2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~ 作:イリーム
「王国ランキング?」
「はい、大陸中の実力者が集うランキングです。それに参戦している人は王国ランカーって呼ばれるんですよ」
「なるほど、ランキング参戦者……ランカーってことか。じゃあ、ファリスもランカーなのか?」
「はい、そうですよっ」
深いスリットから伸びた脚が魅力的なファリスは、信也の隣を歩きながら、王都に存在するランキングについて説明をしていた。
「あれか、実力順の序列形式になってて、誰が一番強いか分からないって奴。で、「なにぃ! お前が5位だと!?」とか言うんだろ?」
「なんだ、知っているじゃないですか」
「合ってるのかよ……」
ファリスは信也の言葉に対しても特に怪訝な表情は見せない。日本ではもはや、この言葉だけでも友人関係に亀裂が走るほどの言葉だ。文化の違い……いや、世界そのものが違うと言うことではあるが。
「やっぱ、ここは剣と魔法の世界なんだな……俺のセリフが恥ずかしくない」
「まあ、1位だけは、国中に知れ渡っていますけどね」
「1位だけ? へえ……」
信也はファリスの言葉に疑問を覚える。
それ以外は知られていないことになる。どういうことなのか。
「1位は最強だからか? 誰も倒せないから知られてるってことか」
「間違ってはいませんね……1位が入れ替わったのは2年前、王国最強のラングート・シュタイン様を倒しての1位です」
「ラングート・シュタインね……そいつは強かったのかよ?」
信也も名前からの判断だが、相当な実力者の風貌を思い浮かべていた。言葉を武器にする信也だ。その言葉の重みを知らず知らずの間に感じ取っている。事実、ファリスも頷いていた。
「剣聖のラングート。剣の扱いにかけては世界を見ても右に出る者はいないとされる方ですね~。
年齢は29歳ですけど、既に王国内で知らない人はいない程ですよ。最強国家であるバルトシアン王国に於いての最強。この意味するところはわかります~?」
「世界最強か……なるほど」
ちょっと格好つけたポーズを取って見せる信也。こちらが剣と魔法の世界である為に、自分の好きなポーズをやっても変に思われないと知っての行動だ。
「血がたぎるんですか? さすが信也先輩ですね。まだ、先輩のことは良く知らないですけど、頼もしく見えますよ!」
「え? お、おう……」
悪戯っぽい雰囲気は確かに出してはいるが、本心からの言葉に聞こえる。軽いノリのあるファリスではあるが、こんな美少女に褒めてもらえて嬉しくないわけがない。信也は少し照れながら、彼女のスリットから見える生脚に目をやり保養していた。
「? どうしました?」
「いや、なんでも。この道でいいんだよな?」
「はい、森を抜けたら見えてきますよ……人間族の最も安全な場所とも言われている、バルトシアン王国最大の都市、王都アークレイが」
信也とファリス、その後も少しの間森を歩いて行き、次第に木々は薄らいで行った。代わりに見えてくるのは草原……山岳地帯…海、そして……まだまだはるか彼方に位置してはいるが、煌びやかな街並みであった。
「あれが、アークレイか?」
「はい、王都です。とっても綺麗な街並みですよね」
信也としては、特に街並みが美しかろうとなんだろうと興味はないつもりでいた。しかし、王都はどうだ……興味のない自分でも釘付けになる美しさを誇っていた。凱旋門を思わせる巨大な入り口の門が異彩を放っている……相当な巨大都市だ。
「行きましょうか、まだ数キロはありますし」
「人口はどのくらいなんだ?」
「王都だけでも100万人以上は居るはずですよ」
目の前の巨大な街並みからすれば、人口は控えめと言えるかもしれない。ただ、明らかに王都の街並みは素晴らしい。どうなっているのか、巨大な外壁で覆われているにも関わらず、内部を見通せているのだから。
「なんで透けてんの?」
「魔力の障壁によって守られてますので。実際に入り口は、あの大きな門だけになります。4方向に同じような門はありますけど」
凱旋門のような巨大な入り口。その周辺を覆っている外壁は全て魔力によって構成されている……人口100万人の規模の街を覆う程の外壁……信也は改めてその荘厳さを心に刻んだ。
-------------------------------
「ごくろうさまです」
「あ、はい。ありがとうございますっ!」
槍を持つ門兵に挨拶をされるファリス。凱旋門のような入り口に入る時、信也は何人もの門兵の姿を目にした。特に声をかけられたわけではないが、ファリスと一緒でなければ入れなかったのだろう。
「いいのか? 俺のこと信用して。お前と一緒じゃないと、入れなかっただろ?」
「そうですね。まあ、その辺りは……あの野盗を倒せる方が、ここまで来て何もしてないんですから。信也先輩は悪い人ではないと判断しました」
ランカーである彼女なりの余裕なのだろうか。信也はファリスのスリットに目をやりながら考えていた。歩き方も余裕が感じられる。いきなり襲われても返り討ちにできるという余裕なのだろう。
あの野盗を倒せると踏んでの依頼を受けたのだろうから、実力者ということは間違いないが。
「あ、そうだ。野盗の捕縛を門兵さんに伝えて来ます」
そう言いながら、ファリスは入り口の門に戻って門兵に野盗のことを話しに行った。いくら縄で捕縛しているからといっても、脱出される可能性を考慮したのだろう。
その後、信也達は巨大な噴水広場を抜け、王都の中央より北に位置する巨大な建物まで歩いた。それまでに何人の人々とすれ違ったかはわからない。街並みも非常に美しく、西洋の建物が並んでいるが、技術レベルは日本ほどではなさそうだ。
「ここが、王国ランカーの依頼の管理を行う場所、通称「ギルド」になります」
「ああ、組合ね。どこもかしこも使われてるよな」
信也は巨大な噴水広場を抜けた先に位置する、巨大な建物に入る前から、そういった名前であることを見抜いていた。あまりにも聞き慣れた名前。もはや、笑みさえこぼれてくる。
「で、王国ランカーとは別に、他国では冒険者が依頼受けたりしてるのか?」
「よく知ってますね~、その通りですよ」
「合ってるのかよ……」
信也は自分の的中振りをおかしく思い、これは都合の良い夢なのではと思い始めた。しかし、頬をつねると痛みがある。うむ、現実だ。しかし、ありきたりとは考えたが、信也としてはわくわくが抑えられないでいた。
信也は冒険者やランキングといったシチュエーションは大好きであったからだ。
「依頼内容については、この魔導石で管理しています」
「ファリスが首に下げてるそれか」
見ると、ファリスの胸のあたりには黒い水晶体のような球体があった。首から下げられている。
「はい、魔導石は決して嘘は付きませんから。ちょうどいいです、報告に行って来ますね」
「ああ」
ファリスの言葉をすぐに理解はできなかった信也だが、彼女は受付に歩いて行ったので、その後に続くことにした。
「アルファ大森林の野盗の捕縛完了しました~! 入り口の門兵さんに向かってもらいました」
「ご苦労様です、ファリスさん。ランキング27位の野盗のボスを倒されるとは。さすがですね」
「いえいえ、倒したのはこっちの信也先輩なんです。先を越されちゃいました!」
「そうなんですか? 見かけない方ですが、強いんですね。では、魔導石を拝見」
受付の男性はファリスが差し出す魔導石を手に持った。すると、魔導石は輝き出し、森での映像が映し出される。原理は分からないが、ビデオカメラのように証拠になるのだろうと信也は判断した。
「拝見致しました。依頼は達成されましたね、どうされますか? 報酬の方は」
「信也先輩の手柄ですから」
「おいおい、本当に俺が貰っていいのか?」
信也はなにか悪い気がしてしまう。しかし、ファリスは全く気にしている様子はない。
「では、報酬の13000ガルになります。お確かめください」
「あ、ありがとう……」
信也としては困ってしまう。小さなポーチに入れられた報酬。金貨や銀貨といったものが入っていたが、正直、どの程度の価値かわからない。
「ま、その辺りは追々……ところで、あの男27位だったのか?」
「はい! ランキングに登録してる癖に犯罪に手を染めて、本当にどうしようもなかったんですから、ですので信也先輩は誇っていいんですよ!」
「王国ランカーとして登録しますか? 魔導石もお渡ししますよ。暫定ランクで27位ということになります」
ファリスは自分のことのように喜んでいる。小刻みに動くので深いスリットからの太ももが艶めかしく剥き出しになる。信也も思わずそちらに目をやった。
そして、受付の男も信也に対して笑顔でランカーになることを勧めていた。
「相手を倒せばその順位はもらえるのか?」
「そうなります」
「ふ~ん……まあ、とりあえず登録させてくれるか?」
「はい、その方がよろしいかと。毎月給付金も出ますので」
信也はこれは登録しない手はないと考えた。13000ガルを貰ったが、これで生活をしていける額とは思えない。27位のランクでどれだけもらえるのかはわからないが、日本で言うところの給料のような物が貰えるのは、一文無しの彼にとっては非常にありがたい。
「ではこれをお渡し致します。登録後は他人が使うことはできませんので、ご安心ください」
ファリスと同じような水晶体を渡された信也。手に持つと同時に水晶体は光り出す。指紋認証のようなものか、その水晶体には「27」という数字が現れた。
「他の奴が持ったらどうなんの?」
「自動的に手から離されます。魔力による認証なので、偽装は不可能とされていますね」
信也は先ほどのちょっとした間に魔力認証が完了したことを察した。細かいことはわからないが、言霊の力自体も魔力による能力なのだろうと結論付ける。自分は魔法を行使できるのだと考えた。
「まあこれで俺も王国ランカーか」
「はい、よろしくお願いしますね! 先輩!」
「おう、こちらこそ」
信也はファリスに笑顔で答えた。少し地に足が付いた気がした信也。その表情はどこか安心したようになっていた。