2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

13 / 45
13話 依頼 その4

13話 依頼 その4

 

 

「それでは、お通りください」

 

 翌日、信也達は夕方頃には魔族対策用の砦へと到着した。大森林を抜けてからは丘や平原を歩いて行ったのだが、道中の猛獣の数が思ったよりも多かった為だ。

 

 荘厳な雰囲気の砦は大森林を抜けて、さらに西50キロメートル地点に設けられていた。魔導石を通行証の代わりにして中へと入る許可を貰った3人。

 

「屋敷に行くだけでも疲れるな……」

「そうですね~、あと100キロはありますし……今日中の到着は厳しいですね」

 

 ファリスは今夜は砦に泊まる気のようだ。先へ進む気力が彼女にはなかった。それは信也とシルビアも同じだ。

 

「今日はオークやホワイトタイガーにも襲われたからな。この辺でええやろ」

 

 オークにホワイトタイガーの群れと戦った信也たち。退けること自体は無傷で行えたが、6位と7位の上位陣を疲れさせる程の数が居たのだ。シルビアの矢の本数も底をついていた。

 

「まあ、幸いなことに、この砦は巨大やし、矢の追加や宿泊も可能になってるしな」

「そうなのか? ただの砦じゃないんだな」

 

 辺りを見渡す信也。甲冑に身を包んだ兵士が所々に配置されており、通信機のようなものを手にしていた。連絡を取り合っているのだろうか。

 

「最新鋭の通信機で兵士のみなさんが常に西側の猛獣を警戒しているみたいです」

「アルフォンスの森からの進軍……これが最も危険らしいからな~ほら、鉄騎隊の人らやで」

「ん?」

 

 シルビアが指差す方向……そこから歩いて来るのは数名の鎧を着た者達。しかし、一般の兵士の鎧とは一線を画しており、豪華さはより跳ね上がっている。胸の所には大鷲を思わせるマークが付いていた。

 

「ごくろうさまです~~!」

「これはファリス殿、ごくろうさまです。お仕事ですか?」

「はい、シェルブールの街まで。依頼ですけど」

 

 ファリスはここでも有名なのか、鉄騎隊の面々は彼女の前で脚を止めた。シェルブールと聞いて表情は少し曇る。

 

「気を付けてくださいね。最近は少し不穏な空気もありますので」

 

 鉄騎隊の面々は仮面は付けておらず、各々が真剣な表情になっている。

 

「わかってます。私だけじゃなくて、信也先輩とシルビアさんも居られますので!」

「なるほど……ですが、警戒するに越したことはありません。お気を付けて」

 

 鉄騎隊の人物はそこまで言うと、ファリスに一礼をして去って行く。信也は鉄騎隊の面々を背後から観察していた。去って行く5名がそれぞれ相当な実力者だ。ランキングに参戦したとしても20位以内に入れるのではないかと思われるくらいの。

 

「信也先輩、ヤキモチとか妬いてます?」

「……んん?」

「ほら、私って鉄騎隊の人にも人気あるみたいですし」

 

 ……あれは人気があると言うのだろうか? 信也としては、ファリスの礼儀正しく人懐っこい態度から、好意的に見られているのだと感じた。

 

「まあ、お前美人だしな。性格も明るいし、人気出るのは分かるぞ」

「そういうこと言ってるんじゃないですけど……まあ、先輩は私の太ももばかり見てますもんね」

「うぐ……気づいてたのかよ……」

「当たり前です。意外とわかりますよ~?」

 

 信也はファリスの太ももを見ていたことに、彼女が気付いていたと知らされ、急に恥ずかしくなった。しかし、ファリスも怒っている気配はないので、少し安心する。

 

「仲ええやん。うんうん、ええことやで」

「ま、それはいいんだけど。俺が見ていたのは鉄騎隊の強さだよ」

「仲いいの否定しないなんて、先輩スケベですよね。鉄騎隊の人達はランキングには入ってませんけど、かなり上位にいける人も居ますよ」

 

 信也とファリスはお互いに軽く肘で小突きあいながら、話題を鉄騎隊へと変化させた。

 

 

「兵士たちの精鋭300人で構成されてるからやな。単騎で戦った場合、ウチらでも簡単には倒されへんで」

 

 ランキング6位のシルビアの判断だ。そのシルビアですら、それなりに苦戦する可能性を秘めている。そんな連中が300人も居るのだ。まさに、魔族の防波堤の役割を担っていると言えるだろう。

 

「あの人たちを束ねるのが、ラングート様ですよ。ラングート様は現在はランキングには参戦してませんけど、実質的な実力は王国2位を維持してるらしいです」

「でも、ラングートって現在の2位には負ける言うてたからな。実質は3位かもしれへん」

「へ~~、誰なんですかね、今の2位って」

 

 ファリスやシルビア、信也も2位の存在に興味が出てくる。元王国最強戦士を抜いている者が、アンジェリカ以外にも居るということなのだから。

 

 あの会議室にいたメンバーなのか、まだ出会っていないランカーなのか。信也も気にはなったが、急いで知る気にもならなかった。どの道、いずれは知ることになるのだから焦ることはない。

 

 そして、その後、シルビアは新しい矢の調達を済ませ、3人はその日は砦に泊まることにした。

 

 

--------------------------------------

 

 

「お待ち申し上げておりました」

 

 シェルブールへと到着したのはそれから2日後のことだ。日も完全に落ちた頃に信也達はノイモントの屋敷の入り口をノックした。

 

 出迎えたのはメガネをかけた黒髪の女性。知的な印象の受ける人物であった。年齢は20代と思われるが、相当に貫録が付いている印象がある。

 

「わたくしはマイエラと申します。伯爵さまの身の回りのお世話をするメイド達の責任者を務めております」

「メイド……身の回りのお世話か」

「信也先輩、なに変なこと想像してるんですか?」

「信也はメイドが好きなん?」

 

 むくれているファリスと冷静なシルビア。二人の女性の態度は180度違っていた。しかし、信也だけに限らず、このシチュエーションは期待せざるを得ないと言えるだろう。なぜならば……。

 

「護衛の任務と言うのは……メイドさんの護衛?」

「その通りでございます。エルディアン王国の伯爵さまとの懇親会は数日後に開催されます。他に子爵様なども来られる予定ですので。メイドへのセクハラ行為を未然に防いでくださいまし」

「任せてください」

 

 信也は開口一番に大きく頷いた。マイエラ自身は比較的長いスカートを穿いているが、後ろに並ぶメイド達は膝上20センチはありそうなミニスカートのメイド服だ。しかも全員美人揃いな上、20歳前後の女の子ばかりときている。ノイモント伯爵の趣味が出ているのではないかと思えるメンバーだ。

 

 信也は特に彼女らに何かをしようとは考えていないが、単純にメイド服の女性を護衛できるというだけでも、嬉しさが込み上げてくるのだ。

 

「いや~~、信也は露骨で気持ちええな~。うんうん、私はこのくらい露骨なんは好きやで」

「先輩……なに考えてるか、想像できますね」

 

 信也の期待に胸を膨らませている表情を見ながら、シルビアとファリスは各々口を開いた。シルビアはともかく、ファリスは相当に怒っている印象が伺える。

 

「ところで、明瀬信也さま?」

「はい?」

 

 マイエラは信也の前に来るなり、小声で彼に話しかける。

 

「メイド達と夜の営みを期待していらっしゃるのでしたら、報酬とは別にご用意いたしますわ。特に女性にはお困りではないご様子ですが」

 

 男心をくすぐるとても魅力的な提案。彼女の言っていることが本当であれば、信也は後ろに立っているメイドの誰かと一夜を過ごせるということになる。最後の言葉は彼女の勘違いではあるが。

 

 決して聞こえていないはずのファリスからの無言の圧力を背中に感じ続け、信也はその魅力的な「報酬」に想いを巡らせていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。