幻想仮面少女   作:さわたり

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外伝
桜刀外伝 離れた花弁を掴んで


「……退屈だわあ」

 

白玉楼の主、『西行寺 幽々子』はぽつりと呟いた。

館の中で寝そべり、憂鬱とした顔で黄昏ながら、退屈げに呟いた。

従者である妖夢は里へと買い出しに出掛け、弄くる相手もいない。

異変でも起こそうか、友人を呼んで早い時間だが酒盛りでもするか、そんなことを考えていて、気づいた。

 

()()()()()が舞っていることに。

 

「……まさか」

 

花びらの一つを掴みとり、一つの可能性にたどり着き青ざめる。

そして……そこで意識が途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「メリーさん!蓮子さん!それに早苗さんまで!」

 

同じ頃の命蓮寺、聖は目覚めない少女たちの方を揺さぶっていた。しかし誰も動く気配はせず、眠ったように倒れ伏していた。

 

「生命エネルギーが…ごっそり抜かれてる…」

 

冷たくなって眠る天子の胸に触れ、それを確かめた。そんな時、彼女の脳内に嫌な予感が浮かぶ。

 

「…西行兄さんが、言っていた」

 

恐怖に唾を飲み込むが、そうもしていられないと、彼女はエイディングドライバーを装備した。

 

「うう…くっ………」

 

しかし、突如彼女の意識も薄れゆく。身を引きずって、無理矢理にでも進もうとしたが、完全に意識が途絶えたことでそれは叶わなくなった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

魂魄妖夢は、背徳的な喜びを感じていた。

彼女は今、人里にある小さな甘味処にて、『アイスクリーム』を味わっていた。

甘く、ひんやりとした甘味。他の甘味処では売っておらず、ここでも個数が限定され、決して安くはない金額で売り出された贅沢な品。(外の世界から来た緑の巫女や最近来た外来人にとっては驚くほどの額らしい)

買い出しという口実を使い、こっそりと小遣いでアイスクリームを食べる。主である幽々子が聞いたら激怒するか自分も食べたいと言い出すか……いずれにせよ面倒となることは間違いない。

そんな考えを浮かべている間に、妖夢は小皿にのったアイスクリームを食べきってしまっていた。

無くなったアイスクリームの皿を物足りなげに見やったのち、代金を払おうと立ち上がって、気づいた。

 

店内にいる者で、今立っているのが自分だけであり、それ以外は人間、妖怪を問わず倒れている。

近くにいた一人の人間を揺すり、起こそうと試みる。しかし、少しの反応すら帰ってこず、また体に触ってみて、体が冷たくなっていることに気づいた。

助けを呼ぼうと外に出れば、同じように大通りに倒れる無数の人。

状況が全く掴めず、困惑する妖夢。

すると間もなく、目の前の空間が避け、一人の紫の導師服を着た女性が現れる。

 

「……ここにいたのね」

 

女性の名は『八雲紫』。主である幽々子の親友にして、この幻想郷の『管理人』である妖怪。

いつも人を煙に巻くような妖しい笑みを浮かべている、余裕の表情ではなく、険しい顔をしており、口調もどこか荒く、焦った様子である。

妖夢が何事かと尋ねようとする前に、紫が続けざまに話し出す。

 

「時間が無いわ。……貴方に、『西行寺幽々子』を殺してもらいたいの」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……今、なんと?」

 

「手短に話すわ。現在、……あの『西行妖』が満開になっているわ」

 

『西行妖』。その単語を聞いて、驚きの表情を浮かべ、信じられない、といった様子で紫を見やる。

春雪異変で幻想郷中の春を集めてすら、八分咲きが限度であったはずのあの桜が、満開に。

 

「……どうやって、春が集まったわけでもないのに」

 

「吸ったのよ。『当時』と同じように、人の精を養分として満開になったのよ。……春を集めるなんてまどろっこしいことなんてしなくとも、こちらの方がすぐ咲く」

 

「……幽々子様は」

 

「言わなきゃ分からない訳でもないでしょう?……西行妖は咲き、あの娘は『黄泉帰った』。……このまま放置していれば、封印の解けた西行妖は幻想郷中の精を吸い付くすでしょうね」

 

ありえない。信じられない。

そんな言葉が妖夢の脳内に浮かんでは消え、纏まらない。

 

「どう、すれば……」

 

「いえ、すぐなんとかなるわ。……貴方の協力さえあればね」

 

呆然としたまま口から出た言葉に、紫は事も無げに答える。

その言葉に歓喜し、表情を明るくする妖夢だったが

 

「オビドライバー……『桜刀』はこのために作られたもの。桜刀の鎧であれば、大妖怪ですら近づけない西行妖の根本へと近づける。そして……『白桜剣』で幽々子を斬って、『殺す』。そうすれば西行妖は確実に枯れる」

 

その提案は、主の命と引き換えであったが。

 

「他に方法があるとでも?……西行妖そのものを斬れれば、まだどうにかなるでしょうねぇ。でも、それが出来るかしら?……『半人前』。さ、近くまで『飛ばして』あげるから、さっさと変身しなさい」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーー寒い

歩みなれた白玉楼に続く階段を登り、ふとそう思った。

冥界は決して暖かみを感じられるような大層な場所ではないが、それにしても寒すぎる。

 

(春を奪ったとき以上だ)

 

春雪異変の際、自分は幻想郷中の春を奪っていった。その際、春を奪われた場所には、冬の寒さが戻っていた。その際は冬の妖怪や氷精がはしゃぎ回るほどには寒かったが、この寒さは冬妖怪でも閉口しそうなほどの寒さだ。(それでも喜びそうだが)

そして一方で、空気が澄んでいる。……まるで『何もかもが死んで、なにもなくなった』かのように。

実際そうなのだろう。自分は今纏っている、『桜刀』の黒い甲冑を模した装甲で守られているが、それ以外のありとあらゆるものは、西行妖に精気を、吸われて『死んでいる』。

よくこれほどの鎧を造れたものだ、と先人への関心を抱いていると、階段の頂上が見え、見慣れた白玉楼が目に写る。

門をくぐり、そのまま庭へと向かい、そして圧倒された。

 

(……これが、満開の……西行妖……?)

 

西行妖の美しさに、圧倒された。

生命を吸い、咲き乱れる花。……罪深いまでに美しい、その偉容。

その美しさに呑まれながらも、歩を進める。

しかし

 

「ぐっ……!?」

 

全身から力が抜け、思わず膝を付く。

……防護がある筈の桜刀の装甲すら、この距離では無力であった。

守りを通り抜け、妖夢の精力を奪い取る。

 

「……なん、の……これ、しきで……っ!」

 

それでも、再び立ち上がり、一歩、二歩と歩みを進める。

しかし、近づくにつれ、脱力感は増していく。

ついには、倒れ伏し動くことさえ出来なくなる。

 

(……ゆ、ゆこ……さま)

 

薄れゆく意識の中で、今までの事が、浮かんでは消えていく。

そして

意識が途切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

動くものがなくなった、白玉楼の庭。

意識を失った桜刀の体へ、無数の桜の花びらが覆い被さる。

無数の花びらは、桜刀の体をすっぽりと覆い隠し、埋めてしまうほどとなった。

そして

 

花びらがほんのりと光り、薄れていく。

そして、桜刀の鎧へ張り付き、その姿を変えていく。

姿が完全に変わると同時に、意識を失った筈の桜刀が、立ち上がる。

 

「……これは、一体?」

 

桜刀が不思議そうに、自らの体を見やる。

先程の甲冑を纏った武者のような姿から一転、振り袖のような軽鎧を纏った軽装の姿となり、まるで歌人、貴族のような優雅といった言葉が似合う姿となっていた。

姿の変化に戸惑いを見せる桜刀だったが、ふと、先程までの精気を奪われる感覚がなくなったことに気づく。

 

「……これならば、いける」

 

倒れたときに取り落とした白桜剣を拾い上げ、構える。

先ほど圧倒された西行妖を、今度は面と見据える。

そして……一閃。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……まさか、あの半人前がやってのけるとは、ね」

 

「ふふふ、妖夢ももう子供じゃないってことよ」

 

数日後。

白玉楼の縁側には、西行妖の切り株とそばに無造作に転がるその片割れを眺める、紫と幽々子がいた。

妖刀は西行妖を見事両断。吸われた幻想郷中の精気は元に戻り、事は万事解決と相成った。

 

「紫、私の事見捨てようとしたの?幽々子、悲しい~」

 

「……私が悪うございました。でもね、手段がそれしかなかったのよ」

 

幽々子はふざけた調子で泣き真似をし、それを見た紫が仏頂面で答えるのを見てクスクスと笑う。

 

「……にしても、誰かしらね、こんな真似してくれたのは。……今度、お礼参りに行かなきゃね」

 

「はいはい、また今度ね。それより、妖夢にかまかけて聞き出した『アイスクリーム』を出す甘味処に行きたいんだけど……支払いは、誰が持ってくれるかしらね?」

 

「……はいはい」

 

紫が渋々、といった様子でスキマを開き、意気揚々と幽々子がその中へと入っていく。

二人が去った後、一つの花びらが机の上に舞い落ちる。

 

「幽々子様、紫様、今買い出しから戻りまし……あれ?いない?」

 

ちょうど入れ違うようにして、妖夢が部屋へやってくる。

両腕いっぱいに持った買い物袋を下ろし、机の上の花びらを拾い上げ、ぼんやりと見つめた。

 

「……今度の春、幽々子様達つれて、お花見行きたいな」

 

誰に言うでもなく呟いたその言葉は、宙へと消えていった。




フォーム名:サクラノカタ
概要:桜刀の全身に西行妖の花びらが覆い被さり、鎧が変質した姿。
振り袖のようなスーツのみで、装甲が薄いように見える姿をしており、正直戦闘力は低く見えそうである。
しかし、反魂蝶の力……『死人を甦らせる力』を持つ鎧であり、無限に復活・再生ができるインチキじみたフォーム。
実は最終フォームよりも身体能力が高く、またヒトノカタ及びレイノカタの能力を使用可能。その上対霊装備でなければまともにダメージすら与えられない、その上不死と妖刀最強フォームだったりする。
残念ながら西行妖は両断され、花を付けることが難しくなったため再登場は難しい。

武装:楼観剣と白楼剣を両方使用可能

変身アイテム&変身シークエンス:偶然&奇跡の産物の為に再現は不可能

必殺技
『西行春風斬』
西行妖の力を刀に乗せ、相手を居合い切りで一刀両断する。西行妖をぶったぎったのもこの技




…というわけで、バインさん作の外伝でした!こういう奇跡のフォームってのはやっぱり素敵ですね。簡潔で分かりやすくて、凄く素敵だと思います。今週は私の更新がないのですが、これを楽しんでいただけたので問題はないかと思います。
ちなみに、現在ガイア、U、フェネクス、ジェヴォーダン、リブレッスの外伝が決まってます。
…それ以外のライダーで、俺が書くぜという方いたら言ってくださいね!
ちなみにタイトルは幽閉サテライトの『壊れた運命を紡いで』より。花弁はハナビラって呼んでね。
外伝は本編中に出したり後に出したりと、私の気分によって変わるのでその辺は気長にお待ちください。
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