2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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45話 エルフの里 その2

 

 信也達はエルフの里へと向かうべく、標高700メートル地点から大急ぎで麓を目指していた。道案内役はシルビアだ。

 

「シルビア、お前のところのエルフって、やっぱり人間嫌いなのか?」

 

「そうやな、前にも少し言ったけど、やっぱり人間との仲は良いとは言われへんよ。お互い寿命も違うし、エルフは人間に比べて希少種やし。相容れないところは多いな」

 

「現在は平和ですけど、何十年か前までは争っていた種族ですしね」

 

「そうなのか……」

 

「元々はエルフの連中が発端だがな。非常に長寿の種族……アトヴェント大陸を統べるのは人間ではないって考えを持ってるはずだ」

 

 信也は道中で、エルフと人間のことについて学んでいた。エルフの寿命は500年以上とされ、人間はせいぜい100年程度だ。

 

 その差だけでも、エルフは人間を見下す材料にすることができる。逆に人間は何十年も外見が変わらないエルフを性の道具として見下すことをしていたのだから、どっちもどっちということになるが。

 

「100年以上若い状態を維持するエルフと、それを性の道具としている人間の争いか……」

 

「信也、なんかやらしいで? そういう争いがないわけやないけど、色々複雑やねんて」

 

「わかってるっての。そもそも、どんな争いかなんて興味ないしな。シルビアの故郷なら、助けたいって思ってるだけだ」

 

 信也の何気ない発言。政治的な細かい争いに興味がないということは本当であった。シルビアはそんな彼の何気ない発言に思わず反応してしまう。身体が熱くなるのを感じていた。

 

「ま、まあ、そういうことやったらええねんけど」

 

 シルビアは珍しく照れているのか、信也に顔を合わせなかった。そんな様子を見ていたファリスは多少、口を尖らせながらも信也とシルビアのやり取りに口を挟むことはしなかった。

 

「しかし、俺達がエルフの里に行って、いきなり撃たれるなんてことないよな?」

 

 信也が危惧しているのは、相手側から一切歓迎されないことだ。最悪の場合は攻撃されることも考えられる。

 

「それはないはずやけど……それに緊急事態やしな。ウチが説得すればなんとかなるって」

 

「その言い方だと、ぎりぎりに見てとれるな……う~む」

 

 シルビアの言葉から計算すると、彼女が居なければ大変な事態になる可能性があると信也には映った。思った以上に人間とエルフの根は深いようだ。

 

 シルビアがアークレイを問題なく歩けているのは、もしかしたら彼女の強さ所以なのかもしれない。

 

 

--------------------------

 

 

 そして、標高100メートル地点……エルフの里では、突如現れた猛獣たちを相手にエルフの民は戦闘を繰り広げていた。

 

「くっ! プライマルビーストにデスラビットの大群とは……!」

 

「オーキス! 北のバリケードが破られそうだわ!」

 

「くそう……! あのバリケードが破られれば、成すすべがない! シャリー! 先に逃げるんだ!」

 

「そんなっ、あなたを置いて行くなんて!」

 

「そんなこと言っている場合か!?」

 

 明らかに劣勢状態のエルフの民であった。何体もの猛獣の死体は転がっているが、攻めて来ている猛獣の量はそれを軽く凌駕している。このままでは、エルフたちは全滅の様相を呈する以外に道はなかったのだ。

 

 

「くくくっ、そろそろ手伝ってやるか」

 

 そして、そこへ現れたのが不気味な笑みを浮かべ勝ち誇った表情のテオだった。両腕には毒ガス発生器を持っている。すぐに発動させることはなく、なにやら毒の種類を選んでいるようだ。

 

 

「……エルフの連中まで殺しては意味がねぇ。ここは神経毒で行くか」

 

 猛獣たちもテオの存在に気付き、猛スピードで彼に迫ってる。しかし、テオは全く焦っている素振りを見せていない。それもそのはず、既に勝負は決まったも同然だったからだ。

 

 瞬間的に放たれる毒ガスの煙は、テオを中心に周囲一帯を覆いつくした。

 

「グガガッ!」

 

「ゴアアアアッ!」

 

 テオに一斉に襲い掛かっていたプライマルビースト達は身体を硬直させて、動きが明らかに鈍っていた。致死性の猛毒ではない為に、それだけで死ぬことはないが、最早死を意味しているのと同じことではあった。

 

 仕込みナイフと呼べばいいのか……テオは両手に刃物を携えている。その刃物は容易くプライマルビーストたちの頸動脈を切り裂いて行った。

 

 テオ自身は神経毒のガスを吸い込んでも全く問題がないのか、身体を硬直させている雰囲気はない。

 

 しかし、他の者たちはそうはいかないのだ。毒ガスは容赦なくエルフの里の入り口付近も覆いつくし、何人ものエルフを巻き込んで行った。

 

 

「なんとか間に合ったか!? もうすぐエルフの里の入り口やで!」

 

「猛獣が多くなってきたな……なんとか無事なら、いいんだが……ん?」

 

 

 同時刻、信也達4人もエルフの里の入り口付近へと到着していた。その道中のデスラビットなどは的確に殺して行き、ようやくの到着だ。

 

 そしてその段階で真っ先に彼らが気付いたのは……エルフの里の周辺を覆う煙だ。臭いなどからも神経性の毒ガスであることは容易に推測できた。こんな毒ガスを広範囲に散布する人物など1人しか居ない。

 

 

「あの野郎! なんてことしてやがる!」

 

 

 周囲に死亡しているプライマルビーストの残骸には一定の評価を下しつつも、入り口付近で身体の動きが鈍っているエルフたちを見ると、怒りが込み上げてきた。信也はあたりを見渡してテオの存在を確かめる。しかし、近くにはいないようだ。

 

「もう毒ガスの効力は弱まっているのか、俺達には影響するレベルじゃねーな。とりあえず、エルフの連中を介抱するとしようぜ」

 

 周囲の猛獣たちが全滅していることを確認し、入り口付近でバリケードを張っていたエルフに、アズールは目を向けた。遠目にも命に別条がありそうには見えないが、しばらくはまともに動けないほど衰弱しているのは見て取れる。

 

「平気か、みんな?」

 

「うう……人間がここへ来たのか……? し、シルビア……!」

 

「ほら、あんまり動かれへんねんから、安静にしとき」

 

「ああ、すまない……」

 

 アズールの提案に頷き、真っ先に行動を開始したのはシルビアだ。ほとんどの者と知り合いなのか、それぞれ名前を呼びながら介抱を開始している。人間が近くに居るということで警戒心を強めた者も居たが、シルビアが介抱することにより、その警戒心も多少和らいだと言える。

 

「ウチらと共に、王国ランカーの面子が助けに来てくれたんや。もう安心していいで」

 

「それはありがたいが……この毒ガスは……なんなんだ?」

 

「あ~これは……まあ、ウチらの中にも結果を重視する問題児がおってな」

 

 できるだけ穏便に済ませたかったシルビア。テオに対して殺意が沸いたのは言うまでもない。だが、神経性の毒ガスを散布させなければ死者が出ていたかもしれない状況だ。それは、後から来た信也たちにも想像ができる範囲だった。

 

 それほどに、テオが倒したと思われる猛獣の数は多かったのだ。

 

「……まあいい。それより、オーキスさんたちが心配だ……! 集落の中にも相当数の猛獣が侵入していたからな……そちらに向かってくれ……!」

 

「親父か……わかった、任せとき!」

 

 自らの父親の名前を聞いたシルビアは介抱を一時中断し、立ち上がった。目指すは里の内部だ。

 

「信也たちも来てくれるやろ?」

 

「当たり前だろ」

 

「テオの野郎だけに手柄を立てられるのも癪だしな」

 

「よ~し、一気に猛獣を全滅させて、エルフのみなさんを救っちゃいましょう!」

 

 シルビアの質問に各々、力強い言葉が返って来た。介抱を受けていた周りのエルフたちも思わず見上げている。珍しい人間が来たと考えているのかもしれない。

 

 

 信也達4人は入り口付近から、エルフの里の内部へと足を踏み入れて行った。

 

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