2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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19話 組織 「メタリカ」 その2

 

「組織メタリカ……エルディアン公国の裏の組織の名前だ」

 

 大食堂では、ランパード子爵がメタリカという組織について語っていた。シルビアが攫われ、ネプトとドロシーが現れてから30分程度経過していた。

 

「メタリカ……あの、公国の裏で暗躍している組織ね」

「知ってるのか?」

 

 車椅子に頬杖を付いて聞いていたドロシーは信也の質問に頷く。それなりに有名な組織のようだ。

 

「怪しい薬の売買とか、猛獣飼ったりとかしてるらしいわ。魔族と繋がっていても全然不思議はないっていうか……て、なんで私がそんなことを、あんたに教えないと行けないのよ!」

 

 凶悪な目つきで信也を睨むドロシー。心底嫌そうな表情をしている。信也としては苦笑いをやめられなかったが。今は言い争いをしている時ではない。ランパード子爵に話を聞くことを優先した。

 

「まさかザイル伯爵が、あの組織に……そんなことが……。魔族と締結などしていれば、国全体が崩壊しかねない……」

 

 ランパード子爵の表情は尋常ではない。如何わしい宴で、メイドを貰おうとしていた人物だけに、信也としても同情はできないが、子爵の脅えた顔は2枚目を崩すには十分すぎた。

 

 

「なに? その伯爵って、そんなにできる奴なわけ?」

 

 ドロシーは実際に見たわけではないが、表情は胡散臭い者を見るようなものになっていた。信也も同意見だ。あの小太りの中年男にそこまで国を動かせる能力があるとは思えなかった。

 

「ザイル伯爵はエルディアン公国でも資金源と言われている人物の一人だ。彼の製薬施設で作られる薬品は国内は勿論、周辺国家でも相当な利益を上げているからな。その知識と資金でメタリカと繋がった……どれほどの脅威かわかるだろう?」

「独立して1つの国を作り上げるか……違うわね、エルディアン公国自体を滅ぼした方が早いわ。1から国を作り上げるより、その方が土台が出来ている分、楽だもの」

 

 ランパード子爵の言葉により、ドロシーも敵側の勢力がどの程度かを理解できたようだ。だが、彼女の表情は変わっておらず、最初からその程度は予想済みと言っているかのようだ。

 

 

「じゃあ、本題だ。俺たちの仲間が一人、攫われたわけだが……どこに向かったか、わかるか?」

「正確にはわからない……奴らのアジトは、私でも知らないからだ……」

「おい……それは……!」

 

 信也の言葉がブレ始める。予期していたことだが、向かった先がわからないのであれば非常に不味い。シルビアがどのような目に遭うかなど火を見るより明らかだ。

 

「きっとあれね。やられまくって、身も心も破滅……エルフだから、一生奴隷にされるわ。競りにかけられるから、どのくらいの価格になるのかしらね」

「おいおい、ドロシー……」

 

 さすがの信也も彼女を叱責しようと試みた。しかし、彼女は言葉を続ける。

 

「競りにかけるってことは、その時までは安心ってことでしょ? 処女なら、その方が絶対に高く売れるし、処女じゃないんなら多少は遊ばれるかもだけど。どの道、そこまで酷い目には遭わないわよ」

 

 ドロシーの発言は的を射ていた。競売にかけられるまではシルビアは無事な可能性は高い。処女かどうかはわからないが、とにかく売られる前に解放しなければならない。売られた後の末路は想像に難くないからだ。

 

「競りにかけるのであれば、エルディアン公国側の国境線の街、ガイアが最も可能性が高い。夜中では馬車での移動は危険にもなるからな。どの道、ガイアの街で一時、休憩を取るだろう」

「向こう側の国境線か。距離はどのくらいだ?」

「シェルブールからでは……北へ20キロメートルくらいか。国境のゲートがなければ、おそらく視認できる位置にある」

 

 

 ザイル伯爵の馬車が出て、30分以上は経過している。国境での手続きや夜の移動を考えると、まだ到着はしていないだろう。早急に向かえば、急襲できる可能性はある。

 

「すぐに向かえば、助けることができるかもな」

「そうね。ところで……魔族はあんたのところと、関係性は深いの?」

「エルディアン公国とか? いや、そんな話は初めて聞いたが……。少なくとも表立って魔族がエルディアンに居るなど聞いたことはない」

「ふーん、公国でも一般的には幻の存在なのね……」

 

 信也はドロシーの質問の意図がよくわからないでいたが、敢えて聞くこともしなかった。罵声が返ってくることは容易に想像がついたからだ。それに、女性の過去などを掘り返す趣味もない。

 

「なら、早速行きましょう! シルビアさんを助けないと!」

「ああ、そうですね。早急に向かいましょうか」

 

 信也達の話を聞いていたのか、大食堂の入り口からはファリスとネプトの二人が現れた。彼ら二人は、ノイモント伯爵とマイエラの亡骸を安置していたのだ。

 

「よし……ノイモントさん達は?」

「はい。正式なお墓づくりは明日に行われるみたいです。メイドさん達に任せて大丈夫だと思います」

「そうか……わかった」

 

 ノイモントとマイエラの死亡は非常に残念だが、今は悲しんでいる暇はない。早急にガイアの街に向かう必要がある。

 

「さて、我々王国ランカーに喧嘩を売ったことを後悔させるとしようか。前衛はドロシー、中距離に信也くん。後衛は私とファリスという布陣が美しいと思うがどうだろうか?」

 

 ネプトの采配。それぞれの雰囲気や使う武器での配置だろうが、ネプトの能力の高さはそれだけでわかってしまう。特に、信也を中距離型と特定したことが脅威であった。

 

 信也は、現在は薙刀も持っておらず、言霊の力も知らないはずだ。ファリスから聞いたのではないとすると、雰囲気のみで判断したことになる。

 

「異論はないわ。ま、こいつが私の足手まといなならなければ……だけど」

「それは俺のセリフだな、ドロシー」

「気安く名前で呼ばないでよ」

「俺は明瀬信也だ。信也と呼んでくれ」

「人の話聞いてる?」

 

 若干押され気味のドロシー。信也は押して押して引かない戦法を取ることにしたのだ。彼女は口は悪いが仲間想いであることは、彼の中でもわかっていた。それは、大食堂を訪れた際の第一声で確信したことだ。

 

 ファリスを追ってきたのか、他の目的があるのかはわからないが、明らかにファリスを大切に思っている口調であった。ファリスのその時の表情から、彼女もドロシーに懐いていることがわかる。

 

「というわけで、ドロシー。俺の足手まといになるなよ?」

「……あんた、その言葉。後悔しないようにね?」

 

 車椅子ながら、ドロシーは一歩も引く気配を見せない。彼女の強者の雰囲気と6本もの剣を携えていることからも実力者であることは明白だ。恥をかくのはどちらになるのか……シルビアを追う過程で二人の争いも始まることになった。

 

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