2重の言霊使いは最強ランク1位を目指す~驚く程の好待遇と女性に困らない人生を送りたい~   作:イリーム

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6話 滞在場所

 

「ところで、ファリス」

「はい、なんですか?」

「アンジェリカと戦って倒せば、彼女を抱けるって言ってたが、殺し合いすることにならないか?」

 

 信也とファリスは王都アークレイへと戻って来ていた。今はファリスが滞在している宿屋に向かっている。

 

「ランキングは相手を倒せばその人とランクが入れ替わります。昔は決闘で殺し合いも多かったんですが……。今はほとんどありません。重要な戦力が殺し合って重傷や死んだりしたら本末転倒ですし」

 

「まあ、確かにそうだな。じゃあ、他には依頼の達成とかか?」

「そうですね、ランキングの変動はそれが基本です。後は闘技大会で相手を倒してもランキングは入れ替わりますよ」

 

 闘技大会……また信也にとって聞き慣れない言葉が出てきた。

 

「闘技大会ってどんなの?」

「城で毎月開かれる、公式の大会です。アンジェリカさんがラングート様を破ったのもその闘技大会ですし。模擬刀を使っての戦いなので、死者は基本的に出ません」

「なるほど……そこで破っても、彼女に勝ったことになるのか」

 

 信也としては、そちらの方が確率は高いように感じた。ファリスとしても、信也の考えは察しが付いたのか頷いている。

 

 

「技や魔法は原則、使用禁止ですし。アンジェリカさんも「剣の弾幕」や「剣の要塞」は使えないことになりますね。彼女の能力は相当制限されます。もちろん、相手も同じ条件になるんですが」

 

 信也も「言霊の力」は使えないことになる。条件は同じ……。

 

「アンジェリカさんは、単純な近接戦闘も強いですよ? ラングート様も破っているんですし……しかも、ラングート様の方は武器が変わっているとはいえ、基本的には100%近い力を発揮できるルールです。それでも、アンジェリカさんは勝利しました」

 

 闘技大会のルールで100%近い力を発揮できるということは、ラングートはパワータイプであり、小細工なしの攻撃を得意としていることになる。つまりアンジェリカは、相手のホームグラウンドで、当時の最強を破ったということだ。

 

「相対評価が加われば、アンジェリカの実力が見えてくるって言葉……なんとなくわかってきた」

「うふふ、そうですよね? でも、個人的には応援しちゃいますよ? 頑張ってくださいね、先輩!」

「ああ、ありがとう」

 

 愛くるしい笑顔でファリスは信也を勇気づける。小刻みに見え隠れする、彼女のスリットに目が行きつつも、信也は感謝の意を示した。

 

 

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「この宿屋に泊ってるのか?」

 

「はい、1泊で1000ガルで30日で30000ガルするんですけど、1か月払いにすると25000ガルに下げてくれますよ」

 

「1泊1000ガル……10000円換算だとすると、まあそんなもんか。ていうか、払えないな……とりあえず、数日泊まることにするかね」

 

「ランキング27位なら月に10000ガルの給付金が出ますので、それなりの足しにはなるじゃないですか。あとは依頼をこなして報酬を受け取るとか、猛獣を倒して素材を売るとか……ランキング上げて給付金増やすとか色々ありますし」

 

 

信也もそれほど焦っているわけではないが、お金が現在11000ガルしかないのは不安でもある。宿代だけでも11日分しかないのだ。食費なども考えると、そこまで泊まれない。

それとは引き替え、ファリスはかなり余裕があるのか、平然と言ってのける。

 

 

「そういえば、ファリスって何位なんだ?」

「私ですか? えへへ、7位で~すっ」

 

 子供が自慢のおもちゃを見せびらかすような雰囲気で、彼女は自らの魔導石を信也に見せた。

 

「7位……まあ、氷の魔法見せられてるから、納得だが……お前、相当強いだろ?」

「一応は。でも近接戦闘は苦手ですし、遠距離オンリーですよ。総合的な能力は、多分先輩の方が上です」

 

 信也の心は揺れ動いた。お世辞も多少は入っているかもしれないが、ランキング7位にここまで言われるのは悪い気はしないどころか、自信にもつながる。

 

「で、こういうこと聞くのは気が引けるが、7位の給付金ってどのくらい?」

「10万ガルですね」

 

 さすがにかなりの金額だ。王国で7番目の強さの人物への給料としては、むしろ少ないかもしれない。

 

「意外と少ないな」

「給付金は、あくまで補助金ですからね。アンジェリカさんでも50万は貰ってないと思いますよ。まあ、あの人は城での豪遊が約束されてますけど」

 

 アンジェリカの雰囲気としては、豪遊を楽しんでいるとは思えないがさすがは1位といったところか。信也は羨ましさを感じていた。

 

 

 そして、二人は宿屋の中へと入って行った。宿屋の名前は「オレゴン」となっており、外観や内部は普通の石造りの建物となっていた。ロビーにはソファーがいくつか備え付けられているが、一般的な宿屋なのだろう。

 

「いらっしゃいませ」

「レイチェルさん、こんにちはですっ!」

「これはファリスさま。お疲れ様です。あら、こちらの方は……?」

 

 ファリスは宿屋の受付に立っていた女性に声をかけた。長身の年上の女性だろうか?

 黒いロングスカートの服を着ている。日本で言うところのメイド服だ。

 

ファリスよりも暗めの茶髪をしており、髪の毛の長さは彼女よりも長く、サイドテールに結わえている。無表情ではあるが、冷たい印象は受けない美人であった。

 

「明瀬信也です、ファリスとは……ランカー仲間ですね。しばらく組んでくれるらしくて」

「あら、そうなんですか? ふふ」

「レイチェルさん、なんですか~?」

「いえいえ、なんでも。私はレイチェル・トーレストと言います。よろしくお願いします、信也さま」

 

 礼儀正しいレイチェルに信也も笑顔で挨拶を交わした。

 

「本日はご宿泊ですか?」

「ええ、えっと……とりあえず、3日間」

「25000ガルで貸切状態も可能ではありますが」

「まだ、金がないんで……稼いでからにします」

「かしこまりました。それではお部屋へご案内いたします」

 

 レイチェルはそう言うと、ルームキーを用意して信也を部屋へと案内した。ファリスとは受付で別れることになり、彼女に付いて行く信也。

 

 

「信也さまのお部屋はこちらになります」

「へえ、ここですか」

 

 思った以上に広い……バスルームやトイレももちろん完備されており、フカフカのベッドもある。相場はよくわからないが、信也としては満足の行く部屋であった。

 

「1階には大浴場も備えてありますので、そちらを使って頂いても大丈夫です。なにかご質問はございますか?」

「いや、とくにないかな。ところで、レイチェルさんはこの宿で働いてるの?」

 

 信也は少し砕けた話し方をしてみた。あまり、敬語過ぎるのもどうかと考えたからだ。

 

「はい、こちらでも働いていますが……私も王国ランカーです」

「やっぱりね」

「どこで気づかれましたか? ファリス様がおっしゃっていましたか?」

 

 信也としても不思議ではあった。自分がそんなことを見抜けるとは思ってなかったからだ。だが、これも才能なのか……彼女の立ち振る舞いがただの宿屋の娘には見えなかったのは事実だ。

 

「立ち振る舞いから、なんとなく」

「……すごいですね。信也さまは何位なのですか?」

「俺は今日、ランカーになったばかりでさ。まだ、27位」

「27位……明らかに27位の強さではありませんね。私が現在、14位ですが……それよりも軽く上に行けると思います」

 

 

 アンジェリカの立ち振る舞いを見たのが、発端と言えるかもしれない。彼は相対的にその人物の雰囲気を感じ取ることが可能になっていたのだ。

 

「まあ、俺はランキング1位を目指しているから。それが今の目標だな」

 

 彼は自然とその言葉を漏らしていた。無意識とも言える確信。彼の中で強烈に植え付けられたのは、アンジェリカの演舞である。あの舞いを見てから……彼の中の闘争心は劇的に上がった。

 

「素晴らしい目標ですわ」

 

 

 レイチェルは無表情を崩して笑顔になっていた。思わず信也もその美しさに見惚れてしまう。本来であれば、一笑に付される目標であるが、彼の言葉にはそれだけの説得力があるとレイチェルも判断したのだ。

 

「それならば、一度、ランカーの皆様が集まる集会場に行かれることをおすすめ致しますわ」

「集会場?」

「はい、ギルドとは別に設けてある施設なのですが、ランカーの皆様の雰囲気を感じ取ることは、今後にも非常に役立つものと推察いたします」

 

 他のランカーを見れる。信也としてもそれは願ったりであった。自らのモチベーションの向上と他の者の強さ……それらを感じることは悪いことではない。

 

 さすがに今日、その場所に行く気にはなれなかったが、明日にでもファリスに話してみようと考える信也であった。

 

「それでは、信也さま。ごゆっくり、おくつろぎください」

「ありがとう、レイチェル」

 

 信也は何気ない気持ちで彼女を呼び捨てにする。レイチェルは全く嫌そうな素振りを見せずに笑顔のまま部屋を出て行った。

 

「多分、歳上だろうけど……ま、呼び捨てでも問題ないか」

 

 信也はそれほど年齢は離れていないだろうと勝手に推測し、呼び捨てにしたことを正当化していた。ベッドが近くにある……そして、日もすっかり落ちてしまっている。

 

先ほどまで元気な信也であったが、さすがに異国の地でのいきなりの活動は疲れたのか、そのままベッドに倒れ込んだ。

 

「目が覚めたら、現実に戻ってましたなんてことないよな……? ファンタジーの世界に潜り込めたんだよな? 頼むぜ、神様……」

 

 せっかく剣と魔法の世界へ来れたのだ。信也は再び目を覚ました時、日本に戻っていたなんてオチは御免だと心に刻み込み、深い眠りについた。

 

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