2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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11話 依頼 その2

「おまえは……集会場に居たよな?」

「そや、シルビア・アーレスや。よろしゅうな」

 

 白い髪の女性は、親しげな笑みを浮かべて信也に握手を求める。赤い瞳をした彼女、近くで見ると相当な美人であることが伺えた。丈が少し短いジーンズの材質のようなズボンに、半袖のセーターを身に着けている。

 

 身に着けている服はファリスほど大胆ではないが、彼女の長い銀色にも見える髪と美しい表情を伝えるには、服装に頼る必要はなかった。

 

「明瀬信也だ。よろしくな、信也がちなみに名前だからな」

「じゃあ、信也て呼ばせてもらうわ。何歳?」

「18」

「おないやん。仲良くしよな」

 

 シルビアはどこまでも笑顔で、信也と深い握手を交わした。信也としても悪い気分ではなく、彼女には笑顔を向けている。

 

「そっちの子は見たことあるで? 確か、ファリス……やろ?」

「はい、シルビアさん。王国ランキング7位、ファリス・オルドーフです」

 

 ファリスはシルビアのことを知っているのか、自らの魔導石を見せ、順位を彼女に伝えた。

 

「へえ、いきなり順位言うなんて余裕やな。なら、ウチも言わないとあかんやん」

「お前も、やっぱり20位以内のランカーなのか」

「もちろんや。ウチはまだ新参者やけど……順位は6位やで」

 

 そう言いながら、彼女も自らの魔導石を二人に見せる。そこには紛れもなく「6」という数字が書かれていた。1位を除き、自らのランキングは隠すのが普通と聞かされていた信也だったが、いきなりシルビアの順位も判明したわけだ。

 

 魔導石を偽装することは不可能とされており、他人の物を持つこともできない。そこに書かれてある数字は紛れもなくシルビアのランクを示している。

 

「6位!? ま、負けました……」

「しかし、あんたも順位は隠さないんだな。ファリスもそうだったが」

 

 信也の疑問にシルビアは訝しげな表情をする。彼の質問の意図がわからないといった感じだ。

 

「なんでや? 最近は決闘も起こらへん世の中になってるやん。ランキングの決定は闘技大会か、依頼の達成で決まることが多いのに。あんまり、ランク隠す意味ないし」

 

 信也はシルビアの言葉に納得した。確かに、決闘での勝負は以前の世の中だと聞いている。最近は、模擬刀を使った闘技大会での勝利でもランクは奪えるのだから、殺し合いをする意味合いは薄い。

 

 今の世の中で、自分のランキングが漏れることを恐れる必要はあまりないように信也も感じていた。

 

「まあ、昔の名残りですよきっと。それとも、アンジェリカさんに決闘を申し込もうと力を隠している人が居るのか」

「自分の強さを隠してるっていうのが、最大の理由やろな。まあ、自分の強さは漏らさん方がいいのは事実やけど、陰気なランキングやでホンマ」

 

 関西弁のような言葉遣いのシルビアは、自分の性格には合わないと考えているのか、深いため息をついた。

 

「そういえば、あんたも大変やったな。会議室の入り口の所でテオともめてたやろ?」

 

 シルビアの口から出てきた名前。あまり、好きな人物の名前ではない。女性を物のように扱う卑劣な男……仲裁に入ったネプトとは180度違う男と言えるだろう。

 

「テオ・マークレスさんですね。23歳だったと思いますけど、あんまり好きになれないです」

「ただ、あいつも強いだろ?」

 

 信也は胸倉を掴まれた時のことを思い出していた。「離せ」という言霊の力が通用しなかった。さすがは腐っても、20位以内に属しているランカーといったところか。

 

 

「テオの奴は、卑怯者の代名詞みたいやからな。ベアトラップに毒ガス、まきびしに仕込みナイフと使える騙し武器は全て持ってると言われてるで」

「それが、あの男の技か」

「まあ、そういうことやな。正攻法とは真逆、あそこまで真逆の人間はそうは居らんやろ。だからこそ、対策もし辛いんやろな」

 

 ベアトラップなどの罠を幾つも持っているのなら、猛獣相手には相当な強さを発揮する。

 

 ならば、それらを掻い潜ることができれば勝機は見えるということだ。信也としては、むしろ仲裁に入ってくれたネプトの方が気になっていた。

 

「ネプトはどうなんだろうな? あの落ち着き……ただ者ではないと思うが」

「あの人は、そうですね~~。多分、上位陣……2~4位のどれかに属してると思いますよ」

「5位はドロシーだものな」

「はい、そうですね。シルビアさんが6位で私が7位も確定しましたし」

 

 信也はドロシーのことを再び思い出す。非常に美人だが、目つきは相当に悪く、他を寄せ付けない圧倒的な雰囲気を持っていた。アンジェリカも似たような雰囲気はあるが、彼女の場合は孤高な雰囲気が強い。ドロシーは怖い雰囲気から近づき難いと言える。

 

「彼女は5位……道理で美人なわけだ」

「いや、美人関係ないですし。……ていうか、しっかり見てますよね、先輩」

「あ~あの女剣士5位なんや。剣6本も持ってるから、どういうスタイルなんかと興味あったけど。まあそれはさておき、ネプトは相当強いやろな」

 

 信也だけでなく、ファリスとシルビアもネプトの強さは分かっている様子だ。

 

「ところで、こうして知り合ったのも何かの縁やし、ウチも依頼手伝ってええか? 魔族の関連のやつやろ?」

「マジか? ファリスはどうだ?」

「6位さんですからね。今回の依頼は面倒かもしれませんし。分配金が下がっても手伝ってもらった方がいいかもですよ」

 

 なんとなくファリスに目線を合わせる信也。彼女もとくに気にしている素振りはなく、むしろ協力してもらえることを喜んでいた。シルビアは背中に弓を装備しており、矢筒も腰に付けていた。遠距離タイプの弓使いといったところだろう。

 

「なら、依頼を手伝ってくれるか?

「ええの!? あんたら、直感でええ奴やと感じてん。ウチはエルフやけど、仲良くしてな」

 

 信也もファリスも気付いてはいたが、今まで敢えて質問はしなかった。シルビアの耳は尖っている。エルフという種族であり、年齢こそ信也と同じではあるが、寿命は数倍の差があるのだ。当然、老いのスピードも段違いである。

 

「北のオルタナ山脈の麓にエルフの里があるんやけど……そこの出身やねん」

「エルフの里ですか? 確かにあった気がします」

 

 エルフ……信也は直感的に感じていた。人間との仲はどうなのだろうと。

 

「エルフって、あんまり王都では見ない感じだが……人間との仲は大丈夫なのか?」

「あれ、信也先輩知らないんですか? エルフと人間は和睦してるじゃないですか」

「あ、そうだったな……」

 

 信也はさすがに不味いと感じ、ファリスに話を合わせた。遠い場所から来たことにしているが、エルフとの和睦を知らないのは世間知らず過ぎると思われると感じたのだ。

 

「と言っても、エルフの考えもまちまちやけどな。ウチはそんなつまらんことにこだわる気はないから、気にせんといてや」

 

 シルビアは種族の違いにこだわるような人物ではないようだ。信也としてもそれは嬉しい。気を遣うのは、どちらかというと苦手だからである。

 

「ところで、シルビアは弓使いか?」

 

 信也はシルビアが背中に掛けている弓に目をやった。彼女も笑顔で頷く。

 

 

「そうやで、ファリスと同じく遠距離攻撃や。あんたの武器は槍……薙刀やな」

「一応、接近戦主体ってことかね」

「そうなんや。心配せんでもしっかり遠距離からサポートしたるって!」

 

 そう言いながら、シルビアは陽気に自分の弓を掲げて矢を射るポーズをしてみせた。 かなり様になっている。腰の辺りには何本もの矢が入った筒が掛けられており、戦闘の際にはそこから矢を取り出すのだろう。

 

「それなら善は急げ言うしな、早速行こか。先に入り口の門に行ってるわ」

「そうですね、私達もちょっと準備してから合流しますね」

「じゃあ、王都の入り口……どこの門がいいんや? 西か?」

「依頼場所がノイモントさんの屋敷ですから。西がいいですね」

 

 ファリスの言葉を聞いたシルビアは、軽く手を振って走り去って行った。

 

「とりあえずランキング1位への足掛かりとしての依頼だけど……。協力者が来てくれたのはちょうどいいな」

「シルビアさんが美人だから協力をOKしたんじゃないんですか~~?」

 

 冗談っぽく、頬を膨らませているファリス。信也としても、彼女の言葉を否定する気はない。そういった感情も確かにあったからだ。

 

 なによりも、ファリスと二人旅では相当に恥ずかしさがあったのは事実だ。シルビアの協力はそういった点を解消してくれることでも非常に助かった。

 

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