2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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44話 エルフの里 その1

 

「不味いぞ! お前たちはアルドーの街へ向かえ!」

「お前たちはクリステル市街だ!」

 

 Aポイントの兵士たちは、武器を構えそれぞれ部隊に分かれ始めた。各街へ救援に向かうようだ。

 

「大分、騒がしくなってきたな。もうひと暴れしてやるか」

ありがたい! できましたら、クリステル市街へ行ってもらえませんか? 最も住民が多い街になりますので」

 

 アズールの言葉に、駆け付けて来た兵士は敬礼をしながら言った。だが、それを聞いていた信也の表情は暗い。

 

「シルビア、故郷は危ないんじゃないか?」

「え? そうやけど……う~ん……」

「念のため聞いとくか。あの、エルフの里への派兵はどのくらいですか?」

 

 信也としては何気なく聞いた一言だ。悪気があったわけでも疑心暗鬼になっていたわけでもない。それは質問された兵士も同じであった。

 

「はあ? エルフの里への派兵は予定していませんが……」

 

 聞かれた兵士は反射的に答えていた。

 

「なに?」

「信也、こんなもんやて。いくら平和協定結んでてもな。有事の際はエルフは後回しにされるねん」

 

 シルビアは当然のように語っていた。信也としては納得できるところではないが、ファリスやアズールも特に驚いている気配はない。

 

 やはり、種族間の差別や争いというのは水面下では起こっているのだろう。兵士としては職務を全うしているだけであり、彼らを責めるのも筋違いというものだ。

 

「くっくっくっ、ならば俺がエルフに恩を売るチャンスだな」

 

 兵士の言葉を傍らで聞いていたのか、不気味な笑顔になっていたのはテオ・マークレスだ。もはやその表情だけでも、何を考えているのか想像ができる。彼は、すぐにその場を後にした。

 

「あいつ……」

「いや、信也先輩。あれは絶対に、信也先輩が考えそうな表情をしてましたよ」

「まて、ファリス。俺がそんなエロい考え持つわけがないだろ」

「想像したっていうことは、図星と同じです」

 

 ファリスに自分の中を見透かされ、信也は慌てる。しかし、テオの考えはそういった類のものだろう。エルフは長寿でも貴重なのだから。

 

「テオの野郎の考えはともかく、猛獣が迫っている中、誰も助けに行かないのは不味いな。俺達で行くか」

 

 

 アズールも当然のようにそう言った。信也とファリスも彼に頷いている。そんな何気ない態度で、決して恩着せがましい態度など取らない彼ら。出会ってまだ間もないはずだが、その信頼関係は相当なものを表していた。

 

「あんたら……なんていうか、ありがとうな」

「気にするなっての。仲間だろ?」

「うん。ありがと、信也」

 

 シルビアは笑いながら手を前に差し出した。信也もその手に軽く触れる。二人の信頼関係はより深まるような行為だったのか、信也としてもシルビアの考えていることがわかった感覚になった。自分への信頼は向上している、と。

 

 言霊の能力がパワーアップをした瞬間であったのだ。信也の身体は大きな光に包まれた。彼の中での大きな加速……その光は彼にしか見えていないが、確かに彼の身体から発せられた。

 

「信也、どうかしたん?」

「いや……なんでもない」

 

 シルビアは放心状態になっている信也に話しかけるが、彼は冷静に返した。それから、彼らはエルフの里へと向かうことになるが、信也はその間も考えていた。

 

 ……言霊の能力の向上。それは、自らの身体能力の向上でも上昇するが、もう一つ上昇する要因がある……。仲間との絆だ。信也としてもこちらの方が、よりはっきりと感覚的に確信することができた。信頼関係の向上によって、相手の言霊を自分の中に吸収することができる。それが、信也の言霊の能力の上昇に繋がっているのだ。

 

「左腕が……治ってる。凄いな、ホント」

「えっ? もう治ったんですか?」

 

 普通に左腕を動かしている信也に、ファリスも驚いていた。自己治癒能力が上がっているのだ。

 

「明瀬。なにか悟ったか? さっきまでと顔つきが違うぜ」

「強くなる指針が明確になった」

 

 信也はアズールに自信満々に言ってのけた。それと同時に、向上した力を試したいとの欲望も増えていた。信也の成長は、この依頼を通しただけでも上がっている。非常に早い速度と言えるだろう。

 

 

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「行ったか」

 

 信也達がエルフの里へ向かったのを確認するかのように、先ほどまでの場所にラングートが現れた。頭を抱えているのは先ほどまで、信也達と話していた兵士だ。

 

「よかったんですか? 彼らをエルフの里に向かわせて」

「ああ、大丈夫だ。政治的な事情で派兵がしにくいのは事実だからな。彼らが向かってくれれば好都合さ」

 

 ラングートは全てを読んだ上で、目の前の兵士に演技をするように命じていたのだ。テオが向かうことも予想済みだった可能性もある。

 

「しかし、あの方たちの協力がなければ、麓の街の被害は相当に大きくなりかねませんよ?」

「そちらは私が行くさ。あとは……彼らもな」

 

 ラングートはそう言いながら、後ろを指差した。兵士は背後に気配を感じ振り向く。彼の背後に並び立つのは、特殊な鎧が印象的な部隊「鉄騎隊」だ。

 

「さて、行くぞ」

「はっ」

 

 ラングートは先陣を切り、20人ほどの鉄騎隊を引き連れていく。300人で構成される鉄騎隊の10分の1にも満たない数ではあるが、周囲の兵士たちを圧倒するには十分すぎる威圧感を漏らしていた。

 

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