2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~ 作:イリーム
宜しければご覧ください。
明瀬 信也(アキセ シンヤ)は目を覚ます……その場所は、小川の流れる森の中であった。
信也は考えた。なぜ自分はこんな深い森に倒れているのか? 自分は高校3年生……大学受験の為に、本日も勉強をしていたはずだ。
夢のような出来事があったことは覚えている。彼はゲートの番人と名乗る者と会っていた。記憶は曖昧になりつつあるが、彼は確かにそのような人物を覚えていたのだ。
「君はこちらの世界でとても能力を発揮できそうだね。うん、才能的にも十分だ……私はなにも力は授けられないけど、頑張ってね。
君の能力は「言霊の力」。その名の通り、言葉がそのまま攻撃能力にも繋がるからね? 詳しい説明はできないけど、色々と試してみて」
顔もはっきりしない人物が最後に話していた言葉を信也は思い出していた。その人物は自分が不慮の事故でゲートの所に送られて来たとも言っていた……。つまり、自分は死んでしまったのか? では、あの場所は天国だったのだろうか?
「あのよくわからん人物の言葉……言霊の力って……命令できるのか? 俺の言葉で?」
信也は考えを巡らせるが、やはり納得のいく答えは出せないでいた。それよりも、信也は現状の把握を優先した方がよいと考えた。
それなりの深さを有する森林。まだ日は上っているとはいえ、夜までこの場所に待機しているのは危険だ。信也は近くの小川の水を何杯か口に取り、そのまま口を拭いながら場所を移動することにした。
「なんか、野盗に俺が襲われるとか、そんな事態になりそうな予感……」
信也は日本でのフィクション作品を思い出しながら考えていた。急に飛ばされてきた自分、そして辺りは深い森。野盗や獣に襲われるには最適な環境と言えるだろう。
そして、その事態はすぐにやってきた。
「ん!? 野盗か、獣か!? 予期してたとはいえ、やっぱ少し怖いぞ!」
「へへへへ、男かよ? 女なら楽しみが増えたのによっ」
木陰から出てきたのは数名の男達。粗末な装束に身を包んだ4人とリーダー格と思われる男が1人。
「や、野盗だよな?」
信也は予期していたとはいえ、かなり腰が引けていた。よくわからない地でいきなり襲われているのだから、当然ではあるが。
「見りゃわかんだろうが。男に用はねぇよ、さっさと金だけ置いて消えな」
「残念ながら、金はないんだよな……」
「なら、顔も見られたことだし死んでもらうか」
リーダー格の男の合図で、他の4人は信也に向けて迫って来た。手にはナイフを持っている。これは不味い……いきなりの命の危機だ。逃げられないだろう……信也は心を決めた。
「跪けっ!」
「言霊の力」……信也は良くわかっていないその能力に頼るしかないと考えた。
4人に命令するように言葉を発する。その直後……まるで、見えない何者かに押さえつけられてるように男たち4人は全員、その場に倒れ込んだのだ。
「があっ! な、なんだ……!?」
「う、動けねぇ……!」
男達4人は自分達に襲った事態が呑みこめずにパニック状態となっていた。
「……? お前、何をしやがった!?」
リーダー格の男も信也の能力を警戒したのか、すぐに真顔になった。明らかに他の連中とは身のこなしが違う。手には長剣を構えており、信也は丸腰だ。
「教えるわけねぇだろ、バカ野郎が。自分の情報が漏れるのは死に直結するからな」
どこかで聞いたことがある言葉。信也は髪を掻きあげて言った。通常であれば引かれることは間違いないが、この世界では違ったようだ。
「てめぇ……戦い慣れてやがるな? こりゃ、本気で殺してやるよ」
信也なりのはったりが相手に通用したのだ。
野盗のリーダー格の男は本気になる……剣技に精通しているのか、長剣を上段に構える。
その動きには一切の無駄がなかった。そして、信也の反応を待たずして、一気に間合いを詰めた。その長剣の一撃は信也の脳天目掛けて振り下ろされる。
「音弾っ!」
「ごはっ!!」
意外なほどに信也の言葉は冷静であった。長剣を構える動作から攻撃までの素早い動き……通常であれば、見えるはずのない動きすらも彼には見えていた為だ。そして、信也の発した言葉は音速の弾道となり男に直撃……そのまま、背後の木まで吹っ飛ばした。
「ば、バカな……! この俺が……! なんだ、今の攻撃は……」
「音速……だよな? すげぇ……」
信也自身も自らの「言霊の力」に相当な驚きを感じていた。さらに、「音弾」と発した時の攻撃は物理攻撃に近い。命令だけでなく、単純な攻撃でも攻めることが可能なわけだ。
「跪け」
「ぬうううう……!」
「……さっきの連中よりも効きが悪いな。強さによって決まるのかな? まあ、その辺はまた今度でいいか。音弾!」
野盗を通じて、自らの「言霊の力」の検証実験を行った形になった信也。その後は音速の弾を連続で射出し、リーダー格の男を始め、全員を気絶させた。
「破壊力はそこまで高くはないか……まあ、十分だけどな。距離的には中距離くらいかな?」
野盗が全員倒れているのを確認し、信也は一息ついた。初めての戦闘……内心での恐怖は相当にあったが、なんとか勝利を掴んだのだ。
「ひゃあ、凄いです! なんて技ですか? さっきの」
「え?」
そんな信也の技を近くで見ていた者が居た。いきなり聞こえた少女の声……信也もすぐにそちらの方向に目を向ける。
そこには、信也よりも歳下と思われる少女の姿があった。黒いとんがり帽子を被っており、髪型の全ては把握できないが、長さは比較的短い。明るい茶色の髪をしており、左右で長さの違う髪型となっているようだ。
「私が依頼受けて、倒しに向かってたんですけど~先を越されちゃいましたねっ」
少女は愛くるしい笑顔で口を開く。信也としては、彼女が言った意味は理解できないでいたが、とりあえず敵という雰囲気はなかった。この野盗を倒しに来たというのは本当なのだろう。
「………」
信也は無言で少女の外見を凝視していた。黒い半袖のドレスのようなローブを着ている彼女……下半身はロングスカートだが、左側には太ももまでの大きなスリットがあり、白い肌は大胆に露出している。被っている帽子と併せて魔導師……魔女と言った方がしっくりくるかもしれない。
顔もあどけない表情が愛くるしく、端整なものであった。
「どうかしました?」
「いや、それより君はこいつらを討伐に来たのか? 依頼とか言ってたが」
「はい。私、王国ランカーでして……その依頼が今倒れている連中の討伐なんです」
王国ランカー……信也は意味のわからない単語に首を傾げた。信也は知らないことを話していいものか悩んだ。少女の口振りから、おそらく相当に有名な単語だろうと推測したからだ。
変に警戒されることを懸念したが、考えても意味のわからないものがわかったりはしない。彼は腹をくくることにした。
「王国ランカーってなんだ?」
「え? バルトシアン王国の人じゃないんですか?」
少女は野盗たちを、縄で縛り上げながら信也に言った。特に警戒している様子はない。
「ああ、旅人……ってわけでもないけど、この辺りの情勢には疎いんだよ」
「そうなんですか……。でも、野盗の討伐はあなたの功績ですし、王国から報酬が出ますよ。よかったら、王都アークレイまで案内しますよ」
信也としてはいい方向に流れたと考えた。特に狙っていたわけでもないが、彼女はどうやら依頼の報酬を渡してくれるようだ。このことからも、目の前の少女が任務に忠実なのだということが伺える。王都アークレイとやらまで行けば人も居るはず、そこまでの道案内をしてもらえるなんて運がいい。
「ああ、じゃあお願いしてもいいかな?」
「はいは~い、任されました! えっと、私はファリス・オルドーフって言います」
「俺は明瀬信也だ。よろしくな」
元気よくファリスは信也に自己紹介をする。本当に愛くるしい笑顔だ。スリットから覗く太ももと併せて、非常に見栄えがいい光景であった。
そして、胸も大きくスタイルが相当に良いことが伺える。特に、下半身のスタイルの良さは思わず信也も息を呑むほどであった。
「明瀬信也さん……ですか?」
「信也が名前だな。少し、妙な名前なのはスルーしてくれ。18歳だ」
「年上なんですね。私は16歳です」
16歳でこのスタイル……2つ歳下。信也の中でいけない感情が甦る。こういうシチュエーションは日本でも憧れたことがある。信也はセンター分けの黒髪で2枚目と言えなくもない外見だが、アニメなどに趣味が偏っていた為、変人扱いを受けていたのだ。
「できれば、先輩と呼んでくれないか?」
「先輩、ですか? まあ、いいですけど。じゃあ、信也先輩って呼びますね!」
「良い響きだ……! 俺はファリスと呼んでいいか?」
「はい、よろしくお願いしますね!」
ファリスは元気よく頷いた。いきなり後輩の美少女と知り合えて、信也としても上機嫌であった。
その後、彼らは野盗たちを全て拘束してから、王都アークレイに向かうべく歩き出した。