2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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22話 シルビア救出作戦 その3

 

「国境の街ですけど、栄えてますね」

 

 ガイアの街に到着した信也たち4人は、とある酒場に入っていた。特に変装などはしていないが、周囲は彼らの存在に気づいていない。それほどに、酒場は盛況していたのだ。

 

 そんな状況を見てファリスは小声で言った。シェルブールとはやはり雰囲気がかなり違っていたからだ。

 

「シェルブール周辺は農作業で生計を立てている人も多いからね。あまり栄えないのは仕方ないのかもしれない。こちらはその逆といったところかな」

 

 

 荒野に立地してる街だとはすぐには信じられない程の盛況ぶりだ。信也も思わず、周囲の住民たちを見渡す。

 

「これは裏の稼業で生計を立ててるってことだよな?」

「そうなんだね?」

「へ、へい……」

 

 メタリカの生き残りが一人、ネプトの隣に座っていた。その者は力ない言葉で答える。他の生き残りはすべて、国境の兵士に渡しているのだ。

 

「ここから北にある会場が、競りにかけられる場所です。そこに、例の女も連れていかれるかと……」

「周囲の見張りも相当な数になっていたね」

 

 男の証言を裏付ける為に、ネプトはその会場の下見を終わらせていた。

 

「黒服の男達が、絶えず周囲を警戒していたね。中へ入れるのは会員のみといったところかな」

「会場の場所がわかってるんなら、あとはごり押しでいいんじゃない? 元々細かな作戦立ててる余裕もないんだし」

「同感です。なんとしてもシルビアさんを救出しないと」

 

 ドロシーとファリスも意見は同じらしく、ネプトに話しかける。信也としても一刻も早く突入したい衝動には駆られていた。自らの言霊の力を使えば、中へ侵入することは容易だ。

 ネプトもそれはわかっているのか、侵入に対して悩んでいる素振りはない。

 

「私も心情的には同感だ。ただし、ザイル伯爵が少し気になってね」

 

 ネプトの言葉に信也は表情を変える。見た目は小太りの中年という印象が強かったザイル伯爵。だが、シルビアを攫っていく動作、ノイモント伯爵自身を手玉に取った行動は見事であるとも映っていた。

 

「ただの子悪党って印象は、最後には薄れていたな」

「やっぱりかい? メタリカという組織はもちろんだが、ザイル伯爵も警戒する必要があるよ。戦闘能力はともかくね」

「気づかれたら、競りにはシルビアをかけずに闇に隠れられるってことか?」

「ああ、そういう洞察力がある人物と見たね。彼の昔の功績は噂程度には聞いているし」

 

 王国ランカー上位のネプトからの言葉だ。信也を初め、ごり押しを提案していた二人にも深く伝わっていた。

 

「だからこそ、確実に彼女を救うには競りにかけている間がいい。その場に居るんだからね。最も危険ではあるが、その段階で力押しと行こう」

「力押しができるタイミングなら、何でもいいわ。さっきの連中じゃ準備運動にもならなかったし」

「よ~し、なら決まりですね!」

 

 信也は小さく拳を握りしめた。魔族の介入も十分に考えられる任務。しかし、失敗するわけには行かない。彼の心の中にはそんな感情が大きく渦巻いていた。

 

 

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「ザイル伯爵、ご苦労様です」

「うむ」

 

 ガイアの街の中央辺りに位置する大きな会場。アラビア風の建築様式であることに変わりはないが、非常に精巧に作られており、中では荘厳なパーティが開かれるであろうことは外観だけでも想像ができる。

 

 実際には、中で行われていることはそんなことではなく、あまり灯されない証明と共に身売りをされる少女たちの品評会だ。お楽しみとして各種ベッドなども完備されている。

 

 その会場の入り口付近にザイル伯爵は現れた。小太りの中年という容貌は変わらないが、身に着けている物はノイモントの屋敷とは違っていた。黒を基調としたライダースーツのような服で全身を覆っている。ある意味、戦闘に適した格好であると言えるだろう。

 

「いつもの貴族の風貌ではない為、見慣れないものですね」

「本日は警戒レベルを最大にする必要があるからな。相手はバルトシアン王国のランカー達だ」

「あの最大国家の? それは……」

 

 

 

 見張りの一人はランカーという言葉を聞くだけで、顔から汗を流していた。それほどにバルトシアン王国のランカーは恐れられているということになる。

 

「待ち伏せさせていた者たちからの連絡も途絶えた。おそらく乗り込んで来ているだろう」

「あんな連中がですか?」

「案ずるな、そのためのバラハム殿達だ。魔族との締結後、我々メタリカの活動は飛躍的に向上している」

 

 ザイル伯爵は恐れている見張りとは裏腹に余裕の表情を崩さない。上位ランカーが攻めてくることも予想済みというわけだ。

 

「見張りはいつも通り、抜かりなくな」

「はい」

 

 そこまでで話を打ち切ったザイル伯爵は、会場内へと姿を消していった。外には先ほどまで残っていた見張りの一人が残される。

 

「あんな貴族のじじいが俺たちメタリカの上席か……世も末だな」

 

 そんな言葉を発するのは別の見張りの一人だ。先ほどまで話していた見張りに話しかけている。

 

「あの方を見た目で判断しないほうがいいぞ。かなり頭の切れる人物だ。元々、魔族との締結も彼が行ったらしいからな」

 

 先ほどまでザイル伯爵と話していた見張りは、伯爵への忠義は厚いようだ。見下す見張りとは全く違う意見を持っていた。

 

「おいおいマルロ、おめぇは伯爵を尊敬し過ぎだっての。あんなじじぃの何がいいんだか。それに、魔族なんてわけがわからん連中に頼らなくても、俺たちだけでランカーなんて殲滅できるぜ? 俺にはこれがあるからな」

「……2丁拳銃か、タイラー」

 

 

 マルコはタイラーの出す二つの拳銃を見ながらつぶやいた。時代に合っているのかは定かではないが、それは信也の世界でもよく見る拳銃であった。

 

「撃鉄一つで鋼鉄の塊が飛び出す代物だ。ランカーだろうがなんだろうが、この2丁拳銃でぶっ殺してやるよ」

 

 タイラーは二つの拳銃を持ちながら前方へ向けて撃つ真似事をしている。そんな彼をマルコは呆れたような表情で見ていた。

 

「お前の余裕は頼もしいが、俺たちの仕事は会場内に怪しい者を入れないことだ。その点は抜かるなよ」

「ああ、わかってるぜ」

 

 黒服のマルコとタイラーはそこまで話し終えると、それぞれ元の配置へと戻って行った。

 

 

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