2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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20話 シルビア救出作戦 その1

 

 シルビアを追う道程には馬車を使うことになった。オークションなどが今夜中に開催されるとすれば、夜明けを待っているのは危険だ。速攻で追いかけ奇襲を仕掛ける、これが最もシルビアを救出できる可能性が高い。

 

「そういえば、シルビアは現在武器は持っていないんだったね」

「はい。なので、余計に心配です」

 

 ノイモントの屋敷の人物に馬車の操縦を依頼し、4人は国境へと向かっている。ネプトの確認の言葉に、ファリスも心配な表情を見せていた。遠距離型であるシルビアであるため、自力脱出は難しいとの判断か。

 

「話を聞く限り、彼女も6位の上位に位置しているランカーだ。万が一の時は脱出する方法の一つくらいは持っているだろう」

 

 ファリスとは違い、ネプトの口調は意外にも冷静であった。それほどシルビアとは親しい様子ではないのにも関わらずだ。信也も少し、疑問に感じた。

 

「ネプト……随分と冷静だな。自分の力に自信があって冷静ならわかるが、シルビアのことだぞ? すぐに助ける方法でもあるのか?」

 

 もしかしたら、ネプトは遠くに離れた人間を助ける超人的な魔法の使い手かもしれない。そんなことを考えていた信也だが、彼は首を横に振っていた。

 

「さすがに、今すぐ助ける方法はないね。ただし、確率の問題だ」

「確率?」

 

 信也は怪訝な表情を見せる。

 

「バルトシアン王国の6位ランカーのシルビア。彼女よりも強い人間がこの大陸にどれくらい居るのかという話さ」

「そういや、バルトシアン王国は最強国家だったっけ」

「そうだね。人間とエルフなどの亜人種を入れたとして、大陸中には数千万人以上の人が存在している。魔族は不明な点が多いために抜くと考えて、ランキングに参加していないラングート殿のような者を入れても、シルビアクラスは100人も居ないのは確実だ」

 

 多くても3桁には届かない。普通に考えれば当然だろう。そうでなければ、ランキングの意味を成していないことになる。組織「メタリカ」は集団であるため、単純には行かないのは確実ではあるが、隙を突いて逃げ出すことくらいは可能というところか。少し、信也の中で安堵の感情が芽生えた。

 

「どうでもいいわ。目の前の敵は倒せばいいだけなんだし」

 

 急に割って入るように言葉を発したのは、車いすを折りたたみ、頬杖を突きながら窓から外を見ているドロシーだ。

 

「メタリカかなんだか知らないけど、王国ランカーに挑戦して来たのよ? 軽く返り討ちにしてあげるわ、向こうもそれを望んでるだろうし」

 

 ドロシーの言葉はとても高慢にも聞こえる。自らの力に圧倒的な自信を覗かせる戦士。まさにそんな印象であった。自分の力に自信があるのは彼女だけではないが、通常は言葉には出さないものだ。しかし、ドロシーは敢えて逆のことをしている。

 

 信也はドロシーの脚に目を向けていた。レッグアーマーなどの装備により、露出度は皆無だが、欠損しているという雰囲気はない。だが、既に動かすことができない両脚。

 

 このような身体になっている状態にも関わらず、彼女は戦士として5位のランクを維持しているのだ。地球の基準で考えた場合、あり得ないことではあるが、この世界ではそうでもないのかもしれない。

 

「なに見てんの? 気持ち悪いんだけど」

「……その言葉は俺の国ではクリティカルヒットなんだよな。俺みたいな奴には」

「はあ? ギャグのつもり? どんなメンタルしてんのよ」

 

 ドロシーは理解できないといった表情をしていた。オタク社会の日本にとってはキモイという発言はクリティカルになる。信也もその手の言葉は苦手であったが、ドロシーは深い意味で言ったわけではなさそうだった。

 

 彼女なりの高慢な態度からくる言葉。おそらく、ネプトが同じことをしてもそんな言葉が飛んでくるだろう。テオに対してはさらにキツイ言葉が飛びそうな予感すら、信也は感じていた。

 

 

「う~~~~」

 

 妙な唸り声をあげているファリスに怪訝な表情をドロシーは見せる。

 

「ファリス、なに唸ってるのよ」

「信也先輩って、ドロシーさんのこと気に入ったのかも」

「はあ? やめてよね。なんでこんな変な奴に気に入られないと行けないのよ」

 

 心底嫌そうな表情をドロシーは彼に送った。信也も苦笑いをやめられないでいたが、ファリスはそんな二人のやり取りを見ながら、さらに暗い顔に変化していた。

 

「やれやれ、これから強大な組織と一戦を交えようと言うのに、この中は平和だね」

 

 なんだかんだ信也にも余裕を感じられたのか、ネプトは笑いながら彼らのやり取りを見ていた。そして、高速で走る馬車はそれから程なくして、国境の門へと辿り着いた。

 

 

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 その頃、エルディアン公国側の国境近くの街ガイア。

 既にシルビア達はその街に到着しており、シルビアはとある建物の地下牢に閉じ込められていた。競りに賭けられるまでの時間、その場に拘束されているのだ。

 

 地下牢の前には白いフードの二人組が監視として待機していた。ノイモントの屋敷でシルビアを連れ去った二人だ。シルビア自身はビキニの服装から変化しており、黒いドレスに着替えさせられていた。

 

「シェルブールから離れる時に見えた人物……多分、ネプトとドロシーやな。すごい面子が揃ったやん。信也、早く助けてや~~シルビアちゃん、ちょっとだけピンチやで?」

「お静かに。あなたに発言する自由はありませんよ?」

「なんや、ノリが悪いな~。その暑苦しいフードも取ったら? 顔みせーや」

 

 シルビアの何気ない挑発。二人はそんな挑発に乗ったのか、白いフードを外し、素顔をシルビアに晒した。二人とも女性だ。双子なのか同じようなショートカットをした髪形であり、右側から髪を分けているのか、左側から分けているのかくらいの違いしか存在しない。耳は尖っており、目は黒く濁っていた。

 

「エルフ……やないな。魔族か」

「その通りです。私はアリス」

「わたしはレリス」

 

 双子の魔族はそれぞれ自己紹介をする。肌はバラハムと同じく蒼色というわけではなく、人間のような肌色をしていた。

 

「どういうわけや? 魔族の肌の色……言い伝えなんか信用ならんけど」

「答える義務はありませんが、まあいいでしょう。魔族の肌の色……蒼は戦士の証」

「戦士の証?」

 

 シルビアは意味がわからないといった表情をした。そんな彼女の顔を見ながら、アリスは口を開く。

 

「簡単に言えば、蒼い魔族は真の能力を持つお方。我らが主、魔王メギラス様を初め、一部の方々に許された色と言えましょう」

 

 シルビアの表情が強張る。

 

「ていうことは、あのバラハムもあんたらも戦士ではないんやな?」

「面白いことを言いますね。私たちが戦士など」

「アリス、喋りすぎ。わたしたちはこの女を見張ればいいだけ」

 

 アリスに注意の言葉を発したのは隣にいたレリスだ。彼女にアリスは向き直る。

 

「そうね、悪かったわ。それにしても同情しますわ。あなたはこれから競りに賭けられる。エルフの女性ですから相当な金額が付くでしょう。それからは、男どもの餌……」

「あ~、それは嫌やな。でも、後ろ手に拘束されてる状態やとなんもできひんし……」

「その落ち着きはさすがです。魔導石によればランクは6位。そこからくる余裕でしょうか?」

 

 シルビアは首を縦に振った。

 

「と言っても、今のウチにはここから脱出する術はないよ。ウチが信じてるのは仲間や。魔族と組んでるメタリカも後悔することになるやろ。上位ランカーがどれだけの強さを誇るのか、その目に刻んだらいいで」

 

 アリス、レリスの表情は強張った。とても拘束されており、売られる直前の者の態度ではなかったからだ。

 

 シルビアの視線は真っすぐ伸びており、少しのブレも感じさせなかった。

 

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