2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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27話 闘技大会 その1

 

 バルトシアン王国の都アークレイ。人口100万人を超える大都市であり、街中の活気も非常に大きいと言える、王国で最も有名な場所である。

 

 その中央に位置するのは国王ユリウスの住まうマルレーネ城。荘厳且つ、巨大な様式の建物であり、警備兵は24時間周囲を警戒している。城内に配備されている者も含めれば、その数は1000人を楽に超える。

 

「魔族の襲撃……か。想像以上に危険な依頼だったようだな」

 

 城の中の談話室と思しき空間に座しているのは国王ユリウスだ。金色の髪を短く揃えており、威厳を保つ為か口髭も整えているが、年齢は32歳とまだまだ若い。隣に立つ大柄な男が彼に答えた。

 

 彼らは1週間ほど前に起こったエルディアン公国の出来事について話し合っていた。

 

「そのようです。ですが、無事依頼は達成されました」

「うむ、さすがは王国ランカーといったところか。余も鼻が高い」

「ネプト達、上位ランカーが組織メタリカの人身売買を阻止した形になりますが、まさか魔族と人間が結託しているとは思いも寄りませんでした」

 

 ユリウスの隣に立っている男は、元王国最強の戦士であったラングート・シュタインである。年齢は29歳とこちらも若いが、筋肉の鎧に包まれた身体と険しい顔つきからは、とても20代には見えない。白髪をオールバックにしている髪形も彼を老けさせている要因だろう。

 

 

 

「うむ、エルディアン公国の公爵殿には余からも注意喚起をしておこう。それから……ノイモント伯爵の死は……非常に悔やまれるな」

「はい……」

 

 国民からの信頼も厚いユリウス国王。ノイモント伯爵の死を真に嘆いており、彼の死後、真っ先に駆け付けたほどの情に熱い人物でもあった。隣に立つラングートも憂いに満ちた表情をしている。

 

「ザイル伯爵といったか、メタリカと結託をした罪深み者。必ず、その報いは受けてもらう」

「はい、ザイルの潜伏場所については調査をさせております」

「ああ、そのまま継続してくれ。ところで……」

 

 そこまで話すと、ユリウスは話題を変換させた。暗い話題ばかりでは良くないと感じたのだろう。彼は何やら上機嫌になっている。

 

「魔族が現れたことは喜ばしいことではないが、有望な者が現れたのは非常に喜ばしいな」

「明瀬信也ですね。出身は不明ですが、今回の功績を評価され、ランキングは12位まで上がったとのことです」

 

 ラングートも強面の表情から笑みをこぼしていた。王国ランキングに参戦した新たな人物。彼の目にも信也は有望株に映っているようだ。本来はランキングは秘匿事項であるが、ラングートなど、一部の人間は詳細情報を知る権限が与えられている。

 

「どうだ? 元最強として血がたぎるのではないか?」

「陛下、ご冗談を。私はとっくにランキングから離れた身ですぞ」

「そうは言うがなラングートよ。現在でも、お前を最強と信じている者は多いぞ?」

 

 ユリウスの瞳もラングートを信じているといったものになっていた。それは以前からラングート自身も感じていることだ。14歳の美少女……大会を大きく盛り上げる為に、彼が華を持たせたのではないかという噂は2年経った現在でも囁かれていた。確かに、闘技大会の観客はそれ以来飛躍的に増えることになったが、ラングートは首を横に振っていた。

 

「アンジェリカの強さは2年前のあの時点でも異常でした。接近戦を挑み、私は戦闘スタイル的に有利な形態、かたや彼女は剣の加護の能力を封印した状態でしたからね。それでも敗れ去った……華を持たせるなんてレベルではありませんよ」

 

 ラングートの表情は爽快なものであったが、どこか影も含まれていた。彼の自信を打ち砕かれた瞬間……王国最強としての自負をアンジェリカに見事に砕かれた瞬間のことを思い出していたのだから当然とも言える。

 

 

「余としても信じられなかったが、やはり彼女ははるかに強いのだな……。となると、お前は現在、2位の立場を死守しているということか」

 

 ラングートは2年前よりもさらに力をつけている。旧友でもあるユリウスにもそれくらいのことはわかっていた。だが、ラングートはそんなユリウスの言葉にも首を横に振った。

 

「現在の私の実力は最高でも3位になるでしょう。王国ランキングの2位、現在最も1位の彼女に近い存在と言えば、現在の2位以外には居ません」

「ほう、それほどまでに現在の2位は強いのか? そういえば誰かは余も知らんな」

「ええ」

 

 ユリウスは上位ランカーの名前や顔を思い浮かべているのか、2位になり得る者を推理しているようだ。ラングートはユリウスに2位の名前を告げることはなかった。

 

「もっとも私は今後、さらに抜かれていくかもしれませんが……現在では3位といったところでしょう、それくらいの強さを有しているとの自負はあります。鉄騎隊の隊長としての責任もありますからな」

 

 対魔族最強の壁とも言える鉄騎隊。その隊長を務めるのがラングートだ。ユリウス国王の信頼を裏切らないように、彼は日々力を研ぎ澄ませている。

 

「観客はいずれ闘技大会にも戻ってきてほしいと考えているぞ? ああ、本日はその闘技大会の日だったな。ははは、偶然とは面白いものだ」

「確かに今日は闘技大会の日になりますな。さて、今月の覇者は誰になるのか」

 

 ユリウスとラングートの二人は窓から見える晴天に闘技大会の決行を感じ取っていた。今月もまた闘技大会は行われるのだ。

 

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