2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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17話 メイドの護衛 その4

 

「い、いや……やめて、ください……!」

「あ~ん? なんのことだ? んん?」

 

 スカートの中に手を入れてメイドのお尻を弄る冒険者。逆らえないように、言葉での恫喝は完了しており、恐怖でほとんど抵抗できないことは確認済みだ。

 

「へっへっへ、お前なかなか可愛いじゃねぇか。さて、もう少ししたら場所変えような」

「そ、それだけは許してください……お、お願いします……」

 

 メイドの女性は涙目になりながら懇願する以外に、なにもできなかった。別室へ連れて行かれれば、もはや完全に抵抗などできない。男のいいようにおもちゃにされてしまう。

 

「へへへへへ、嫌がる顔も可愛いじゃねぇか。今夜は寝かさねぇぜ」

 

 薄汚い手をスカートの中に入れ続ける男はすっかり、そのメイドを気に入ったようだ。もはや女性がどれだけ懇願しようとも手放さないだろう。

 

 会場の何人かは既に男達の餌食になっているようだ。ノイモント伯爵もメイド達の違和感には注視していたが、ザイル伯爵の相手をするのに精一杯なのか、何が起こっているのかわからないでいる状況だ。

 

 

「信也先輩~」

「肉を頬張りながら話すな。はしたないぞ」

「もう、ホントおいしくて~。いや~まいっちゃいました」

 

 

 ファリスは巨大な肉を全部口の中に入れて、素早く噛み始めた。現在の彼女は餌を大量に口に含んだハムスターのようだ。

 

「んぐんぐ……ぷはぁ~! おいしかったです~!」

「ファリス……仕事中だぞ、仕事中」

「わかってますよ。ん~何人かの方がやられちゃってますね」

 

 メイドの近くに不自然に立つ男達。パーティ自体は滞りなく行われているようだが、隅では陰鬱なエロスが行われている。マイエラやノイモントはほとんど手が回っていない。これでは、信也たちに依頼を出さなければ、今回もメイド達は毒牙に晒され続けただろう。

 

「どうしましょうか、先輩」

 

 ファリスは信也に期待している様子だ。1人、1人殴り倒していくことも可能だが、必要以上の摩擦はノイモントが望んでいない。王国ランカーの上位を自負するのであれば、このくらいのことは、穏便に解決できて然りだ。

 

 バラハムのことは多少気にはなっているが、今は穏便に場を収束させることを優先すべき……信也の中での優先事項が決定された。

 

「手を後ろ手に組め」

 

 今回は視界に映る全てが対象ではなく、セクハラを行っている数名だ。彼らは信也の命令に従うかのように、両腕を後ろでに組み始めた。

 

「ま、まただ……! な、なんだこりゃ……!?」

 

 原因のわからない事態が再び冒険者たちを襲った。周囲のまだメイドに手を付けていない者達も、いきなり腕を後ろに組み始めた仲間に驚いている。

 

「……これは」

 

 壁にもたれていたバラハムは、その奇怪な現象を見て何かを考えている。そして、信也と視線が合う。

 

 

「……」

「……」

 

 お互いに言葉を発するような距離ではないが、確かに視線を交えた。バラハムが何を思ったのかは定かではないが、信也はさきほどよりもさらに、バラハムの強さを感じ取っていた。隠していた実力を見せている。信也を獲物のように見ているのかもしれない。

 

「ちょっとまて……あいつの強さは……」

「先輩、万が一の時は私が後方から、全力支援しますね」

 

 ファリスもバラハムの強さを感じ取ったのか……。次元の違う何かを感じさせた。部下と思しき冒険者とは格が違い過ぎる。差という言葉では生温いほどの次元の違いを感じる。この感覚は必然的に1つの回答へと導いていた。

 

 この男は魔族……それで間違いない。話に聞く蒼い肉体ではないが、偽装することくらいは容易なのだろう。もはや、バラハムも隠している様子はない。彼らの視線はしばらくの間、交差し続けていた。

 

 

 

 

「ノイモント伯爵、本日は非常に楽しい宴だな。本当に礼を言うぞ」

「ザイル伯爵、そのように仰せいただき、感謝の言葉もございません」

 

 ステージの最前列ではザイルとノイモントがワインを片手に談笑をしていた。二人とも少し酔っているのか、頬が少し赤くなっている。

 

「ところでノイモント伯爵、今日は非常に良い儲け話を用意させてもらった」

「儲け話ですか? はて、事前にそのような話は聞いていませんでしたが」

 

 ノイモントは突然現れたザイルの言葉に怪訝な表情を見せる。

 

「とある薬の売買になる」

「薬……ですか?」

「うむ。……おおっ!」

 

 ノイモントはますます不審な表情をしてザイルを見ていた。薬という単語の時点で怪しさは相当なものだ。だが、ザイルの視線はノイモントには向けられておらず、ステージ上に妖艶な姿で立つ、シルビアに向けられていた。

 

 黒いビキニのような衣装に、シースルーの布をその上から羽織っている。白い髪の毛とは見事な対比となっており、男たちの視線を一気に釘付けにする。

 

「楽しんでいってや」

 

 明らかにザイルに向けられた視線。シルビアは悪乗りをしているのか、時折ザイルに視線を向けながらポールダンスを踊り始めた。恐ろしくしなやかで柔らかい身体は、ポールの周囲を何回転もしていた。

 

 

「すげぇな、シルビアの奴……」

「とっても綺麗です~!」

「ポールになりたいな」

「……はあ? 何言ってるんですか?」

 

 とてもきつい言葉をファリスから賜った信也。しかし、彼もシルビアの踊りには目を離せないでいる。冒険者たちは今のところなにもしていないが、襲われてもおかしくない程にシルビアは挑発している。

 

 

「ぬうう、これほどの隠し玉がおったか。これは高く売れるぞい」

「……ザイル伯爵? 今、なんとおっしゃいましたか?」

 

 ノイモントもシルビアの踊りに釘づけになっていたが、一気に冷静さを取り戻した。聞き捨てならない発言。ザイルは確かにそんな言葉を口にしたのだ。

 

「う~む、もはや我慢ならんわ。女を拘束しろ!」

 

 ザイル伯爵の大声はパーティ会場全体に響き渡った。すると、ポールダンスを踊るシルビアの背後から、白いフードに身を包んだ二人組が現れた。

 

 

「動かないことを希望いたします。あなたのような美しい方を傷つけるのは本意ではない」

「……なんのつもりや?」

 

 シルビアを背後からナイフで脅す二人組。彼女の両手を持ち、そのまま縄で後ろ手に縛ってみせた。

 

「なんのつもりですか!? ザイル伯爵!」

「お前はもう用済みだ。狂創薬は既にワインの中に仕込んでおいた。実験にはお前の身体を使うとしよう」

「な、なに……!? う、うぐ……!!」

 

 ノイモントは手に持っていたワインをその場に落としてしまう。そして、胸に手を当て苦しみ始めた。

 

「伯爵!」

 

 マイエラはすぐにノイモントに駆け寄り、容態を見る。だが、ノイモントは既に白目になり、口からは泡を吐いていた。

 

「マイエラさん! ノイモントさんから離れろ!」

「えっ?」

 

 ノイモントの容態がただ事ではないと感じたのは信也とファリスも同じだ。だが、それ以上に、ノイモントの威圧感が増大したことを、敏感に感じ取っていた。マイエラにすぐに離れるように促した信也ではあるが、全ては遅かった。

 

「あっ……! ……は、伯爵……!」

「ううううう……!」

 

 マイエラの身体は、青色に変色し、巨大化したノイモントの右腕に貫かれていた。パーティ会場は一気に惨状へと変化した。

 

 

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