2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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12話 依頼 その3

「なんか来たぞ? 亜人種か?」

 

 信也、ファリス、シルビアの3人はノイモントの依頼を引き受ける為、アルファ大森林へと入っていた。その中で亜人種のような獣に襲われている。

 

「タイニーヘヴンやな。ゴブリン族の一種やけど。この季節は良く出てくるわ」

「なんか害虫みたいだな」

「そんな感じですかね。攻撃力が高いので、速攻で仕留めた方がいいと思いますよ」

 

 ファリスからの助言を受けて、信也は前に乗り出す。まだ全容が掴めていない言霊の能力を活用すべく、近づいてくるタイニーヘブンに視線を送る。目は鋭く何も身に着けていない人間型の生物だ。大きさは120センチくらいだが、日本に現れれば確実に変態扱いされるだろう。それ以前に、全身が深い緑の身体なので怖がられるだろうが。

 

「地に伏せ!」

 

 信也は言霊の力を発生させる。命令の範囲は自らの視界に映る者達……ファリス達など、個別に除外ができることも把握はしていたが、かなりの広範囲だ。

 

「ギャ!?」

 

 プライマルビーストよりも威圧感は感じない猛獣。数十体の個体の半数は彼の視界で捉えていたので、その場に倒れ伏した。その効果時間は不明だが、数分以上は続く。もはや倒れ伏したタイニーヘヴンの命運は尽きたも同然だ。

 

「ナイスやで信也! 残りの連中は任せ!」

 

 シルビアは信也の背後からそう言うと、言霊の力の影響下にはないタイニーヘヴン達を矢で貫き始めた。指に複数本の矢を構えて、器用かつ高速に撃ち出していく。

 

 見当違いの方向に飛ばした矢も幾つかあったが、それは信也に命中しないようにする配慮であった。魔力の力で方向を修正し、円を描いた矢は次々と猛獣の急所を抉っていく。

 

「は~、やっぱり6位さんなだけありますね~。すんごい命中精度です」

 

 シルビアの攻撃に見惚れた印象のファリス。彼女も向かって来るタイニーヘヴンを氷漬けにしており、次々と絶命させていた。もはや、戦意喪失して逃げ惑うタイニーヘヴンすら全て殺してしまいそうな勢いだ。

 

「ファリスの攻撃は残酷ってのがわかったぞ」

 

 倒れ伏したタイニーヘヴンを全て薙刀で殺しながら、信也はそんな発言をした。もちろん、ファリスとしても納得のいく発言ではない。

 

「信也先輩に言われたくないです~! 相手を動けなくしてから首を切り落とすとか、悪趣味極まりないですよ!」

「いや、氷漬けにして、粉々に身体を砕くのも十分に悪趣味だからな?」

 

 

 二人は猛獣の殺し方について議論が白熱していた。そんな様子をシルビアは微笑ましく見ている。

 

「仲ええんや、あんたら。昨日出会ったばかりなんやろ?」

「え、そうですけど……仲……いいですかね?」

「ええやん、どう見ても」

 

 シルビアは少しからかっているようにも見える。ファリスも満更でもない様子ではあるが、それよりも恥ずかしさが勝っている感じだ。信也も不思議な感情に囚われている。

 

 日本では決してモテなかった自分……アニメオタクが災いして変人扱いすら受けていた。

 

 それが、今はファリスと会話をしても普通……自らの態度とこの世界の常識とが一致しているからこそと言える。

 

 何十体と居たタイニーヘヴンの群れはすべて殺した。それを再確認したシルビアは、信也達にここで泊まることを申し出た。

 

「今日はここで泊まろか。あんまり急いでも意味ないやろ?」

「森の中でか?」

「まあ、まだ道のりは長いですし。明日中にはなんとか着きたいですしね」

 

 まだ夜になっているというわけではないが、急いでも仕方ないと判断した3人はタイニーヘヴンの亡骸の端っこで焚き火を起こすことにした。

 

 

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「シルビアの矢って現物なんだな」

 

 その夜、食事は缶詰だったが、それらを食べ終えたあと、弓の手入れをしているシルビアに信也は話しかけた。

 

「そやけど……どういう意味や?」

「いや、魔力で作り出さないのかと思ってな」

 

 

 信也はアンジェリカの戦いを想像しながら話していた。戦闘に於いて弓を使う場合、矢の数が有限なのはハンデになると考えたからだ。

 

「アンジェリカのあの技は凄いな、確かに。でも、あんな風に自由自在に自らの武器を作り出せる奴なんて、あの子くらいやで?」

「そうなのか? となると、武器の具現化は相当に難易度が高いんだな」

「それもあるけど。私の魔力やと大した数は具現化できへんな。それに強度を保つのも大変やし。現物の矢を強化するのが、最も効率的やと判断したんや」

 

 なるほど、とシルビアの言葉に信也は感心した。その判断が、矢の方向転換や確実に急所を射抜ける貫通力に繋がっているのだろう。

 

「弾数制限はある。やから、街での補給は重要やな」

「まあ、アンジェリカも無限に撃てるわけではなさそうだけどな。ファリスの魔法も」

「無限はないにしても、やっぱり現物の矢を持ち歩かないとあかんのは、戦いでは不利やな」

 

 矢筒はどうしてもかさばってしまう。魔力から具現化ができる、若しくは魔法を武器としている方が旅などでも有利に働くのは納得のことだ。信也の薙刀もかさばる武器に分類されるだろう。弾数制限が明確にあるわけではないが、音弾の攻撃も無限に撃てるわけではない。

 

「ところで、依頼の屋敷の護衛やけどな」

「ああ……」

 

 シルビアは急に話を依頼内容へと変化させた。焚き火の近くで早めに眠っているファリスを見ながら、シルビアは話し出す。

 

「エルディアン王国は魔族に侵略されてるって噂もあるからな。ノイモントさんのパーティも気を付けた方がええで」

「元々、魔族がらみの依頼だしな。魔族って奴はそれだけヤバいんだな」

 

 信也は魔族のことなど全く知らない。この世界での魔族の位置も把握していない為、シルビアにバレないように説明を願った形だ。

 

「魔族……あんたも知ってるやろうけど、寿命はエルフを越える1000年以上……身体は蒼い色でその身体能力は人間達の比やない」

 

 信也は適当に頷いて話を合わせている。シルビアはさらに続けた。

 

「実際に魔族を見た人はあんま居らんやろうけどな。私も見たことないし。そういう意味では希少種やで」

「西の砦は魔族侵攻の為の防波堤みたいになってるんだろ?」

「そやな、バルトシアン王国の王都が占拠されたら、それこそ人間の希望は潰えるからな。確か、ラングート・シュタインの直属兵の「鉄騎隊」が守護してるんやろ」

 

 鉄騎隊……また、信也には分からない部隊名だ。名称から察するに一般の兵隊の中の精鋭部隊といったところか。

 

「鉄騎隊……精鋭部隊ってところか」

「ま、そんな感じ。ノイモントさんの屋敷に向かう前に砦は通過することになるし、見れるんちゃう?」

 

 魔族対策の砦……国境線ではないのだろうが、やはりそこを無視して王都アークレイには行けない地形になっているということか。信也は地球に実際に存在する万里の長城を思い出していた。

 この世界には魔法の能力がある。無断で砦を越えた者の補足は容易に可能なのだろう。

 

「鉄騎隊か……ちょっと見てみたいな」

 

 信也は魔族の進軍に万全に備えているその砦の拝見を楽しみにしていた。ランキング1位を目指すと決意した後からか、自分の心の中に好戦的な感情が芽生えている。彼は不敵な笑みを浮かべながら、明日が来ることを楽しみにしていた。

 

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