?」

 

「えっと…売る、って形かな」

 

「へぇ?いくら?」

 

「天人さんから…えっと、あの鎧の機械。ターンブレイカーを買って欲しいの。私と姫の分!」

 

「……いいわ。彼女は人里に居るはずよ」

 

そう言って、彼女は二人についてくるよう言った。正直、なぜ自分まで一緒なのかと思う赤蛮奇だったが、どこか嬉しく思うのも事実。なんとも言い難い感情のまま、二人の後についた。

 

「でさー、あの店肝心のお茶が美味しくないのよ!」

 

「あ、それわかる!あたいもさ、たまにあの店でサボっ、休憩するんだけどさ」

 

「今サボるって言いかけたでしょ」

 

すぐ近くのうどん屋に、目的の人はいた。店の外に影狼と赤蛮奇を待たせ、幽香は華扇と小町との三人でがやがや騒ぐ彼女のもとに近づく。

 

「あ、察したわ。コレでしょ?誰用に?」

 

「人狼と人魚よ。あと…ろくろ首にも」

 

「ろくろ首って首が外れる奴だよな。赤なんとか」

 

ターンブレイカー三つとUSBをたしかに受け取り、お金を渡した。天子は金額を確認し、毎度ありと適当に彼女を見送る。

 

「…ありがとう!!」

 

「礼には及ばないわ。ただの取引ですもの」

 

そう言ったかと思うと、ターンブレイカーとUSBを持たせ、自分へ影狼にバイクを渡すよう手で促した。影狼はしっかりうなずき、彼女へ渡して乗り方を教えた。

 

「へぇ…面白いじゃない」

 

「改造のしがいなんかもあると思うわよ。シンプルだから」

 

それを聞き、幽香は満足げ。そして早速初乗りとまたがったその瞬間、ずでんとすっ転んでしまった。ゆっくり起き上がりながら、「不良品掴ませやがったのか」という視線をブッ刺す。

 

「さっきまで動いたのよ…!!えっと…な、直すわよ!きっとさっきの事故で壊れたんだわ!」

 

「…直せるの?」

 

「うん、まあ人里の方の自宅なら」

 

「連れて行きなさい」

 

今一度うなずいたかと思えば、バイクを押して歩き始めた。そんな中、幽香は赤蛮奇へとUSBとターンブレイカーを渡した。

 

「私は頼んでないんだけど」

 

「あんたあの狼の友達なんでしょ。なら持っときなさいよ」

 

「…別に友達のつもりもないんだけどな」

 

なんと言えばいいのやらという表情で、赤蛮奇はうつむく。そして影狼の家に着いたタイミングで、彼女は別れを告げて帰って行ってしまった。

 

「影狼ちゃんおかえり!」

 

「…あ、来てたんだね姫」

 

「お邪魔するわよ」

 

「えっと、風見さんだっけ。何の用事で来たの?」

 

「この子からバイクを買ったのよ」

 

靴を脱いで畳の上に優雅に座り込み、その様子を眺めることに。中の壊れた部品をがちゃがちゃいじる影狼と、何やら魔術の本を読みこむわかさぎ姫。そんな幽香の元に、来客が。

 

「やっぱり居ましたね」

 

「あら、リグルあんたよくここがわかったわね」

 

「ミスティアが見てたんですよ。幽香さんが入っていくの」

 

影狼の見学に参加し、バイクの様子を眺め始める。そんな時、おもむろにわかさぎ姫が車椅子を動かし始めた。そして通りがかりに幽香の髪を引っこ抜き、慌てる彼女をよそに、何やら術を始めた。

 

「えっと、これで合ってるはず…」

 

「幽香さん大丈夫?何のつもりよ…」

 

「付喪神を定着させる術よ。コレで…このバイクが風見さんに従ってある程度勝手に動くようになるはずよ!」

 

得意げに言う彼女を、頭を押さえながら幽香は見つめていた。

 

 

 

「なんか色々面白いパーツがあるのね」

 

同じころ、香霖堂にて。昼食を終えた少女たちは各々作業をしていた。

 

「コイツ、やっぱり自己学習なのよね」

 

「そうよ。だからここの記録媒体の移植が必要になるわね」

 

「それはこのPCでやれ、と」

 

蓮子とメリーはアイズバックルを失ったが、菫子がこの時代で作った新品がある。コイツを調整し、自分達に会うようにしているのだ。

 

「うーん、ドッペルをどう扱うのかって話ねぇ」

 

対し菫子は二人が未来の廃ビルから持ってきたターンブレイカーとエックスゴースターを元に新しいアイテムを作っている。さとりや河童の影響で何となく始めたスーツ作成も、かなりこだわるようになってきている。

 

「…あー、ママに呼ばれてるっぽいわね。そろそろ起きなきゃ」

 

そう言った彼女は、諸々の機器を抱えすぅっと消滅した。自分の世界へと帰って行ったのだ。

 

「お茶を入れたぞー…っと、菫子は帰ったのかい?やれやれ、タイミングでが悪いことだ」

 

入れ替わるように出てきた霖之助が、礼を言う蓮子とメリーへ紅茶を渡し、空席に一つ置き。考え事をしているアリスへも紅茶を置いた。

 

「あら、ありがとう」

 

「別にいいさ。君は何かすることはないのかい?それとも考えるべきことが?」

 

「…いえ、別に」

 

「そうかい。力不足とかはないのかい?」

 

「……あるかもしれないわ」

 

「なら何かしないのかい?誰かを頼るとか。既にしてるのかな?」

 

「いえ、特には」

 

静かに砂糖の入った紅茶をかき混ぜながら、アリスは答える。波立つ赤い面が、人形のようなアリスの顔を写す。

 

「君は何故戦ってるんだい?」

 

「…壊さなきゃいけない兵器があるの」

 

「壊さなきゃいけない?」

 

「ええ、ママ…まあ、魔界からそうせよっていう意味で送られてきたのよ。このベルトが」

 

「…君の意志なのかい?ソレ」

 

「さぁ?……自分の…意志ねぇ、よく分からないわ」

 

そう言われてみて、アリスはふと考えてみた。そういえば自分から戦おうと思ったことなどあったのだろうかと。ライダーの力を手に入れてからというもの、ルーミアからシャドウライトを奪おうとするか、半ば受け身で敵を迎え撃つかだ。

 

「滑稽ね」

 

「…?」

 

コレでは自分が人形ではないか。一人笑いながら、アリスは今一度考える。この力で何がしたいだろうか?いつもの習慣を引っ張るだけの、他のライダーたちの研究だけをしていても意味はない気がした。

 

「ありがとう、香霖。だったかしら」

 

「魔理沙は僕をそう呼ぶね。だが礼には及ばないよアリス・マーガトロイド」

 

「いえ、言わせてもらうわ、ありがとうをね。貴方のおかげでちょっと考える気になれそうよ」

 

そう言って席を立ち、アリスは店を去っていった。そして彼女は自宅へと向かう。ここから森の中の家はかなり近い。到着するなり、彼女はテーブルの上にパーツを広げた。

 

「…魔法研究の始まりね」

 

本の知識、持っている道具、昔作った機械の技術。全てを総動員して彼女はぶつかった。久しく人形以外には向けることのなかった『本気』である。

 

「…ここは……ああ、統合させちゃばいいわね」

 

ほんの少しのパーツを編むように組み上げていく。その作業が終わるのは翌朝のことであった。とはいえ魔法使いにとって、睡眠がないことは大したダメージでもない。その魔法具と変身アイテムを持ち、彼女はドールシャイナーへと乗り込んだ。

 

「我々妖怪は確かに恐れられる存在!でもそこに意味があるのも事実!だが、幻想郷が揺れたとき!巫女の後ろを追って戦うのもまた私達なんだ!」

 

人里に着いてみれば、こいしが演説をしているではないか。リグルやらチルノ、メディスンなど、多くの妖怪達が集まっていた。そして幽香さえも例外ではない。物好きの人間がチラホラいただけのそこに、だんだんと大勢が集まってくる。野次馬だった人間達も、彼女の言葉を聞いた考え始める。その列を裂き、アリスは前へと出て行く。

 

「…聞いただろうか!何と一方的で何と短絡的なことだろうか!理想論でまくし立てるだけのなんの中身もない…愚かで空っぽの言葉よ!」

 

何を思ったか、アリスは喧嘩を売ったのである。ざわざわし始める住民達。人達からすれば、彼女は人形劇のお姉さんなのだから。主にルーミアの視線がきっかけにビリビリし始める空気。そんな中、アリスはメディスンへと近づいた。

 

「私に手を貸して欲しいの。貴女はこんなところでくすぶっているべき存在ではないわ!!」

 

急な事でおたおたし始めるメディスン。前に出ていった幽香がアリスを威圧的に睨みつけ、その目的を問うた。アリスは不敵に笑う。

 

「解放…そう、人形の解放よ!!人形を持つべき人間とそうではない人間へと分け、この世界を人形にとって存在しやすいものとする!この幻想郷を捨てられる人形が生まれない場所にするのよ!」

 

その言葉に、妖怪一同は驚愕を浮かべる。メディスンもそうであったが、だんだんと瞳を煌かせる。困惑の妖怪を置いてけぼりに、自分が作る理想の世界を語る。オーディエンスはもはやメディスンだけだったが、それでも十分である。

 

「…もういい。黙りなさいアリス」

 

「へぇ、ずいぶんと喧嘩腰ね」

 

「自己紹介かしら?」

 

睨み合い、そしてベルトを構える二人。一緒に戦おうとするチルノやルーミアを止め、サシで戦うという宣言を放った。両者睨み合ったままにじり寄る。

 

『ready…go』

 

「「変身」」

 

『α・mode ACTIVE』

 

エレンツとプランゼは変身を終えてもその距離感を崩さない。静寂ののち、動いたのはエレンツの方である。ドールシャイナーに飛び乗り、投げキッスの挑発ののち走り出す。ちょうど良いとばかりに幽香も『ブーストフラワー』を名付けたバイク乗り込み、その後を追う。バイクチェイスだ。

 

『…へぇ、面白そうなことになってるのねぇ』

 

その様子を、人気のない道でビランは眺める。チェンジブレイドを構えたそこに、菫子が現れる。

 

「邪魔するってなら…させない」

 

『言うじゃないのよ。なら止めてみなさい。私をね』

 

「…そりゃもちろんね」

 

『X!』『get started!』

 

「醒妖!」

 

『psychic…ready』『occultic girl!break out!』

 

現れたドッペルゲンガーと融合しながら、菫子へ鎧が装備されていく。ナチュラリア、それがその怪人の名前だ。ライダーほどの能力はないが、それでも今ビランを食い止めるには十分だ。

 

「でやあああ!!」

 

その特性は至極単純な超能力強化だ。いつもより巨大な岩が飛び、いつもよりパワフルに標識を叩きつける。だが怪人としての性能や通常の戦闘能力ではビランの変身者が上手らしい。徐々に押されていく。そんな時、ビランの後ろから鋭い攻撃。隙を狙われぶっ飛ばされたビランのマスクに、影狼とわかさぎ姫の姿が映るのであった。

 

「…醒妖!!」「醒妖!」

 

『『turn on!』』

『shouting girl!クロルーヴ!』『splash girl!オフルーヴ!』

 

更に怪人の姿へ。パワフルな狼らしいデザインのクロルーヴに対し、流麗な印象のオフルーヴが並ぶ。オフルーヴは宙に浮くシステムのようだ。水弾とクラッシャーの同時攻撃がビランを襲った。

 

『雑魚が調子に乗るのは…困るわねェ!!』

 

ナーグフレイムをぶつけるが、水の壁がそれを阻み更に足のクローでのキックが続く。最後にナチュラリアの放つパンダの乗り物が突撃し、ビランはそのまま撤退していった。その小道の横を、二台のバイクが通り抜ける。

 

「とりゃあ!!」

 

「…っ!」

 

プランゼのツタ攻撃をツインツインガンでさばいていく。両者あまりダメージは入っていない状態である。それをいつのまにか乱入した文が追い、写真を撮っている。

 

「…ぜあっ!!」

 

「直接くんの…ねっ!!」

 

車体をぶつけるプランゼに、エレンツはキックを返した。離れる両者。バイクに対する慣れであればアリスに軍配が上がる。だがパワーなどの面で、エレンツの一方的勝負ではない。

 

「それなら…!!」

 

プランゼが突然立ち上がったかと思えば、なんとブーストフラワーが変形。タイヤが90°傾き、車体が伸びてスライダーへ。思わぬ隠し球に驚くアリス。変身を解いた影狼は、その様子を見て誇らしげである。

 

「パワーも上がってるのね…」

 

「あんた自身よくわかってないわけね」

 

「でも…こんなことができんのは知ってるわよ!」

 

「うぐっ!」

 

ブーストフラワーの回転攻撃にぶっ飛ばされ、エレンツはドールシャイナーもろともすっ転んでしまう。プランゼが勝負あったわねとツタを構えた、そんな時。間に挟まるようにトライサイカーがやってきた。

 

「コレって…メディスンの……!」

 

「あら、タイミングいいじゃない。あの子が貴女を応援してるのかもね」

 

「結構…いいこと言うじゃないのよあんたも」

 

今一度立ち上がり、エレンツはトライサイカーへと乗り込む。かつて自分の作った三輪車である。自分の手には馴染んでいる。振り返れば、追いついたメディスンがエレンツを見ていた。仮面の奥だが、目があった気がした。

 

「…目的なのよ。コレが私の……意志、成すべきこと!!」

 

激しくペダルを漕ぎ、トライサイカーは駆け出した。ブーストフラワーもすぐに続き、並ぶ。

 

『β・mode ACTIVE』

 

「食らえっ!」

 

「今度は強目にくるってことね!」

 

銃撃とツタの中距離攻撃の中、アリスはツバイブースターへとフォームチェンジ。ショットガンモードのツインツインガンで銃撃をぶつけていく。

 

「…っ!」

 

開けた道に、二台が止まる。バランスを崩しながら降りるプランゼに対し、エレンツはいささか余裕があるような様子で降りた。追いついた妖怪の面々が見守り、文がばしばし写真を撮る中、両者は直接対決を始める。

 

「ぜあっ!!」

 

真っ先に切り掛かったのはプランゼだ。光をまとった斬撃を避けきれず、エレンツはぶっ飛ばされてしまう。立ち上がりながらの銃撃もはたき落とされ、さらに近接格闘となればエレンツの不利は確実であった。

 

「うあっ!!」

 

「フフフ、結局ダメみたいね。このまま眠りなさいッ!」

 

そうして傘を振り下ろしプランゼ。だが、エレンツは避けない。むしろ全力で飛び込み、0距離銃撃を叩き込んだ。攻撃の手が止まるプランゼを前に、エレンツは金色のアイテムを取り出した。

 

「…!」

 

『アクア、ウィンド』

 

ベルトにその『フォースチェンジャー』を取り付け、増えたスロットへと残りのディスクをセットした。つまり今、エレメンツドライバーには4つのディスクが入っている。

 

「こっちだってね、ある程度隠し球持ってんのよ」

 

「貴女らしくもない。貴女は…そんなモノをすぐ使うタイプじゃないわ」

 

「保身に走って力のセーブはもうやめってこと」

 

『ready…go 4つのパワー!ムテキのパワー!フォースエレメンツ!!』

 

アリスの声で、ベルトが歌い上げる。プランゼが構え直すその前で、仮面ライダーエレンツはフォースエレメンツの姿を得る。白と金をメインに、赤青黄緑の四色を入れた姿が輝く。

 

「正直なんとか型って名前好きじゃないのよねぇ」

 

「フォースエレメンツ、って言うのね。みんな姿に名前をつけるものなのかしら」

 

軽い調子で言い飛びかかるプランゼへ、エレンツはハイキックを叩きつけた。先ほどとは大違いの攻撃力だ。よろめいたプランゼへ、更なる連続攻撃が入る。

 

「…このっ!」

 

傘を振り下ろすプランゼへ、エレンツはライフル『ツバイスナイパー』を向ける。放った風の弾丸が傘を弾き、さらに炎がダメージを与える。

 

「食らいなさい!!」

 

「誰が食らうものですか!!」

 

崩れる体勢を活かし、プランゼはそのまま流すようにパンチを放った。対しエレンツは水圧弾で弾き飛ばし、土弾で続けて吹っ飛ばす。ぶっ飛ばされた先で構えるプランゼに対して、エレンツはベルトを操作して迎える。

 

『フォースパニッシャー・レディ・フィニッシュ!!』

 

「おりゃああああああああ!!!」

 

「ぜああああああああああああ!!」

 

ツバイスナイパーを向けるエレンツを前に、プランゼは傘を拾い上げ、エネルギーをまとわせて投げつける。そして、その傘をねじ込むように、キック。向かってくる傘を、エレンツは虹色のビームで迎えた。

 

「…っ」

 

「うぅっ…」

 

閃光が散り、立ち上がる両者。夕陽の中、ライダー二人が照らされる。果たして、負けたのはプランゼであった。爆発を巻き起こし、倒れ込む幽香。対し、膝をついたエレンツは、静かにスーツが粒子化した。

 

「…ありがと」

 

リグルが渡したロングコートを羽織り、幽香は裸になってしまった体を隠す。それを見届け、大の字の姿勢でアリスは倒れ込んだ。メディスンが遠くから見つめ、何やら考え込む。

 

「…でも、あいつ疲弊してるわ。今ならベルト壊せるわ」

 

そういった、アリスへ向かって歩き出したのはルーミアだ。当然と言えば当然だ。彼女に、散々戦いを吹っ掛けられた身なのだから。しかし、そんな彼女を幽香が止める。

 

「アリスはね、全力を出して勝ったのよ。その価値を邪魔してはいけないわ。潔く負けましょう」

 

「…意外と戦士の思考なのねー」

 

すこしつまらなさそうに言うルーミア。彼女を見届けるアリスの目は、優しいものだった。エレンツの、本当に使いたい道を見つけたのだ。単なる義務感は、とりあえずお預けだ。

 

Continued on next episodes.




「貴女の言葉が正しいなら…曇りなんです、私の人生って」

それは雨の日のこと。愛を忘れた風の子の話。

次回、「少女が飛ぶ日本の原風景」

一定数見かける幽アリ。今回はCP要素は全くなかれど、その二人の戦いでしたね。アリスの曲を冠した話ではありますが、幽香のまわりのエピソードも起き、草の根妖怪ネットワークも多少変わったり…。そして何より秘封倶楽部の帰還です。早いですね。自分でも早すぎたなと思いました。別の回でやっても良かったかもしれない。ここのところ設定集も更新してないので、どうにかしようと思います。
この話ですが、アリスの本気を出さない設定を前提としたものでした。まあ有名な設定なのでご存知でしょうけどね。
次回はちょっと切ない話です。皆さん、家族は大事にしましょうね!
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