2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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31話 闘技大会 その5

 

 

「これは……!」

「驚きやな」

 

 闘技大会2回戦、ヒョウ柄の服の男とファルディオの一戦。信也たちを含めた観客の大半が驚きに満ちた表情をしていた。一般の観客たちと信也たちでは驚きの種類が違うが、前方に座っているアオイドスも少し前に身体を倒している。

 

 信也たちからは表情は伺えなかったが、多少の驚きを持っているのだろう。

 

 

「お、おい! ファルディオが敗れたぞ!」

「うそっ、こんなの初めて見た……!」

「絶対、今大会はアンジェリカさんと戦うと思ってたのに!」

 

 周囲の観客の声はそんな感じであった。意外にも有名なファルディオ、その強さは知られており、優勝候補にも挙がっている人物であったのだ。

 

「ま、俺様の勝ちだな。結構、強かったぜ? 誇っていいんじゃねぇか?」

「くっ……! お前は一体……! ランカーではないはず……!」

「くっくっくっ」

 

 ヒョウ柄の男は懐から魔導石を取り出した。そこに書かれている数字は「35」。そこまで脅威になる数字ではないが、王国ランカーということになる。ファルディオの剣捌きを華麗に凌いだ男は、斧を剣速以上のスピードで振りぬいた。

 

 まさに一撃。その強烈な攻撃でファルディオは動けない身体にされてしまった。骨が幾つか折れているのだろう。すぐに衛生班が到着する。

 

「俺様は新進気鋭のランカー参戦者アズール・コアルドイ。ふはははは、覚えておけよ? 闘技大会は俺様の名声を高める為の最高の舞台だからな」

「アズール……」

 

 ファルディオは彼の名前をつぶやいて気を失った。八重歯が尖っていることもあり、まさに虎のような外見の男だ。豪快かつスピーディに斧を担ぐとそのままゲートを抜けて出て行った。

 

「アズールか、これであいつが11位だよな?」

「そうなりますね、信也先輩以外にも新進気鋭の挑戦者さんが居ましたね。かなりの強敵ですよ、あの人。接近戦では私も歯が立ちません」

「そうかもな。11位ってことはいきなり俺の上に行かれたし。今後、立ちはだかってきそうだ」

 

 豪快な印象を受けるアズールの姿に、信也は少し、自分の立場と近いことを感じていた。それに親しみも感じている。ああいった挑戦者の発掘場所、闘技大会はそういった側面も強く持ち合わせているのだ。

 

 

 そして3回戦が開始される……3回戦も信也たちにとって、驚きの戦いとなった。

 

「アズールか、面倒な相手だ。まさか、オレ以外にも挑戦者が居るなんてね」

 

 そう言いながら眼鏡を汚れを拭いているのは、アズールとは真逆の線の細そうな男だ。目が恐ろしいほどに細く、全体的に蛇のような印象を受ける。黒髪を長く伸ばしているのもその要因だろう。目自体もどことなく爬虫類のそれを連想させていた。

 

「なんか、特徴的な奴やね。さっきのアズール言う奴もそうやけど」

「虎男と蛇男かね、強いて言えば」

 

 シルビアと信也は蛇のような男を見ている。アズールと同じく相当な実力者であることは明白だ。周囲の観客も知っている様子ではないので、新進気鋭の挑戦者の1人なのだろう。

 

 それぞれ名前は観客に告げられるが、騒然としている場合は聞こえないこともある。信也は電光掲示板のようなところに映されている名前に目をやった。

 

「アルバートとセッコか?」

「アルバートさんは確か、ランカーで19位だったかと思います」

 

 

 蛇男の前に居る筋肉質の男がアルバートだ。先ほどから、博識ぶりを披露しているファリス。人懐っこい性格なので知り合いも多いのだろう。

 

「あんたは俺の引き立て役だ。何位か知らないけど、順位を貰うよ。俺はまだ55位だから、見たところそれよりも上だろ?」

「舐めるなよ、小僧が!」

 

 アルバートは19と書かれた魔導石を見せ、自らの力を誇示して見せた。それを見たセッコは怪しく笑っている。

 

「あはは、19位か。それだけ上がればとりあえずは十分だよ。ありがとう」

 

 そして二人の試合は開始された。55位であるにも関わらず、自分が負けることなど微塵も考えていないセッコ。自らの力に絶対の自信があるのだろう。

 

 そして、ある意味で予想通りの結末を迎えることになる。

 

 

 

「がふ……!」

「ふふふ、あんたは19位という順位に満足していないか? 後がつかえているんだ、やる気のない奴はすぐに明け渡すべきだね」

 

 模擬刀による打ち合いはセッコの圧勝で終わった。新進気鋭の新人。挑戦者としてやってきた彼にとって返り討ちに遭うことを恐れている余裕などない。セッコは自らの強さをそこにあると感じているのだった。もちろん裏打ちされた実力がなくては、返り討ちに遭うのが常ではあるが。

 

「強すぎへんか……? さっきのアズールといい」

「すごいですね、こんな人たちがまだ居るなんて」

 

 同じ大会に2人も新たな強敵が現れるなど、なかなかあることではない。シルビアやファリスもそれは感じているのか、立ち去るセッコを目で追っていた。二人とも接近戦では勝ち目がないことは悟っているようだ。

 

 

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 そして、4回戦も終了し、準決勝は少し経ってからとのアナウンスが流れた。元々はアンジェリカ目当ての客が多かったはずだが、現在では別の話題も多く囁かれている。アズールとセッコの台頭が大きいのだろう。

 

「どや、信也? 見に来て正解やったん違う?」

「そうだな、訂正する」

 

 見に来て正解であったのは、信也も感じ取っていた。2回戦、3回戦は特に見どころが多かったのだから。しかし、想像以上だ。

 

「勝てます? 信也先輩なら」

「……」

 

 信也は無言のままだった。ファリスはこの中で最も闘技大会のルールで力を発揮できるのが信也と思ったからこそ、質問をしたのだ。

 

 信也は考える、本当の殺し合いになった場合はそれぞれ技も披露することになるのでなんとも言えないが、闘技大会のルールで戦えばファリスとシルビアではほぼ勝ち目はない。いくら武器を選べると言っても、弓矢型の武器はないので、シルビアも分が悪い。

 

 では自分ならどうか? 果たして彼らを倒せるのか? バラハムを比較的、簡単に倒せるようになったことで、自らの力の使い方を高いレベルで向上させることはできている。だが、そんか彼でも答えは出せなかった。それは、闘技大会のルールでは太刀打ちできない可能性も考慮に入っていることを意味していた。

 

「ちょっとトイレ行ってくる」

「ほい、準決勝までには戻ってきいや」

「おう」

 

 シルビアは何かを察したのか、少し時間がかかると思ったのだろう。準決勝には間に合うようにと念を押したのだ。彼は立ち上がり、トイレへと向かう。

 

 少しだけ気持ちの整理を付けたかった。本日は様々な人物に出会う日だ。彼の中で色々と成長している実感が湧いていた。アオイドスにテオ、アズールとセッコ……。

 

 

「全員、男じゃねぇか……なんて華がないんだよ」

 

 ファリスやシルビアを連れているくせにという周囲からの声が聞こえて来るかもしれない。彼はそんな贅沢な愚痴をこぼしながらトイレへと向かう。特に行きたいわけでもないが、考えをまとめる為だ。

 

 そんな時、信也の前に現れた1人の人物の姿があった。

 

「ん?」

「あっ」

 

 本日の出会い。トイレへの道中で出会ったのは、華にしても豪華すぎると言えるだろう。アンジェリカ・ブルーローズが目の前に現れたのだ。

 

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