2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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37話 猛獣討伐の依頼 その3

 

 

「てめぇらか。まさか、同じ仕事を請け負うとはな……」

 

 テオの表情は信也たちを見下すそれに変わった。歯を大きく見せながら笑っている。

 

「俺だってお前なんかと一緒になるなんて考えてなかったよ。最悪だ」

「はっ、程度の低い煽りだな。知能指数が低いように感じられるぜ?」

「ああっ!?」

 

 相手の煽り文句には比較的耐性があると感じていた信也。本人もそのつもりではあったが、相手がテオとなると話は別だ。すぐにでも前へ乗り出しねじ伏せてやりたい衝動に駆られた。

 

「信也先輩、あんな人に怒っても損ですって。ここは落ち着いてくださいよ」

「そ、そうだな……悪い」

「いえいえ」

「くくく、てめぇより余程大人な対応じゃねぇか、ファリス。俺の女にしてやってもいいぜ?」

 

 信也はファリスを色眼鏡で見るテオにはらわたが煮えくり返りそうになっていた。ある意味で嫉妬と言えるかもしれない。そんなファリスはテオに話しかけられても返答することすらしていないが。

 

「あんたも嫌われたもんやな。もっと普通にしたらええのに」

「………」

「ん?」

 

 シルビアはテオのことを思っての発言をする。しかし、テオからの返答はなかた。 シルビアも煽りに煽った強烈な言葉が来ると考えていたのか、肩透かしを食らっている様子だ。

 

「ふん、お前ら、俺の足を引っ張りやがったらぶっ殺すからな?」

 

 それだけ言うと、テオは去っていく。ひと悶着と言うほどではなかったが、仕事前に相当に気分の悪くなる出来事だ。最初に信也に話しかけてきた兵士もたじたじになっている。

 

「すみません、仲がよろしくなかったとは知らずに」

「お前さんが謝ることじゃねぇだろ」

「あ、はい……」

 

 アズールは兵士を窘める。兵士もそれに気付き、彼に感謝している様子だった。

 

「テオ・マークレス……性格に難があるようだな。まあ、組織の中にはああいう輩は必ず居るもんだが」

「そうかもな」

 

 アズールの考えは以前に信也も感じたことだ。組織には煽る者、周囲とは決して相容れない者など異端児は存在する。テオがその異端児に該当することは信也たちも把握していた。

 

「しかしあの男は……20位以内か……いや、10以内にすら入っていそうだな。後ろ姿もなかなかのオーラを放っていやがる」

 

 アズールもテオの実力を認める発言をしていた。異端児は実力が伴う者である為、余計に始末が悪い。悔しいが、テオが10位以内に入っているだろうことは信也も思っていたことだ。12位である自分よりも上……信也はある種の悔しさを感じていた。

 

 

「テオに遅れは取りたくない。この任務は確実にこなさないとな」

 

 一方的に煽られた信也は闘争心を剥き出しにしていた。

 

「よろしくお願いします。ここへ来る途中でも見えたかと思いますが、麓の町に猛獣が攻めて行った場合、相当な被害が出る可能性もありますので」

 

 馬車で麓まで来た時に見えていた街並み。オルタナ山脈の麓には何万人という人々が住んでいる。彼らに被害を出させるわけにはいかない。それはAポイントの兵士も同じ気持ちなのだ。だが、戦力的に猛獣の相手は厳しいとの判断からの今回の依頼ということなのだろう。

 

 信也も依頼一覧はギルドで目を通したことはあるが、猛獣討伐の依頼は最も多かった。他にも犯罪者の捕縛や、薬草採取、護衛任務などもあるのだが、それらは数としては少ない。

 

「猛獣確認の知らせが来れば、報告いたします。それまでは待機していてください」

 

 そう言いながら、信也の前に現れた兵士は敬礼をして去って行った。

 

 

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「お~、でかいテント割り当てられたな」

「ですね~」

「というか、4人で共同のテントっていいのかよ……」

「がははははっ、まあ妙な気は起きねぇだろ? 周囲には兵士が駐留してるからな」

 

 彼らが待機場所に割り当てられたテントはかなり巨大なものであった。寝具なども一通り揃っており、非常食の缶詰も隅に配列されている。何日も住むことができそうな準備だ。

 

 ファリスとシルビアも同じ所なので、信也としては少し照れ臭いが、彼女らは気にしている素振りもないので、彼もそれに合わせていた。

 

「まあ、Aポイントに駐留してる兵士は、ずっとここで住んでるだろうから、寝具や缶詰も大量に用意されてるだろうけど……ずっとキャンプ生活ってどうなんだ?」

 

 信也は素人ながら、想像をしてみせる。以前にバーベキューを行い、山で泊まった経験はある信也だったが、あの生活を何か月と続けられる自信はない。その時の山よりも、オルタナ山脈ははるかに過酷な為だ。

 

「まあ、3か月交代制くらいやとしても面倒やと思うで。娯楽が少ないしな」

「そうですよね~。私もしたくはないですね」

 

 そう言いながら、ファリスは隅に置かれていた缶詰を何個も自分の隣に移動させていた。

 

 

「こら、なにしてるんだお前は」

「え? 缶詰食べようかなと。信也先輩もいります?」

「……お前って食いしん坊なのな」

 

 大食いということはノイモントの屋敷でもわかっていたことだが、ナチュラルに缶詰を移動しているシーンは、信也も苦笑いをしていた。

 

「まあ、自由に使ってくださいと言ってたしな。缶詰を食べても大丈夫だろ」

「ですよね、ですよね? 王国ランカーでこんなに可愛い私ですし!」

「自分で言うなよ……まあ、驚く程にその通りだけど」

 

 信也は苦笑いながらも彼女をフォローした。ファリスは喜びながら、上機嫌で缶詰の塔を作っている。 そのシーンを見ているアズールとシルビアは、なんとも言えない表情をしていた。

 

「でも実際、ここで何日か生活することになりそうやで? そう都合よく、猛獣が現れるとも考えにくいしな」

「そっちはいいんだけど……暇を持て余しそうだ」

「心配するな、明瀬。男の趣味って言えば、釣りがあるだろ?」

「ん?」

 

 アズールは大笑いをしながら、信也の肩を叩く。

 

「この近くに上流から流れてる川があるはずだ。そこでの釣りも、ここの兵士はやってるだろ。さっき釣り道具も見たしな」

「なるほど、釣りか……飯の調達もできるし、一石二鳥だな」

 

 アズールの言葉に信也も釣り道具らしきものがあったのを思い出していた。アズールはさすがに周囲を見渡していると言える。すぐに川があることも看破したのだから。

 

「兵士の許可が貰えるなら、バーベキューとかもできそうだな。よし、ちょっと楽しくなってきたぞ」

「信也先輩イキイキしてきましたね。魚の調理なんかは任せてください! 焼くのもいいですけど刺身にもできますよ!」

「お前ってマジで料理できるんだな……」

「料理やったらウチも得意やで? まあ、ウチらに任せとき」

 

 女性陣は2人とも料理に対してのスキルが高いようだ。信也は頼もしい二人に笑顔を向ける。こうして、信也達4人のテント生活は幕を開けたのであった。

 

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