2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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23話 シルビア救出作戦 その4

 

「ザイル伯爵、お久しぶりでございます」

「おお、これはこれは。ハーバード伯爵ではございませんか」

「私も、別の女子が欲しくなりましてな。何人か買っていこうかと」

「ふふふ、ハーバード伯爵もお好きですな。今宵は相当な上玉も居りますぞ、どうぞごゆるりと」

 

 会場内部、女達の競りが行われる部屋の入口にて二人の伯爵は対峙していた。ハーバード伯爵はエルディアン公国の伯爵の地位に就いており、階級はザイル伯爵と同じだ。

 

 年齢はさらに上であり、50歳を楽に超える見た目をしていた。髪の毛の薄い白髪の老人といった印象だ。

 

「おお、北方のマドバ金鉱の管理人、ステーデン殿ではありませぬか」

「これはザイル伯爵。2年振りくらいですかな?」

 

 ハーバード伯爵を中へと招き入れ、次に挨拶を交わす人物は40歳くらいだろうか、そこまでザイル伯爵と年齢が離れているとは思えない人物だ。色黒の色男、金鉱の管理人という肩書きがうまく当て嵌まった人物と言える。

 

 無精ひげを生やした金髪の男だが、白のスーツ姿の上からでもわかる筋肉質な外見だ。鉱山仕事で鍛え上げられている印象を受けるその人物に対しても、ザイル伯爵は丁寧に対応している。

 

「本日はお好きな女を競り落としていただければと思いますよ。金の援助はいつも通りということで」

「畏まりました。競り落とした女は、今後の金で支払うとします」

 

 お互い不気味に笑いをあげて、ステーデンも競りが行われる部屋の中へと消えて行った。今宵開かれる宴の出席者はエルディアン公国の資源を統括する者たちから、伯爵級の権力者。少数ながら他国の権力者も含まれてはいるが、例外なく大きな影響力をその手に持っている連中だ。

 

 反吐の出る欲望を発散する為の競り。彼らはそんな鬼畜な雰囲気を楽しむために来ている。女性のオークションで敗北したとしても良いと考えている者も多い、権力者の中でも序列はあり、下位の者たちが競り落とせる可能性は低いからだ。ストレス発散の場として楽しめる会場……そんな側面も持ち合わせていた。

 

「さてさて、本日は相当な稼ぎが出来そうだ。たくさん、メタリカに還元していただこうか」

 

 室内に大勢の人物が入ったことを確認したザイル伯爵は、不気味に笑いながら入口の扉を閉めた。欲望に満ちた競りが開始される……。

 

 

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「侵入は余裕でしたね~」

「まあ、そりゃあな」

 

 ザイル伯爵が扉を閉めた室内。ファリスは黒のフードで顔を隠しながら、隣に座る信也に話しかけていた。信也もフードを付けていた。

 

「言霊の力……非常に応用の利く能力のようですね。使い方次第では、どんな者でも倒せるようになりそうだ」

「そこまで万能でもないだろ。まあ……俺の力に合わせて能力が向上している様子はあるけど」

 

 会場の入り口に居た者たちは、信也の言霊の力でフリーパスとなった。争い事を起こすわけには行かないので、最も静かな入場と言えるだろう。

 

「ドロシーは外だろ?」

「そうだね。彼女であれば一人でも全く問題はないよ。ちょうどいいところで外の連中は根絶やしにしてくれるだろう」

 

 ネプトは外で待機しているドロシーのことを思っていた。さすがに車椅子での入場は目立つとの判断から、彼女は外で戦闘を行うことになったのだ。

 

「俺たちの攻撃の爆音、それが合図だな」

「よ~し、その時が来たら派手にやっちゃいますね。ノイモントさん達の無念も晴らさないとダメですし」

 

 フードを被ったファリスは傍らに置いた杖を軽くかざしてみせる。言葉こそ明るいが、彼女はザイル伯爵たちへの恨みはそれなりに大きい。ノイモントとの交流はほとんどなかったとはいえ、依頼人であったのだ。彼女の決意はその表情からも読み取ることができた。

 

 

「周囲の者たちも、かなりの権力者ぞろいだよ」

 

 ネプトはそう言いながら、周囲の客層に目を向ける。博識のネプトだからか、その人物たちは見覚えのある者が多いようだ。

 

「エルディアン公国の金鉱、銀鉱を独占しているイワレンコフ・ステーデン。その他、公国の子爵や伯爵も何人か居るようだ。やれやれ、公爵殿が知れば頭を抱える事態だろうね」

 

 伯爵級の連中もこの場には来ている。ザイル伯爵以外も裏ではメタリカと繋がっているということだ。公国のトップからすれば非常に困る問題だろうとネプトは考えていた。伯爵級の連中がそれぞれ私腹を肥やしているとなると、国の存続自体を揺るがしかねない事態だ。

 

「今回はシルビア救出だけに集中だぞ? ザイルの奴に逃げられるのだけは避けないとな」

「ああ、わかっているさ。しかし、いずれはエルディアン公国に対して大きな恩を作れるかもしれないね」

 

 信也としては、周囲の人間たちに構っている余裕はなかった。ネプトとしてもシルビアの救出が第一であることに変わりはない。

 

 

「皆様、ようこそお集まりいただきましたっ」

 

 そして、室内の席がほぼ満室となったころ、前方の舞台に証明が灯されザイル伯爵の姿が現れた。彼の背後には白いローブの人物が二人構えている。

 

「既に見知った方々ですので、堅苦しい挨拶は省略いたしましょう」

「なんか、この展開見たことある気がする、いやそんなこと起きるわけねぇけど」

「なに言ってるんですか?」

 

 信也は日本のよくある展開を想像していた。ネプトとファリスにとっては全く意味が分からない状況だ。

 

「まずは1人目、17歳の少女です」

「流石にレベルが高いね」

「……確かに」

 

 ミニスカートの少女が舞台へと現れた。両腕は拘束されている。2人目、3人目も次々と10代の少女が姿を現した。皆、ミニスカートでの登場で、スタイルがわかるようになっている。

 

「5人目はレアな美少女になります。エルフの18歳の少女!」

「……シルビア」

 

 最後に現れたのはシルビアだ。両腕は後ろに拘束されており、他の者と同じくミニスカートの出で立ちだ。周囲は、シルビアに対して一際大きな歓声がなった。美しさで言えば、他の者も決して劣ってはいないが、やはり長寿のエルフという属性に期待感が大きかったのだろう。

 

「本日は以上の5名になります! 早速競りを開始いたしましょう!」

 

 ザイル伯爵の声と呼応するかのように周りの客は一斉に黄色い歓声を飛ばした。

 

「よし、遠目からの判断だが、本人であることには間違いないだろう」

「よ~し、行きますか」

 

 ネプトとファリスはやる気満々のような表情をしている。この室内に流れている独特の空気をぶち壊すことが楽しみで仕方がないのだろう。

 

「しかし、5人だけか。明らかに来ている客の数と合ってないな」

 

 信也は素朴な疑問を覚えていた。競り落とす気がない者を除外したとしても、5人の商品の少女というのは少なすぎる。

 

「それは多分、あの少女たちは何人もの男に食われるということさ。競り落とした者が、すぐに商品と寝る権利を高値で売るんだろう」

「そういうことか、合点がいった」

 

 普段であれば、嫌らしい冗談の一つでも放つところではあるが、攫われたシルビアが目の前に居るこの場で、浮足立ったことを言うほど、信也は空気が読めない男ではない。シルビアだけではない。他の4人の少女たち……遠目ではあるが、明らかに怯えている。もはや、信也の中に遠慮という文字は消えていた。

 

「集中するのは良いことだが、ザイル伯爵はもしもの事態も想定しているだろう。彼の後ろの白のローブの者たちも気になるところだ。慎重に暴れるとしようか」

「ネプトさん、慎重に暴れるってなんか変じゃないですか?」

 

 ファリスの指摘にネプトは優しく微笑んだ。その瞳は舞台のザイル伯爵と捉え、シルビア救出の成功を確信している目となっていた。信也もザイル伯爵を捉える為に、舞台へと目を移す。その前に、彼の目はネプトの魔導石を捉えていた。

 

「どうかしたかい?」

「いや、なんでも。あんたの自信の理由がわかった。予想はしてたけど」

「そうかい? まあ、なんにせよ、魔族の襲撃を最も警戒しようか」

 

 信也はネプトの言葉に素直に頷く。信也は言葉でこそ発しなかったが、魔導石の「3」という文字に敬意を表した形となった。

 

 

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