2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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36話 猛獣討伐の依頼 その2

 

 

「ほほう、それで俺の試合はやはり、観客席から見ていたのか」

「まあな。流石に驚いたぜ、一撃で11位のランクを奪い去るなんて」

「俺からすれば朝飯前なこった」

 

 アークレイにて幾つかの準備を完了させた信也達は、北のオルタナ山脈を目指していた。ファリスとシルビア以外にアズールも加わっている。信也とは気が合うのか、先ほどから2人の会話は尽きる様子がない。

 

 彼らは王都アークレイから北へ60キロメートルほど離れたオルタナ山脈を目指しているわけだが、さすがに距離もある為に、シェルブールに行くときには利用していなかった馬車を使うことになった。

 

 そして、所定の場所で降り、その後は徒歩で目的地付近まで目指しているのだ。山脈が近づき、形状的に馬車での侵入も困難になってきたためである。

 

「でも、いいんですかね~」

「ん、なにが?」

 

 そんな二人の後ろを歩くファリスが、仲良く話している信也とアズールを見ながら怪訝そうにしていた。すぐ隣のシルビアは反対に呑気な表情だ。

 

「だって、ウィンザー法国って言ったら……オルタナ山脈の向こう側の国ですよね。平和協定も破ってるはずですし」

「そうやな、あの男が敵なんやったら、不味いかもね」

 

 ファリスはアズールを不信がっているようだ。反対にシルビアはそんな様子を見せていなかった。

 

「シルビアさんは心配にならないんですか?」

「そんなことはないけど、バルトシアン王国の兵力を信じたら良いと思うよ」

 

 シルビアの正論。戦争状態になった場合の戦力を彼女は大雑把に考え、答えを出していた。最強国家を信じるという真っ当でシンプルな答えだ。攻めて来たとしても返り討ちに合わせればいい。シルビアの考えはそれに尽きた。

 

「なかなか肝も据わってるな。気に入ったぜ、お前ら」

「ん?」

 

 アズールは一切振り向くことはなかったが、背後を歩く彼女たちの会話も聞いていた。それと併せて、信也の余裕の態度からの言葉だ。隣で話している18歳の少年も自分に対して臆する様子を見せていない。そのように感じているアズールの表情は喜んでいる節さえあった。

 

 

「ところで目的地ってAポイントって呼ばれるベースキャンプだよな?」

「ああ、その通りだな」

 

 信也の質問にアズールは答える。依頼を引き受けた時点で目的地などは明記されているわけだが、その時から不思議に感じる場所でもあった。Aポイントとは一体どのような場所なのだろうかと。信也の中ではクエスチョンマークがひしめいている。

 

 そんな彼の頭の中を読み取ったのかアズールは話し始めた。

 

 

「AポイントやBポイントってのはバルトシアン王国の兵士たちだ駐留しているポイントのことだ。アルファ大森林の西の砦と同じようなもんさ」

「なるほど、北からの侵入者を監視してるってわけか」

「そういうことだ」

 

 信也はアズールの言葉を聞いて納得した。敵は何も魔族だけではない。北のオルタナ山脈を越えられれば、王都までは目と鼻の先になる。そういった事態を避ける為の監視ポイントは設けているのが普通と言えるだろう。

 

「詳しい場所は知らねぇが。他にもC、D、Eポイントなんかもあるだろうな。なんせオルタナ山脈は6000メートル級の山々だからな」

 

 確かに前方に見える山脈は富士山よりもはるかに巨大だ。かなり前から見えていたものではあるが、目的地が近づくにつれ、その大きさが鮮明になって来た。

 

「ウィンザー法国の連中はあんな場所を越えるのか? 大変そうだな、そこまでしてバルトシアン王国を攻めたいのか?」

 

 信也は軽い気持ちで聞いてみた。さすがに答えが返ってくるとは思っていなかったのだ。

 

「まあ、二つの国は色々と昔からあるからな。俺は個人的には王国に恨みなんてねぇよ。だが、お偉いさんはそうも行かないようだぜ」

「戦争になれば、あんたは法国側に就くのか?」

「さあな。だが、お前らと戦えるならそれも悪かねぇ」

 

 アズールはペラペラと話し出す。そして、彼の言っていることは全て真実のように信也も受け取っていた。これも言霊の力に寄るものなのか……それはわからないが。

 

「できればあんたとは闘技大会で戦いたいな。敵でもないのに殺し合いはしたくない」

「ふん、そうかよ」

「ウィンザー法国は強い連中が多いのか?」

 

 信也は質問を加速させる。この際、聞けることは聞いておこうという魂胆だ。

 

「神官長をトップとする教会団体が主戦力だな。俺の見立てでは、兵力としての強さはバルトシアン王国の方が上だな」

 

 アズールは平然とした口調で重要事項を話していく。もちろん、大陸最強がバルトシアン王国であるので、想像がつく範囲ではあるが、彼は信也たちの前で断言して見せた。

 

「アズールは味方なんか? それとも敵なんか? ようわからんねんけど」

 

 背後からのシルビアの横やり。会話から彼の立ち位置がよく分からない為、突っ込みが入ったのだ。

 

「シルビアだったか? 可愛い顔してはっきり聞いてくるじゃねぇか。どうだ、俺と付き合わねぇか? 俺は自分で言うのもなんだが、女を幸せにできるタイプだぜ? 一途だしな」

 

 彼は自信満々に歯の浮くような名文句を言って見せた。まるで羞恥心を感じさせない表情だ、格好よくすら見える。

 

「まあ、気持ちは嬉しいねんけど、ウチには信也が居るしな」

「ほう、それは残念だな」

 

 ボケに対しての的確な突っ込みのような返し。二人はなかなか良いコンビになるかもしれないと錯覚させられるほどであった。

 

「シルビア……な、何言ってんだよ。別に付き合ってないだろ俺たち……」

 

 信也は不意の一撃に顔を真っ赤にしていた。

 

「いや~、冗談やけどな。でも、信也のそんな顔見れて満足やわ。ウチのこと満更でもないやろ?」

「そ、それはまあ……」

 

 当然だ、と信也は思った。シルビア程の美貌の持ち主で不満があるわけがない。

 

「せんぱ~い、なに赤くなってるんですか~?」

「ひいっ!?」

 

 とても冷たいファリスからの声……信也は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「もう、先輩って美人に弱いですよね」

「い、いや……あのな……」

「知りません……」

 

 ファリスはそっぽを向いてしまう。またまた、好感度が下がった印象を持つ信也であった。

 

「くくくく、結構大変だな、お前も。まあ、贅沢な悩みのような気もするがな」

「くっ……」

 

 アズールからの言葉には信也は何も言い返せないでいた。確かに二人を彼女に選べるとすれば贅沢な悩みとなる。信也はそんなことを考えてはいなかったが、アズールからすればどちらも彼の恋人になることを躊躇わないと感じたのだろう。

 

 

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「おっ、到着だな」

 

 そうな会話を続けている間に、信也達はAポイントに辿り着いた。ベースキャンプと呼ばれるだけあり、幾つものテントが張られていた。何人もの兵士の姿がある。

 

「ご苦労様です! 王国ランカーの方々ですね?」

 

 そんな兵士の一人が信也たちに気付き、近づいてきた。王国ランカーが来るということは事前に連絡が入っていたようだ。

 

「はい、そうです」

「ありがとうございます。我々で確認した限りでも、猛獣はかなり凶悪なものになりますのでご注意ください」

「そんなに危険な猛獣が居たのか?」

 

 アズールの質問に兵士は頷いた。

 

「はい。ダブルヘッドスネークにデスラビット、プライマルビーストにスケイルビーストの姿まで確認が取れています!」

 

 兵士は猛獣名を信也たちに告げる。プライマルビーストとスケイルビーストを除いて信也には初耳であったが、他の者たちには聞きなれた名前として受け入れられていた。

 

「なかなか強力な猛獣どもだな、腕がなるぜ」

「危険なモンスターが多いですね……」

「これは本気で対処せなあかんな。王都に来られたらそれこそ面倒や」

 

 アズール、ファリス、シルビアの3人はそれぞれ真剣な表情になっていた。信也もそんな彼らに触発され、表情を変えた。

 

「それから、テオ・マークレス様も来ておられます。どうか、協力して王国への脅威を取り除いていただきたい」

 

 目の前の兵士からの余計とも取れる一言。信也達の表情がしかめてしく。さらに最悪なことにこちらへと近づいて来ているテオの姿を、信也は捉えていた。またもや、一触即発は避けられない事態となっていた。

 

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